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千のFX千夜一夜 第六夜 〜 通貨ペアとは

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第一夜第二夜第三夜にかけて、最初は取引通貨をリンゴに見立て、「リンゴ円」(円でリンゴを売買する)というポジションを例にとってFXの通貨取引を見て頂いた。

実際の為替取引はリンゴではなくドルやユーロであり、2つの国の通貨を「交換」して行うものであるから、何と何を交換するのか、必ず2つの通貨を明らかにする。

例えばドルと円の交換(為替)であれば「ドル円」と表記し、このように2つの通貨を並べて書いたものを「通貨ペア」と呼ぶ。

今回は、この「通貨ペア」について考えてみよう!

あなたが「ドル円のロングポジション」を持ったとき、あなたは、

 “ドルを買って円を売る”

ということを行っていた。
(ここでは第二夜第三夜で書いたFX会社との貸し借りは省略し、為替市場で行っている通貨の交換のみ着目する)。

この“ドルを買って円を売る”というポジションを、「ドル円の買いポジション」「ドル円のロングポジション」という。この辺、詳しくは第一夜を参考にして頂ければ幸いである。

ちなみに、

 “ドルを買って円を売る”

というのは、

 “ドルをロングして円をショートする”

と言ってもよい。つまり、

 「“ドル円”のロング」=「ドルロング&円ショート」
             =「ドル買い円売り」
ということだ。

イコールの右側は、ドルや円といった通貨そのものを売買する表現、イコールの左側は、「ドル円」という「通貨ペア」についてこれをロングするかショートするか、という表現になる。

通貨ペアの左をA、右をBとすれば、

 「“AB”のロング」=「Aロング&Bショート」=「A買いB売り」
 「“AB”のショート」=「Aショート&Bロング」=「A売りB買い」

ということになる。先程の例は、Aがドル、Bが円の場合だ。

ちなみに、この場合のA取引通貨B決済通貨と呼ぶ場合もある(BAを売買する、という感じ)。

また、「ドル円=90」のようにレートを付けて書いたときは、

 「ドル/円=90」(割り算)
 つまり、「1ドルの価値/1円の価値=90」
 つまり、「1ドルの価値は、1円の価値の90倍」
 つまり、「1ドルの価値は、90円の価値」
 つまり、「1ドル=90円」←これは一般的な言い方

ということだ。

同じように、「ユーロドル=1.25」であれば「1ユーロ=1.25ドル」あるいは「1ユーロ/1ドル=1.25」のように捉える。

この「分数(割り算)の捉え方」は、後述する「合成通貨」の考え方で便利なので覚えておこう。

さて、「ドル円のロング」は、“ドルを買って円を売る”であったが、これは

 “円を売ってドルを買う”

と言っても同じはずだ。とすると、仮に「円ドル」なる通貨ペアの呼び方があったとすると、

 “円を売ってドルを買う”=「円ドルのショート」

と言っても良いことになる。

つまり、

 「ドル円のロング」=“ドルを買って円を売る”
            =“円を売ってドルを買う”=「円ドルのショート

だから、「ドル円」という通貨ペアは、「円ドル」で考えても構わない。(ロングとショートは逆向き)

とすると、なぜ「ドル円」という順序で呼ぶのだろうか? 日本人にとっては大変分かりやすい順序だが、海外でも「ドル円」なのか?

ある2つの通貨を並べるときどちらを先に呼ぶかは慣例があって、基本的に、世界中同じように呼ぶ。

ドルを含む通貨ペア: これらを「ドルストレート」と呼ぶ。ドルは基軸通貨なので、どの通貨もドルと直接結びついた取引ができる。

ドル円もドルストレートの一種であるが、普段はドルストレートと言うとドル円以外のものを指すことが多い。

これらは、基本は、「1ドルいくら」(1ドルが、他通貨で何通貨になるか)で表す。つまり、ドルは必ず通貨ペアの左に来る。

メジャーな通貨でこのような表しかたをするものは
 「ドル円(USDJPY)」
 「ドル加ドル(USDCAD)」
 「ドル・スイスフラン(USDCHF)」
 「ドル・南アランド(USDZAR)」
などがあるが、他にも、メキシコ新ペソ(MXN)、韓国ウォン(KRW)、ノルウェークローネ(NOK)など、多くのものでドルは通貨ペアの左に来る。

