とある登山家の手記１
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zunzun_sigma 2023年01月22日(日) 05:20:28履歴
作者：Σずんずん 
本文
妖精ずんだもん。
東北地方の一部地域で信仰されている妖精だ。信仰する人々の森の実りや田畑の守護妖精として。また時に仇なした者の畑を食い荒らしす荒魂として、丁重に祭られていたと聞いている。
しかし、科学の発展した昨今はそのような信仰は薄れ、彼らへの供物として使われていたずんだ餅の製法くらいしか残っていない。
私が子供の頃に目撃情報が話題になり、証拠写真も取られたがどれも合成にしか見えなかった。村おこしの一助にはなったようだから、あながち悪いことでもなかったが、それも廃れた。今はその村にもまばらな民家とバスの停留所と温泉旅館が一つだけ残っているだけだ。
私は今回、その旅館から山中の秘湯へ入る目的で足を進めている――はずだった。
山奥のずんだもんの祠と呼ばれるスポットを過ぎたあたりから、雲行きが怪しくなった。GPSが狂い、予備として持っていた方位磁針は宛てなくクルクルとふらついた。
道のありそうな方へ宛もなく彷徨うが、人は疎か動物の気配さえ感じられない。
――遭難。
ヒヤリと冷たい汗が伝う。登山にはそれなりに慣れている方だと自負していたが、慢心だった。
「誰か……、誰かいませんかー！？」
早る足につられてカバンにつけた熊よけの鈴がしゃんしゃんと鳴る。駆け回っても、人里の手がかりすら掴めず、ただただ時間だけが過ぎてゆく。
朝から来ていたはずなのに、いつの間にか、日も傾いた。行って戻ってくるだけのつもりだったから、夜を越すような装備は持ってきていない。
立冬を少し過ぎた頃とはいえ、東北の夜は冷え込む。標高の高いここならば言うまでもないだろう。
せめてどこか、風を凌げる場所でもと探し始めた。
足元は暗い。
注意していたつもりでも、踏み出した足は空を切り、私はゴロゴロと崖を滑り落ちた。
張り出した木の根や岩に身体中を殴打され、私は意識を失った。
〜〜〜
「のだ…のだのだ…」
耳元で何かか話す声が聞こえた。
「はじめてみるやつなのだ！」
「おちびちゃん、そんなに近付いたら危ないよ。そいつはたぶん人間さんなのだ。僕も初めて見るけど……」
「おとうちゃはものしりなのだ！ でも、ぜんぜんうごかないのだ」
「崖から落ちてきたのかもしれないのだ。可哀想だけど、普通あんなところから落ちたら命はないのだ。供養してあげるのだ」
ぱさ、ぱさと、花のようなものが私の上からかけられた。
「ほら、おちびちゃんも……」
「のだ……」
「のだ……」
祈りの声と、少しの静寂。
ふわりと風が吹いた。
「よし、これでいいのだ。おちびちゃん、帰って長に報告するのだ」
「わかったのだ！ でもあれ…？くんくん…いいにおいがするのだ！」
「本当なのだ！」
「ずんだもち！ずんだもち！！」
「これから厳しい冬が来るのだ。この人間さんには申し訳ないけど、分けてもらうのだ」
彼らがそんなやり取りをしているうちに、身体に力が戻ってきた私は、全身が訴える酷い痛みを押さえつけてのそりと上体を起こした。
ぱさりと体から落ちたのは、枝豆の葉だろうか。彼らにとっては何か特別な意味があるのかもしれない。
緑の1.5頭身ほどの小動物(？)のように見える。そいつらが地面に放り出されたずんだ餅にむしゃぶりついていた。
それ、弁当代わりに持ってきた旅館の朝ごはんの残り…。
「うわ！うごいたのだ！いきかえったのだ！？」
「おちびちゃん！離れて！」
彼らは私が目を覚ましたのに気が付くと、驚いて飛びのいた。
「なんだコイツら…。しかも飛んでる……。まさか、妖精ずんだもん…？」
「しゃべったのだ！」
「おちびちゃん、危ないから少しだけ離れているのだ。何かあったらすぐに逃げて長に伝えるんだよ」
親妖精は、子供を私から遠ざけた。
人語を話すだけでなく、ほかの生物の死を理解し供養する優しさと知恵もある。そして危機管理能力もそれなりにはあるようだ。
親妖精が口を開く。
「人間さん……でいいのだ？」
「ああ、それで構わないよ」
「何をしに来たのだ。人間さんと僕達は関わってはいけない決まりになっているはずなのだ。まさか、僕たちを食べるつもりなんだな！？」
人のものを食べていたのはお前たちだろ…。
「いや、道に迷っていたら崖から落ちてしまったんだ。君たちに何かをするつもりはないよ」
「そんなことを言われても信じないのだ！あんなところから落ちたら普通死んでしまうのだ！」
私は、腫れ上がった左足首を妖精に示す。
「私の足はこの通りだ。いま君たちを襲ったとして、逃げられておしまいか、返り討ちになってしまうだろう」
このままでは、人里まで歩くのは難しそうだ。
「そのずんだ餅に免じて信じてくれないか。鞄ににまだ入っているよ」
「ずんだもち！ずんだもちたべたいのだ！」
子供？の妖精が目を輝かせて反応した。
「他の食べ物も持っているから、人里まで案内してくれたら、それも分けてあげよう」
うーん、と妖精は渋い顔をした。
「だめか？」
「いや、意地悪しているわけじゃないのだ…。人間さんの住処なんて、僕たちは知らないのだ」
「じゃあ、雨風の凌げるところまででいいんだ」
「おとうちゃ…ずんだもちたべたいのだ」
「おちびちゃん、、わかったのだ」
妖精たちはふわりと浮き上がる。
私の顔の目の前まで来る。間近でよくみると、かわいい顔をしていると思った。
妖精は私の瞳をじっと覗きこむ。
「どうやら人間さんは悪い生き物じゃなさそうなのだ。ぼくの枝豆さんをあげるのだ」
「え？枝豆ってその、耳…？みたいなところ？」
「そうなのだ」
彼らの枝豆を持っている事でなにか特別な意味があるのかもしれない。
「そうか、わかった。では遠慮なく…」
私は妖精の2つの耳に片方ずつ手をかける。
「えーー？？まっちぇ、それはーー」
そして、左右に引っ張った。
「あぎゃあああ！ いたいいたいいたいいたい！！引っ張っちゃ、だめぇええええ――！！」
「おとうちゃ！！！やめるのだ！！」
「え？悪い悪い、じゃあどうやって枝豆を取るんだ？捻るとか？？」
ぐりん。
「捻っちゃ、だめぇえええ――！！取れちゃ！ちぎれちゃ！！取れちゃうのだぁああああ！！」
「やめてあげて！ おとうちゃをはなしてあげて！！」
「ん？ こうかな……？」
ぐりぐりぐり。
「だめだめだめだめだめだめ！！！ 本当にとれちゃ！！ ああぁあああああああああああ！！！」
ぷちん！
「あぎっ！！！？！？ ぎゃぁああぁあああ！！ぼくの枝豆さんがぁぁああああ！！」
「おとうちゃあああああ！！！」
私の右手には、根元から千切れた耳が握られている。
左手の方には、耳が千切れずに妖精がぷらんぷらんと、ぶら下がっていたので地面におろしてあげた。
「はひ……はひ……はひ……」
「おとうちゃ！だいじょうぶ？…にんげんしゃん！いきなりなにをするのだ！！」
子供は言いつけられていた筈の逃げ出すことも忘れて父に駆け寄ってきた。
「かえして、ぼくの枝豆さん、かえして……」
「え、いや、だって、枝豆くれるって……」
