◆ 残りコンティニュー回数 【 2 】



『他の方法……?

 あぁ、もしかして知ってるの?
 吟遊詩人が時々歌っているものね。

 あの異端の英雄の話は』


あなたは少女の言葉に、首を捻った。
初めて聞く話である。
だが、その名を聞く限り、少年の呪いに関する事のように思える。


『異端の烙印からは、迷宮の主を殺せば開放される。
 過去にそういう英雄が居たって実例があるし、神殿も認めている事よ。

 もし、主が本当に倒せるなら、全てが上手く行くわ。

 主が死んだ迷宮の魔物はその全てが命を落とす。
 エルフは死によって救われて、あいつは呪いから逃れられる。

 ……だけど、そんな事が出来るなんて信じられるほど、私は自惚れてない。
 あの大英雄を殺した化け物を相手取るなんて、ただの自殺。

 そうなれば、何も救えないまま、ただの無駄死にで終わってしまう』


あなたは、自身の心がざわつくのを感じただろう。
大英雄を殺した。
つまりは、あなたの姉を。

あなたはついに姉の最期にまつわる情報を獲得した。
それがこのような機会でさえなければ、胸の内に達成感を得る事も出来たかも知れない。




少女は言葉を止め、あなたを見つめた。
その瞳に揺らぎはない。



>>↓1  どうする?

正体を明かし自分の過去を話す

その上で迷宮の主を倒そうと持ちかける


解決法は、至極単純なものであったと、あなたは知った。
主を倒せば良いのだ。
何もかもを救うには、それで事足りる。

残る問題は一つ。
それが可能であるという可能性を、少女に示さなければならない。


そして、都合の良い物を一つ、あなたは生まれつき持ち合わせていた。

フードに手をかけ、取り払う。
そこにあるのは当然、大英雄と酷似した、あなたの顔。


少女は驚愕に息を呑んだ。

そこへ、畳み掛けるように声を投げかけようとする。





……その時、あなたの中に一つの感情が沸き起こった。
その正体を、あなたは未だ知らない。
自覚すらしていなかった、心の奥底に固く閉ざされた激情が、今芽吹こうとしている。


あなたは少女へと語る。

失われた両足。
暗く閉ざされていた未来。
自由のない、外界に憧れるだけの生。

そして、姉の尊い自己犠牲による、救済を。


"ああ、そうか"


あなたの言葉は、徐々に鉄を溶かすような赤き熱を帯びる。
そこに含まれる激情に、あなたはようやく気付くだろう。



"私は、気に入らないんだ"



怒りという名の、それに。

そうして、あなたは―――。





―――私は、全てを理解した。

心が焼けていく。
目の前でこちらを睨む、気に入らない少女への怒りに。


命を捨てて、家族を救う。

それは素晴らしい事だろう。
誰もがその犠牲に涙を流し称えるはずだ。
英雄の行い。
真なる正義の道であると。


だけど、私だけは認めない。
そんな物が正しいなどと、死んでも言ってやるものか。


姉さえ健やかなら、それで良かった。
姉さえ笑顔で世界を駆け巡ってくれるなら、狭い世界の中から憧れ続けていられるなら。

私は他に何も……何一ついらなかったというのに!


私は愛していた。
少女もきっと愛されていた。

異形のエルフ達は私であり、この少女は姉なのだ。


……救われたいと願っていた。
あのベッドの上から自身の足で出たいと、ずっと憧れ続けていた。

だが、その代償が愛する家族の命だと言うならば、一体誰が望むというのか。


◆ 友好度判定……イベントによる強制失敗




『……ふざけないでよ。
 あんたに、あんたに何が分かるっていうのよ!

 たかが、足がなかっただけのあんたに!』


少女はあなたすら凌ぐ怒りに顔を染め、叫ぶ。
それはそうだ、と、あなたの中の冷静な部分が指摘する。

絶望の深さが違う。
身も心も異形と化した彼らと、足を失いながらも心は曲がらなかったあなたでは、前提が異なり過ぎている。

だがそれでも、あなたにとって看過できる事ではない。
これは八つ当たりなのだ、とあなたは自覚した。



気付けば、あなた達は互いの胸倉を掴み合っていた。
至近距離で視線を交差させたまま、拳を握り締める。
あなたも少女も、距離を取ろうなどとも、様子を見ようなどとも、頭の片隅にすら浮かばない。


"目の前の気に入らない主張の敵を、今すぐこの手でぶちのめす!"


