| 志乃 | 大人になるって、難しいわ…。 |
| 礼子 | どうしたの、志乃？珍しいわね。そんなシリアスなこと言い出して。 |
| 志乃 | もう、つれないこと言わないで。私だって人並みに、悩むときもあるの…。 |
| 志乃 | 大抵は、アルコールに溶けて消えちゃうんだけど…さすがに昼から事務所では、ね。 |
| 礼子 | なら私に話してみなさい。お姉さんが力になってあげるわ。 |
| 志乃 | …待って、私たち同い年よね？ |
| 礼子 | 誕生日は私の方が早いもの。溢れる包容力を感じるでしょう？ふふっ。 |
| 志乃 | …まぁ、そういうことにしておくわ。それで、悩みなんだけど…。 |
| 志乃 | ほら、私たちって…この事務所の中で一番の年長組でしょう？ |
| 礼子 | えぇ、そうね。３１歳をアイドルにするなんて、物好きな人って思ったものよ。 |
| 志乃 | 私と礼子、とまではいかなくてもそれなりに大人な子も事務所にはいるけれど… |
| 志乃 | 小さい子たちとお話する機会も多いじゃない？アイドルになる前はほとんどなかったのよね…。 |
| 礼子 | あら、もしかして小さい子の相手をするの、苦手？ |
| 志乃 | そんなことはないわ。むしろ好きなくらい。刺激になるものね…。 |
| 志乃 | 血の代わりにワインが流れてるような私だけど…、ノンアルコールな話題だってできるのよ。 |
| 礼子 | アルコール基準なのは変わらないのね…。 |
| 志乃 | ただ、あの子たちのキラキラした瞳を見ていると、たまに思うの…。 |
| 志乃 | いつもほろ酔い気分の私は、みんなにどう見られているのかしら…って。 |
| 礼子 | ワイン好きのほろ酔いお姉さん…じゃないの？ |
| 志乃 | かしらね…。ほら、みんなよく言うじゃない？『お姉さんたちみたいに大人っぽくなりたい』って。 |
| 志乃 | 私もその、憧れのお姉さんに入れてもらえてるのかしら？ |
| 礼子 | うーん、志乃はほろ酔いお姉さんだし…。どちらかというと教育にあまりよくない方？ |
| 志乃 | やっぱり、そうなるわよねぇ…。私も実は、大人になりきれていないのかしら…。 |
| 礼子 | なら、そうね…。たまにはお酒を断ってみるとか。 |
| 志乃 | ……………………。 |
| 志乃 | ……この話は、なかったことにしましょうか。 |
| 礼子 | えぇ、そう言うと思ったわ。 |
| 志乃 | 難しいわね…。大人と子供、単純には割り切れないわ…。 |
| 礼子 | でも…考えてみなさい。この事務所にいる、子供たちのこと。 |
| 礼子 | ありすちゃんとか、千枝ちゃん。あと舞ちゃん、桃華ちゃんとか…。みんな賢くてしっかり者よね。 |
| 志乃 | えぇ、そうね…。たまに大人な私たちも、ビックリさせられるくらい。 |
| 礼子 | でも大人組は、楓ちゃんとか、早苗ちゃんとか…。わりと無邪気な子も多いじゃない？ |
| 志乃 | 普段はしっかりしてるけど、お酒が入るとかなり…ね。 |
| 礼子 | つまりこの事務所では、歳を重ねるほど子供っぽくなる…。そんな傾向があるのかも。 |
| 志乃 | なるほど…。確かに一理あるわ…。 |
| 礼子 | つまり事務所で最年長の私たちは…。 |
| 志乃 | 事務所で一番お茶目でも許される…？ |
| 礼子 | うふふ、そういうことよ。 |
| 志乃 | …ありがとう、礼子。何だか酔いが覚めたような気分よ。 |
| 礼子 | まぁ、開き直ったともいうけれど♪ |
| 志乃 | ふふっ…今日はほろ酔いじゃなくて、ぐでんぐでんに酔いたい気分。勿論、付き合ってくれるでしょう？ |
| 礼子 | なら、プロデューサーくんも呼びましょ。子供も大人も関係ない、みんなの見守り役だもの。 |
| 志乃 | いいわね…。大人なところも無邪気なところも、まとめて面倒見てもらおうかしら…。 |
| 礼子 | じゃあさっそく声かけましょう。アンニュイな飲み会にご招待…うふふっ♪ |
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