瞳子 | それでね、再会した街角で二人は……って、いけない……。これ以上語るのは無粋よね……。 |
清良 | そんな……そこで止められたら、気になっちゃいます。 |
瞳子 | そうね……ネタバレを避けて言うなら、山紫水明の曲みたいに爽やかなシーンなのよ。 |
瞳子 | 本当に……留美さんが言ってた通りの読後感よ。 |
清良 | 二人がそんなに夢中になる小説なら、私も読んでみようかしら。 |
清良 | ラストシーンも、とっても気になりますし♪ |
瞳子 | えぇ、ぜひ……♪今度持ってくるわね。 |
奏 | あら……二人とも、お疲れさま。しんみりしているようだけど、どこか楽しそうで……不思議な空気ね。 |
清良 | ふふっ、ごめんなさい。妙なところを見せてしまったかしら。 |
清良 | 今ね、瞳子さんにオススメの小説の話を聞いていたところだったの。 |
清良 | 切ないロマンスを描いた純文学だそうよ。 |
瞳子 | 『運命の街角』っていって、今度映画化される作品なんだけど…… |
瞳子 | たしか、奏ちゃんは恋愛映画は観ないのよね……? |
奏 | ええ。でも、その作品なら知ってるわ。 |
奏 | 予告編を、映画館で観たのよね。無闇に涙を誘うのでもなく、情景と共に、心情を淡々と描くの。 |
奏 | きっと、ラストを無駄に壮大にしたりもしない……そんな良い映画なんだと思ったわ。 |
奏 | 私には馴染みのないジャンルだから、的外れな考えだったら悪いけれど。 |
瞳子 | ううん、そんなことないわ。むしろ、予告編からそこまで読み取れるなんて……流石ね。 |
清良 | それにしても、予告編を観たってことは、奏ちゃんも最近映画に行ったのね。 |
清良 | 私も何回か行ったの。昔の同僚に誘われて、話題のドキュメンタリーを観たわ。 |
清良 | それと、他の日には事務所の子に誘われて、アクションものを。今、大ヒットしてるタイトルのね。 |
奏 | だったら、もしかすると、私と清良さんは、同じ映画を観てたのかも♪ |
清良 | そうなのね。意外……って言ったら失礼かしら。 |
清良 | 奏ちゃんが好きなのは、社会派やミステリだと思ってたから。 |
奏 | ええ。ジャンルで言うなら、社会派やミステリが好きよ。それと、ファンタジーもね。 |
奏 | でも、観る映画と好きな映画が必ずしも一致するとは限らないでしょ? |
瞳子 | なるほど……きっと、ジャンルに囚われない鑑賞スタイルなのね。 |
奏 | それに、最近はね、誘われて観に行くことも増えたの。事務所の、映画好きな子たちにね。 |
奏 | あとは、映画館の空気を味わうためにふと立ち寄って、その時に上映しているものを観ることも多いわ。 |
清良 | ああ、それはわかるわね。 |
瞳子 | あら……清良ちゃんも、ふと思い立って映画を観たりするのね。 |
清良 | ええ。それほど回数は多くないですけれど……。 |
清良 | 前職では、シフト制だったり、残業があったりで、不規則なライフスタイルになりがちで。 |
清良 | だから、夜の中途半端な時間に、ふらりと映画館に行くことが何度かあったんです。 |
清良 | 人が少ないと得した気分で……ちょっと姿勢を崩したりして。思いっきりリラックスできますし…… |
瞳子 | お仕事を頑張った自分のために、いつもよりちょっと高価なドリンクを頼んだり? |
清良 | そうそう、そうなんです♪今でもたまに、あの時の贅沢な時間を味わいたくなりますね♪ |
奏 | いいわね。私もやってみようかしら。遅い時間に行くのは、もう少し大人になってからになるけれど。 |
奏 | 瞳子さんはどう?小説が好きなら、映画も好きなんじゃない? |
瞳子 | そうね……学生時代はお仕事のインプットにって、張り切って観に行くことも多かったわ。 |
瞳子 | 最初は、役者の演技や、演出の意図を分析しようと頑張るんだけど…… |
瞳子 | ふふ……、途中からすっかり映画の内容に夢中になってるのよね……。 |
清良 | あら、とっても可愛らしいエピソード♪ |
瞳子 | ありがとう。……何度かそういうことがあってから、何も考えず、ただ純粋に、楽しんで観るようになったわ。 |
瞳子 | それが、私の映画に関する思い出かしら……♪ |
奏 | 瞳子さんの楽しみ方もまた、映画鑑賞の醍醐味よね。 |
奏 | 薄暗い中、席に着いてスクリーンを見つめ続ける……。 |
奏 | その時間は、拘束されたものであるはずなのに、実際は誰よりも自由に、物語を楽しめる時間なのよ。 |
奏 | ……想像したら、また映画に行きたくなったわね。 |
清良 | 私も、年末年始には、また贅沢な時間を味わおうかしら♪ |
瞳子 | そうだ。この後、映画のチケットを買いに行こうと思ってたの。例のロマンス映画のね。 |
瞳子 | よかったら、二人も一緒にどうかしら……? |
瞳子 | 観るジャンルや買うチケットが違っても、映画を好きな心は同じだもの。 |
瞳子 | それから、好きな映画を見つけたら、私にオススメしてくれると嬉しいわ……♪ |
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