| 事務所 |
| 「名探偵の事件簿〜Ep.313〜」 |
拓海 | あん時はマジで助かった!あのままじゃ、アイツもどこ行っちまったかわかったもんじゃねぇし……。 |
都 | いえいえ!見つけられてよかったです! |
拓海 | そうだ。今度何かおごってやるよ。礼っつぅことでさ。 |
都 | あっ、大それたものは受けとれませんよ。探偵にとっては、仕事それ自体が最高の報酬ですからね! |
拓海 | そうかぁ?でも、義理は通すもんだろ。 |
拓海 | んじゃ、これやるよ。さっきコンビニで買いすぎたし、たいしたモンでもねぇからな。 |
都 | これは……あんぱん。そういうことでしたら、喜んでいただきます! |
頼子 | あ、都ちゃん……。お疲れさまです。先日は、お世話になりました。 |
拓海 | お、二人とも知り合いか? |
都 | はい!この前のLIVEでユニットを組んだんです! |
頼子 | それで……あの、都ちゃんと拓海さんは、何のお話を……? |
拓海 | あー……ちょっと前に、ウチの猫がいなくなっちまったんだよ。 |
拓海 | 張り紙とか出したんだけど、最終的には都が見つけてくれたんだよな。たいしたもんだよ。 |
頼子 | そうだったんですか……。都ちゃんは探偵ですもんね。もしかしたら、あのお話も、都ちゃんなら……。 |
都 | おやおや?何か事件のお話ですか? |
頼子 | えっと……事件というよりは、迷い猫の捜索依頼……です。 |
頼子 | よく行くギャラリーのオーナーさんが飼っている猫なんですけが……少し目を離した隙に、出て行ってしまったようで…… |
頼子 | まだ帰ってこないと、オーナーさんも落ち込んでいて……少しでもお役に立てればと考えていたところだったんです。 |
都 | それは立派な探偵の仕事です!そして探偵の出番ですよ! |
都 | 絶望の淵にいる人に助けを求められたなら、探偵たるもの、危険を顧みるべきではありません! |
拓海 | ……つっても、迷い猫探しなら、んな危険なこともねぇと思うけど。 |
頼子 | 拓海さん……今のはおそらく、都ちゃんの好きな探偵ドラマの台詞かと……。 |
都 | ホシは現場に戻るというもの!さっそく、そのオーナーさんに話を聞きましょう! |
拓海 | 猫はホシじゃねぇだろ……って、都のヤツ、もう走り出してんな。 |
頼子 | ま、待ってください……!私が案内するので……っ! |
オーナー | あの子はずっと室内飼いで、外に出したこともありません。いつも家でのんびりしている子だったのに……。 |
オーナー | 急に飛び出していっちゃって、どこに行ったのかしら……。 |
都 | ふむふむ……それは心配ですね。でもご安心を!私が必ず見つけてみせます! |
都 | それで、現場はどこでしょうか? |
頼子 | えっと、どこから出て行ったのかを聞きたいそうです……。 |
オーナー | そうね……。きっと、庭に面した掃き出し窓からだわ。……私が、ちゃんと閉めてなかったの……。 |
都 | なるほどなるほど……。ホシは現場に戻るとは言いますが、その形跡も無し、と。 |
拓海 | 庭を調べてんのか?飛び出してったっつぅなら、ここで見つかるわけねぇと思うけどよォ……。 |
頼子 | ……猫の探し方としては、間違いないかと。 |
頼子 | 実際、迷い猫のうちの何割かは、自力で帰宅したり、実は庭にいたというパターンが多いようですから……。 |
拓海 | へぇ、都のやつ、ちゃんと探偵やってんだな! |
都 | 頼子さん、拓海さん、調査は終わりました!そろそろ次の場所へ向かいましょう! |
都 | にゃー……にゃ〜ご!にゃ!……あっ!猫さん、待ってください! |
拓海 | ……なぁ、都って猫と会話できんのか?っつぅかそもそも、猫に聞き込みって有効なのか? |
頼子 | 猫と会話……はできてなさそうですね……ですが、猫は特有のネットワークを持つといいますから…… |
頼子 | 迷い猫を探している人間がいる、ということは、猫にも通じているんじゃないでしょうか……? |
??? | おや、都ちゃんじゃないかね。 |
??? | おー、相変わらず元気な子だねぇ。 |
都 | 和菓子屋の奥さん!パン屋さんの奥さんもご一緒なんですね! |
和菓子屋の奥さん | そうなの、ランチの帰りでね。そういえば、この前はおつかい、ありがとね。いつも助かってるのよ。 |
都 | いえ、探偵として、みなさんのお役に立つのは当然です! |
