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19年11月1日 合同分科会 議事録9

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○白石主査 ありがとうございました。それでは、ペーパー説明を先にさせていただきたいと思いますが、門川委員、いかがでございましょうか。

○門川委員 東京の知人から、新聞に大きくバウチャーのことが、あたかも固まったかのような報道をされているということを聞きまして、また、再生会議の事務局から資料も送ってきていただいていましたので、べらべらしゃべるよりも、私のかねてから話していることをペーパーにしましたので、それに基づいて説明していきたいと思っています。5分程度になるかと思います。

 「教育バウチャー」について、日本の教育を危うくする、私はそう思っています。

 教育バウチャーという言葉が、あたかも現在の教育課題を解決できる処方せんであるかのように一部で用いられ、ひとり歩きしていることに危惧を覚える。一般的に外国でいわゆる教育バウチャーと呼ばれている制度は、主として次の2つのタイプがあると認識しています。

 1つは、低所得者層等に対して、教育の機会均等の観点から一定の給付を行う。2つ目は、学校選択制を前提として、入学する児童生徒数の多寡に応じて学校への運営費や人件費等の配分を行い、市場原理の導入で学校を活性化させ、また、不人気校の廃校も視野に入れる。

 1のタイプは、低所得者層に対して、教育の機会均等をより保障する観点から、奨学金制度等の改革により、あえてバウチャー制度によらずとも対応が可能と考えます。

 一方で、我が国の教育、とりわけ地域に根差した均等な義務教育の普及徹底は、資源の乏しい我が国が今日まで発展してきた大きな要因であったことは明らかであり、日本の教育制度及び教育改革の方向は、その成果とともに今も世界で注視されていると思っています。京都市の教育に、アジア、欧米などからもたくさんの方が学びに来ていただいております。

 他方、現在の教育には、いじめや規範意識、道徳を初めとする課題、あるいは基礎学力の徹底した定着や1人ひとりの可能性を最大限に引き出す、伸びる子を伸ばしていくという教育内容、方法の改革など、さまざまな課題があることは事実であります。このため、これらの課題克服へ学校・教職員が自己変革を行うとともに、家庭、地域と連携を深め、地域ぐるみで、これからの日本の未来を担う子どもたちを育んでいくことが使命であります。

 また、10年、20年、50年後の社会を見つめて、今こそ国、地方自治体、地域挙げて、同時に学校、家庭、地域、さらには大学や経済界等が力を合わせて、社会総がかりでその体制を整備し、実践していくことが必要でありますし、将来的な投資の観点からも教育条件の整備充実、とりわけ教育予算の増額が求められております。

 その中で、「地域の子どもは地域で育てる」「学校が地域・保護者を高め、地域が学校を高める」「学校と家庭、地域が足りないところを批判しあうのではなく、互いに補い合い、高め合う関係の構築」、先ほどお祭りの話もございましたけれども、そうしたことを基本理念に「真に内外に開かれた学校づくり」を目指して、「当事者意識」「説明責任」「公開」「参画」「評価と改善」をキーワードに学校改革を地域ごとに大人社会の責任として推進していくべきであると思います。

 「情報の共有」から「課題意識の共有」へ。それを「行動の共有」に高め、「評価」も共有して「改善」それらを「公開」していく。今日、国の制度改革も相まって、「学校評議員制度」や「外部評価を含めた学校評価システム」、「学校の裁量権の拡大」「学校運営協議会(コミュニティスクール)」が進みつつあります。そうした地域の取り組みを十分検証して、さらにそれを推進していく必要がある、そのように思います。

 教育再生会議の役割は、将来をしっかりと見据えて、現在の教育課題を改善するために、社会総がかりで教育を充実する観点から、教育条件の充実を含め、現場を叱咤激励し、財政面の充実を含めて、真に必要な方策を提言すべきことであると思います。これまで各地域において築き上げてきた優れた教育の理念や仕組みを、地方の時代と言われている今日、他国の一部の例や、確固たる理由もなく安易に変えるべきではないと思います。

 このような観点から考えた時、いわゆる「教育バウチャー」は、我が国がまた各地域が築いてきた優れた教育の基盤を損なうリスクが極めて高いと考えます。これまで築いてきた良き教育の基盤は、ひとたび失われると回復することが容易ではないと思います。悪貨が良貨を駆逐することになりかねないと思います。また、地域の絆、地域のコミュニティの崩壊にもつながりかねないと思っています。「教育バウチャー制度」は、たとえ「構造改革特区」であっても導入することには断固として私は反対であります。構造改革特区制度そのものになじむのか、可能なのか、ということも感じます。

