鎬‐切刃

鳥人系魔族内で作られているある部族の長の息子
忌み子は間引かれて然りだが、長は忌み子として生を受けた彼のことを面白がって「コイツを次の長としよう」とのたまった
長に決定権があるので深く追及はされなかったが、当然ながら忌み子が次期長になることを認めていない者の方が多く、針の筵のような日々を過ごしていた
彼もその状況を理解しており、忌み子として生を受けたことへの劣等感を燻らせながら、射手の腕を鍛え続けた。それが自分の得手であると自覚していたから

ある日、長である父は自分達の部族に抗争をふっかけ敗北した部族から忌み子の女性を連れてきた。その部族の長の娘であったセミジェダを、同じく忌み子である自分と婚姻させるためである
曰く、「部族の長であった彼女の母が狂うように愛した娘が、敵部族の忌み子の妻にされるというのは屈辱だろう？　その上孕まされたならなおのこと屈辱だろう」と
その言葉を聞いて「なるほど、彼女に自分の子を孕まさせることが俺に提示された使命か」と理解し、彼女を自分のねぐらに連行して手籠めにした。そこから彼の執着に近い彼女との時間が始まったのだった

しかし、その生活も父がヒト族の勢力圏に喧嘩を吹っ掛けたことで返り討ちに遭ったことで終幕を迎える
あろうことか軍部に喧嘩を吹っ掛けたことで部族は徹底的に壊滅された。たまたま彼は外出の要件があったから難を逃れたが、滅んだ故郷の慣れの果てを見て傷心することはなく、ただねぐらの確保を考え放浪を始める
心のどこかで昏い執着の矛先となっていたセミジェダの存在を気にかけながら、彼はヒト族の勢力圏に足を延ばし冒険者として生活することとなる