パン屋の奥さん | そうそう、都ちゃんの好きなあんぱん、今日も早くに売り切れちゃったのよ。ごめんねぇ。 |
都 | 大丈夫ですよ!あんぱんはまた次の機会に買いますし、人気の謎は目下推理中ですが、必ず突き止めてみせます! |
拓海 | へぇ、そんなに美味いあんぱんがあるのか。 |
頼子 | ええ。あとは……おそらく、都ちゃんがこの前、テレビで牛乳に合うと紹介していたからだと思います……。 |
拓海 | ……それ、本人は気づいてねぇのか? |
頼子 | みたいですね……。 |
都 | それに、今日はあんぱんを買いに来たわけじゃなくてですね、迷い猫を探しているんです! |
都 | みなさん、この辺で猫ちゃんを見ませんでしたか?グレーで、上品な雰囲気のしゅっとした猫なんですが。 |
パン屋の奥さん | うーん、見てないねぇ……。 |
和菓子屋の奥さん | あ、でも、この前コンビニで猫がいっぱい集まっているのを見たわ。ほら、あの河原近くのとこよ。 |
都 | むむ……では、ホシもそこに潜伏している可能性が高いですね……。 |
頼子 | ですが……その場所は、商店街からも徒歩で20分はかかりますし…… |
頼子 | オーナーの家からは遠すぎるのでは……? |
拓海 | たしかにな。ずっと室内飼いされてた猫なんだろ?そんな遠くに行くもんか? |
都 | しかし、行ってみる価値はありますよ!先入観を捨て去るのが、推理の第一歩ですから! |
猫たち | にゃ〜。んにゃーお。ぶにゃー。ごろごろ……。 |
頼子 | 本当に、猫がたくさんいますね……。 |
拓海 | っつぅか、いすぎだろ。これじゃあ、あの中に探している猫がいるかもわかんねぇぞ……。 |
都 | いいえ、あの子は必ず、この集会に参加している……。私の推理に間違いはありません! |
頼子 | でも、どうしましょう?近づいたら逃げてしまいそうですよ……? |
都 | ふっふっふ……ここで、探偵七つ道具の出番ですよ! |
都 | じゃじゃん!ボイスレコーダー! |
拓海 | ん?七つ……?都が持ってんのは、虫眼鏡とポシェット、双眼鏡にペンセットに──。 |
頼子 | 手帳にボイスチェンジャーと工具セットですね……。完全に七は超えています……。 |
都 | そ、それはですね……七つというのは名称に過ぎませんから!中身も日替わりですから! |
都 | コホン……ここには、あらかじめ飼い主さんの声を録音させていただきました! |
| ポチッ |
オーナーの声 | 『セバスティアーノちゃん、帰っておいで?』 |
拓海 | あの猫、そんな洒落た名前だったのかよ……。 |
都 | さあ、出てきてください……。おふくろさんが家で待っていますよ……! |
頼子 | 都ちゃん、それは探偵というより、交渉人かと……。 |
都 | いやぁ、この台詞もいつか言おうと思っててですね……。 |
拓海 | ってオイ、都、頼子、猫がよって来てんぞ……! |
セバスティアーノ | にゃー……? |
都 | 見つけましたよ、セバスティアーノさん!無事、ホシは確保です! |
オーナー | 本当にありがとうございました……!セバスちゃんも、無事に帰ってきてくれて……。 |
オーナー | これは、ささやかだけど、私からのお礼です。お菓子、みんなで食べてね。 |
都 | ありがとうございます! |
オーナー | それにしても、この子は外に出たこともなかったのに……急にどうしたのかしら……? |
都 | そのことですが……私の推理としては、友達が欲しかったのが脱走の動機ではないかと! |
都 | きっと、掃き出し窓から庭を通る猫たちを見て、一緒に遊びたかったんだと思います。 |
都 | 生垣にちょうど、猫が通れるくらいの隙間がありましたから! |
拓海 | へぇ、思うままに動いたようでいて、ちゃんと都なりに考えていたんだな。 |
頼子 | 情報を足で稼ぎ、先入観にとらわれず、人……ではなく猫の想いに寄り添って捜査する……。 |
頼子 | そして何より、周囲が協力したくなる空気にさせる……都ちゃんには、名探偵の素質ありですね。 |
都 | ありがとうございます!真実はいつも、名探偵都のもの!ババーン!! |
都のナレーション | 「こうして、名探偵都の事件簿〜Ep.313〜は幕を閉じた。」 |
都のナレーション | 「けれど、解決の先にはまた新たな事件が待っている!名探偵都の活躍に、終わりなど存在しないのだ……!」 |
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