片方とれた妖精の枝豆(？)の断面からはどくどくと、緑色の体液が滴り落ちていて、なんというか、非常にグロテスクだった。
「うわ、なんかごめん……」
「いちゃい……、違うのだ…あげるのは枝豆さんの中身だけなのだ……。そこは取れないのだ…取っちゃいけないところなのだ……枝豆さん、かえして……」
「まじか、ごめん……、返すね……」
私は申し訳なく思い、妖精に千切れた枝豆(？)を返却した。
妖精は千切れた枝豆を断面にあてると、子供がぺろぺろと傷口をなめた。
「おとうちゃ！きずをなめなめするんちゃ！」
「おちびちゃん…ありがとうのだ……。人間さん、悪いけどもう少しずんだ餅をいただくのだ…」
「いいけど……」
ばくばくとすさまじい速度でずんだ餅が消えてゆく。
するとどうだろう。耳は魔法のようにくっついて、一目にも元気を取り戻したことがわかった。
「復ッ活！なのだ！」
「すごいな、くっつくのか。にしても、勘違いとはいえ、ひどいことをしてしまったな。許してくれ、ずんだもん」
「いいのだ。それより、ずん…？なんなのだ、それは。僕たちは神聖な妖精さんなのだ。ずんだもんなんて、変な名前じゃないのだ」
「人間たちはね。君たちのことを神様？として、ずんだもんって呼んでいるんだよ」
「神しゃま！いい響きなのだ！なら特別に呼ぶことを許してやるのだ」
妖精ずんだもんは目を輝かせて喜んだようだ。
「おちびちゃん。もう片方の枝豆さんから中身を出して、人間さんにあげてほしいのだ」
「え？おとうちゃ…？あんなにひどいことをされたのに……？」
「それは不幸な勘違いなのだ。間違いは誰にでもあるのだ。それに僕の伝え方も悪かったのだ」
「おとうちゃがそういうなら……」
子ずんが耳をつまむと、ピョコンと当に枝豆のように豆が飛び出した。運ばれてくる小さな豆。確かに枝豆にしか見えない。
いや、生き物からもぎ取った豆(？)とか普通に気持ち悪いから食べたくないんだけど……。
まぁ、友好の印みたいなものなのだろう。口に放り込んだ。
「旨……！！！」
えも言われぬ甘みと旨味、そして鼻に抜ける上品で濃厚な風味に私は舌鼓を打った。
「ありがとう、ずんだもん。すごく旨いね」
「そんなことはいいのだ。それより、足の痛みはどうなのだ？」
そして、気付く。足の痛みが消えている。
「治った…！どうなってるんだ……ありがとう」
「これが僕達妖精さんの力なのだ。わかったら僕達をもっと崇めるのだ」
「これは本当に凄い……」
これならば、東北で信仰されていても頷ける。まさに神業だ。
「なんか、悪かったな……」
「いいのだ、人間さんが歩けるようになったなら、僕も嬉しいのだ。こっちなのだ。僕たちの村までつれて行ってあげるのだ」
少し尊大なところもあるが、私の足を労って、文字通り身を切って治療してくれる、善良な生物のようだ。
私は、飛び上がった彼らの後を追った。
〜〜〜
「のだ、のだのだ」
驚いた。ふよふよと浮かぶ無数の白い影。
ずんだもんの集落があった。
ぱっと見たところ、50匹くらいだろうか。想像していたよりはたくさんいるんだな、と思った。
まずは長老へのあいさつ。
形こそ妖精なものの、どこからどう見てもしわしわの長老は相当な長生きのようで、人間のことを知っているようだった。
闘う力を持たない彼らは人間をはじめとした他の生物との接触をなるべく避けているとの聞き、村のことは秘密にすることを約束した。
ずんだもんのおかげで足は治っていたが、日も暮れてしまったということで、一泊だけお邪魔することにした。
「人間さん、これはなんなのだ？いい匂いなのだ！」
「それはスニッ○ーズって人間のお菓子だよ。食べていいよ」
「おいち、おいち」
「なんなのだこれ、うますぎるのだ」
私が大量に持ち込んだお菓子類はずんだもんたちに大好評だった。ずんだ餅とどっちが好きか訪ねたら「そんなの決められないのだ」だそうだ。
主食とお菓子を比べるのは前提が間違ってる、とでも言いたげだった。
足を治療してくれたお礼に、私は持っていた食料をすべておいて、集落を後にした。
「人間さん。食料ありがとうなのだ。これから厳しい冬が来るから助かったのだ」
「いや、こちらこそ助かったよ」
彼らの食料事情が非常に厳しい事はすぐにわかっていた。訊ねると、寒さや飢えで命を落とす個体は多いらしい。
「戻った後も、祠に食料を置いておくから気が向いたら取りに来てくれ」
「本当なのだ！？ありがとうなのだ！これでおちびちゃんたちがお腹を空かせなくてすむのだ！ありがとうなのだ！」
「それじゃ行くよ。ずんだもん、元気でな」
「ありがとうなのだ！人間さんの事は忘れないのだ！」
小さくなっていく緑と白の彼は、姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。
〜〜〜
短い時間だが近くで見て、彼らについてわかったことを纏めておく。
彼らは人語を理解し、意思疎通が出来る。簡単な数の計算も教えたらできるようになるほど頭がいい。
全長は成体で目算20cm前後、300g程度(但しこれは浮遊能力の影響を考えていないためわからない)
1.5頭身と、極端に頭が大きい。
武器になるような牙もなく、鉤爪もない。唯一あるのは飛行能力。風にも乗らずただ物理学を超えて浮遊する彼らは、状況を判断し、敵の嫌がる逃走ルートを確保できる。そのため不意打ちを除いて、空の王者たる猛禽ですら捕まえることは難しい。
それから、特筆すべきは驚異的な再生能力。枝豆の一件からもわかるように、彼らは食料さえ豊富ならばなんでも再生してしまうようだ。(あとから聞いたが、例え千切れた耳がなくなってしまっても、きちんと栄養を取ればいずれ生えてくるとのことだ)
爪もだが、指もないため、物を掴むくらいはできるが、器用ではないようで、物を作るという文化はないようだ。
食料は雑食で食欲旺盛。農業を営む反面、何も食べなくても日にさえ当たっていれば、動けなくなるだけだという。
自分で書いておきながら、でたらめに奇妙な生態だ。私は一つ仮説を立てた。
頭がアンバランスに大きいのは、浮遊能力のおかげで、重心のバランスを考えなくてよかったせいだろう。
頭を巨大化させ、賢くなった彼らは、その賢さ故、自らを弱くする方向へ進化したのではないか、と。
ある程度発達した頭脳は、個人の武力の必要性を下げる。
いくら乱暴で強い個体といえど、複数人がかりで社会から廃絶されれば生きるすべはない。であれば、鋭い牙や爪といった、攻撃能力は一切必要ないどころか邪魔だ。むしろ、賢く、優しく、協調性の高い個体のみがメスに選ばれ、子孫を作ってきたのではないだろうか。
人間は、動物の中で従順な性格の個体を交配させて家畜化をしてきた歴史がある。
彼らはその賢さ故に、言うなれば自ら家畜化を行い、闘争能力を捨てたのではないか。
一方で、ずんだもんたちの食料事情は少し厳しいようだ。
枝豆栽培や稲作をしているが、冬が近づいた今は畑には何もなかった。
ずんだもちを始め、蓄えた食料は子供へ渡され、親は特別なときにしか食べないんだとか。
代わりに日向ぼっこでもある程度は腹が膨れるというのは光合成でもしているのだろうか。