あなたと少女の思考は今、完全に一致した。
少女は激怒に染まる精霊を身に纏い、あなたは秘宝の奇跡による人外の力を練り上げる。



◆ 対敵対的NPC戦闘を開始します
◆ 友好度判定に強制失敗したため、敗北した場合、あなたが死亡する可能性があります


少女は拳を振り上げた。
そこに纏うのは凝縮された大気の塊。
あなたですら呆れるほどの密度のそれは、命中の瞬間に極大の衝撃を放つだろう。

それがあなたの頬目掛けて、少女の全力を以って繰り出される!



>>↓1  どう対処する?

少女は激昂しながらも全力で顔面パンチを放って来ている。
これはもう顔面で受けて、こちらも全力パンチを顔面にお見舞いするしかない。
ちゃんと気持ちに応えてやろうぜ。

耐久全振り、魔力撃無しのグーパンをクロスカウンターで。


風の塊。
極大の衝撃。
無防備に直撃すれば命すら危ういその一撃への、あなたへの対処は。


"知ったことか!"


鏡写しに振り上げた拳が、その答えであった。



>>↓1 コンマ判定 【怒りの鉄拳】

筋力 9
装備 1

風鎧 -5

目標値 5


>>↓2 コンマ判定 【物理的被害の軽減】

耐久 15

目標値 15

【怒りの鉄拳】

差 2


【物理的被害の軽減】

差 5



何かが頬に触れたのを感じた瞬間、あなたの視界は強制的に大きく移動させられた。

顔面が濡れた感触と共に赤熱し、口内で小さな欠片が暴れ回る。
皮膚が弾けて歯が砕けたのだと、もしあなたが冷静ならば気付けただろう。

だが、今のあなたの脳裏に浮かぶのは、確かな手応えだけだった。

異様な厚みの何かを抜いて、確かに敵の頬を打ち抜いたという実感がある。
見れば、少女は口の端から一筋の血を流している。
口内の一部を裂いただけの結果だろうが、確かに一撃は通ったのだ。



>>↓1 コンマ判定 【衝撃からの回復】

意思 3
激怒 3

目標値 6


【衝撃からの回復】

目標値 6  出目 4

成功!



上向いた顔を、意思を以って無理矢理に引き戻す。


今の一撃で全てを開放した少女の拳からは、暴風が消え失せている。
いかに精霊といえど、一瞬で再び風を纏う事などできないのだろう。

好機である、とあなたは感じた。

少女自身に大きな被害はない。
次の一撃も、変わらぬ速度で繰り出されるだろう。

だが、その威力は少女の細腕のみによるもののはずだ。


◆ 【敏捷対抗】 自動失敗


その読み通り、何も纏わぬ少女の拳があなたに迫る!



>>↓1  どうする?

パンチを食らいつつフィジカルブースト筋力全振りでパンチ


先と同じくあなたへ迫る拳。
その対応もまた、先と同じだった。

あなたは拳を引き、再び握り締める。

違うのは一点。
防御に回していた魔力を威力のために燃焼させる。



>>↓1 コンマ判定 【物理的被害の軽減】

耐久 7

目標値 7


※ フィジカル・ブースト切り替えのため、僅かな隙が生じます
※ この判定で大ダメージが発生した場合、あなたの攻撃はキャンセルされます


【物理的被害の軽減】

目標値 7  出目 8

失敗……



あなたの視界は再び上向く。
裂けた皮膚が追撃に悲鳴を上げ、鮮血が空へと飛び散っていく。

ぐらり、とあなたの膝が揺れた。



>>↓1 コンマ判定 【物理的被害による朦朧への抵抗】

耐久 7

目標値 7


【物理的被害による朦朧への対抗】

目標値 7  出目 10

ファンブル!!



膝から、全ての力が抜けた。
あなたの意思とは無関係に、体は地面へと倒れこもうとする。

その側頭部を、少女の脚が襲う。

当然の事だ。
弱った敵への追撃は、行われて然るべき。


あなたは今、二度の衝撃で意識を白濁させている。
……これを回避する術は、少なくともあなた自身には残されていない。



>>↓1  【雷速】 を使って回避しますか?

使うしかないな


その脚が直撃しようとする瞬間、あなたは誰の視界からも消え去った。
少女の攻撃は空を切り、あなたは命を繋ぐ。


だが、その後が続かない。

一瞬で移動できた距離は長くはない。
歩数にして五歩。
そこであなたは崩れ落ちた。

地に膝を着き、視界の揺れに耐える。


……そして当然、至近に居る少女が気付かない訳はなく。
再び風を纏った拳を振り上げ、あなたへと襲い掛かる。



>>↓1  どうする?

