| ピアノ教室 |
| 〜♪ |
| 久美子 | ……はい！よくできました♪この調子なら、本番も問題なさそうね。 |
| 生徒 | えへへっ、ありがとうございますっ！発表会、楽しみだなー！ |
| 久美子 | （発表会、か……） |
| 久美子の母 | はい！よくできました♪久美子もそろそろ、発表会のことを考えていかなきゃね。 |
| 久美子 | ……いいっ。私、発表会には出ないから！ |
| 久美子の母 | あら、どうして？キレイなお洋服も着られるわよ？あなた、ずっと着たがっていたでしょう。 |
| 久美子 | うぅ〜……いいの！出ないったら、出ないのっ！ |
| 久美子の母 | あっ、久美子！待ちなさい！……まったく。 |
| 生徒 | 久美子先生？どうしたの？ |
| 久美子 | あっ、ごめんなさい！発表会本番でも、のびのびと自分らしく弾いてくるのよ。頑張ってね。 |
| 生徒 | うんっ！ |
| 久美子の母 | 今日はありがとね。久美子も忙しいのに、ピアノ教室、手伝ってもらっちゃって。 |
| 久美子 | んーん。久しぶりに帰ってくる理由ができて、良かったなって。 |
| 久美子の母 | なぁに、それ。別に、いつでも帰ってきていいのよ？ あなたの家なんだし。 |
| 久美子 | この家は、居心地がいいから、帰ってくるとだらけちゃうし。……ちょうどいいのよ、このくらいの方が。 |
| 久美子の母 | ふふ……そう。それで、生徒さんはどうだった？ |
| 久美子 | うん、ほとんど完成してる。発表会前だからって、ナーバスにもなってないし…… |
| 久美子 | 本番が、楽しみで仕方ないって顔してたわ。きっと、大物になるわね。 |
| 久美子の母 | へぇ……珍しく、よく褒めるのね。 |
| 久美子 | なによそれ。でも、なーんかさ、あの子を見てたら自分の小さい頃、思い出しちゃった。 |
| 久美子 | お母さん、大変だっただろうなーって。 |
| 久美子の母 | あら、今ごろ気付いたの？ |
| 久美子 | やっぱり、否定はしてくれないのね……。 |
| 久美子の母 | ふふっ、大人になってもあのままだったら、どうしようかと思ったわよ。 |
| 久美子 | 自分で言うのもアレだけど……今だって、そんなに変わってないと思うわよ？ |
| 久美子の母 | そんなことないわよ。あなたの仕事の様子を見ていればわかるもの。顔つきが、全然違うわ。 |
| 久美子の母 | この家を出て、きっと、たくさんのことを学んでいるんでしょうね。内面から磨かれているんだわ。 |
| 久美子 | そ、そうかしら？だけど……そうね。 |
| 久美子 | この世界は、やっぱり外見が重視されがちだけど……それだけじゃないって、教えてくれた人がいるの。 |
| 久美子 | 今は、私もそう思ってる。キラキラした部分だけを見せても、中身からキレイじゃないと、見抜かれちゃうし。 |
| 久美子 | ファンのみんなも、しっかり持ってるのよね。審美眼ってやつ。もちろん……Pも。 |
| 久美子の母 | ふふ、そうなのね……あっ、そうだわ！ |
| 久美子 | えっ、なに急に。 |
| 久美子の母 | 今度、プロデューサーさんにもうちにいらしてもらって、一緒にお食事しましょうよ。おもてなしするわよ〜！ |
| 久美子 | 本当は今日、連れてくるつもりだったんだけど……あんまり時間ないから、また今度、だって。 |
| 久美子の母 | あら、もうそこまで話が進んでたのね。お母さんは、いつでもいいわよ♪ |
| 久美子 | なんで、お母さんがそんなにワクワクしてるのよ……。 |
| 久美子の母 | だって、嬉しいじゃない。久美子がそんな風に、自分から実家に誘うことなんてないし…… |
| 久美子 | べ、別に、そんな珍しいことじゃないでしょ。 |
| 久美子の母 | それに……プロデューサーさんから見た、久美子の話も聞きたいもの。 |
| 久美子の母 | きっと、プロデューサーさんしか知らないことも、たくさんあると思うのよね。 |
| 久美子の母 | 久美子自身が、気づいてないことだってあるはずよ。そんなの、聞きたいに決まってるじゃない〜！ |
| 久美子 | はぁ……まったく。そんな面白い話は、聞けないと思うけど。 |
| 久美子の母 | いいのよ、それでも。些細なことでも知りたくなるのが、母親ってものなのよ。 |
| 久美子 | ……そっか。 |
| 久美子 | まあ、私はアイドルとして……お母さんの子どもとして、恥ずかしくないように頑張ってるつもり。 |
| 久美子 | もっとキレイになるために、努力を怠ることもないし……この先もね。 |
| 久美子 | だから、誰にどう聞いても、イイ話しか出てこないわよ♪ |
| 久美子の母 | ふふ、そうでなくちゃね。どんなに大きくなっても、あなたは、私の自慢の娘よ。 |
| ガチャ、ガチャ |
| ？？？ | ただいまー。 |
| 久美子の母 | あら、お父さんが帰ってきたわね。 |
| 久美子 | ん、結構早く帰ってきたのね |
| 久美子の母 | 久美子が帰ってくるって伝えたから、あの人、きっと早めに帰ってきたのよ〜。 |
| 久美子の母 | さっ、急いで食事の準備しちゃいましょ！ |
| 久美子 | うんっ！ |
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