しかし日照時間も短くなる越冬はやはり厳しいようで、備蓄しておいた米や枝豆でなんとか凌ぐのだそうだ。
特に子ずんは光合成が出来ないようで、成長に食料は必要不可欠で、備蓄の食料だけでなく、親の耳(枝耳や枝豆さんと彼らは呼ぶんでいた)から出てくる豆を砕くか、その分泌物を与えるのだという。
繁殖能力についてだが、交尾(彼らはへこへこと呼んでいるようだ)はあまりしない上に、一度に産む子供はせいぜい一匹か二匹と繁殖力はそこまで高くないようだ。個体数も少なく、このような閉ざされた土地で生きてきたら、今まで伝説として見つからないのも頷ける。
繰り返しになるが彼らは頭がいい。
そして善良だ。
彼らの持つ飛行能力、再生能力、光合成、そして、人語を操る知能。
どれをとっても、今までに類を見ない動物だ。
もし、人語のわかるペットとして重用されたら。
もし、話しができる実験動物として使えたら。
もし、スパイのように使えたら。
もし、ドローンのように兵器利用されたら。
もし、爆撃機のように使えたら。
研究者たちはこぞって彼らを捕まえるだろう。
これは私の戯言だ。
恩を仇で返すような真似はしない。
このことは私の興味から調べただけであり、公開するつもりもない。
万が一誰かに見られてもいいように、詳細な場所も記さない。
彼らがこれからも安寧に暮らしてくれる事だけが、私の望みだ。
〜〜〜
何度目になるだろうか、秋も深まった頃、私はずんだもんの祠にお供物のずんだもち、それからあのとき喜んで食べていたお菓子の類を備えにいく。
あの温泉旅館の女将からは、熱心な変わり者のUMAハンターだと思われているようだが、敢えて訂正しなかった。
毎回きっちりなくなっているから、持って帰っているのだろう。私はもうあの妖精の村に行く気はない。ただこの時期になると毎年同じように食べ物を備え、あの優しかった妖精に思いを馳せる。
1.5頭身の、緑と白の。優しくて、生意気で、ちんちくりんで、どこか可愛らしいあの妖精……。
「あっ、人間さんなのだ！」
現実に引き戻された。目の前には今まさに思い浮かべていた妖精が。
「お前は…ずんだもん！？ 顔を見せちゃだめじゃないか」
「違うのだ！ 人間さんがずんだもんって呼んでたのは僕のお父ちゃなのだ」
「おお、じゃああのときの子ずんか。大きくなったなぁ」
私は子ずんの頭をなでた。
「ありがとうのだ……って、そんなことはいいのだ。大変なのだ！来てほしいのだ！」
ただならぬ雰囲気に、私は前言を撤回し、妖精の集落へついていくことにした。
「「「「のだ、のだのだ、のだのだ」」」」
集落の違和感は明らかだった。
前よりも、明らかに妖精の数が多い。目算300匹くらいはいそうだ。
ぶんぶんと音はしないものの飛び回る姿はまるで虫だ。
「へこへこ、へこへこ、へこへこ気持ちいいのだ」
「はう、はぅ、はぅ」
そこかしこで、ずんだもんたちがへこへこと腰を振っている。前に来たときは、こんなに活発に交尾をする様子はなかった。
「へこへこ！へこへこへこへこ！！」
「うまれりゅ！うまれるのだ！」
「「おぎゃーのだ、おぎゃーのだ」」
ぽんぽんぽんぽん、と子ずんが大量に生まれてきた。
「産まれたのだ！？たっくさん産まれたのだ！とっても可愛いのだ！」
それも一匹からじゃない。今交尾していたたくさんの妖精からそれぞれだ。妖精は今もなお指数関数的に数を増やしていた。
なぜ？
今までせいぜい一匹の子供を大切に育てていっていたじゃないか。
さぁっ、と血の気が引くのを感じた。
「そうなのだ…。みんななんか変なのだ……」
子ずんが青い顔をしている。
「あっ、おちびちゃん！戻ってきたんだね！あっ人間さんもいるのだ…！僕なのだ、ずんだもんなのだ！」
目を向けると、あのときのずんだもんとは似ても似つかない肥満…デブと言って全く差し支えのないほどに肥え太った妖精がいた。
「お前…そんなに太ってたっけ？」
「これこそが僕の真の姿なのだ！群れで一番強いのだ。今まではご飯さんが全然なくてみんなやせ細ってたけど、人間さんがくれるご飯さんが栄養満点だから、たっくさんへこへこして、たっくさん赤ずんが出来るようになったのだ。ありがとうなのだ」
「ああ、、どういたしまして」
「でも、今年は寒夏だったせいか、枝豆さんもお米さんも全然取れなかったのだ。僕は何日も何も食べていないのだ…」
いつも通りの実りであれば、個体数が爆増した今であっても、私からの食料を当てにしていないと言うと嘘になるが節約して食べれば難なく乗り越えられるよう計算だったようだが、前提が崩れてしまった。
増えに増えた彼らに、分配される食料はまるで足りない状態となってしまっているのだと言う。
「人間さん、申し訳ないけど、また食料をくれるのだ？」
「うん…あるけど……」
私は備えようと持ってきた食料を出した。
「ありがとうなのだ。これでまた暮らしていけるのだ！おちびちゃん！ご飯さんだよ！この人間さんがくれたんだよ」
ずんだもんが呼ぶと、藁造りの家の中から、ゾロゾロとたくさんの子ずんが出てきた。
「ずんだもち！」「おいち！おいち！」
私の持ってきたずんだもちに群がる子ずん達。
この村はやはり、変わってしまったようだ。
そしてそれはおそらく……。
私は村に滞在することにした。
私も少しは食べたとはいえ、持ってきた食料はお菓子であって主食ではない。底を尽きるまで、一日も持たなかった。
私が横になっていると、ある妖精が訪ねてきた。
「人間さん…？もうご飯さんはないのだ？」
「もうほとんどないよ」
「僕の赤ずんがお腹をすかせているのだ。何かを食べさせてあげないと、可哀想なのだ」
「そうだな…この飴玉の缶に水にいれると、甘いジュースになるよ」
「わーいなのだ！ありがとうなのだ！！」
まさかリアル火垂るの墓をする羽目になるとは。
滞在三日目。
「もう耐えられないのだ。このままじゃ、おちびちゃんたちが飢え死にしちゃうのだ」
「もうやってられないのだ。村の外には、人間さんが持ってきてくれるような、あんなに美味しいものがいっぱいあって、お腹いっぱい食べれるのだ」
妖精達の不満が爆発した。
のだのだ、のだのだ、と広場が騒がしい。
「のだ…？みんな集まってどうしたのだ？」
ずんだもんがやってきた。そして彼らの話を聞く。
「わかったのだ。村で一番強い僕が、この村の外からごはんさんを持ってくるのだ。ついて来たいやつはついてくるのだ」
デブ妖精と化したずんだもんが言った。
「のだ、のだのだ、のだ」「のだ」「のだ」
次々に賛同する妖精たちが、あとに続く。
ずんだもんはどうすべきか迷っている妖精にも一括した。
「……長老の言うことなんて、嘘なのだ！長老は人間さんと関わるなって言ってたけど、おかげでいっぱいへこへこ出来て、こんなにいっぱいおちびちゃんが増えたのだ！」
「のだのだのだのだ」
ずんだもんの言葉はまるで独裁者の演説のようだった。我も我もと、食料調達に賛同する。
そこに長老がやってきて、嗄れた声で告げた。
「でも、そのせいで食料を人間さんに頼って、それでもまだ、足りなくなってしまっているのだ…」