耐久全振りで頭突き魔力撃4


拳に集中させていた魔力を、全力で額に移動させる。

分かりやすい、とあなたは滲む思考の中に思い浮かべた。
少女の拳を頭で受け、同時に魔力撃によってその拳を叩き潰す。
随分とやりなれた手段である。

あなたは一瞬だけ首を引き、全霊を籠めて少女を迎え撃つ!



>>↓1 コンマ判定 【物理的被害の軽減】

耐久 15
防具 2

朦朧 -2

目標値 15


>>↓2 コンマ判定 【全霊の頭突き】

筋力 9
魔撃 4

朦朧 -2

目標値 11 (拳には攻撃用の風しかないため、風の鎧は適用されません)



※ これらの判定は、目標値と出目の差によって結果が変動します。

※ >>316は雑談と判断しました。


>>↓1 コンマ判定 【朦朧進行 頭部打撃】

耐久 15

威力 -3
急所 -3

目標値 9  出目 3

成功!



衝撃に負け、あなたは天を仰いだ。
額が割れ、世界は真紅に染まっていく。

だが、その赤い視界の隅に、一つの成果を捉えた。


少女の指が、ありえない方向へと曲がっている。

悲鳴が響き、少女が後ずさった。
目は慄くように拳に向けられ、あなたから外される。


明確な隙。
一方的に少女を殴り飛ばせるだけの好機に、ついにあなたは辿りついた。



>>↓1  どうする?

マウントをとり両足で両腕を押さえる


この一瞬を逃せば、最早勝ちの目はないだろう。
そう判断したあなたの行動は、素早かった。

命令に背こうとする足に拳を叩き付け、少女の腹部目掛けて飛び掛る!



【組み付き 筋力対抗】

基準値 5

筋力 9
非視 3

筋力 -4
朦朧 -2

目標値 11 (自動成功)


地面に引き倒そうとするあなたの豪腕に、少女は逆らう術を持たなかった。
飛び掛った勢いのまま、あなたは馬乗りの体勢になり、細い両腕を押さえ込む。


『なっ……この!』


少女は必死に抜け出そうとするが、筋力差は明確すぎる。
僅かにあなたの体を揺らした事だけが少女の成果だった。


あなたは今、こうして優位に立った。
だが、少女が何も出来なくとも、彼女に味方する精霊達は未だ健在。

轟、と渦巻き始める風の音をあなたは確かに聞いた。

それが牙を剥くまでに、多くの時間は残されていないだろう。



>>↓1  どうする?

ブーストてか魔力撃頭突きでFAかな
魔力撃乗せるなら5くらいか


風がその牙を剥く前に、少女の意識を刈り取る。
それがあなたの選択だった。

額に魔力を輝かせ体を反らすあなたを見て、少女は恐怖に顔を歪めた。
必死に体を捩り、強烈な一撃から逃れようともがく。

だが、勿論それを許すあなたではない。
両足で少女を拘束したまま、逃れようのない衝撃を叩き付ける!



>>↓1 コンマ判定 【頭突き】

筋力 9
魔撃 5
直撃 2

風鎧 -5
朦朧 -2

目標値 9


衝撃に少女の体が跳ね、その額から骨の割れる音が響く。
瞳は秒ももたずに裏返った。

あなたは、少女の意識を一瞬で刈り取る事に成功した。



……少々やりすぎたかも知れない、とあなたは焦る。

だが、今の所息はある。
視界の隅では、こちらを見守っていた少年が慌てて駆けてくるのが見える。
恐らくは助かるはずだと、あなたは信じた。


そして、最後の問題が解き放たれる。
愛する子供の上から今すぐ退けと、あなたの背後から暴風が襲った。

それを避ける術は、あなたには存在しない。

魔力による強化を全力で行使し、二度の魔力撃を扱い、あなたの身から魔力は既に消えて失せた。



【朦朧の進行 魔力枯渇】

意思 3

朦朧 -2
二度 -2

目標値 -1 (自動失敗)



薄れ行く意識の中、風に吹き飛ばされた体が地面を転がるのを、あなたは感じていた。


>>↓1 コンマ判定 【気絶からの覚醒 耐久対抗】

基準値 5

耐久 7

耐久 -3 (少女)

