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強制的にウクライナ国外に連れ出された場合にすること(ウクライナ)


ウクライナ文化情報政策省戦略広報情報安全センターは開戦前夜の2022年2月16日に、民間防衛ブックレットを改訂するとともに、追加コンテンツ(ウクライナ語・英語・ロシア語)をウェブ掲載、順次更新を行っている。

以下は、2022/05/22 Update更新の「What to do if you were taken out of Ukraine by force?(強制的にウクライナ国外に連れ出された場合にすること)」[英語版]の訳:


強制的にウクライナ国外に連れ出された場合にすること
  • ロシアで何が予測されるか
  • ロシア入出国に関する法的要件
  • ガジェットの準備方法
  • 尋問への対処方法
  • あなたが持っている法的権利
  • 登録と書類の取り扱い方法
  • ロシアを離れる方法
  • ロシアを離れるルート
  • ロシアでのお金、チケット、通貨交換
  • 救援を申請する場所
  • ウクライナにいる場合、近くの人の強制退去について通知する場所


ウクライナ軍は、日々、占領者からウクライナの領土を解放し続けている。しかし、民間のウクライナ人は一時的に占領された領土にとどまり、ロシアへの強制避難のリスクに直面している。

可能であれば、ロシアへの避難は避けること。 しかし、あなたの生命が最大の価値であることを忘れないこと。状況に応じて行動すること。 また、ロシアの軍や政府関係者による安全と権利の遵守を保証することは困難だが、自分自身と愛する人を保護し、敵対的領域をできるだけ早く離れるために、取れる措置がある。


ロシアで何が予測されるか

ウクライナ人活動家は、ロシアへの入国の際に、ウクライナ人はガジェットをチェックされ、指紋を取られ、検索され、尋問されることさえあると報告している。過激主義などで、事件を捏造されるリスクがある。したがって、疑惑や告発を避けるために、可能な限りのことを行う必要がある。


ロシア入出国に関する法的要件

法的な観点から、誰もあなたにロシアに留まることを強制したり、あなたにロシア市民権取得を強制できないことを忘れないこと。1997年のロシアおよびウクライナ市民のビザなしの旅行に関するロシア連邦政府とウクライナ政府との間の合意によると、ウクライナ市民は、ビザなしでロシア連邦の領土に出入りし、本人を特定し市民権を証明する文書(ウクライナのパスポート、外国のパスポート)とともに移動できる。

協定第3条に従い、ロシア連邦は、海外旅行に有効な書類(外国のパスポート)に基づいて、国際旅客サービスに開放された国境の検問所を通じて、ウクライナ市民が第三国に行くことを許可することを約束している。そしてこのことは、占領国の領土をすぐに離れることができることを意味している。

2022年3月5日のロシア連邦大統領令によると、有効な外国のパスポートを持っていれば、ウクライナの領土からロシアの領土を通って他の国への人道回廊の組織化できる。ただし、例外がある。有効期限切れのパスポートでもロシアからの出国は可能で、永住権化市民権があれば、他国を経由せずにロシアの領土から行くことができるようになっている。


ガジェットの準備方法

使用中の携帯電話、タブレット、ノートPCのコンテンツはあなたの個人情報である。法律によれば、アクセスを許可する義務はないが、占領者が国際法および国内法を遵守することを期待できない。そのため、事前にガジェットに準備をする必要がある。

疑われそうな情報をできるだけ早く携帯電話から削除する。チャットやニュースチャンネルを離れ、政治問題、戦闘行動、プーチンとロシアの政策の非難などのすべての議論を削除、軍事ハードウェアや破壊状況の写真、スクリーンショットなどを削除する。ただし、疑惑を引き起こさないように、すべてのメッセンジャーを削除しないこと。少なくとも1つ、最もアクティブでないものを残しておくが、その中でも、余計な質問を引き起こす可能性のあるチャットを削除する。

また、ブラウザの履歴とタブをクリアします。ただし、過度に「クリーンな」電話も疑惑を引き起こす可能性があるため、中立的なものを残すこと。

すべてのアカウントで2要素認証を設定する。

使用中の携帯電話の、指紋とFaceIDでロックを解除する機能をオフにする。自分の電話のロックを解除しないこと。監視されている可能性があるため、ノートPCやその他のデバイスni
パスワードを入力しないこと。特にカメラの下や侵略国の担当者がいる場合は、携帯電話にパスワードを入力しないこと。

強制退去の際に所持品の引き渡しを余儀なくされた場合は、電源を切った状態で携帯電話とガジェットを渡すこと。


尋問への対処方法

強制避難中は、LDNR(ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国)の領土にあるfiltration camp(※1)に入れられるリスクがある。そのような場合、尋問が行われることがあり、その後、あなたはさらなる移動について同意を与えられる(もしくは、与えられない)。