「うるさいのだ！おちびちゃんがいっぱいなのはいいことなのだ！！話しても埒が明かないのだ！食べ物を取りに行くヤツは村の入口に集合なのだ」
そう言うと、ずんだもんは自分の巣へ飛んでいってしまった。
「嘆かわしい……。おお、人間さん…来ていたのか……。これはお見苦しいところをお見せしたのだ…」
「いや…、すみません、私は良かれと思っていたのですが…」
「いや…人間さんが気に病む必要はありませんのだ。これも自然の摂理。誰にも予想出来なかった事ですのだ…。それに彼の言う通り、子ずんがたくさん増えたのはいいことでもありますのだ。食料が足りなければ、例え餓死者が出たとしても、その中から強い子が残りまた元の数に戻るだけ。それだけの事なのだ……」
「私は……、ずんだもんと話して来ます」
私は駆け出した。
幸い、ずんだもんにはすぐに追いついた。
「おーい、ずんだもん！」
「ああ、人間さん…。ついてきたのだ？」
「お前、長老に向かってあんな言い方はないだろ。お前も長老が正しいことくらいわかっているんだろう？」
「わかっているのだ…。あれは皆を煽るためにわざと言ったのだ。……。恥ずかしい話だけど実はこんなふうに不満が爆発したのも今回が初めてではないのだ。その時はなんとか収まったんだけど…。そして、へこへこを禁止するようなお触れも出したのだ。でも、みんな全然守ってくれないのだ……。僕が悪者になって、皆のご飯さんを持ってくるのが一番いいと思ったのだ…」
「いや、俺が悪いんだろ！？だからもっと飯を持って来いって、そう言えよ！」
「それは違うのだ。僕のせいなのだ。僕が人間さんにご飯さんをお願いしたせいなのだ。そして祠に置いて行ってくれているだけなら、持ってこないこともできたのに、それに甘え続けたのだ」
「ずんだもん…。それでも、いや、だからこそ……」
「人間さんが来てくれるのは冬になる前だけ。最初は皆節約して食べていたのだ。でも、おちびちゃんが増えるに従って、そうも言えなくなってしまったのだ…。僕はもうおデブだからなんとか耐えられているけど、日向ぼっこだけじゃ、死ぬことはなくても満足に動けなくなっちゃうのだ。今は冬もご飯さんを集めないと、おちびちゃんは飢え死にしちゃうのだ」
いままでのように、備蓄を消費して少ない子ずんを大切に育てているのなら、まったく問題にならなかった。しかし、食料が不足し、冬も動かねばならぬとなると、動ける親ずんが必要。動ける親ずんを用意するには食料が必要…となっていたのか。
「僕はいいのだ…でも、おちびちゃんが餓え死にするのは耐えられないのだ…。だから群れで一番強い僕が先陣を切ってご飯さんを持ってくるのだ」
ずんだもんは、覚悟を決めた顔だ。
「止めないで欲しいのだ。…最悪、持ってこられなくても、口減らしにはなるのだ」
やはり、ずんだもん達はとても賢い。私の言おうとすることなんて全てわかっていた。
私はぐうの音も出なかった。
しかし、一つだけ、知恵を貸すことにした。
「ずんだもんの覚悟はわかった。一個、武器を教えよう」
木の枝を石にこすりつけて、槍を作る。これならば手先のそれほど器用でない妖精でも作ることが出来るだろう。
武器を持たない彼らの狩りを少しでも助ける提案だった。
「これは凄い棒なのだ。これならイワナさんや、スズメさんにも…、熊さんにだって勝てるかも知れないのだ！」
ずんだもんは日暮れに集めた妖精達と、槍を作ってから飛びたった。
私はずんだもん達を見送った。
食料を与えることや、狩りを手伝うことは、必ずしも彼らの助けにはならない。
朝方、彼らは食料を持って帰還した。それは木の実やキノコが大半だったが、魚や小鳥も捕まえていた。彼らは賢い。いきなり人間や猛獣と接触するような真似はせず、この誰も寄らないような谷から少しだけ出て、登山道くらいまでで食料を集めたのだろう。
「人間さんのおかげなのだ。この凄い棒があれば、もっともっとご飯さんを持ってくることができるのだ！」
食料問題がある程度の兆しを見せた。
勿論、まだまだ課題はあるようだったが、長老からやんわりともう関わらないで欲しいと告げられたため、私はずんだもんに何も告げずに村を後にした。
その代わり、ずんだもんの家に、本来狩りに行く前に渡せばよかった熊よけの鈴を置いておいた。
熊にも勝てるかも、なんて言っていたが、流石に私へのリップサービスだろう。
子ずんに一言言っておいたから使ってもらえているだろうか。
それからまた何年か経ったある日。
それは、木枯らしが吹き始める頃。
私はずんだもん達のことを思い出していた。あれから、私は祠に食べ物を置きに行くことはしなくなった。
彼らのことを話したこともない。
ただ、温泉旅館にだけはきまった時期に行き、祠でお祈りだけして帰る。
そう。彼らには人間が接触しない方がいいのだ。
そう思っていた、ある日。
それは、なんの前触れもなかった。
テレビから怒涛のような音声が。
「速報です。謎の生物が畑や商店街を襲撃しています。まさかあれは……東北地方の伝説、ずんだもん？？」
「空を覆うほどの凄まじい大群です。ゴミから店頭の商品まで無差別に食い荒らしています」
「殺虫剤が撒かれました！何匹かその場に落ちて痙攣しています。捕まえて研究機関に送られます」
私は自分を責めた。
私が壊してしまったのだ。
彼らの閉ざされた幸せな世界を。
私さえあんなところに行かなければこんなことには……。
手記はここで終わっている。
つづく。
東北地方の一部地域で信仰されている妖精だ。信仰する人々の森の実りや田畑の守護妖精として。また時に仇なした者の畑を食い荒らしす荒魂として、丁重に祭られていたと聞いている。
しかし、科学の発展した昨今はそのような信仰は薄れ、彼らへの供物として使われていたずんだ餅の製法くらいしか残っていない。
私が子供の頃に目撃情報が話題になり、証拠写真も取られたがどれも合成にしか見えなかった。村おこしの一助にはなったようだから、あながち悪いことでもなかったが、それも廃れた。今はその村にもまばらな民家とバスの停留所と温泉旅館が一つだけ残っているだけだ。
私は今回、その旅館から山中の秘湯へ入る目的で足を進めている――はずだった。
山奥のずんだもんの祠と呼ばれるスポットを過ぎたあたりから、雲行きが怪しくなった。GPSが狂い、予備として持っていた方位磁針は宛てなくクルクルとふらついた。
道のありそうな方へ宛もなく彷徨うが、人は疎か動物の気配さえ感じられない。
――遭難。
ヒヤリと冷たい汗が伝う。登山にはそれなりに慣れている方だと自負していたが、慢心だった。
「誰か……、誰かいませんかー！？」
早る足につられてカバンにつけた熊よけの鈴がしゃんしゃんと鳴る。駆け回っても、人里の手がかりすら掴めず、ただただ時間だけが過ぎてゆく。
朝から来ていたはずなのに、いつの間にか、日も傾いた。行って戻ってくるだけのつもりだったから、夜を越すような装備は持ってきていない。
立冬を少し過ぎた頃とはいえ、東北の夜は冷え込む。標高の高いここならば言うまでもないだろう。
せめてどこか、風を凌げる場所でもと探し始めた。
足元は暗い。
注意していたつもりでも、踏み出した足は空を切り、私はゴロゴロと崖を滑り落ちた。