目標値 9


頬を苛む激痛に、あなたは目を覚ました。

目の前には短い草。
それで、地面に倒れこんでいる事をあなたは知った。


慌てて体を起こし、周囲を確認する。

少女は自身を殺すための儀式を行っていたのだ。
あなたが意識を失っていた間に、もしそれが再開されていたならば、と。


『……生きていますよ、安心して下さい。
 もうちょっと手加減出来なかったのかとは、本当に、心の底から、思いますけどね。

 僕が居なければ確実に死んでいます』


声はあなたの背後から届いた。
振り返って見れば、少年が膝に寝かせた少女の額に手を当てている。
少年の手は淡い光に包まれ、今まさに治療中なのだと分かるだろう。


『あなた達にそこまで器用な事を期待した僕が悪いんです。
 この子もどう見ても殺す気でしたしね。
 こっちの心臓が潰れるかと思いましたけど、えぇ、それはもう別に構いませんよ』


少年の口調は穏やかだが、隠す気もない苛立ちがこれでもかと感じられた。
笑っていない瞳をあなたに向けながら、少女の長い耳をこっそりと捻り上げている。
気絶したままの少女が苦しげに呻くのを、あなたは確かに聞いた。


良好とはとても言いがたい少年の感情。
しかし、そこに不吉な透明さがない事に、あなたはどこか安堵するのだった。


少女の額は未だ治療が完了していない。
少年の言によれば相当な被害であり、まだしばらくかかるようだ。

それまでの間、あなたは自由な行動が出来るだろう。

ただし、あなたが頭部に受けた打撃も、決して軽いものではない。
また、魔力も欠片すら残っておらず、視界が揺れ続けている事に変わりはないと、理解しておく必要があるだろう。



>>↓1  どうする?

少女が回復するまで休む


あなたは気を抜いてその場に倒れこんだ。

ひとまず、最大の危機は脱したと言って良い。

拳と額に乗せた思いは嫌というほど伝えた。
もし少女が起きたとしても、あなたが居る限りそのまま儀式に戻る事は無いだろう。


そうなると、あなたは自身の傷が気にかかった。

頬は大きく裂けている上に、折れた歯は口内に凄まじい違和感を生じさせている。
そして勿論、そのどちらも激痛を伴う。

しかし、少女と同時にでも回復を頼めないかと少年を見れば。


『今は近寄らないで下さいね。
 あなたを殺そうとする精霊を必死に説得したんですから。
 今近付けば何が起こるか分かりません。

 こちらが終わればやりますので、少し待っていて下さい』


残念ながらそういう答えである。



>>↓1  ポーションを使用しますか?

使おう


あなたは寝転がったまま荷物を漁り、小さな試験管を取り出した。

その薬品の名はポーション。
錬金術師の手によって生み出されるそれは、消毒や止血、鎮痛に高い効果を持つ。
また、自然治癒を早めもしてくれる、冒険者にはお馴染みの一品である。

残念ながら神殿の奇跡のような、即座に傷を癒す力はない。
それでも、使わないよりはずっとマシだと、あなたは判断した。


試験管の栓を抜き、頬へと半分をかける。
残りは口に含む。
初めは酷く沁みたが、やがてゆっくりと痛みが引いていった。

天を見上げて、一つ息を吐く。


万が一の事がないよう意識を保ちながら、あなたは少女が目覚めるまでゆっくりと休んだ。


◆ 発狂判定について

確かに意思が高いとデメリットになりかねない、というのは問題ですね……。
解決には仲間の死によるコンティニューを認める位しか現状思いつかないのがまた何とも。
ちょっと考えておきます。


『あーぁ、もう完っ全に負けたわ。

 本当、何なのよあんた。
 聖地でエルフに勝てるとか、どうかしてんじゃないの、この、化け物』


少年によるあなたの治療が終わる頃、少女は目を覚ましてそう呟いた。
それは試験の後の憔悴に良く似た声。

憑き物の落ちた透明さなどどこにもない。
あなたの良く知る、明確な感情に満ちた少女の姿だった。


『救いが救いにならない、かぁ。

 ……自分の気持ちしか考えてなかった。
 私が死んで悲しむのなんて、こいつしか居ないと思ってたけど、違うのかなぁ』


少女はあなたへと問いかける。
僅かに掠れた声で、どこか縋るように。


『ねぇ、化け物さん。
 あんたはどうすれば良いと思う?』


◆ 重要安価が発生します

あなたの選択により、エンディング条件が変化する場合があります。
候補→投票の手順で安価を決定します。



【安価内容】

少女にどう答える?



