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タグ検索で長編は284件見つかりました。
28 江戸川河川敷にて ／ 2015年８月中旬
※ 表題中、８月中旬とあるのは、８月初旬の誤りです。 （時間は「26」の終わりまで遡る…） 事務所のフロアーに両膝、両手をついて、春希は、自分を責めた。 一瞬、とは言えない時間、雪菜に心が揺れた。 揺れてしまった……。 �爐笋辰僂蟆兇蓮∪禳擇旅顱崙�本」に、帰ってくるべきではなかったんだ�� 絶対に埋まることのない、引き剥がされ、無惨に抉られた傷跡。 雪菜を抱きかかえた瞬間、右手から、重なった身体から、暖かい感情が、傷跡に流れ込み、一瞬、癒した。 そう、思えた。 だから、雪菜の体を、…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/28%a1%a1%b... - 2014年12月10日更新
（回想）８．５ 大聖堂にて（続き） ／ 2015年３月８日
……春希に、曜子に連絡するようお願いして、雪菜は、かずさをシュテファン大聖堂へ連れ出した。 「春希くんのことなんだけど。あ、そんなに構えて聴かなくて良いから」 「う、うん」 「春希くんは、この祭壇画の、聖シュテファンのように、殉教したいのかな」 「えっ……」 雪菜は、再び、祭壇画を見上げた。 「春希くんが聖人みたい、っていう意味じゃないんだ。 石を投げられたいと思っているんじゃないかなって」 「どういう意味？」 「春希くん、さっき、『自分の中に、無くならない罪の意識』、って、言ってたよ…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/%a1%ca%b2%... - 2014年09月28日更新
（物語の始まり）（回想） ０ 冬馬曜子の企て ／ 2013年３月中旬
「……美代ちゃん、来てたの」 「よくお眠りでした、社長」 外は、夕暮れに彩られていた。 冬馬曜子は、峰城大学医学部付属病院に、入院していた。 日本で一緒に暮らすことを望んでいた娘は、ウィーンに逃げた。 「全く、こんな時間に、こんなに長く寝てしまうようじゃ、私も終わりね」 「気弱な台詞は似合いませんよ」 「娘に逃げられた母親としては、少し気弱にもなるわよ。 ……ホントに、大失敗だったわ」 「…………」 「うそうそ。あのバカが一人前になるまでは、頑張らないとね」 「そうですよ」 「あ…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/%a1%ca%ca%... - 2014年09月22日更新
25 母と子 ／ 2015年７月下旬
セカンド・シングル『幸せな記憶』が発売された朝、雪菜は、キーボードの石川真矢とマネージャー二人を伴って、東亞テレビの朝のバラエティ番組に出演する等、プロモーション活動で忙しかった。東亞テレビでは『幸せな記憶』のアコースティック・ヴァージョンも演奏した。 どんな時でも低姿勢で、誰に対しても丁寧な言葉遣いを通す雪菜の人柄は、マスコミに好意的に受け取られていた。 峰城大学政経学部を上位で卒業した経歴も役立っていた。雪菜には、G8周辺を主に世界の政治・経済問題について、誰もが理解できるように咀嚼して簡素に説…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/25%a1%a1%c... - 2014年09月08日更新
22 依緒の思い出話 ／ 2013年７月初旬
居酒屋を追い出された後、水野と友近は帰途に付き、春希は武也を開桜社時代の行きつけのバーに連れて行き、女五人は、雪菜の隠れ家たる西御宿のジャズ喫茶に向かった。 例の奥の部屋で女五人は、アイス・ティーを飲みながら、しゃべり続けていた。 強過ぎるパンチの代償として、右手の拳と両目を腫らした依緒のことを責めるものはいなかった。 氷で拳を冷やしながら、依緒は「武也の言った、私生活の頑張りって、何なんなんだ」と、独り言ちた。 「うふふ」雪菜は、微笑む。「なんだろう、ね」 「部長は、依緒を好きなんだろ」 …
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/22%a1%a1%b... - 2014年07月05日更新
21 納涼会＋千晶の誕生会 ／ 2015年７月初旬
セカンド・シングル『幸せな記憶』は、無事、冬馬曜子オフィスの手を離れ、7月末の販売を待つだけになった。録音から一か月で販売に乗せるというのは、生産ラインやプロモーションの関係からもありえないことだが、何とかやり終えた。 ミックス・ダウンには、本当に手こずった。 ……「えと、山口さん、サビはギター、もっと全面に出してもらえますか」 「かずさ、何言ってるの。ピアノ、もっと聴こえるようにしないとダメよ」 「雪菜、ここはあたしの言うことを聞いておけ。絶対ギターが前の方が良い」 「ダメだよ。ここは譲らな…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/21%a1%a1%c... - 2014年06月06日更新
20 雪菜に恋する男 ／ 2015年６月下旬
「「どうしても駄目かな？ かずさ……」 曜子が手を合わせて頼む。 「絶っ対に嫌。何であたしが政治パーティーなんかに顔出さなきゃいけないの」 「かずさ。俺も知らない人間、しかも政治家ばっかりの集まりにお前を連れて行くのは本当に嫌なんだけど、昔、曜子さんがお世話になったことのある人で、その人の衆議院議員退任記念パーティなんだ」 「はっきり言うと、生前葬ね」 「生前葬？」 「癌で、もう、あまり長くないらしい。 子供の頃、よく美味しいもの食べに連れて行ってくれた、ただの気さくなおじさんなの。 本…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/20%a1%a1%c... - 2014年05月31日更新