 社会総がかりでの教育の充実という観点から、とりわけ義務教育については、地域社会(地域コミュニティ)との連携・協力を一層高めていく方向で、子どもたちの学習環境を整えていくことが必要であります。このことは、改正教育基本法で学校、家庭、地域の連携強化ということが大きな趣旨として新たに書き込まれたところであります。

 「教育バウチャー」の実現には、すべての学校を同じ条件で児童生徒や保護者が選択することが前提になります。しかし、地域ごとにさまざまな教育課題とそれぞれに応じた方策等が必要な中で、学校選択制を導入するかどうかは、個々の地域、教育委員会の独自の判断である。これは教育再生会議の第二次報告でも、地方の判断であるということが明記されているところであります。

 特に、学校選択制を導入したすべての地域において、際立った教育の成果が見られているのかどうか、私は疑問であります。また、地域によって勝ち組、負け組といった地域をつくることになりかねず、学校選択制導入の成果と問題、課題は十分今後検証することが必要であると思います。

 地域・保護者と学校・教育行政が学校のあるべき姿を求めて、より適正な規模へ、学校統合を進めることは私は必要だと思っています。この点については、文部科学省はいささか慎重であると思います。かつて学校統合でいろんなところで紛争が起こったということもあったんでしょう。しかし、学校統合を推進していく、私はそのためのインセンティブを制度としてお願いしたいと思っています。しかし、学校の置かれている条件はさまざまであり、児童生徒数が少ないからといって、それのみをもって教育の質が悪いとは判断できないし、ましてや、そうした学校が直ちに統廃合の対象になることを一律に決めてしまうのは適当でないと思います。京都市では、この間、学校の地域性、通学区域を守りながら、58校の小中学校、伝統のある学校を14校に統合。行政が説明責任を果たして、地域・保護者が徹底した議論の末、ボトムアップで統合を提案していただき、地域や保護者、行政のパートナーシップで学校づくりを進めています。そうした中で、統合後は、以前にも増して地域・保護者と連帯が高まり、学校への支援・協力の輪も大きく広がるなど、学校を核とした地域づくりが進んでいる。このように学校統合については、地域と一体となった取り組みが重要であると思います。

 それで、児童生徒数の増減によって、またバウチャーによって、学校の予算や運営のあり方、子どもたちの学習環境に変化を招くことは、在学する児童生徒や保護者を不安にさせることになります。

 一部の学校に、教育投資が集中する結果、当該一部の学校では、ある意味において質の向上が図られる可能性もないわけではないでしょうが、学校が置かれている条件は同一ではなく、学校や地域ごとに教育条件面で大きな格差を招くことになると思います。このために、我が国の教育全体の質の向上には必ずしも結びつかないと思います。

 「教育バウチャー」制度的なものを導入しているとされている国は少数であります。たとえばEUであっても、今、EUの一体化が言われていますけれども、教育の国際化が進む中にあっても、導入する国は増加していない。そうした国においても、教育の充実が「教育バウチャー」制度の導入によってもたらされているのかどうかということも検証されていない、明確ではないと思っています。

 さらにまた高校ですが、高校教育において、未履修問題等もいろいろありました。いわゆる学力が高い生徒を集め、それで進学実績等で実績を上げる高校がある一方で、不登校の子どもを受け入れていただいている、あるいは発達上の課題のある子どもを受け入れて、地道な実践を積み重ねている高校があります。決して人気校ではありません。生徒もそんなに多くありません。そうした高校は、いわゆる人気校ではないけど、大切な教育を担っていただいていると私は思っています。教育には市場原理や競争原理を超えた価値を重視すべきである、そのように思います。

 なお、統廃合については、今、学校を統廃合して施設を新設、増築する場合は、国の補助率は2分の1ですけれども、これを4分の3ぐらいの補助率にしていただきたい。京都市では、今年、5校の中学校を1校に統合して教職員が40人減ったのに、新校舎の整備費40億円に対し、国の補助金は7億円弱でした。本来は2分の1の補助率なのに、実際は6分の1、こんな現状であります。インセンティブは全くない。これについては相当思い切った措置が必要です。耐震補強をするだけでもものすごいお金がかかるんですね。統合によって、古い学校を補強する必要がなくなる。統合によってできた子供の多い学校も、統合前の少ない学校も体育館、プールの大きさは一緒。それにもかかわらず、統合による補助金のメリットがなく、地方の財政負担が大きい。学校統合を促進するためにも、大胆な財政支援の制度化が必要であり、是非お願いしたい。結果的には大幅な財政効率化にもなります。以上です。


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2008年01月13日(日) 16:54:33 Modified by ID:foT7vCcagg




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