1)

「最初は無知な私が怒らせたことから始まった関係だけど
 今全力でぶつかれて喧嘩してそしてこうして話してわがまま言えてとても嬉しかった
 叶うならこれから先もこの関係を続けたい、私と友達になってほしい
 その為にも、主を倒して全てを終わらせよう」


2)

大事な人を死なせたくない、一緒に居たい、友達になって欲しい、幸せになって欲しい、だからボス倒そう


3)

あなたが幸せになること
きっとエルフ達の望みはそれだけ
私が姉に願ったように




2)

大事な人を死なせたくない、一緒に居たい、友達になって欲しい、幸せになって欲しい、だからボス倒そう



に決定しました。


どうすれば良いか。
そんな事は分からない、とあなたは感じた。

あなたには学がない。
自身の部屋の中、ベッドの上を世界の全てとして過ごしてきたあなたにとって、外界は難解すぎる。

だから、あなたに出来る事はただ一つ。

エゴをぶつける。
それだけである。


"私は、あなたと友達になりたい"


あなたは少女へと手を差し伸べる。

対等。
思えば自分とは縁遠い言葉だったと、あなたは振り返る。
周囲に居たのは庇護者だけ。
同じ目線で語り合える仲間など、この二人が初めてである。

そして、あなたはただの仲間ではもう我慢できなかった。


差し出された手を、少女は不思議そうにしながらも握る。


『友達って……答えになってなくない?

 うん、まぁ、勿論良いけど。
 あんた、訳分かんない奴だけど悪い奴じゃないのは分かってるし……』


唐突なあなたの申し出を、少女はそれでも受け入れた。
あぁ、と喜びの息を吐き、あなたは安堵した。
これで何もかもが簡単になった、と。


"友達は大事な相手で、私は大事な人を死なせたくない。
 一緒に居たいし、幸せにもなって欲しい"


当たり前の事を、あなたは続ける。
世間知らずのあなたにも、このくらいの事は分かるのだ。
それはとても普遍的で、誰にでも確信できる正しさに満ちている。


"全部解決しよう。
 主なんか殴り飛ばして、迷宮は壊してしまえばいい"


……少女はしばし呆然とあなたを見つめた後、不意に苦笑を漏らした。
あなたを馬鹿にするような口調で、呆れをふんだんに散りばめた言葉を投げる。


『あんたって、やっぱり馬鹿だわ。
 言うのは簡単でも、普通出来る事じゃないのよ、そんなの。
 あーぁ、もう本当馬鹿』


少女はあなたを嘲笑う。
馬鹿だ馬鹿だと繰り返して。


『でも、あんたが言うと本当に出来そうだから困るわ。
 何せ聖地でエルフを殴り飛ばせる大馬鹿だし。

 ……ちゃんと責任取りなさいよ。
 失敗して無駄死にしたら、地獄からずーっと馬鹿にしてやるから。
 この、ばーか』


今でも十分馬鹿にしている。
あなたの少年の言葉が重なり、少女は朗らかに笑った。


◆ 探索目的が変更されます

【探索目的】

迷宮の主を撃破する


◆ これに伴い、以降 【姉に命を救われた二人】 を遺品の一種と見なして探索を終了する事は不可能になります


【3:00】



その後。


"僕は仲間外れですか?"


などと悪戯するような声で聞く少年とも慌てて手を握り合ってから、
あなた達はまずどうするかと話し合っていた。

あなたと少女の治療が終わるまでに随分と時間がかかってしまった。
既に猿……異形のエルフ達も、当然目を覚ましているだろう。
聴覚に異常を抱えている関係で弱体化してはいるはずだが、それでも縄張りを抜ける大きな障害になる。

あなたがポーションを用いて自身の治療を行っていたおかげで、少年の魔力は当初の想定よりも減っていないという。
だが、それでも残量は乏しく、魔法を扱ってもすぐに気を失うような事はないが、当面は魔力行使を控えたい、との事だ。