尋問中は落ち着くこと。可能な限り中立的に行動し、挑発にのったり、政治的見解について話したり、長い会話をしたりしないこと。ロシア政府はウクライナ人に対して憎悪を抱いていることを忘れないこと。したがって、不必要な拘留の理由を与えないこと。

法的な観点から、尋問中の最も安全な方法は、ロシア連邦憲法第51条(※2)を使用することである。これによれば、自分自身、夫/妻、近親者に不利になる証言をする義務はない。この条項は、ロシアの領土にいるすべての人に適用される。質問に答えるときは、「ロシア連邦憲法第51条に従い、この質問に答えることを拒否します」と言う。

文書や手続きを注意深く読まずに署名に同意しない。これは「読んでも何の意味もない」「より速く通過するには今すぐ署名する必要がある」などと約束されている場合でも。

しかし、肉体的暴力の脅威を感じた場合は、法律に訴えようとしない。自分の生命と身近な人の生命を最優先する必要がある。生き残るという観点から、最良の行動戦略を選択すること。

あなたが持っている法的権利

強制退去中であっても、あなたには一定の権利がある。それにより、あなたは自分の近親者に自分の拘留について知らせる権利がある。この機会を与えられることを要求する。ボランティアに連絡を取り、できるだけ多くの人に自分の所在に関する情報を知らせる。

あなたに対する刑事事件の場合、あなたには弁護士の権利があるので、あなたには公選弁護人が提供されなければならない。すぐに弁護士の名前、自分の名前、父親の名前を別の紙に書き留め、自分の親しい人の連絡先を弁護士に伝えて、彼らに知らせるように依頼すること。


登録と書類の取り扱い方法

ロシア国境では、出入国カードを作成する必要がある。第三国への出国のために必要となる。

重要!ロシアでは法的地位に関する書類を発行を受けないこと。侵略者の領土での滞在が複雑になるだけである。ロシアでの一時的な避難所の申請や一時的な居住許可の申請は義務付けられていない。また、難民のステータスを登録する義務はない。そのようなことをすると、特典はないが、パスポートやその他の書類を渡すことを余儀なくされる。

ロシアの領土を90日間以内に離れる予定の場合は、一時的な避難所を申請しないこと。一時的な避難所を申請する場合も、パスポートを渡す必要がある。

パスポートでのスタンプやマークなどの偽造はしないこと。

法的に受け取ったウクライナの身分証明等の文書を注意深く保管し、可能であれば、押収のリスクがある場合は、占領国の担当者にその存在について知らせないこと。

有効な外国のパスポートを所持している場合は、忘れずにご持参する。ウクライナのパスポートを使用すると、すべての国に向けてロシアを出国できる。外国のパスポートを持っている場合にのみ入国できる国もある。それとは別に、外国のパスポートがなければ、どこへ行ってもロシアの国境警備隊によって出国を認められないかもしれない。



ロシアを離れる方法

最初の機会に、避難民のためのキャンプへの移動を拒否する。ロシアに着いたら、できるだけ早く、ロシアを離れるようにする。

法律の観点から、ウクライナ市民がロシアを出国するのに制限はない。そのため、ロシアにとどまらず、たとえばEU諸国の1つに行くようにする。EU域内から、一時的な保護のステータスを申請できる任意の国に旅行できる。これにより、一時的な住居、給付金、および財政援助を受けることができる。

欧州連合では、到着後にステータスを申請することはできず、滞在する場所と仕事を自分で探す必要がある。ウクライナ市民のための医療および司法支援は無料で提供される。SIMカードと銀行カードはEUで機能する(ロシアとは異なる)。また、入国した国で一時的な避難所を求める必要はない。

生体認証パスポートまたは古いスタイルのパスポートを所持している場合は、直接またはベラルーシ共和国を経由して、ロシアからEU諸国に簡単に出国できる。

ウクライナの国内身分証明文書(国内パスポートや出生証明書)のみを持っていて、生体認証パスポートを持っていないで、2022年2月24日より前にロシアに入国した場合、ロシアからヨーロッパに出国できない可能性が高い。戦時難民の国境管理に関する緩和は無効になる。この場合、あなたはベラルーシを通っての出国を試みられる。


ロシアを離れるルート

ロシアは陸路で出国できる(バルト諸国:エストニア、ラトビア、フィンランド)。 (建前としては)飛行機のチケットを購入することも可能である。ロシアでは、鉄道も利用できる。

ロシア連邦を離れる最も便利なルートは、エストニア国境(イヴァンゴロド・ナルバ検問所)を経由することである。サンクトペテルブルクには電車で行くことができ、そこからイヴァンゴロドまでヒッチハイクまたは電車で行くことができる(所要2時間、700ルーブル)。ナルバからタリンには簡単に行ける(所要2時間、ウクライナ市民は無料)。

