近年、「ヘイトスピーチ」が話題になっています。
「在日特権を許さない市民の会(在特会)」などの団体が行っている、
「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も殺す」などのプラカードを掲げ、在日コリアンに対する差別的・脅迫的な罵倒を繰り返すデモは、大手マスコミでも紹介されるようになり、徐々に関心を集めています。
こうした露骨なヘイトスピーチを知った人々の多くは眉をひそめ、「日本の恥だ」という非難も上がっています。あるいは「ああいうのは日本人のごく一部がやっているだけだ。全ての日本人が彼らと同じだと思わないでほしい」という意見もよく聞きます。
しかし、こうした
露骨な形のヘイトスピーチは、はたして「一部のおかしな人間がおかしなことを言っている」で済ませることができる問題でしょうか。
また、彼らへの批判の中には「主張には賛同できるがやり方(下品な罵倒など)がよくない」といったものもあります。はたして在特会の、そしてヘイトスピーチの問題の本質は「下品さ」にあるのでしょうか。
2013年現在、一万人以上の会員を有する
(※注)在特会が結成されたのは2006年のことですが、その数年前からネットを中心に「嫌韓(反韓)」と呼ばれる言説が目立つようになってきました。
単に「韓国が嫌い」という主張なら、好き嫌いは個人の自由ですからどうということはないでしょう。あるいは韓国(政府)の主張や政策に反対したり抗議することもただそれだけで非難されるべきことではありません。しかし
「嫌韓」言説の多くは、韓国(・朝鮮、および在日コリアン)に対する軽蔑・嘲笑・憎悪を煽るものである上、ほとんどがデマや悪質な印象操作に基づくものでした。
また、そうした言説の根拠として、韓国の主張とされる問題(いわゆる朝鮮人強制連行や慰安婦問題などの歴史問題・歴史認識)はデタラメであると主張する
歴史修正主義が利用されています。こうした歴史修正主義は1990年代半ばに
「新しい教科書を作る会」や
「自由主義史観研究会」、およびそれに賛同した
小林よしのり氏や「右派」とされる文化人・メディア・政治家などによって流布され、定着し、一定の支持を得るまでに至りました。ヘイトスピーチを考える上で、このことを抜きにしては語れないでしょう。
さらに言うなら、そうした歴史修正主義の台頭をなぜ日本(人)は許してしまったのか、という問題についても考えなくてはならないでしょう。日本(人)が戦前の植民地支配や戦争責任・戦後責任と充分に向き合うことをせず、あいまいな形で決着を回避し続けた、その「ツケ」がヘイトスピーチという形で現れたのではないでしょうか。
現在、ヘイトスピーチやネット上ではびこる「嫌韓」言説による当事者(在日コリアン)の被害は深刻なものです。一方で無知や偏見からヘイトスピーチや「嫌韓」言説を支持・拡散し、加害に加担している人も少なからずいます。
このような被害者・加害者を少しでも減らすため、このサイトは立ち上げられました。読者の方の問題理解の一助となれば幸いです。
(※注)この中には在特会に反対する立場ながら情報収集のために会員登録をしている人や、会から離れたものの退会手続きをしていない人なども相当数含まれていると思われますが、それを踏まえても無視できない規模です。