『とりあえず今は休息を優先しましょう。
 差し当たっては少なくとも日が昇るまでは。
 二人もあれだけの戦闘をした以上、疲労があるでしょうし?』


少年の言葉には棘が含まれていた。
どうやら、あなたへの遠慮はその殆どが消えているらしい。



>>↓1  異論があれば伝える事が出来ます

異論は無い、鼠を埋葬しよう。


異論はない、とあなたは答えた。
実際の所、疲労を癒さずに縄張りを抜けられるという楽観的な考えは持てるはずもない。

そして休息の間、あなたにはやりたい事もあった。

あなたのために犠牲となった、鼠の埋葬である。


『……そうね、そいつも頑張ってくれたし。
 私も手伝う、祈りの一つも捧げさせて』


あなた達三人は大樹の根元に、小さな仲間を埋葬した。
少年と少女が未知の言語で安息の祈りを捧げ、あなたもそれに倣う。

あなたが閉じていた目を開けば、精霊達が鼠の墓の周りに集い、柔らかな光を放っていた。


『良かった、上手く出来たみたい。
 エルフの葬送の祈りよ。
 死者の魂が自然に還り、精霊となって見守ってくれるように、って』


ならば、きっといつか鼠も飛び交う光の一つになるのだろう。
あなたは改めて墓へと手を合わせ、そして二人と精霊へと感謝を伝えた。


【3:30】


少女と少年は休息へと戻った。
それぞれ木に寄りかかり、体から力を抜いている。

少年の方は治療で特に疲れていたのだろう。
目を閉じて眠っているように見えた。




【6:00】



日が昇り木々の間から明るい空が見え始める頃、あなた達の休息は終わった。

少女は立ち上がって軽く体を動かした後、眠りこけていた少年を起こしにかかっている。
寝起きの悪い少年はやはり、その耳を少女に引っ張られるまで目を開かなかったようだ。


あなた達は互いの状態を確認しあった。

全員がほぼ万全と言って良い。
魔力、体力ともに、完全に回復しきっている。

この後は、あなたは自由に行動を選択する事が出来るだろう。



>>↓1  どうする?

帰り道の確認しよう
地図みたい


あなた達は集まり、帰路の確認のために地図を広げた。



【エルフの縄張り】



【白の森 入り口】




あなたは記憶を反芻する。
縄張りの各部屋は聖地から繋がる順に、村の残骸、貯蔵庫、農園、となっている。
農園からの分かれ道を西に進めば育児部屋、南に行けば何もない小部屋の先に、脱出口がある。


地図を前に、少年は口を開く。


『脱出は入ってきた道と同じで良いと思います。
 どう繋がっているか分からない道を探る必要はないかと。

 問題は、彼らの警戒態勢が未知数という事ですね。
 聴覚に異常を抱えたままで、しかも侵入者を取り逃がした後です。
 流石に僕達も想定した事はありません。

 ただ、耳が使えない以上、彼らの弱体化は間違いありません。
 侵入時と同様の隊列と作戦で一気に抜けてしまうのが良いのではないでしょうか?』


少女もまた、それに同意した。



>>↓1  二人に伝えるべき事はありますか?

倉庫に火を付ければ陽動にならないか提案





貯蔵庫を燃やす事で陽動になりはしないか、とあなたは提案した。
それを受けて少女は答える。


『効果は高いと思うわ。

 ただし、貯蔵庫には見張りが居る可能性が高いし、
 耳が聞こえなくても、煙を見ればきっとあちこちから集まってくる。
 それを掻い潜って急いで逃げるか、余程上手く隠れてやり過ごす必要があるわね』


やるなら反対はしない、と二人は頷いた。



>>↓1  どうする?



まず長い布を用意する。
それに油を染み込ませて、貯蔵庫から離れた場所まで延ばす。
そして隠れた状態で火を付けて陽動に……。


『ちょっと待って。
 その長い布ってまずどこにあるのよ』

『離れた場所まで、と言いますが目を欺く程の長さとなると……』

『それに導火線の始末もどうするの?
 一瞬で燃え尽きるでもない限り、絶対見つかって追ってくるわよ、それ』

『調理用の油も、そこまでの量ありますか?』


……怒涛のダメ出しであった。
あなたは二人の視線に耐えかねて、そっと明後日の方向を眺める。


『……というか、導火線なんて使わなくても、私が風で火を運ぶわ。
 大部屋の半分くらいの距離なら、まぁギリギリ何とかなるはず。
 案自体は悪くないから、やるならそっちでやりましょ』


更に修正案まで出されては、もうどうしようもなかった。




>>↓1  どうする?

調理用だったり火つけるようにあったりするんじゃない?
まあ一回外出てから猿を一匹狩ってその油を使うって手もあるけど


どう見ても安価指定行動ではないので大丈夫です。
安価↓でどうぞ。


あなたは少年に、魔法の習得について尋ねた。

コンティニュアル・ライトの魔法は相当便利そうに思えたためだ。
特に、視覚に頼る魔物相手には高い効果を持つだろう。
使用できる人間が二人に増える事は、大きな意味を持つだろう。


『そうですね、習得自体は何も問題ないと思いますよ。
 特別な才能は必要ありませんから。
 ただ、時間は最低でも半日は欲しいですね』


との事であった。


◆ 低位魔法の習得には12時間を必要とします。


【7:00】



あなた達が話し合いを始めてから、それなりの時間が経過した。
二人は腹の空き具合を自覚したのか、それぞれ携帯食を取り出して食事を始めている。

あなたも、自身の体に意識を向ければ、随分と胃が寂しい事に気付いた。

話し合いを続けるにしても、食事を取りながらとするのが得策だろう。



>>↓1  どうする?

