真奈美 | ふぅ、ようやく休憩だ。これはまた随分と時間が経っているようだな。 |
あい | 衣装合わせだけと聞いてはいたが…熱あるスタッフたちが揃いに揃った、という感じだね。 |
真奈美 | フフ、完璧主義が集まるのはなにも悪いことじゃないさ。良い舞台を作れそうだよ。 |
真奈美 | それで、衣装を着た感想はどうだい?お互い驚くほど様になっているじゃないか。 |
あい | お互いね。ふふ、ありがとう。以前、これに似た衣装を着た経験が活きているんだろうね。 |
あい | こうして褒められたことだ。本番でも、立派にメイドを演じ切ってみせよう。 |
真奈美 | 立派に演じ切る、か…。上手くできればいいんだが。 |
あい | おや、弱音なんて真奈美さんにしては珍しいね。何か心配ごとでも? |
真奈美 | 私も、憂う時くらいあるさ。実はな…あまり芝居は得意じゃなくてね。 |
あい | へぇ……意外だな。前に、熱血教師を見事に演じていただろう? |
真奈美 | あれは、予め台本があったから十分に予習ができたのさ。だが、今回はそうもいかないからな…。 |
あい | 『衣装と設定のみが用意された、笑いあり涙ありの即興劇』だったね。……ふむ、なるほど。 |
真奈美 | 困ったものさ。台本なしで演じると、私の演技はオーバーになってしまうようでね。 |
あい | 何か、問題が? |
真奈美 | 端的に言ってしまえば、やりすぎ。どんな演技も、面白く見えてしまうらしいのさ。 |
あい | そこまでの話でもないだろう?よければ、今ここで、少しやってもらってもいいかい? |
真奈美 | ああ、見せた方が早いだろうね。それでは……コホン。 |
真奈美 | 嗚呼っ…懐かしき青春の日々!オレたちの友情は、永遠だ!!なあ、友よ。そうだろう!? |
真奈美 | ……と、まあこんなところだ。 |
あい | 上手いは上手いが……しかし、なんというか……少し大仰かもしれないね。 |
真奈美 | …やはりな。そうだ。ちょうど衣装も着ているし、ちょっと練習してみないか? |
あい | 私とかい? |
真奈美 | むしろ君以外に適任がいるのかな? |
あい | そう言ってもらえるとは光栄だ。相変わらず、真奈美さんは私を乗せるのが上手いな。 |
真奈美 | 設定は『初心な学生と、彼に仕える健気なメイド』。場面はそうだな…彼が上京していく一幕にしようか。 |
真奈美 | 不器用な学生とメイドが勇気を振り絞り、互いに今までの感謝を伝えるシーンだ。 |
真奈美 | 二人の懸命さが、笑いや感動を生む…そんなところかな? |
あい | なるほど、心得たよ。では、そこを意識してやってみよう。準備はいいかい? |
真奈美 | ああ。それじゃあ…アクション! |
あい | 坊ちゃん……。どうしても行かれるというのですね。 |
真奈美 | ああ、止めないでくれ。青春に旅立ちはつきものさ。 |
あい | 私は、ただのメイド……。どれだけ寂しくとも、貴方様を止める権利すらないのです。 |
真奈美 | 言うな!私だって、君と離れることは、胸が張り裂けそうなほど悲しいさ! |
あい | でしたら…せめて最後に、門までお見送りをさせていただけないでしょうか? |
あい | 私のささやかな願いです…。 |
真奈美 | ……わかった。あい、暫しの別れだ! |
あい | 坊ちゃん! |
真奈美&あい | さあ、手を!! では、お手を! |
真奈美&あい | …………………。 |
真奈美&あい | …………フフ。 |
真奈美 | まさか、二人同時に手を差し出してしまうとはな。 |
あい | いつものクセが出てしまったよ、まったく面目ない。メイドにしては随分と勇ましくなってしまったね。 |
真奈美 | いや…、私も同じようなものさ。感極まった結果、『初心な設定』がどこへやら、だ。 |
あい | だが、臨場感は申し分なかったな。即興劇というのは、なかなかに面白いね。 |
真奈美 | そうだな、いい勉強にもなる。是非ともまたやりたいところだが… |
あい | せっかくなら、観客が欲しい。…違うかな、真奈美さん?その方がやりがいがあるだろう? |
真奈美 | いい案だ。良きアドバイザーとして感想もいただくとしよう。 |
あい | では、衣装合わせが終わったら何人かに声をかけてみようか。 |
真奈美 | ああ、私たちの即興劇を皆に楽しんでもらうとしよう! |
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