前作 - 血桜、害
是非ご覧ください。
血桜、侵害 
『咲田様、初めまして。株式会社カカシ、技術のさくらです。』
『咲田です。よろしくお願いします。』
咲田は驚いていた。
社長の見た目が、桜色の人型ずんだもんだったからだ。
挙げ句に従業員が、妖精ずんだもんだと言うのだから。
『早速準備をスタートしておりますが…』
［あっ、そのパーツは多分B4の口だね。そこじゃないかも。］
《本当なのだ！ありがとうなのだ！》
『ワトソン君、ちゃんと指令出してるねぇ。素晴らしい頭脳だねぇ！まさか設計図まで読めるようになるとは思わなんだ！！』
『あの、四肢がないずんだもんが司令塔なのか…？』
『あっ、ええそうなんです。凄く賢いんですよ。
このペースなら私も手伝えば今日中にセッティングが終わりそうですね。
電話越しにも軽く説明致しましたが、今回の仕掛けは「トラップ」の役割と「リサイクル」を同時にこなしてくれる手作り機工です。』
――――――――――
時刻15:15、設営完了。
『思ったよりも早く終わりましたね。…では早速稼働してみますか…』
――――――――――
『第一段階、まずはトラップボックスの中に誘導します。入り口には返しをつけてあります。』
《ずんだもちのにおいがするのだ！》
《このなかからするのだ！はいるのだ！》
《おちびちゃん！こっちにくるのだ！》《のだのだ！》
ｺﾞｿｺﾞｿｺﾞｿｺﾞｿ
『凄い、とんでもない勢いでトラップボックスの中に…！』
『彼らはずんだもちと枝豆が大好物ですから。匂いだけでもこの通りです。
トラップボックスには、返しで塞がった出口の他に、丁度ずんだもん一匹が入れるか入れないかという大きさのトンネルが空いております。
トンネル内部は、中が妖精で詰まらないように自動的に潤滑油まみれになるようにしております。
潤滑油は、適当なサラダ油を補充してもオッケーです。今回はサービスします。
さて、第二段階。このトンネルを通過させます。』
《なんかヌルヌルするのだ…？》《いっぴきずつしかはいれないのだ！はやくいくのだ！》《みんなここにはいってきているから、うしろがつまっているのだ！はやくするのだ！》
『そして…第三段階…くふふっ…』
『…社長？』
『トンネルの出口附近には刃と吸引機の口が設けられているんです…！
サァ来ますよ…！
第三段階…妖精の、四肢、尻尾、耳、飛行気管、生殖器を…』
ﾊﾞ ｽ ｯ !
《…え？》
ﾊﾞ ｽ ｯ !
《ぎゃあああああああ！》
ﾊﾞ ｽ ｯ !
《はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！》
ﾊﾞ ｽ ｯ !
『刃でズタズタに切り落としながら、次々と吸引機で吸い込みます！
刃は、八目鰻の口のようになっていて、そこを吸引機で無理矢理通過させるので自動的にスパスパ切れるという仕組みです…！
くふっ…あはははははっ！はははははははははははははははははははははっ！無様ですねぇ！可愛い！可愛いでしょう！？ねぇ！咲田さん！さっきまで生意気だった彼らがホラ！モニターを見てください！なんとも無様ですよねぇ！失禁やら脱糞してる子までいて最高ですねぇ！！あはははははっ！』
『…お…おう…』
社長の豹変に動揺した咲田は、生返事しかできなかった。
『さぁさぁ、最終段階！
ここからは、モニター越しではなく、直接見に行きましょう！』
悪魔は、満面の笑みを浮かべて立ち上がり、咲田を連れ出した。
―――――――――
《いちゃい…いちゃい…くちょ…》《おちびちゃん…ごめんなのだ…》《ままずん……てもあしも…ぜんぶきりとられたのだ…》
吸引機と繋がった巨大な収集ボックスの中には、全てを奪われたずんだもん達が数百匹放り込まれていた。
『さてさて咲田様！？これを一定条件下で腐蝕させると、なんとですねぇ…高級肥料になるんですよ！
防虫、防病、防草、そして何より適度な栄養価。全部補ってくれる最高の肥料にね！』
『…胴体以外は栄養価が過剰で、肥料にすると雑草による被害が拡大し、それが害虫被害、病気を連鎖的に引き起こすため先に切り落とし…
飛行気管は逃げられないようにするために切り落とし…
生殖器は万が一繁殖されると困るから切り落とす…
ということですか？』
『ええ！まさにその通りです！とはいえ、欠点もありましてね。「これ」にはとある条件を満たした餌を与えないといけないんです。
肥料にするならば、適切量の栄養が蓄えられた死骸を作らねばなりませんから。
しかしご安心を。その死骸を作るのにピッタリの餌があるんですよ。
それこそが、「生ゴミ」と「土」です！
生ゴミは栄養を与えながら食中毒で殺せるので、栄養価の高い屍を作るのに最適なんですよ！
土は言わずもがな、微生物が目当てです。死骸を分解させ、栄養価を土に還元させます。