携帯食を食べながら心臓を一つ食べた事を報告


あなたも携帯食を取り出し、食事を始めた。
それと同時に、ふと一つの事を思い出す。

狼の心臓についてである。
緊急時であったため仕方なかった事ではあるが、パーティーの共有品を食べたのだ。
一応一言伝えておくべきだろう、との判断だ。

……そのくらいの、軽い報告のつもりだったあなただが。


『はぁ!?
 なっ……えぇ!? 嘘でしょ!?
 あんた何考えてんの!?』

『……驚きました。
 初めてですよ、こんな話聞いたの……』


二人の反応は余りにも激しかった。
あなたの正気を疑い、声を上げている。
少女にいたってはあなたの肩に掴みかかる程。

予想外の騒ぎに、あなたは目を白黒させた。


その後の二人の説明で、あなたはようやく理解し、そして思い出す。

食道楽の魔術師が言っていた。
魔物の賞味期限は短い、と。

火が通り、調理された大蜘蛛の心臓で、夕刻から朝陽が上るまで、である。

対して狼の心臓はどうか。
討伐からおよそ一日が経過していた。
更に、あなた達は狼の討伐に炎など使用しておらず、当然ながら生のまま。


……今は何も異常はない。
だがこれより以降、あなたにどのような影響があるかは、現時点では未知数である。

顔色を青くして不安に震える他、あなたに出来る事はなかった。


【7:30】


食事を終えた後も、あなたの不安は消えなかった。
苦い顔で満腹になった腹部を撫でるも、それで何が解決するわけでもない……。



>>↓1  どうする?

一旦来た道順に街に戻る、その際食料庫に火をつけて陽動


あなた達は、即座に出発する事とした。

……主な原因はあなたの腹具合である。
いつ腹を下すか分からないが、今の所異常がないならば、早目に街まで戻ろうという結論に至ったのだ。
迷宮の中、食中りで行動不能など、控えめに言っても悪夢に違いない。


『次からは拾った変な物食べるのはやめときなさいよ……。
 まさか年上相手にこんな注意する日が来るなんて、思いもしなかったわ、この馬鹿』


返す言葉もない、とあなたは頭を抱えた。

ともあれ、迷宮を脱出するため、あなた達は再び少女を先頭に縄張りへ挑む。






長い耳を動かし音を探る少女に続き、村の残骸が積み上がる部屋へ向けて進んだ。

往路ではただ残骸としか感じなかった山は、真実を知ったあなたには違う感想を抱く。

満月の度に組み変わる迷宮。
にも関わらず残り続けている残骸の山。

この部屋だけが迷宮の影響から逃れているとは考えにくい。
きっと異形と化したエルフ達が、保ち続けていたのだ。
農園を維持してきたように、エルフの村を墓所として守ったのだ。


無論、これはあなたの想像である。
事実は全く異なり、ただの偶然の結果という可能性もあるだろう。

だが、そうであって欲しいと、あなたは感じた。


聖地に繋がる通路に体を隠したまま、少女は異常なしと指の形で告げている。



>>↓1  どうする?

樹上に魔力視使いながら少女の元へ 火をつける相談


■ ステータスが更新されました


【女性 / 19歳】


【筋力】 9  【耐久】 7
【敏捷】 1  【感覚】 7
【知識】 1  【意志】 3
【魔力】 8  【幸運】 9


【魔法剣士】

低難度の魔力行使が確実に成功する
物理攻撃時、魔力を消費する事で威力を増加させるコマンドを任意で使用可能


【探索目的】

迷宮の主の撃破



■ 所持品一覧

 【使い慣れた双剣】 E

 【緋色鹿革の兜 +1】 E
 【鉄製のネックガード +1】 E
 【使い慣れた皮鎧】 E
 【使い慣れたガントレット】 E
 【異形の手袋】 E
 【使い慣れたブーツ】
 【ブーツ・オブ・ライトニング】 E