イヴァンゴロド・ナルバ検問所で国境を越えるには、ウクライナの書類(バイオメトリック外国パスポート/内部パスポート/出生証明書)と出入国カードが必要である。

活動家の言葉によると、国境での審問は長引くかもしれないので、国境を越えるのに1.5から4時間かかるかもしれない。親戚に行くと言うのが一番である。また、上記のように電話をクリーンすることが義務付けられている。

エストニアに着いたら、フリーダイヤル「12-47 або +3726001247.」で質問があれば連絡できる。

ロシア出国のもう1つのオプションは、バスである。ロシアでは、Ecolinesバスのチケットを、ウクライナのカードで支払うことにより、Webサイト(およびBaltic ShuttleとLux ExpressのWebサイト)からリガ(ラトビア)、タリン(エストニア)、またはビリニウス(リトアニア)行きを購入できる。モスクワとサンクトペテルブルク間のバスチケットは、EcolinesのWebサイトでウクライナのカードで支払うこともできる。または、これらのチケットは、ヨーロッパの親戚/友人がヨーロッパのカードで支払うことで購入できる。

ロシアの鉄道のチケットは、Webサイトでヨーロッパの親戚や友人が購入することもできる。または、ウクライナのカードで支払うことを試みることができる


ロシアでのお金、チケット、通貨交換

古いスタイルの内部パスポート(「小冊子」)を所持している場合、チケットの情報(名前、姓、父親の名前)はパスポートとまったく同じようにキリル文字で書かれている必要がある。

IDカードまたは外国のパスポートを所持している場合は、IDまたは外国のパスポートに示されているように、ラテン文字で名前と姓を入力し、「父親の名前なし」にチェックマークを付ける必要がある。

ウクライナのSIMカードはロシアで機能するが、ローミングは高価であり、ロシアでアカウントにチャージすることは不可能である。したがって、ウクライナを離れる前に、できるだけモバイルアカウントにチャージしておくことを推奨する。

ロシアでは、生体認証パスポートと内部パスポートのどちれでもロシアのSIMカードを購入できる。

活動家によると、ロシアでは、ウクライナ通貨フリヴニャをロシア通貨ルーブルと交換することはほとんど不可能である。通貨交換所は、ロストフ、タガンログ、ベルゴロド、ボロネージ、クルスク、タンボフのスベルバンクのいくつかの部門で運営されている。しかし、モスクワやサンクトペテルブルクにはない。ただし、ロシアの通貨交換所では、ドルとユーロを交換できる。

ウクライナ通貨フリヴニャとロシア通貨ルーブルの交換は、エストニアのタリンでは可能である。


エストニアで救援を申請する場所

在エストニア ウクライナ大使館
\+372 601 5815

エストニアのウクライナ人コミュニティ
\+372 5650 2572

医師の助言
1220

救急
112

エストニアでの滞在に関する情報(宿泊施設と家庭の問題)
1247 або +372 600 1247

出入国コンサルタント
\+372 612 3500 (пн. – пт. 09:00 – 15:00) migrationadvice@politsei.ee

モラルサポート
\+372 6147 393


救援を申請する場所

組織“helping to leave”が強制的にロシアに連れてこられたウクライナ人の支援を行う。
プロジェクトのサイトは“helping to leave

独立したパブリックイニシアチブFree Belarus Centerは、ウクライナ人がロシアの領土から離れるのを助ける。

Telegram bot.


ウクライナにいる場合、近親者の強制退去について通知する場所

情報局ナショナルホットライン
16-48

ウクライナ外務省ホットライン
\+38 044 238 15 88

領土防衛隊シングルホットライン
0 800 507 028

警察
102



訳注:

※1. Filtration campはロシアが占領地域に設置している施設で、ウクライナ人をロシア領内へ移動させる拠点と思われる。
wikipedia:Russian filtration camps(2022/05/24)

Filtration camps, also referred to as concentration camps,[1][2][3] have been reported to be used by Russian forces in the 2022 Russian invasion of Ukraine.[4][5][6][7]

A month in the conflict Ukrainian Deputy PM Iryna Vereshchuk said 40,000 people had been moved from Ukraine to Russian-held territories without coordinating with Kyiv.[6] More than 400,000 Ukrainians have been 'forcibly displaced to Russia', according to Ukraine's ombudswoman for human rights Lyudmyla Denisova on March 30 2022.[8]