張り出した木の根や岩に身体中を殴打され、私は意識を失った。
〜〜〜
「のだ…のだのだ…」
耳元で何かか話す声が聞こえた。
「はじめてみるやつなのだ！」
「おちびちゃん、そんなに近付いたら危ないよ。そいつはたぶん人間さんなのだ。僕も初めて見るけど……」
「おとうちゃはものしりなのだ！ でも、ぜんぜんうごかないのだ」
「崖から落ちてきたのかもしれないのだ。可哀想だけど、普通あんなところから落ちたら命はないのだ。供養してあげるのだ」
ぱさ、ぱさと、花のようなものが私の上からかけられた。
「ほら、おちびちゃんも……」
「のだ……」
「のだ……」
祈りの声と、少しの静寂。
ふわりと風が吹いた。
「よし、これでいいのだ。おちびちゃん、帰って長に報告するのだ」
「わかったのだ！ でもあれ…？くんくん…いいにおいがするのだ！」
「本当なのだ！」
「ずんだもち！ずんだもち！！」
「これから厳しい冬が来るのだ。この人間さんには申し訳ないけど、分けてもらうのだ」
彼らがそんなやり取りをしているうちに、身体に力が戻ってきた私は、全身が訴える酷い痛みを押さえつけてのそりと上体を起こした。
ぱさりと体から落ちたのは、枝豆の葉だろうか。彼らにとっては何か特別な意味があるのかもしれない。
緑の1.5頭身ほどの小動物(？)のように見える。そいつらが地面に放り出されたずんだ餅にむしゃぶりついていた。
それ、弁当代わりに持ってきた旅館の朝ごはんの残り…。
「うわ！うごいたのだ！いきかえったのだ！？」
「おちびちゃん！離れて！」
彼らは私が目を覚ましたのに気が付くと、驚いて飛びのいた。
「なんだコイツら…。しかも飛んでる……。まさか、妖精ずんだもん…？」
「しゃべったのだ！」
「おちびちゃん、危ないから少しだけ離れているのだ。何かあったらすぐに逃げて長に伝えるんだよ」
親妖精は、子供を私から遠ざけた。
人語を話すだけでなく、ほかの生物の死を理解し供養する優しさと知恵もある。そして危機管理能力もそれなりにはあるようだ。
親妖精が口を開く。
「人間さん……でいいのだ？」
「ああ、それで構わないよ」
「何をしに来たのだ。人間さんと僕達は関わってはいけない決まりになっているはずなのだ。まさか、僕たちを食べるつもりなんだな！？」
人のものを食べていたのはお前たちだろ…。
「いや、道に迷っていたら崖から落ちてしまったんだ。君たちに何かをするつもりはないよ」
「そんなことを言われても信じないのだ！あんなところから落ちたら普通死んでしまうのだ！」
私は、腫れ上がった左足首を妖精に示す。
「私の足はこの通りだ。いま君たちを襲ったとして、逃げられておしまいか、返り討ちになってしまうだろう」
このままでは、人里まで歩くのは難しそうだ。
「そのずんだ餅に免じて信じてくれないか。鞄ににまだ入っているよ」
「ずんだもち！ずんだもちたべたいのだ！」
子供？の妖精が目を輝かせて反応した。
「他の食べ物も持っているから、人里まで案内してくれたら、それも分けてあげよう」
うーん、と妖精は渋い顔をした。
「だめか？」
「いや、意地悪しているわけじゃないのだ…。人間さんの住処なんて、僕たちは知らないのだ」
「じゃあ、雨風の凌げるところまででいいんだ」
「おとうちゃ…ずんだもちたべたいのだ」
「おちびちゃん、、わかったのだ」
妖精たちはふわりと浮き上がる。
私の顔の目の前まで来る。間近でよくみると、かわいい顔をしていると思った。
妖精は私の瞳をじっと覗きこむ。
「どうやら人間さんは悪い生き物じゃなさそうなのだ。ぼくの枝豆さんをあげるのだ」
「え？枝豆ってその、耳…？みたいなところ？」
「そうなのだ」
彼らの枝豆を持っている事でなにか特別な意味があるのかもしれない。
「そうか、わかった。では遠慮なく…」
私は妖精の2つの耳に片方ずつ手をかける。
「えーー？？まっちぇ、それはーー」
そして、左右に引っ張った。
「あぎゃあああ！ いたいいたいいたいいたい！！引っ張っちゃ、だめぇええええ――！！」
「おとうちゃ！！！やめるのだ！！」
「え？悪い悪い、じゃあどうやって枝豆を取るんだ？捻るとか？？」
ぐりん。
「捻っちゃ、だめぇえええ――！！取れちゃ！ちぎれちゃ！！取れちゃうのだぁああああ！！」
「やめてあげて！ おとうちゃをはなしてあげて！！」
「ん？ こうかな……？」
ぐりぐりぐり。
「だめだめだめだめだめだめ！！！ 本当にとれちゃ！！ ああぁあああああああああああ！！！」
ぷちん！
「あぎっ！！！？！？ ぎゃぁああぁあああ！！ぼくの枝豆さんがぁぁああああ！！」
「おとうちゃあああああ！！！」
私の右手には、根元から千切れた耳が握られている。
左手の方には、耳が千切れずに妖精がぷらんぷらんと、ぶら下がっていたので地面におろしてあげた。
「はひ……はひ……はひ……」
「おとうちゃ！だいじょうぶ？…にんげんしゃん！いきなりなにをするのだ！！」
子供は言いつけられていた筈の逃げ出すことも忘れて父に駆け寄ってきた。
「かえして、ぼくの枝豆さん、かえして……」
「え、いや、だって、枝豆くれるって……」
片方とれた妖精の枝豆(？)の断面からはどくどくと、緑色の体液が滴り落ちていて、なんというか、非常にグロテスクだった。
「うわ、なんかごめん……」
「いちゃい……、違うのだ…あげるのは枝豆さんの中身だけなのだ……。そこは取れないのだ…取っちゃいけないところなのだ……枝豆さん、かえして……」
「まじか、ごめん……、返すね……」
私は申し訳なく思い、妖精に千切れた枝豆(？)を返却した。
妖精は千切れた枝豆を断面にあてると、子供がぺろぺろと傷口をなめた。
「おとうちゃ！きずをなめなめするんちゃ！」
「おちびちゃん…ありがとうのだ……。人間さん、悪いけどもう少しずんだ餅をいただくのだ…」
「いいけど……」
ばくばくとすさまじい速度でずんだ餅が消えてゆく。
するとどうだろう。耳は魔法のようにくっついて、一目にも元気を取り戻したことがわかった。
「復ッ活！なのだ！」
「すごいな、くっつくのか。にしても、勘違いとはいえ、ひどいことをしてしまったな。許してくれ、ずんだもん」
「いいのだ。それより、ずん…？なんなのだ、それは。僕たちは神聖な妖精さんなのだ。ずんだもんなんて、変な名前じゃないのだ」
「人間たちはね。君たちのことを神様？として、ずんだもんって呼んでいるんだよ」
「神しゃま！いい響きなのだ！なら特別に呼ぶことを許してやるのだ」
妖精ずんだもんは目を輝かせて喜んだようだ。
「おちびちゃん。もう片方の枝豆さんから中身を出して、人間さんにあげてほしいのだ」
「え？おとうちゃ…？あんなにひどいことをされたのに……？」
「それは不幸な勘違いなのだ。間違いは誰にでもあるのだ。それに僕の伝え方も悪かったのだ」
「おとうちゃがそういうなら……」
子ずんが耳をつまむと、ピョコンと当に枝豆のように豆が飛び出した。運ばれてくる小さな豆。確かに枝豆にしか見えない。
いや、生き物からもぎ取った豆(？)とか普通に気持ち悪いから食べたくないんだけど……。
まぁ、友好の印みたいなものなのだろう。口に放り込んだ。
