| ある日の事務所 |
ケイト | 今日もlessonお疲れさまデシタ♪……Hmm,事務所に人がいないなんて、珍しいデスネ? |
ケイト | ンー……これは、radio?誰かの忘れ物デショウカ? |
ケイト | (何かの小道具に使うのか、talkの種になったのか……ハスミやミヤビが持ってきたのかもしれまセンネ♪) |
ケイト | (フフ、懐かしい……勉強の合間によく聴いていたものデス) |
| カチッ |
ラジオ | 〜〜♪ |
ケイト | Wow,これは……思い出深いアイドルソングデスネ♪ |
ケイト | あ、3時間も勉強してる……。少し、休憩しようかな。 |
| コンコン |
ケイトの父 | お疲れ様。ケイト。ラジオが直ったから持ってきたよ。 |
ケイト | ありがとう、ダディ。助かったわ♪ |
ケイトの父 | ……ケイト。好奇心旺盛なキミのことだ。勉強が楽しくてたまらないのはわかるけど、無理はしないで。 |
ケイト | 大丈夫よ、ダディ。心配しないで♪ちょうど今、休憩を挟もうと思っていたから。 |
ケイトの父 | Hmm……なら、僕に似たキミはこう考えるね?休憩を挟んでからもう数時間、と。 |
ケイト | なら、ダディはその先もわかるんじゃない?私はダディに似て丈夫だし、頑張るけど無茶はしないわ♪ |
| 私は父に似ていると言われる。父は幼いころから様々なことに関心があり、多くを学び、誰もが知る名門大学へ入った。 |
| 輝かしい経歴、優しい人柄。私は父を尊敬している。だから父に似ていると言われるのはとても嬉しい。 |
ケイト | (でも、ダディと同じ大学に行くためには……もっともっと、勉強しないと) |
ケイトの父 | それじゃあ、僕は失礼するね。あまり夜更かししないように。 |
ケイト | ハーイ。おやすみ、ダディ♪ |
ケイト | (さて、と……ラジオを聴きながら、もう少し続けようかな。) |
ケイト | (ラジオは好き。勉強しながらいろんな話が聴けるし、音楽にノることもできるんだから) |
| 特に私が好きなのは、最新のヒットチャートが聴ける番組。メジャーからインディーズまで、多くの曲と出会えるの。 |
ラジオ | 〜〜♪ |
ケイト | ……! |
ケイト | (これは、初めて聴くジャンルね。ポップで、キャッチーで、すごく耳に残る……不思議な曲だわ。) |
ケイト | (Star……heart……story……この辺りの歌詞は英語ね。夢……輝く、信じる……これは、たぶん日本語だわ。) |
ケイト | (それに、なんて……なんてキュートで、心がドキドキする曲なんだろう!) |
ケイト | (歌詞について、もっと知りたいわ!そうだ、前に読んだ雑誌に、日本のことが書いてあったし……) |
ケイト | (昔マムが読んでくれた絵本……あれもたしか日本の話だったわ!日本語の勉強になるかも!) |
ケイト | (それから、この曲を歌っている人も調べましょう。ジャンルは……アイドルソング?) |
ケイト | (私と同じ年頃の子が歌ってるのね……衣装も、なんて可愛いの!?) |
ケイト | (パフォーマンスも笑顔も魅力的……これが、日本の文化のひとつ……) |
ケイト | (きっと、他にも素晴らしい文化があるに違いないわ。私、知りたい……日本のことを、もっとたくさん……!) |
| コンコン |
ケイトの母 | ケイトー?まだ起きてるの〜?明日はお友だちとお出かけするんじゃなかったの〜? |
ケイト | あっ、マム!……すっかり忘れてたわ。そうね、そろそろ寝ないと。おやすみ。 |
ケイトの母 | 歯磨きしてから寝るのよ?おやすみなさい♪ |
| ――翌日、待ち合わせ場所。 |
ケイト | ……〜〜♪ララ〜ララララ〜♪ |
友だち | ……ケイト?もしもし、ケイトー? |
ケイト | ひゃあっ!?な、なにっ!? |
友だち | ご、ごめんごめん。なんか歌ってたからさ。それ、今超話題のアイドルソングだよね! |
友だち | 自体もいいけど、MVもすごいんだってさ!なんでも、日本ブヨウ?のエッセンスがあるとか。 |
ケイト | 詳しいのね!ねぇ、私もっと日本のことが知りたいの!どうしたらいいと思う?やっぱりネット? |
友だち | ああ、それならいいところがあるじゃない!ほら、ロンドンの大きな日本食スーパーよ♪ |
ケイト | 日本食……!そうよ!食文化を知るのってとっても重要だわ!もう、私ったら……! |
