| レッスンルーム |
日菜子 | ワン、ツー、スリー、フォー……そのまま……ターン! |
トレーナー | うん、いい仕上がりですね!テーマパークの舞台でも、バッチリ映えそうです。休憩後は通しでやりましょう! |
美由紀 | 日菜子ちゃん、すご〜い!今のステップ、すっごくむずかしいのに! |
涼 | これはアタシも負けてらんないな! |
日菜子 | ありがとうございます〜♪何度も何度も、イメージトレーニングを重ねた成果でしょうか♪ |
日菜子 | ですが、油断はしてません!本番では、何が起こるかわかりませんから〜♪ |
亜里沙 | そうね〜。本番用の衣装を着て、見られる緊張感もあって……となると、またステージの雰囲気も変わると思うわ。 |
トレーナー | そして、そのためのレッスンでもあるんです!何度も練習して、心に余裕をもって本番に臨みましょう♪ |
亜里沙 | ええ、ありさお姉さんも頑張らないと♪ |
美由紀 | みゆきも〜っ! |
日菜子 | (これが切磋琢磨というものでしょうか〜。影響しあい、高めあい……目指すは運命のステージ……むふふ♪) |
トレーナー | みなさん、休憩終了です!ここからは、各エリアを回る想定で、レッスンをしましょう! |
涼 | じゃあ、まずはアタシと日菜子で……エントランスエリアから。目を引く派手さで、圧倒してやろうぜ、お姫様! |
日菜子 | はい!本番のような気持ちで……ショータイムです〜♪ |
日菜子 | (まずはお互いの距離を測りながら、慎重に……) |
日菜子 | (涼さんの手を取った後は、緩急を効かせたダンス……!) |
日菜子・涼 | ワン、ツー、スリー!ステップを入れて……ポーズ! |
亜里沙 | すごい……!日菜子ちゃんと涼ちゃん、息がピッタリ! |
美由紀 | お姫様みたいだね〜。くるくるーって、ポーズもばっちりだよ! |
トレーナー | おふたりとも、いい感じです!さあ、ここからがクライマックスですよ! |
涼 | いいね!アタシも楽しいよ!血が沸くどころの騒ぎじゃない……アツく、燃えまくってる! |
日菜子 | (……おや?この展開、覚えがありますね……?) |
日菜子 | (ワイルドで、力強く日菜子の手を引く王子様……ふたりで初めて踊る舞踏会……) |
日菜子 | (そうです……!13歳の夏に書いた、妄想日記の内容とまったく同じ!) |
日菜子 | つまりこれは……日菜子の妄想が、現実になったということ……!? |
トレーナー | ……あれ?日菜子ちゃん、なにやら様子がおかしいような……? |
日菜子 | むふふふ……会場のみなさん、祝福の拍手をありがとうございます〜♪ |
涼 | 会場のみなさん……?まあ、そうだな。練習でも本番と同じ気持ちでやらないとな! |
亜里沙 | 日菜子ちゃん……さっきよりもダンスのキレが増してる……? |
トレーナー | ですが、振り付けが少し違いますね……。あれは、高難易度のステップなので……。 |
日菜子 | たくさんの声援が、今日までの日菜子を支えてくれました〜!次は日菜子が、みなさんの妄想を叶えます〜♪ |
涼 | よし、いい感じに踊れたな。じゃあ、次は美由紀と交代。パレードのパートだ! |
美由紀 | はーい!日菜子ちゃん、一緒に楽しく練習しようね! |
美由紀 | みゆきピエロが夢の世界へごあんな〜い♪さあ、お姫様!こちらへどうぞっ♪ |
亜里沙 | 涼ちゃん、お疲れ様〜。とってもかっこよかったわ。日菜子ちゃんのアドリブにもしっかり対応してて♪ |
涼 | ははっ、ありがと!いやー燃えたね。日菜子の熱に、当てられたって感じ。 |
涼 | にしても、日菜子もすげえな。またダンスでアドリブ決めてんのか。 |
トレーナー | いえ、あれはアドリブというか…… |
日菜子 | とっても素敵なピエロさん。実は民を笑顔にするために、出奔してきた王子様……♪ |
美由紀 | 日菜子ちゃん、すごーい!みゆきも、もっと高くジャンプしなきゃね! |
日菜子・美由紀 | ラストは、笑顔でフィニッシュ♪ |
美由紀 | やった〜!みゆき、ちゃんと踊れたーっ!日菜子ちゃん、ありがとうっ! |
日菜子 | むふふ〜、こちらこそ〜♪元気で可愛い王子様。ふたりで、世界中の人々を笑顔にしましょ〜。 |