「旨……！！！」
えも言われぬ甘みと旨味、そして鼻に抜ける上品で濃厚な風味に私は舌鼓を打った。
「ありがとう、ずんだもん。すごく旨いね」
「そんなことはいいのだ。それより、足の痛みはどうなのだ？」
そして、気付く。足の痛みが消えている。
「治った…！どうなってるんだ……ありがとう」
「これが僕達妖精さんの力なのだ。わかったら僕達をもっと崇めるのだ」
「これは本当に凄い……」
これならば、東北で信仰されていても頷ける。まさに神業だ。
「なんか、悪かったな……」
「いいのだ、人間さんが歩けるようになったなら、僕も嬉しいのだ。こっちなのだ。僕たちの村までつれて行ってあげるのだ」
少し尊大なところもあるが、私の足を労って、文字通り身を切って治療してくれる、善良な生物のようだ。
私は、飛び上がった彼らの後を追った。
〜〜〜
「のだ、のだのだ」
驚いた。ふよふよと浮かぶ無数の白い影。
ずんだもんの集落があった。
ぱっと見たところ、50匹くらいだろうか。想像していたよりはたくさんいるんだな、と思った。
まずは長老へのあいさつ。
形こそ妖精なものの、どこからどう見てもしわしわの長老は相当な長生きのようで、人間のことを知っているようだった。
闘う力を持たない彼らは人間をはじめとした他の生物との接触をなるべく避けているとの聞き、村のことは秘密にすることを約束した。
ずんだもんのおかげで足は治っていたが、日も暮れてしまったということで、一泊だけお邪魔することにした。
「人間さん、これはなんなのだ？いい匂いなのだ！」
「それはスニッ○ーズって人間のお菓子だよ。食べていいよ」
「おいち、おいち」
「なんなのだこれ、うますぎるのだ」
私が大量に持ち込んだお菓子類はずんだもんたちに大好評だった。ずんだ餅とどっちが好きか訪ねたら「そんなの決められないのだ」だそうだ。
主食とお菓子を比べるのは前提が間違ってる、とでも言いたげだった。
足を治療してくれたお礼に、私は持っていた食料をすべておいて、集落を後にした。
「人間さん。食料ありがとうなのだ。これから厳しい冬が来るから助かったのだ」
「いや、こちらこそ助かったよ」
彼らの食料事情が非常に厳しい事はすぐにわかっていた。訊ねると、寒さや飢えで命を落とす個体は多いらしい。
「戻った後も、祠に食料を置いておくから気が向いたら取りに来てくれ」
「本当なのだ！？ありがとうなのだ！これでおちびちゃんたちがお腹を空かせなくてすむのだ！ありがとうなのだ！」
「それじゃ行くよ。ずんだもん、元気でな」
「ありがとうなのだ！人間さんの事は忘れないのだ！」
小さくなっていく緑と白の彼は、姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。
〜〜〜
短い時間だが近くで見て、彼らについてわかったことを纏めておく。
彼らは人語を理解し、意思疎通が出来る。簡単な数の計算も教えたらできるようになるほど頭がいい。
全長は成体で目算20cm前後、300g程度(但しこれは浮遊能力の影響を考えていないためわからない)
1.5頭身と、極端に頭が大きい。
武器になるような牙もなく、鉤爪もない。唯一あるのは飛行能力。風にも乗らずただ物理学を超えて浮遊する彼らは、状況を判断し、敵の嫌がる逃走ルートを確保できる。そのため不意打ちを除いて、空の王者たる猛禽ですら捕まえることは難しい。
それから、特筆すべきは驚異的な再生能力。枝豆の一件からもわかるように、彼らは食料さえ豊富ならばなんでも再生してしまうようだ。(あとから聞いたが、例え千切れた耳がなくなってしまっても、きちんと栄養を取ればいずれ生えてくるとのことだ)
爪もだが、指もないため、物を掴むくらいはできるが、器用ではないようで、物を作るという文化はないようだ。
食料は雑食で食欲旺盛。農業を営む反面、何も食べなくても日にさえ当たっていれば、動けなくなるだけだという。
自分で書いておきながら、でたらめに奇妙な生態だ。私は一つ仮説を立てた。
頭がアンバランスに大きいのは、浮遊能力のおかげで、重心のバランスを考えなくてよかったせいだろう。
頭を巨大化させ、賢くなった彼らは、その賢さ故、自らを弱くする方向へ進化したのではないか、と。
ある程度発達した頭脳は、個人の武力の必要性を下げる。
いくら乱暴で強い個体といえど、複数人がかりで社会から廃絶されれば生きるすべはない。であれば、鋭い牙や爪といった、攻撃能力は一切必要ないどころか邪魔だ。むしろ、賢く、優しく、協調性の高い個体のみがメスに選ばれ、子孫を作ってきたのではないだろうか。
人間は、動物の中で従順な性格の個体を交配させて家畜化をしてきた歴史がある。
彼らはその賢さ故に、言うなれば自ら家畜化を行い、闘争能力を捨てたのではないか。
一方で、ずんだもんたちの食料事情は少し厳しいようだ。
枝豆栽培や稲作をしているが、冬が近づいた今は畑には何もなかった。
ずんだもちを始め、蓄えた食料は子供へ渡され、親は特別なときにしか食べないんだとか。
代わりに日向ぼっこでもある程度は腹が膨れるというのは光合成でもしているのだろうか。
しかし日照時間も短くなる越冬はやはり厳しいようで、備蓄しておいた米や枝豆でなんとか凌ぐのだそうだ。
特に子ずんは光合成が出来ないようで、成長に食料は必要不可欠で、備蓄の食料だけでなく、親の耳(枝耳や枝豆さんと彼らは呼ぶんでいた)から出てくる豆を砕くか、その分泌物を与えるのだという。
繁殖能力についてだが、交尾(彼らはへこへこと呼んでいるようだ)はあまりしない上に、一度に産む子供はせいぜい一匹か二匹と繁殖力はそこまで高くないようだ。個体数も少なく、このような閉ざされた土地で生きてきたら、今まで伝説として見つからないのも頷ける。
繰り返しになるが彼らは頭がいい。
そして善良だ。
彼らの持つ飛行能力、再生能力、光合成、そして、人語を操る知能。
どれをとっても、今までに類を見ない動物だ。
もし、人語のわかるペットとして重用されたら。
もし、話しができる実験動物として使えたら。
もし、スパイのように使えたら。
もし、ドローンのように兵器利用されたら。
もし、爆撃機のように使えたら。
研究者たちはこぞって彼らを捕まえるだろう。
これは私の戯言だ。
恩を仇で返すような真似はしない。
このことは私の興味から調べただけであり、公開するつもりもない。
万が一誰かに見られてもいいように、詳細な場所も記さない。
彼らがこれからも安寧に暮らしてくれる事だけが、私の望みだ。
〜〜〜
何度目になるだろうか、秋も深まった頃、私はずんだもんの祠にお供物のずんだもち、それからあのとき喜んで食べていたお菓子の類を備えにいく。
あの温泉旅館の女将からは、熱心な変わり者のUMAハンターだと思われているようだが、敢えて訂正しなかった。
毎回きっちりなくなっているから、持って帰っているのだろう。私はもうあの妖精の村に行く気はない。ただこの時期になると毎年同じように食べ物を備え、あの優しかった妖精に思いを馳せる。
1.5頭身の、緑と白の。優しくて、生意気で、ちんちくりんで、どこか可愛らしいあの妖精……。