18 心の中に降る粉雪 ／ 2015年６月初旬
家族三人による食事を終えた後、リビングのソファーに身を委ねて、食器を洗う春希の背中を見ながら、かずさは、少し、複雑な思いを抱いていた。 �犢�せだ……。信じられないくらい。 三月前まで、日本に帰るなんて、考えてもいなかった。 帰って来て、心配だった母親の側で暮らして、そして、愛する男が側にいてくれる。自分にとって、誰とも替えることのできない二人が、側にいてくれる。 それだけでも、十分幸せなのに、裏切って、深く傷つけてしまった親友が、あたしを許し、側にいてくれる。それどころか、微に入り細に入り気を使…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/18%a1%a1%b... - 2014年06月06日更新
17 二人のための打ち合わせ ／ 2015年６月初旬
「今回の録音について、当社から提案があります」と、春希は切り出した。 午前の早いうちから、西御宿の事務所で、かずさと春希は、ナイツ・レコードのかずさ担当プロデューサー、レコーディング・エンジニア、そして、帝都フィルのマネージャーとともに、かずさの新録音について打合せていた。 かずさの新録音は、帝都フィルとの競演。 演目は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番と、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。 初めての、コンチェルト録音。 かずさから最初に提案された時、クラシックに知識の薄い春希でさえ、「ス…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/17%a1%a1%c... - 2014年05月12日更新
16 依緒とかずさ ／ 2015年６月初旬
「おっと……。もうこんな時間か」 「ホント。あっという間に過ぎちゃったね」 「まあ、今日は捗った」 「そうだね。今日も楽しかったよ」 かずさと、雪菜は、週に二回、共同作業を続けていた。一日当たり四時間程度しか取れなかったが、二人にとって、今の所、もっとも充実した時間だった。 基本的に、歌詞は主役の雪菜にお任せ。作曲はかずさが主に行うが、雪菜の意向を受けて行く。雪菜は、かずさの作曲の過程に付き添って、思うことを述べ、かずさが修正を加えつつ、形にしていくというスタイルだ。 最初の新曲は、歌詞もほ…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/16%a1%a1%b... - 2014年09月25日更新
15 共同作業 ／ 2015年６月初旬
春希が冬馬邸の扉を内側から開けると、そこには軽く変装した雪菜がいた。 「今晩は、春希くん。この前は、ごめんなさい」 ギターを背負った雪菜は、少し恥ずかしげに、微笑んだ。 「何のことだったっけ？ それより、夕食、食べるよな」 「うん。ありがとう」 �猝曚辰討討�れたんでしょ�� 「雪菜〜、待ってたよ。早く春希の作った不味いカレー食べようよ」 リビングから、かずさの声が聞こえた。 ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ 「しかし、なんなんだろうな、あれは……」 「春希くん、何だか、娘の部屋にボーイ・フレンド…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/15%a1%a1%b... - 2014年05月11日更新
14 バンド打ち合わせ ／ 2015年６月初旬
「学園祭ツアーの日程は、11月１日・日曜日・仙台・伊達大学。11月２日・月曜日・青泉大学。11月 ３日・火曜・文化の日・峰城大学。11月21日・土曜日・名古屋・名京大学。11月23日・月曜日の振替休日・広島修学大学。11月28日・土曜日・福岡・筑豊大学。11月29日・日曜日・京都・同心社大学……か。 七回は思ったより、多いな。それに、最終日がちょっと厳しそうだ」 春希は、御宿のオフィスで、松岡純夜からのメールを確認していた。 雪菜は、この日程で大丈夫なんだろうか。小木曽雪菜としての、全国ツアーの最…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/14%a1%a1%a... - 2014年05月05日更新
13 かずさの誕生日 ／ 2015年５月28日
その日は水曜日だった。家族三人だけで、ひっそりと、冬馬邸でかずさの誕生日を祝う予定だった。 雪菜にも声はかけていなかった。 ビデオ・レターで見た、雪菜の誕生日会は、楽しそうだった。だが、あそこで笑顔を見せていた友人達が、かずさや春希の誕生日に、同じ笑顔を見せてくれることは無いだろうと、二人は考えていた。 春希は高等部と大学時代、武也と依緒が祝ってくれたし、四回生の春からは雪菜と二人の誕生日会も二回程あった。 しかし、かずさは、高等部時代から、友人達はおろか他人と誕生日を過ごしたことはなかった。 …
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/13%a1%a1%a... - 2014年05月05日更新
12 オフィス経営会議 ／ 2015年4月上旬