涼 | なるほどな……日菜子、妄想の世界にトんでるのか。 |
トレーナー | 聞いたことがあるんです。ダンスの時、日菜子ちゃんはあまり妄想スイッチが入らない、と。 |
トレーナー | 何でも、ダンスをしていると、「自分の体がここにある」とわかるから、現実だって実感できるそうで……。 |
亜里沙 | そうなの?でも今の日菜子ちゃんは……。 |
トレーナー | はい。実はこの話にはまだ続きがありまして。……ただし、ひとたび妄想のスイッチが入ってしまうと…… |
トレーナー | 振り付けを間違え、顔はにやけっぱなしになり、手がつけられなくなる、と。姉はそう言っていました。 |
亜里沙 | あら……でも、多感な時期だもの。楽しい夢なら、ありさ先生はいいと思うわ。 |
涼 | 妄想が日菜子の原動力だし、誰にもマネできない強みでもあるよな。 |
美由紀 | うん!それに振り付けがどんどん進化していくみたいで、すごかったよ! |
日菜子 | パレードに立つ日菜子は……ファンのみなさんにとって、王子様にとって……かけがえのないたったひとり……。 |
日菜子 | そう、誰よりも夢を見て、誰よりも夢を愛する……アイドルという存在なんです! |
美由紀 | わぁ……!日菜子ちゃん、妄想の中だけど、かっこいいこと言ってるね!みゆき、じーんってきちゃった! |
涼 | ただお姫様の妄想をしてるだけかと思ったけど……アタシの勘違いだったよ。日菜子、アツいね。 |
亜里沙 | きっと、日菜子ちゃんならどんな夢だって叶うわ♪今のお顔、すごく凛々しくてまっすぐだったもの♪ |
トレーナー | あの……みなさん、感動してるところ申し訳ないんですが、そろそろ日菜子ちゃんを止めないと…… |
日菜子 | 次はアクアエリアですね。いくとしましょうか〜! 洋子さん?洋子さ〜ん!どこにいるんですか〜!? |
トレーナー | 暴走してしまう……かと……。 |
涼 | 日菜子、洋子サンは別室でレッスン中!現実に戻ってこーい!……ダメだ、聞こえてないな。 |
亜里沙 | トレーナーさん、お姉さんから共有は受けませんでした?日菜子ちゃんが、妄想の世界に行った時の対処法とか……。 |
トレーナー | えーっと、たしか……『日菜子ちゃん!プロデューサーさんが見てますよ!』って言うんだとか。 |
涼 | それでなんとかなる……のか? |
亜里沙 | 日菜子ちゃんとトレーナーさんを信じて、とりあえずやってみましょう! |
トレーナー | え?は、はい!よろしくお願いしますっ! |
美由紀 | じゃあ、いくよー?日菜子ちゃーん! |
4人 | 『プロデューサーさんが見てますよー!!!!』 |
日菜子 | 日菜子の……プロデューサー……? |
日菜子 | そう。日菜子にとってのステージは、妄想と現実の境界。 |
日菜子 | キラキラした衣装に、ファンのみんなとの楽しいひととき……妄想をたくさん詰めた夢であり、現実。 |
日菜子 | だから、初の大舞台……テーマパークでのステージを想うだけで、最近はずっとふわふわしていました。 |
日菜子 | 妄想と現実の狭間もわからなくなって、夢の中にいるみたいで―― |
日菜子 | そんな中で、何が私を現実に繋ぎとめてくれるんでしょう? |
日菜子 | それは王子様ではなく……魔法使いと呼べる人。日菜子の妄想を、夢を、現実にしてくれる人。 |
日菜子 | だって、日菜子は知っています。アイドルとして、大切に育てて、可愛がってくれた。 |
日菜子 | あの人の愛情は、妄想なんかじゃない。紛れもない、現実だって。 |
日菜子 | そう、日菜子にとっての現実は―― |
日菜子 | ……今、プロデューサーさんがいるって聞こえたような……? |
美由紀 | まだいないよ!でも、もうすぐ練習を見に来るかもしれないね♪ |
日菜子 | あっ、そうでした!日菜子たちはダンスレッスン中でしたね! |
日菜子 | でも、途中ですっごくいい妄想が始まっちゃって…… |
日菜子 | すみません!もう一回、レッスンお願いします〜っ! |
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