「あっ、人間さんなのだ！」
現実に引き戻された。目の前には今まさに思い浮かべていた妖精が。
「お前は…ずんだもん！？ 顔を見せちゃだめじゃないか」
「違うのだ！ 人間さんがずんだもんって呼んでたのは僕のお父ちゃなのだ」
「おお、じゃああのときの子ずんか。大きくなったなぁ」
私は子ずんの頭をなでた。
「ありがとうのだ……って、そんなことはいいのだ。大変なのだ！来てほしいのだ！」
ただならぬ雰囲気に、私は前言を撤回し、妖精の集落へついていくことにした。
「「「「のだ、のだのだ、のだのだ」」」」
集落の違和感は明らかだった。
前よりも、明らかに妖精の数が多い。目算300匹くらいはいそうだ。
ぶんぶんと音はしないものの飛び回る姿はまるで虫だ。
「へこへこ、へこへこ、へこへこ気持ちいいのだ」
「はう、はぅ、はぅ」
そこかしこで、ずんだもんたちがへこへこと腰を振っている。前に来たときは、こんなに活発に交尾をする様子はなかった。
「へこへこ！へこへこへこへこ！！」
「うまれりゅ！うまれるのだ！」
「「おぎゃーのだ、おぎゃーのだ」」
ぽんぽんぽんぽん、と子ずんが大量に生まれてきた。
「産まれたのだ！？たっくさん産まれたのだ！とっても可愛いのだ！」
それも一匹からじゃない。今交尾していたたくさんの妖精からそれぞれだ。妖精は今もなお指数関数的に数を増やしていた。
なぜ？
今までせいぜい一匹の子供を大切に育てていっていたじゃないか。
さぁっ、と血の気が引くのを感じた。
「そうなのだ…。みんななんか変なのだ……」
子ずんが青い顔をしている。
「あっ、おちびちゃん！戻ってきたんだね！あっ人間さんもいるのだ…！僕なのだ、ずんだもんなのだ！」
目を向けると、あのときのずんだもんとは似ても似つかない肥満…デブと言って全く差し支えのないほどに肥え太った妖精がいた。
「お前…そんなに太ってたっけ？」
「これこそが僕の真の姿なのだ！群れで一番強いのだ。今まではご飯さんが全然なくてみんなやせ細ってたけど、人間さんがくれるご飯さんが栄養満点だから、たっくさんへこへこして、たっくさん赤ずんが出来るようになったのだ。ありがとうなのだ」
「ああ、、どういたしまして」
「でも、今年は寒夏だったせいか、枝豆さんもお米さんも全然取れなかったのだ。僕は何日も何も食べていないのだ…」
いつも通りの実りであれば、個体数が爆増した今であっても、私からの食料を当てにしていないと言うと嘘になるが節約して食べれば難なく乗り越えられるよう計算だったようだが、前提が崩れてしまった。
増えに増えた彼らに、分配される食料はまるで足りない状態となってしまっているのだと言う。
「人間さん、申し訳ないけど、また食料をくれるのだ？」
「うん…あるけど……」
私は備えようと持ってきた食料を出した。
「ありがとうなのだ。これでまた暮らしていけるのだ！おちびちゃん！ご飯さんだよ！この人間さんがくれたんだよ」
ずんだもんが呼ぶと、藁造りの家の中から、ゾロゾロとたくさんの子ずんが出てきた。
「ずんだもち！」「おいち！おいち！」
私の持ってきたずんだもちに群がる子ずん達。
この村はやはり、変わってしまったようだ。
そしてそれはおそらく……。
私は村に滞在することにした。
私も少しは食べたとはいえ、持ってきた食料はお菓子であって主食ではない。底を尽きるまで、一日も持たなかった。
私が横になっていると、ある妖精が訪ねてきた。
「人間さん…？もうご飯さんはないのだ？」
「もうほとんどないよ」
「僕の赤ずんがお腹をすかせているのだ。何かを食べさせてあげないと、可哀想なのだ」
「そうだな…この飴玉の缶に水にいれると、甘いジュースになるよ」
「わーいなのだ！ありがとうなのだ！！」
まさかリアル火垂るの墓をする羽目になるとは。
滞在三日目。
「もう耐えられないのだ。このままじゃ、おちびちゃんたちが飢え死にしちゃうのだ」
「もうやってられないのだ。村の外には、人間さんが持ってきてくれるような、あんなに美味しいものがいっぱいあって、お腹いっぱい食べれるのだ」
妖精達の不満が爆発した。
のだのだ、のだのだ、と広場が騒がしい。
「のだ…？みんな集まってどうしたのだ？」
ずんだもんがやってきた。そして彼らの話を聞く。
「わかったのだ。村で一番強い僕が、この村の外からごはんさんを持ってくるのだ。ついて来たいやつはついてくるのだ」
デブ妖精と化したずんだもんが言った。
「のだ、のだのだ、のだ」「のだ」「のだ」
次々に賛同する妖精たちが、あとに続く。
ずんだもんはどうすべきか迷っている妖精にも一括した。
「……長老の言うことなんて、嘘なのだ！長老は人間さんと関わるなって言ってたけど、おかげでいっぱいへこへこ出来て、こんなにいっぱいおちびちゃんが増えたのだ！」
「のだのだのだのだ」
ずんだもんの言葉はまるで独裁者の演説のようだった。我も我もと、食料調達に賛同する。
そこに長老がやってきて、嗄れた声で告げた。
「でも、そのせいで食料を人間さんに頼って、それでもまだ、足りなくなってしまっているのだ…」
「うるさいのだ！おちびちゃんがいっぱいなのはいいことなのだ！！話しても埒が明かないのだ！食べ物を取りに行くヤツは村の入口に集合なのだ」
そう言うと、ずんだもんは自分の巣へ飛んでいってしまった。
「嘆かわしい……。おお、人間さん…来ていたのか……。これはお見苦しいところをお見せしたのだ…」
「いや…、すみません、私は良かれと思っていたのですが…」
「いや…人間さんが気に病む必要はありませんのだ。これも自然の摂理。誰にも予想出来なかった事ですのだ…。それに彼の言う通り、子ずんがたくさん増えたのはいいことでもありますのだ。食料が足りなければ、例え餓死者が出たとしても、その中から強い子が残りまた元の数に戻るだけ。それだけの事なのだ……」
「私は……、ずんだもんと話して来ます」
私は駆け出した。
幸い、ずんだもんにはすぐに追いついた。
「おーい、ずんだもん！」
「ああ、人間さん…。ついてきたのだ？」
「お前、長老に向かってあんな言い方はないだろ。お前も長老が正しいことくらいわかっているんだろう？」
「わかっているのだ…。あれは皆を煽るためにわざと言ったのだ。……。恥ずかしい話だけど実はこんなふうに不満が爆発したのも今回が初めてではないのだ。その時はなんとか収まったんだけど…。そして、へこへこを禁止するようなお触れも出したのだ。でも、みんな全然守ってくれないのだ……。僕が悪者になって、皆のご飯さんを持ってくるのが一番いいと思ったのだ…」
「いや、俺が悪いんだろ！？だからもっと飯を持って来いって、そう言えよ！」
「それは違うのだ。僕のせいなのだ。僕が人間さんにご飯さんをお願いしたせいなのだ。そして祠に置いて行ってくれているだけなら、持ってこないこともできたのに、それに甘え続けたのだ」
「ずんだもん…。それでも、いや、だからこそ……」
「人間さんが来てくれるのは冬になる前だけ。最初は皆節約して食べていたのだ。でも、おちびちゃんが増えるに従って、そうも言えなくなってしまったのだ…。僕はもうおデブだからなんとか耐えられているけど、日向ぼっこだけじゃ、死ぬことはなくても満足に動けなくなっちゃうのだ。今は冬もご飯さんを集めないと、おちびちゃんは飢え死にしちゃうのだ」