Mikhail Mizintsev, chief of Russia's National Defense Management Center, said on 8 May that 1,185,791 people have been moved to Russia.[9] Ukrainian officials have compared the actions to filtration camps in Chechnya.[6] Ukrainian officials said the FSB "works" with Ukrainians in filtration camps in Krasnodar and Taganrog are offered jobs in Sakhalin, the far east of Russia.[10][6]

The Russian government denies it is forcibly removing Ukrainians to Russia[6] and calls the deportations "evacuation".[11] According to the Byline Times filtration camps in Ukraine are being used as a means of re-stocking Russia's labour force.[12]

Concentration campsとも呼ばれるFiltration camps[1][2][3]は、2022年のロシアのウクライナ侵攻でロシア軍によって使用されたと報告されている[4][5][6][7]。

ウクライナの副首相Iryna Vereshchukは、紛争の1か月間で、キーウとの調整なしに、40,000人がウクライナからロシアの領土に移されたと述べた[6]。2022年3月30日、ウクライナの人権オンブズウーマンLyudmyla Denisovaによれば、40万人以上のウクライナ人が「ロシアに強制的に追放された」[8]。

ロシア国防管理センターのMikhail Mizintsev所長は、5月8日、1,185,791人がロシアに移住したと述べた[9]。ウクライナ当局者は、その行動をチェクニャのFiltration campと比較した[6]。ウクライナ当局者は、FSBがクラスノダールとタガンログのFiltration campでウクライナ人と「協力」し、ロシアの最東端にあるサハリンで仕事を提供されていると述べた[10][6]。

ロシア政府は、ウクライナ人をロシアに強制的に連れ去っていることを否定し[6]、国外追放を「避難」と呼んでいる[11]。 Byline Timesによると、ウクライナのFiltration campsは、ロシアの労働力を補充する手段として使用されている[12]。

[1] Dean, Kirby (2022-05-19). "Thousands of Mariupol survivors being detained and 'tortured' in Russia-controlled prisons in occupied Ukraine". MSN. Retrieved 2022-05-19.
[2] Toby Luckhurst & Olga Pona (2022-04-25). "'You can't imagine the conditions' - Accounts emerge of Russian detention camps". BBC News. Retrieved 2022-05-19.
[3] "Ukraine calls on UNSC, UN Secretary General to ensure evacuation of wounded from Azovstal". Interfax-Ukraine. 2022-05-12. Retrieved 2022-05-19.
[4] Vlachou, Marita (2022-04-05). "Mariupol Women Report Russians Taking Ukrainians To 'Filtration Camps'". HuffPost. Retrieved 2022-05-02.
[5] Sauer, Pjotr (2022-04-04). "Hundreds of Ukrainians forcibly deported to Russia, say Mariupol women". The Guardian. Retrieved 2022-05-02.
[6] Peter, Laurence (2022-03-27). "Russia transfers thousands of Mariupol civilians to its territory". BBC News. Retrieved 2022-05-02.
[7] Mackintosh, Eliza; Ochman, Oleksandra; Mezzofiore, Gianluca; Polglase, Katie; Rebane, Teele; Graham-Yooll, Anastasia. "Russia or die". CNN.
[8] "More than 400,000 Ukrainians 'forcibly displaced to Russia'". euronews. 2022-03-30. Retrieved 2022-05-09.
[9] "Over 19,800 people evacuated from Ukraine, DPR, LPR to Russia in past day". TASS. 2022-05-08. Retrieved 2022-05-09.
[10] "Ukrainians, Who Were Deported to Russia, Are Offered Employment in Sakhalin". gur.gov.ua. Retrieved 2022-05-09.
[11] "Минобороны отчиталось об эвакуации более 500 тыс. человек в Россию".
[12] Blitz, Brad; Lewis, Alexandra (31 March 2022). "Putin's Gulag-Based Empire of Abduction, Deportation, and Modern Slavery". Byline Times. Byline Times. Retrieved 8 May 2022.


※2: ロシア連邦憲法51条
Статья 51

1. Никто не обязан свидетельствовать против себя самого, своего супруга и близких родственников, круг которых определяется федеральным законом.

2. Федеральным законом могут устанавливаться иные случаи освобождения от обязанности давать свидетельские показания.

КОНСТИТУЦИЯ РОССИЙСКОЙ ФЕДЕРАЦИИ

Article 51

1. Nobody shall be obliged to testify against him self, his (her) spouse or close relatives, the range of whom shall be determined by federal law.

2. Federal law may establish other cases where the obligation to give evidence may be lifted.

President of Russia Official Web Portal: The Constitution of Russia (archived)

第51条

1. 誰も自分自身、自分の配偶者または近親者に不利になる証言をする義務を負わないものとし、その範囲は連邦法によって決定されるものとする。

2. 連邦法は、証拠提出義務が課されない場合を、別途定めることも可能である。





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