最終更新: sen_no_risho 2009年05月24日(日) 21:35:42履歴
MACDは、英語のMoving Average Convergence/Divergenceの頭文字を取っており、訳せば「移動平均収束発散」となる。
読むときは「マック・ディー」と読むのが普通なようだ。
ただ、英語のほうを見ると分かるように、「MA(移動平均)」の「C(=収束具合)」と「D(=発散具合)」を求めたものだ、と分かる。
そう、“MACD”の中のMAは、移動平均のMAである。
ものによっては、Moving Average Convergence/Divergence Trading Method(移動平均収束発散取引方法)と書くものもある。
その名の通り、MACDはMAと関係があるのだが、実際にはMAでなくEMA(指数移動平均)のほうと関係がある。
そもそもMACDとは、
「2つの異なるEMA(指数移動平均線)について、短期EMAと長期EMAとの差(乖離)を計算したもの」
だ。要は、
MACD=短期EMA−長期EMA
で計算される2つのEMAの差だ。
そのため、MACDを理解し、利用するためには、その前にMAとEMAについて是非理解しておいて頂きたい。
もし、皆様の中で、第十六夜のMAと、第十七夜のEMAをまだ読まずに今回のMACDのトピックをお読みになる方がいらっしゃったら、是非、先にMAとEMAの回をお読みになってから、こちらを読んで頂ければと思う。
「MACD=短期EMA−長期EMA」で定義されるMACDの使い方としては、
・MACDがマイナスからプラスに行くとき、
ゴールデンクロスと言い、相場は上昇トレンドに入る(買いシグナル)。
・MACDがプラスからマイナスに行くとき、
デッドクロスと言い、相場は下降トレンドに入る(売りシグナル)。
と考える。
だが、MACDは、短期EMA−長期EMAのことであったから、上記の関係は言い換えれば、
・短期EMAが長期EMAを下から上に抜けるとき、
ゴールデンクロスと言い、相場は上昇トレンドに入る(買いシグナル)。
・短期EMAが長期EMAを上から下に抜けるとき、
デッドクロスと言い、相場は下降トレンドに入る(売りシグナル)。
と言っているのと同じことだ。
これはとりもなおさず、第十六夜で紹介したMA(移動平均)の使い方と同じだ。
(第十六夜では、短期線・中期線の関係として書いたが、同じことである)
要するに、MACDは、短期EMAと長期EMAのクロスする様子を知るために、「短期EMA−長期EMA」を計算しておき、これがプラスかマイナスか、ゼロを横切ったか、でトレンドを判定するようにしたものだと考えれば良い。
短期EMAと長期EMAが一致する(収束する=Convergence)ときは、MACDはゼロであるし、これがまた離れる(発散する=Divergence)ときは、どちらが上にいるかでMACDはプラスだったりマイナスだったりする。移動平均の収束具合、発散具合を見ているので、MACDという名前になったと考えれば良い。
ただ、“どういうわけだか”、MACDは、MA(移動平均)ではなくEMA(指数移動平均)を使うところがポイントである。EMAのほうが、MAよりも早い段階でシグナルを発生させる、という特徴にもよるようだ。
そういう意味では、MACD(移動平均収束発散)ではなく“EMACD(指数移動平均収束発散)”と命名したほうが混乱が少なかったのではという気もする。
チャートにMACDを描くときには、3つのパラメータを指定することが多い。
「短期」「長期」「シグナル」だ。
短期・長期は、「短期EMA−長期EMA」でMACDを計算する時の短期EMA・長期EMAの「期間」だ。期間とは、ローソク足の本数のことである。
通常、短期EMAには「12」を、長期EMAには「26」が用いられる。
(短期に「5」、長期に「10」を使うこともあるらしい)
MACDの使い方は、既に紹介したが、まずは単純に、MACD=EMA12−EMA26 の値として
・MACDがマイナスからプラスに行くとき、
ゴールデンクロスと言い、相場は上昇トレンドに入る(買いシグナル)。
・MACDがプラスからマイナスに行くとき、
デッドクロスと言い、相場は下降トレンドに入る(売りシグナル)。
とする。