４月上旬の週中の午前、雪菜と美代子が冬馬宅を訪れた。 ウィーン旅行の強行が祟ったのか、曜子の体調は芳しくなかった。自分の著作権の管理はもとより、タレント二人の企画、スケジュールの企画、立案や著作権の管理を事細かに行える程の体力は無くなりつつあった。 だが、そのタレントのうち、一人は一枚目がミリオン・セラーになったとはいえ、戦場は流行り廃りの激しいJ-POP。もう一人はヨーロッパで実績を積んできたが、ちょっとした壁の前いた。つまりオフィスの未来は、タレント二人の今年の企画に大きく左右されることは間違い…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/12%a1%a1%a... - 2015年06月22日更新
11 定期受診 ／ 2015年４月上旬
「お待たせしました。小木曽さん、診察室にどうぞ」 多くの外来患者が引けたウィーク・デーの昼過ぎ、峰城大学医学部付属病院の内科外来に、雪菜はいた。 「失礼します。水野先生、こんにちは」 「こんにちは。雪菜さん。体調は、問題ないですか？」 「そうですね。特に変ったところは無いです」 「尿検査ですが、特に異常な数値は出てません」 「良かった〜」 「ということで、エコー、しましょうか」 「はい」 雪菜は、上の服を脱ぐ。下着は付けたままで大丈夫。 「ホントは、泌尿器科の専門医の方が良いんだけ…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/11%a1%a1%c... - 2015年06月22日更新
10 千晶の襲撃 ／ 2015年３月上旬
帰国してから、春希は飯塚武也に会った。御宿で会って、例の居酒屋で飲んだ。 二年前の決別の日、武也は春希を軽蔑する、と言った。 しかし、再会した武也は、春希を一言も責めなかった。 本当に今でも「親友」なら、嫌なことを一番に言ってくれるはずではないのか。 春希にしてみれば、「どの面下げて帰って来た」と怒鳴りちらされた方が、救われた。 嫌な思いをさせたことを、謝りたかった。雪菜の側にいてくれて、「ありがとう」と言いたかった。 だが、武也は、春希を責めなかった。その代わり、未だに腹を割って話す、とい…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/10%a1%a1%c... - 2015年06月22日更新
９ かずさのテレビ出演 ／ 2015年３月上旬
「こんにちは。東亞テレビ、アナウンサーの柳原朋です。 今日、お話をお伺いするのは、とってもゴージャスなお二人です。まず、歌手の小木曽雪菜さん」 「こんにちは。小木曽雪菜です」 「そして、先日、帰国されました、ピアニストの冬馬かずささんです」 「……こんにちは」 「お一人だけでもスタッフ全員が気を失いそうに美しいのに、二人もお招きしてしまって、テレビをご覧の皆様はさぞかしクラクラしてらっしゃると思います」 収録に立ち会う春希にしてみれば、二年ぶりに見る朋も、以前に増してかなり磨きがかかっている…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/%a3%b9%a1%... - 2015年06月22日更新
８ 大聖堂にて ／ 2015年３月８日
「わたしから、二人に言いたいことは、もう、全部、言ったかな。 できるだけ早めに、回答を下さい。 それと、有能なマネージャーさん。曜子さんに、電話してくれないかな。 曜子さん、今日の夕食、ごちそうしてくれるって。 わたし、とっても期待してるんだよね。何時から、何処に行くか、決めておいてもらえると嬉しいな」 「……分かった」 「それと、ちょっと、かずさを借りても良いかな」 えっ、と、二人は同時に言う。 「別に、とって喰おう、というわけじゃ、ないんだけどなあ」 「何……」かずさは、構える。 …
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/%a3%b8%a1%... - 2015年06月22日更新
６．５ 旧友への電話 ／ 2015年３月８日
その夜、春希は眠れない夜を過ごした。恐らくは、かずさもそうだっただろう。 翌日、春希は朝から一人で、シュテファン・プラッツのオフィスへ来ていた。 雪菜がウィーンに来る。 ビデオ・レターを見てから、自分達に会いにくるかもしれない、と思っていた。 春希は、雪菜と会う前に、あの傷に関して、知っておきたかった。だから、数時間悩んだ末、久しぶりに、二年前まで親友だと思っていた男に、連絡を取ることにした。 今は12時。日本時間は、午後8時のはず。仕事は終わっているだろうか。記憶していた番号は、変っていない…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/%a3%b6%a1%... - 2015年06月22日更新
６ ウィーンの冬馬曜子 ／ 2015年３月7日
かずさのプラハ公演は中止された。 かずさは、中止する気は無かった。だが、自分の弾いているピアノの状態を把握できない程、精神状態が不安定なかずさに替わって、春希が、デュシャーブル氏と相談して、中止を決めた。 かずさのピアノに、唯一の弱点があるとすれば、その時の感情に影響されてしまう危うさ、だろう。良い方に影響すれば、誰よりも高く飛翔できる。だが、悪い方に影響すれば、その音は輝きを鈍らせる。 かずさは、最初、怒り狂った素振りを見せたが、結局、しぶしぶ承諾した。 春希は、全てを自分の責任として、かずさ…
https://seesaawiki.jp/white_album2_ss/d/%a3%b6%a1%... - 2015年06月22日更新