咲田様には、生ゴミを予め溜めておくように頼んでおりました。ダストボックスの中身、頂戴致します。そう、これです。これを餌にするんですよ！それっ！喰え！ふふふっ！』
ガサッ！
《くちゃいよー！なにするのだー！》
《ああぁあ！いちゃい！きずにしみるのだぁぁ！》
『あぁ…傷口から雑菌が入りますねぇ…痛そう❤』
『うっ』
確かに飼い猫を殺され、畑を荒られ、怒りが収まらないのも事実である。
しかし、この光景を目の当たりにして、咲田は既に後悔し始めていた。
感情に任せて悪魔と契約してしまった自分を。
【面白半分に四肢を切り落とし、生ゴミを最後の晩餐に、畑の肥やしにする。】
それは、面白半分に飼い猫を殺したずんだもん達と、やっていることは全く変わらないのだから。
『最初は妖精達も生ゴミを口にしないかもしれませんが、半日も経過すれば食べ始めます。
共食いで食い繋いで、生ゴミを何時まで経っても食べないリスクも最小限です。
不衛生で歯がズタボロになっていきますし、そもそも四肢も飛行気管も切られているので仲間への襲撃が難しい。
とても共食いなどできないのです。』
悪魔は、意気揚々と解説を続ける。
『こうして、土と生ゴミを足していって微生物が死骸を分解しきったところで肥料の完成です。
普通に生ゴミを分解して堆肥を作るより、妖精の死骸を分解する方が分解効率が良いみたいで、生ゴミ式の堆肥より短時間で完成します。
素晴らしいシステムだと思いませんか…！？駆除しつつ堆肥にもなるなんて！
実は私も、このシステム使ってるんですよ？家庭菜園用の肥料作りに。
まぁ…肥料だけが目的では無いのですがねぇ…ふふふ…！』
《かえちて…もりにかえちて…》《いちゃい…いちゃいよ…》
『あら？食べないんですか？しょうがないですねぇ…スイッチオン！』
ｼｭﾀﾀﾀﾀﾀｯ！
《あぎゃぁぁぁぁ！いちゃいいいいい！！》《やめちぇぇぇぇ！！》《うぎゃ！》《いてっ！やめちぇ！》
『咲田様、どうしても生ゴミを食べなかったときのお仕置装置です。ずんだもんに向けて、土のツブテが、エアガンの要領で射出されます。
皮膚に傷が入るくらいの威力はあります。お仕置きと土の補充が同時にできますぞ！』
咲田はゾッとしていた。これが従業員にずんだもんを採用する会社の提供だということに。
『…凄いですね。
これで私の飼い猫も浮かばれます、ええ。もしや、社長のご自宅にもこれと同じものが？』
『ええ…これがそのまんまありますよ…！お仕置スイッチを押すのが日課なんです…！』
《もう…いや…なのだ…ひどいのだ…》
『あぁ！可愛い…！』
悪魔の顔は、悦びに満ちていた。
咲田の顔は青ざめていた。
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このページへのコメント
うん。やっぱりこの社長、言動はともかくとして仕事自体は結構合理的にやってますね
害獣への制裁、将来的な被害の予防、更には肥料として損害への補填まで一気にやってしまうとは
その残虐鬼威惨な言動がイメージ悪いだけで
※大事なことなので（ｒｙ
飼い猫が『不慮の事故』で死んだならまだしも
このゴミ虫共に『面白半分』で殺されてるなら、これくらいやって当然。
咲田さんの気持ちもわからんでは無いが、
今ここで始末しとかないと次は咲田さん自身が標的になる。
そうならないようにする為なら手段なんて選んでられない。一網打尽にするならこの『悪魔』やり方が最適解。
……確かに人間もずんだもんも愚かで邪悪なのは間違いないだろう。
だとしても、この世に｢同じ邪悪｣が2種類もいては駄目だ。これはアイツらから仕掛けた｢戦争｣にして｢生存競争(競合)｣……奴らが遊び半分で残酷で凶悪な被害を出し続けるならこっちだって倍以上に残酷な制裁で返してやるだけだ、日本の野山からずんだもんが消えるその時まで……。
……まぁとにかく、田畑を食い荒らし動物の命も無償に奪う凶悪非道な野良ずんだもん共を生きたまま｢たりない｣にしたあげくコンポスト兼肥料として生き地獄を味わせるとは最高ですなぁwww!!!
ずんだもんが自分が強いと勘違いする要因は、相手が抵抗しない(隙をつく)、たった1回の勝利、武器を用いた、仲間と協力したのこれらを一個人の力でやり遂げたと思い込むところ。
だからこそ、これまでの例でも武器を持たずに一匹だけで強い相手に挑み敗れる。
人間風の鳴き声なだけで受けた被害を考えれば当然の末路だと思う。
現実でも実害を出すようになった熊は始末すふのが基本。ずんだもんも猫を殺すことを覚えた以上、更なる被害は予測可能。
『血桜 襲~』時の様に次は咲田さん、そしてゆくゆくは人間達がまた標的となってしまう。
あんな悲劇を繰り返さない為にも、ここで一匹残らず肥料にしてやるのが適切。