しかし、ドルストレートには例外もあって、
 「ユーロドル(EURUSD)」
 「ポンドドル(GBPUSD)」
 「豪ドル米ドル(AUDUSD)」
 「NZドル米ドル(NZDUSD)」
は、ドルを通貨ペアの右に置く。つまり「他通貨1単位が、何ドルか」(ユーロなら、1ユーロは何ドルか)で表す。

これらはメジャー通貨であるせいで、一見、ドルが通貨ペアの右に来るほうが印象が強いのだが、これらの方がむしろ少数の例外だ。

このように、ドルを含む通貨ペアでは、ドル買い・ドル売りに対するレートの変化の方向が異なるので注意して欲しい。

例えば、ドル円で、急なドル売りが発生すると、ナイアガラと称して急落を見ることができる。

同じように、ユーロドルでもドル売りが発生したとすると、ユーロドルではナイアガラではなく「爆上げ(急騰)」だ。

「ドル円の売り」はドル売りだが、「ユーロドルの売り」はドル買いなのだ。

ドル円でナイアガラが起きている時、それがドル売りなら、ユーロドルでは爆上げが起きているかも知れない。
(ただしドル売りでなく円買いなら、ユーロドルは特に動いていないかも知れない)

次に、円を含む通貨ペアは、メジャー通貨では円は右に来ることが多い。これは、1円という単位がメジャーな通貨に対して非常に小さい、ということもあるだろう。円を単位にした方が数が小さすぎずに済む、という点もあるようだ。

例えば、ドル円であれば90と表示できるが、円ドルだと「1円=0.011ドル」のように数値が小さくなって不便だ。

円を含む通貨ペアは、
 「ドル円(USDJPY)」「ユーロ円(EURJPY)」「ポンド円(GBPJPY)」「豪ドル円(AUDJPY)」
 「NZドル円(NZDJPY)」「加ドル円(CADJPY)」「スイスフラン円(CHFJPY)」「ランド円(ZARJPY)」
などである。

このうち、ドル円以外のものは全て、ドル円とドルストレートとの合成で作れることから「クロス円」と呼ばれる。

流通量からして、直接取引きがあると言えるのはユーロ円くらいで、ポンド円をはじめとするクロス円は元来、直接の取引はなく、ポンド円を取引したいと思ったら、基本的にはドル円とポンドドルの2つの取引を同時に行う

他にも、ドルを含まない通貨ペアは全て、ドルを介して結びつけることが可能だ。このような考えを「合成通貨」と呼ぶ。

ここで合成通貨のレートの考え方、ロング・ショートの考え方を書いておこう。先程、通貨ペアのレートを割り算で考えると良いと書いた。

「ドル円=90」は「1ドル/1円=90」だ。
同じように「ポンドドル=1.5」は「1ポンド/1ドル=1.5」だ。

とすると「ポンド円」は上の2つをどう合わせれば良いだろうか? 基本的には、ドルが消えるようにすれば良い。

「1ポンド/1ドル」×「1ドル/1円」を計算すれば1ドルが消えて「1ポンド/1円」つまり「ポンド円」となる。

ドル円=90、ポンドドル=1.5なら、ポンド円はこれらを掛け算して135だ。

ドルが通貨ペアの表記の左右どちらかでレートを掛け算するか割り算するか変わるが、通貨ペアのレート自体が2つの通貨の価値の分数と考えれば、どっちにすればドルが消えるか分かるだろう。

また、「ポンド円」のロングをするには、「ドル円」と「ポンドドル」をどうポジれば良いだろう?