この見方は普通にMA(移動平均)の場合でも使う見方であって特別なものではない。
また、この使い方をするときは「シグナル」というパラメータは使わない。
MACDには、もう1つの使い方がある。
それは、少しややこしくなるが、上記のようにして求めた「MACD=短期EMA−長期EMA」に対して、「MACDそのものを『シグナル』で指定した期間で移動平均をとったもの」と、MACDとを比べる、という方法だ。
これは、実勢レートがMA(移動平均)を上抜けるか下抜けるかでトレンドを判定したように、
「MACDが、MACDの移動平均を上抜けるか下抜けるかを見る」
という意味だ。
この、MACDを移動平均したものを「(MACDの)シグナル」という。
不思議なことに、MACDを計算するときはEMA(指数移動平均)を使ったのに、シグナルを計算するときは、MACDのMA(普通の移動平均)をとる。
ここら辺に、何となく釈然としないものを感じるのだが、定義としては、シグナルはMACDの移動平均線なのである。
これを使うと、
・MACDがシグナル(MACDの移動平均線)を下から上に抜けるとき、
ゴールデンクロスといい、相場は上昇トレンドに入る(買いシグナル)。
・MACDがシグナルを上から下に抜けるとき、
デッドクロスといい、相場は下降トレンドに入る(売りシグナル)。
と解釈される。MACDがゼロを通過するかどうか(=短期EMAが長期EMAを横切るかどうか)で売買サインを見るよりも、MACDがシグナルを通過するかどうかを見たほうが、早い段階で売買サインが出るようだ。
なお、MACDを計算するときの3つのパラメータで
●短期=12
●長期=26
を指定したときは、教科書的に
●シグナル=9
を指定する。
短期EMAの期間が12、長期EMAの期間が26が良い理由は経験的なものと思われるが、これらの組み合わせのときシグナルの期間が9が良いのは、どうやら、EMA12のウェイトとEMA26のウェイトの大小が逆転するのが当日から遡って9日前、というのと関係あるかも知れない。
(当日から9日前より新しいほうはEMA12のほうがウェイトが大きく、9日より過去のほうはEMA26のほうがウェイトが大きい)
(短期=5、長期=10、シグナル=5、というものも見られる)
なお、日足チャートなどにMACDやMACDシグナルを描画するときは、単に、チャートのテクニカル指標を描画する機能で、「短期(12)」「長期(26)」「シグナル(9)」を指定しさえすれば、チャートと上下にならんで、MACD専用の描画スペースにMACDとシグナルの線が出るだろう。
(MACDは、EMAの「差」なので、実勢レートと同じグラフに表現できない)
EMAの難しい計算やMACDの移動平均でシグナルを求めるところは、コンピュータが勝手にやってくれるから、使い手はパラメータを設定するだけで、あとは適切にMACDを読み取れば良い。
・MACDがプラスか、マイナスか、ゼロを横切るか。
・MACDがシグナルを上から、あるいは下から横切るか。
・MACDがシグナルを横切る位置は、ゼロに近いか、ゼロから離れているか。
あたりがポイントのようだ。
ただ、短期に「12」、長期に「26」、シグナルに「9」を入れるのが慣わしとはいえ、それらがどう物理的意味があるのかは良く分からない。
また、期間の異なる指数移動平均を取ったものの差分を計算し、これをまた移動平均を取る・・・という複雑な操作を繰り返した結果、やや凝ったものとなり、それ自体のもつ物理的意味はさらに曖昧になっている、という点は、注意しておいて欲しい。
MACDは、短期EMAと長期EMAの差であったから、これがマイナスのままであるということは、下降トレンドが継続中といえる。反対に、プラスのままであるときは、上昇トレンドが継続中といえる。
また、相場がもみ合いに入ると、レートはあまり変わらなくてもMACDは急速にゼロに向かっていき、トレンド解消という形になる。
また、短期EMAと長期EMAが大きく離れるような場合は、MACDもシグナルもゼロから大きく離れることになる。このように、両者がゼロから遠く離れたところでゴールデンクロスしたりデッドクロスしたりする場合は、市場の過熱感を表しているとも言われる。
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