いままでのように、備蓄を消費して少ない子ずんを大切に育てているのなら、まったく問題にならなかった。しかし、食料が不足し、冬も動かねばならぬとなると、動ける親ずんが必要。動ける親ずんを用意するには食料が必要…となっていたのか。
「僕はいいのだ…でも、おちびちゃんが餓え死にするのは耐えられないのだ…。だから群れで一番強い僕が先陣を切ってご飯さんを持ってくるのだ」
ずんだもんは、覚悟を決めた顔だ。
「止めないで欲しいのだ。…最悪、持ってこられなくても、口減らしにはなるのだ」
やはり、ずんだもん達はとても賢い。私の言おうとすることなんて全てわかっていた。
私はぐうの音も出なかった。
しかし、一つだけ、知恵を貸すことにした。
「ずんだもんの覚悟はわかった。一個、武器を教えよう」
木の枝を石にこすりつけて、槍を作る。これならば手先のそれほど器用でない妖精でも作ることが出来るだろう。
武器を持たない彼らの狩りを少しでも助ける提案だった。
「これは凄い棒なのだ。これならイワナさんや、スズメさんにも…、熊さんにだって勝てるかも知れないのだ！」
ずんだもんは日暮れに集めた妖精達と、槍を作ってから飛びたった。
私はずんだもん達を見送った。
食料を与えることや、狩りを手伝うことは、必ずしも彼らの助けにはならない。
朝方、彼らは食料を持って帰還した。それは木の実やキノコが大半だったが、魚や小鳥も捕まえていた。彼らは賢い。いきなり人間や猛獣と接触するような真似はせず、この誰も寄らないような谷から少しだけ出て、登山道くらいまでで食料を集めたのだろう。
「人間さんのおかげなのだ。この凄い棒があれば、もっともっとご飯さんを持ってくることができるのだ！」
食料問題がある程度の兆しを見せた。
勿論、まだまだ課題はあるようだったが、長老からやんわりともう関わらないで欲しいと告げられたため、私はずんだもんに何も告げずに村を後にした。
その代わり、ずんだもんの家に、本来狩りに行く前に渡せばよかった熊よけの鈴を置いておいた。
熊にも勝てるかも、なんて言っていたが、流石に私へのリップサービスだろう。
子ずんに一言言っておいたから使ってもらえているだろうか。
それからまた何年か経ったある日。
それは、木枯らしが吹き始める頃。
私はずんだもん達のことを思い出していた。あれから、私は祠に食べ物を置きに行くことはしなくなった。
彼らのことを話したこともない。
ただ、温泉旅館にだけはきまった時期に行き、祠でお祈りだけして帰る。
そう。彼らには人間が接触しない方がいいのだ。
そう思っていた、ある日。
それは、なんの前触れもなかった。
テレビから怒涛のような音声が。
「速報です。謎の生物が畑や商店街を襲撃しています。まさかあれは……東北地方の伝説、ずんだもん？？」
「空を覆うほどの凄まじい大群です。ゴミから店頭の商品まで無差別に食い荒らしています」
「殺虫剤が撒かれました！何匹かその場に落ちて痙攣しています。捕まえて研究機関に送られます」
私は自分を責めた。
私が壊してしまったのだ。
彼らの閉ざされた幸せな世界を。
私さえあんなところに行かなければこんなことには……。
手記はここで終わっている。
つづく。
あとがき
いのちの授業シリーズを書く前に、ずんだ妖精のイメージを固めるために書いていたものです。
向こうも書いているのですが、クライマックス前に読み返すとともにさらに自分の中の設定を固めたいと思いまして…
(いのちの授業シリーズも若干ながら推敲しています。興味のある方は読んでみてね…！)
こっちには虐待要素はほぼないため、公開していなかったのですが、肉付けして公開することにしました。
つつましく暮らしていたはずの妖精が、なぜ人里におりてしまったのか、その理由が明かされる！
次回、クズ妖精大虐殺！デュエルスタンバイ！
向こうも書いているのですが、クライマックス前に読み返すとともにさらに自分の中の設定を固めたいと思いまして…
(いのちの授業シリーズも若干ながら推敲しています。興味のある方は読んでみてね…！)
こっちには虐待要素はほぼないため、公開していなかったのですが、肉付けして公開することにしました。
つつましく暮らしていたはずの妖精が、なぜ人里におりてしまったのか、その理由が明かされる！
次回、クズ妖精大虐殺！デュエルスタンバイ！
次話
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このページへのコメント
ニアミスというか、ここで出会わなければ……と悔やんでしまうような、それでもお互いに善意の部分が大きかっただけに、読者としては両者を非難しきれないのが何とも絶妙で素晴らしいです！
当初は食糧が限られていたからこそ、妖精たちの欲望が抑えられていたけれど、登山家の施しによって何らかのタガが外れたとみて良いでしょうか……それとも、妖精たちの「本性」は、元々こんな感じだったのだろうか……
感想ありがとうございます。
栄養豊富になり、多産・ヘコヘコの快楽に気付いてしまったのが全ての始まりですね。そこからの行動は妖精の「本性」というよりも「個体差」と考えています。
クズとして書いておいてなんですが、生物としては餌を求めて山を降りるほうがむしろ自然だと思います。
ただ食料を求めて山を降りてきただけなのに理不尽に痛めつけられる妖精さんかわいいね…。
「個体差」という解釈、いいですね！！
確かにそうですね、出来るなら苦労せずに餌を手に入れたいと思うのが生物の基本的な考えでしょうからね……妖精が人間の言葉を話せるぶん、人間社会に対する「悪意」が押し寄せるように思えるだけで……
いのちの授業を書いてた方ですよね。やはりこの方が書く小説はとても面白い。
へこへこはあまりせず…？と思わせた後で、そこをしっかりと回収して妖精はやっぱり愚かなんだなと思わせてくれる展開最高でした。
シリーズを跨いで拙作をお読みいただきありがとうございます。このシリーズは既に次話をup済みですのでぜひ、お読みいただけたら幸いです。
｢あてのない"善意"はかえって他者を"不幸"にするだけ｣ですな……
恩人である妖精達に純粋な善意で授けた｢お菓子｣も｢道具｣も彼らの生態や均衡を崩壊させるとは……美味しすぎる"お供え"だけでタカが外れ無計画に繁殖しまくって食糧難を引き起こして気性も荒くなり、"害虫クズんだ"と化したずんだもん共も罪深いが、ずんだもんの生態を狂わせた登山家の男も遥かに罪深い……(泣)。
愚かな登山家は何処までも余計な事しかしなかった……
ろくに話を聞かず、疑問も持たずに枝豆耳を千切ろうとする
「おつむたりない」人間だから当然の結果と言えるかもしれない
登山家と善良ずんだもんはお互いを思って幸せになりたかっただけなのに…。
善意のすれ違いって哀しくて美しいですね、次回の決闘編(？)も楽しみにしています！
感想ありがとうございます。
次話をもって感想にお応えしたいと思います。
よろしくおねがいします。