「ポンド円のロング」とは、“ポンド買い円売り”であった。

この間に、ドルの売買を挟めば良い。

つまり、“ポンド買い円売り”⇒“ポンド買いドル売りドル買い円売り”
⇒“ポンド買いドル売り”と“ドル買い円売り”
⇒「ポンドドルのロング」と「ドル円のロング」

となる。

(ただし、ポンドドルは1Lot=1万ポンド、ドル円は1Lot=1万ドルになるため、1Lotずつポジっても数量がマッチしないことに注意。ポジの方向の概念のみ示したものだ)

合成通貨の考え方は、自分のFX会社では扱っていない通貨ペアを持ちたいときに、ドルやユーロを介した2つの通貨ペアで代用する場合に使えるだけではない。

様々な通貨ペアを「異種通貨のヘッジ」という形で保有している人は、いくつかのポジションは合成通貨の考えで、ポジションをもっと整理統合できる可能性もあるので、一度チェックしてみて欲しい。

さて、ドル円は、アルファベットでUSDJPY、ユーロポンドはEURGBPのように、6文字のアルファベットで表すことがある。これらは3文字ずつの通貨の略号を並べたものだ。

例えば米ドルはUSD、日本円はJPYといった具合で、これらはISO(国際標準化機構)の規格で決められている。

国名2文字+通貨名1文字のものが多い(ユーロは国が多いこともあり、国名は使わずEURで表す)。

主なものは以下のような具合である。

 USD 米ドル US Dollar
 EUR ユーロ Euro
 JPY 日本円 Japanese Yen
 GBP 英ポンド British Pound(GBPのGBはGreat Britain=大英)
 CHF スイスフラン Swiss Franc(CHFのCHはラテン語Confoederatio Helvetica=スイス連邦)
 CAD カナダドル Canadian Dollar
 AUD 豪ドル Australian Dollar
 NZD ニュージーランドドル New Zealand Dollar
 ZAR 南アフリカランド South African Rand(ZARのZAはオランダ語Zuid-Afrikaanse=南アフリカ)
 HKD 香港ドル Hong Kong Dollar
 SGD シンガポールドル Singapore Dollar
 TRY トルコ・新トルコリラ Turkish Yeni-Turk-Lirasi
 MXN メキシコ新ペソ Mexican New-Peso
 BRL ブラジルレアル Brazilian Real
 ZWD ジンバブエドル Zimbabwe Dollar

他にも、通貨に準じるものとして、Xで始まる記号で金(XAU)、銀(XAG)、プラチナ(XPT)なども規定されている。例えば、ドルベースの金相場は「XAUUSD」という具合に表されている。

通貨ペアは、これら3文字の記号を並べて書く。名前も通貨名を並べて言えばよいが、ものにより固有の名前を持った通貨ペアもある。メジャーなものも含め、見てみよう。

( )内は、俗に呼ばれる言い方である。(他にも言い方はいろいろあるようだ)

USDJPY ドル円
EURJPY ユーロ円 (ユロ円)
GBPJPY ポンド円 (ポン円)
AUDJPY 豪ドル円 (オージー円)
NZDJPY NZドル円 (ニュージー円、キウイ円)
CHFJPY スイスフラン円 (スイス円、スイ円)
CADJPY 加ドル円
ZARJPY ランド円
EURUSD ユーロドル(ユロドル)
EURGBP ユーロポンド (ユロポン)
EURCHF ユーロスイスフラン (ユロスイ)
GBPUSD ポンドドル (ポンドル、ケーブル)
GBPCHF ポンドスイスフラン (ポンスイ)
USDCAD ドル加ドル
USDCHF ドルスイスフラン (ドルスイス、ドルスイ)
USDZAR ドルランド

といった具合である。

この中では、「ケーブル」(=GBPUSD、ポンドドル)が通貨ペアの俗称として特殊な印象がある。

これは以前、米英間の海底ケーブル通信で、ポンドのレートを知らせてきたことからポンドドルのレートをケーブルと言うようである。

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