友だち | ふふ、じゃあ行ってみる?でも今日は小説を買いたいんだっけ? |
ケイト | もちろん、それも行くわ! |
友だち | ふふ、出たね、ケイトの好奇心。いいよ!行ってみよう! |
ケイト | ただいま、ダディ、マム。 |
父・母 | おかえりなさい。 |
ケイトの母 | ……あら?ずいぶんたくさん、お買い物してきたのね♪ |
ケイト | うん。オススメの日本食、片っ端から買ってきたの! |
ケイトの父 | ケイト……キミは、日本へ行くつもりなのかい?……僕は反対だな。 |
ケイト | えっ? |
ケイトの母 | あなた、どうしたの?そんなに深刻にならなくても。行くって言ったって、旅行……でしょう? |
| 私と父は、よく似ている。私の心に訪れた変化を、父は見抜いていたんだと思う。だって、似た者同士だから。 |
ケイト | ……勉強、してくるわ。 |
| 父の言葉がショックで、勉強は頭に入らなかった。そしていつの間にか私は、動画サイトを開いていた。 |
| 例の曲のMVを見る。彼女たちの歌が、ダンスが、笑顔が、私を励ましてくれるようだった。 |
| 今ならよくわかる。それも、アイドルの魅力なんだって。でも、当時の私が目を引かれたのは…… |
ケイト | コメントがたくさんね。全部視聴者の感想だわ。日本以外からも、たくさん届いてる……! |
ケイト | たったひとつの曲が、世界を繋げてるんだ……。これは、関連動画?エンカっていうのね。 |
ケイト | この曲も素敵……!歌詞がわからなくても、歌い手の感情が込められているのがわかるわ! |
ケイト | ……でも、ダディったら、なんであんなことを言ったのかしら……。 |
| 嘘。本当はよくわかってる。一過性の情熱で気軽に挑めるほど、海外留学は甘くない。 |
| 当然お金の問題だけではない。父はそれをよく理解していた。熱に浮かされた私とは対照的に、とても冷静に。 |
| ……けれど、誤りがひとつ。私の好奇心は、行くなと言われただけで尽きるものじゃない。 |
ケイト | (私は……。私にできるのは、学ぶこと。言葉より行動で示して、説得するしかない!) |
| 大学の入学試験まで、1年半。私は、ひたすら学び続けた。もちろん、本来やるべきだった試験勉強と並行しながら。 |
ケイト | (英語や数学はバッチリ……あとは日本語ね。小論文と口頭試問があるわ) |
ケイト | (日本語で読み書きができるようにならないと……難しいけど、大丈夫) |
ケイト | (海の向こうへ思いを馳せるだけで、私の胸はこんなにもドキドキしてるんだから!) |
ケイト | 『文学作品を読み学ぶことは、今の自分、ひいては社会を深く見つめなおすことができる行為だと思いマス。』 |
ケイト | 『現代にまで受け継がれた人間の普遍的な考え方や価値観を読み解くこともできるでショウ』 |
ケイト | 『逆にいえば、古典文学の中で、現代と異なるcustom……custom……oops!風習、デスネ……。』 |
ケイトの父 | ケイト……今のは? |
ケイト | ダディ!これは……その……。 |
ケイトの父 | 外国人留学生の募集要項、か……。 |
ケイト | ダディ?日本語が読めるの? |
ケイトの父 | ああ、僕も昔、日本の文化について、趣味で調べていたことがあってね……フフ、懐かしいな。 |
ケイトの父 | ママが昔ケイトに読んでいた日本が舞台の絵本も、僕が買ったものなんだ。 |
ケイトの父 | さっきの日本語も聞いたよ。短期間のうちに、すごく上手になったじゃないか。 |
ケイトの父 | ケイト……認めるよ。キミの情熱。これからは、留学へ向けての準備に集中しなさい。 |
ケイト | ダディ……?ほ、ホントに?私、日本に行ってもいいの?やったっ!やったぁっ♪マムにも伝えなきゃ! |
ケイトの父 | 『かわいい子には旅をさせよ』フフ……日本の人は、いいことを言うものだね。 |
ケイトの父 | ……名門大学を出ても、結局僕はイギリスに留まってる。でも、キミは違う。世界に羽ばたいていけるんだ。 |
ケイトの父 | ……わかっていたさ。ケイトは、イギリスだけで終わっていい子じゃない。世界を繋げる子なんだって。 |
ケイト | ――このアイドルsongは……私のstart。かけがえのないハジマリ。 |
ケイト | フフ……。身が引き締まりマシタ。明日のlessonも、full powerでいきマショウ! |
コメントをかく