| レッスンルーム |
トレーナー | ワン、ツー、ワン、ツー!ハイッ、ここでターン!……槙原!また同じところ、リズムに乗れてないぞ! |
志保 | す、すみません!もう一度、お願いします……! |
トレーナー | ……いや、ここまでにしよう。焦りや自信のなさが、ダンスに表れている。いったん気持ちをリセットすることに専念しろ。 |
志保 | で、でもっ……!…………。……いえ、わかりました……。 |
志保 | (はぁ……。最近のレッスン、全然思うようにいかないな。もっとちゃんとしなきゃって、思えば思うほど空回って……。) |
志保 | (リズムに乗って踊るのなんてアイドルの基本なのに。こんなんじゃ、私……) |
| グゥ〜 |
志保 | こんな時でも、お腹は空くんだなぁ……。 |
志保 | (こんな時だからこそ、かな。食べたいなぁ。たくさん元気をくれる、甘ーいパフェ……) |
| カラーン |
店員 | いらっしゃませ。こちらへどうぞ! |
志保 | (新しいメニュー、結構増えてるな……。あっ、この新作パフェすっごく美味しそう!) |
志保 | (定番のチョコパフェにするか、新作パフェにするか……うーん、悩む…………) |
??? | 槙原さん……ですよね?お久しぶりです。 |
志保 | えっ!?あっ!店長!お久しぶりです! |
店長 | 最後の出勤の……送別会の日以来ですね。それとも、もしかしたら私が会っていないだけで、来ていたのかな。 |
志保 | いえ、あの日ぶりに来ました!だから、その……新しいメニューがどれも美味しそうで、目移りしちゃって! |
志保 | それに、新しい子も増えたみたいですね。この時間帯だと知ってる顔はいない……かな? みんな、元気でやってますか? |
店長 | いや、メンバーはだいぶ入れ替わったんですよ。みんなきっと今頃は、新生活で元気にやってるでしょう。 |
志保 | あ、そうなんですね……。 |
店長 | 新メニューですが……新しい子たちに考えてもらったんです。あの頃とは違いますが、いい風が吹いてると思いますよ。 |
志保 | そっか……それなら、よかったです! |
店長 | 槙原さんも、元気でやっているみたいですね。安心しています。 |
志保 | えっ、私ですか? |
店長 | ええ。みんな、槙原さんの活躍に注目しているんですよ。 |
店長 | この前は、常連さんから、槙原さんが載ってる雑誌を見せてもらいました。 |
志保 | えっ……え〜っ!?恥ずかしいですよ!私なんて、本当にまだまだで! |
店長 | はは、恥ずかしいなんてことはないですよ。立派なものです。 |
店長 | だけど、アイドルがこんな時間にファミレスなんていいのかな……? |
店長 | ほら、カロリー制限があるって、よく聞くから……。 |
志保 | きょ、今日はいいんです!それに……アイドルになってもこのお店ならいいかなって。特別ですからっ! |
志保 | あっ、でも、さすがにパフェ一個にしておこうと思います!チョコパフェか、新作パフェ、どっちにしよ〜っ! |
店長 | ふふ、納得いくまで悩んでいってください。……ごゆっくりどうぞ。 |
志保 | は〜い……。…………。 |
| 私は、ここの定番のチョコパフェが大好きだった。昔から、甘いもの……とりわけパフェが大好きだったけど、 |
| ここのパフェを食べた瞬間、「もっと早く出逢いたかった〜……」なんて、本気で思ったりもして。 |
| 作り方を知ってしまえばなんてことはない、普通のパフェだけど……私にとっては間違いなく特別で、大切で。 |
| 悲しい時、嬉しい時。どんな気分の時でも、何かと理由をつけて、ここのチョコパフェを食べていた。 |
志保 | わぁ〜……今、すっごくパフェが食べたい気分っ!ええい、一人でファミレス入っちゃお〜っ! |
志保 | お、美味しい〜!うわぁ、美味しいっ!止まらなくなっちゃうよ〜! |
志保 | 今日はうーんと頑張ったから、自分にご褒美♪やっぱり糖分って大事だもんっ! |
志保 | 店長!ここでのウェイトレスデビューを記念して、新メニューを考えてみました! |
志保 | 食べ進めた分だけ、どんどん味が変わっていく、100層パフェ!……ダメですか? |
志保 | 私のオススメですか?そうですね……やっぱり、定番のチョコパフェでしょうか! |
| 美味しいパフェは、ずっと美味しい。大好きなパフェは、ずっと大好き。 |
| でも……もしかしたら、もっと美味しいパフェが、この世界にはあるのかも? |
| もっともっと、大好きだって思えるものと……この先、出逢えるかも。 |
志保 | 私の接客を、認めてくれるんですか……?そんなふうに言ってもらえるの……嬉しいですっ! |
| それを教えてくれたのが、プロデューサーさんだった。 |
| ピロン♪ |
志保 | (ん、プロデューサーさんからメールだ。お仕事の連絡かな……?) |
志保 | あ…… |
志保 | (私の様子を気にして、メッセージをくれたんだ。私のこと、よく見ててくれてるんだなぁ……。) |
志保 | (って、プロデューサーだから当たり前なのかな?でも……今は、この優しさに素直に甘えてもいいよね) |
志保 | ありがとう、プロデューサーさん。 |
志保 | ……うん。よし!決めたっ!すみませーん!注文、お願いしまーす! |
| 崩れたとしても、また最初から積みなおそう。たとえ躓いても、胸のときめきを信じてみよう。 |
| 私の知らない味、知らない感動。この先も、きっと待ってるはずだから。 |
志保 | 新作パフェ一つ、お願いします! |
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