 【投石用の石 x8】
 【大蜘蛛の爪の欠片 x8】
 【大蜘蛛の牙の欠片 x4】

 【携帯食 x2】
 【?水筒 / 70%】

 【ポーション x1】

 【方位磁石 x2】
 【携帯用調理器具一式】

 【地図用羊皮紙 x2】
 【描きかけの地図 / 白の森・入り口】
 【描きかけの地図 / 白の森・猿の縄張り】
 【描きかけの地図 / 白の森・最奥部への道】


■ パーティーの共有品

 【闇色の狼の心臓 x1】


■ 少年

 【木製の投石器】


■ 少女

 【木製の投槍器】



■ 現在攻略中のダンジョン

【白の森】

古い言葉で 【豊かな森】 を意味する名を持つ、とある小国の一都市。
その近くに存在した大森林が変異して形成された迷宮。

内部には魔力を帯びた霧が立ち込める。



■ 地図情報


【白の森 入り口】




【白の森 猿の縄張り】 ← 【現在地】




【白の森 最奥部への道】






少女のサインを受けて、あなたは魔力を両目に集めた。

思い出すのは育児部屋前の門番。
音で感知できない危険を発見するには、魔力視が有効であると、あなたは当然理解している。

あなたは少女の背に張り付くようにして通路から顔を出し、樹上の異常を探る。



>>↓1 コンマ判定 【目視】

感覚 7

目標値 7


【目視】

目標値 7  出目 1

クリティカル!!


あなたは樹上に何も居ない事を確信した。
一切の違和感は、そこには存在しない。

ただ、樹上ではなく地上に、微かな青い光を発見した。
残骸の山の中に埋もれた何かが発しているのだろう。
ほんの隙間から、それが漏れている。

だが、それは随分と奥の方にあるようだ。
もしあなたが正体を探ろうとするならば、残骸を掘り返すためにそれなりの時間を必要とするだろう。
また、決して小さくはない音を伴うはずだ。


あなたは一度青い光の件を脇に置き、少女へと小さく声をかけた。

貯蔵庫に火を放つための相談を行おうとしたのだ。
しかし、少女の返事は芳しくはない。


『……気持ちはわかるけど、まだ何とも言えない。
 見張りが居るかどうかも分からないんだもの。

 焦らないで堅実にいきましょ。
 こんな所でヘマしても、それこそ馬鹿らしいわ』



>>↓1  どうする?

放火は保留で残骸の話と夜まで待つかどうか確認


次いで、あなたはたった今発見した魔力の反応について、二人に知らせた。

だが、二人は中々光の出所を見つけられないようだ。
あなたが何度か指差して教え、ようやく少女だけが反応する。


『あ、本当にある……。
 あんた、良くあんなの見つけたわね』


視力まで化け物なのかしら、と失礼な事を呟く少女の耳を抓るべきかどうか、とあなたが悩む間に少女は続けた。


『……でもおかしいわ。
 私達エルフは精霊の加護があるから、わざわざマジックアイテムなんか使わない。
 そもそも作る技術がないし、外との交流も少ないから流れてくるとも思えないし……』


村の残骸の中に眠る魔力反応に、少女は心当たりがないようだ。


更にあなたは後ろへ振り向き、少年へと尋ねる。
夜まで待った方が良いかどうか、と。


『えぇ、そうですね、縄張りを抜けるなら夜の方が良いでしょう。

 ……で、それまであなたの腹具合は大丈夫なんでしょうか?
 僕としては、あなたが動けなくなって聖地で篭城しなければならない事態の方が恐ろしいです。
 食料にも限りがありますし、時間を与えれば彼らの耳も回復するかも知れません』



>>↓1  どうする?

フィジカルブースト筋力5を使用し残骸を掘り返す
少女、少年に周囲の警戒をしてもらう


あなたは魔力を放つ何かがどうにも気になった。
エルフの村には存在しないはずのそれ。
もしマジックアイテムの類であったならば、迷宮の攻略の一助となりえるかも知れない。

あなたは二人に周囲の警戒を頼み、豪腕をもって掘り返そうと試みる事とした。


【時間短縮】

出目による変動が発生しないため、自動成功


あなたは驚くべき短時間で残骸を掘り終えた。
山は明確にその体積を減らし、その分の新しい小山が横に築かれている。
あなたの目は今や明確な光を捉えている。


そうして、最後の残骸を取り除いたあなたの前に現れた物は……。



>>↓1 コンマ判定 【発掘品の品質】

幸運 9

目標値 9


※ この判定は、目標値と出目の差によって、発掘品の品質が変動します





【発掘品の品質】

目標値 9  出目 9

判定に成功し、発掘品が一段階高品質化します。



あなたが残骸の中から拾い上げた物は、刀剣の一部だった。
折れた刃先である。
こびり付く赤黒い汚れは、恐らくは何かの血液だろうか。


一見して、誰もがただのガラクタと断じるだろう。
しかし、あなたはそれに余りにも見覚えがありすぎた。

あなたは腰の剣を引き抜き、並べて比較する。
それらは寸分の狂いもなくぴたりと一致した。


果実と共に持ち帰られた、姉の形見の剣を、あなたは思い出した。
半ばで折れていた剣の姿を。

その失われた刃先はここ、エルフの村に眠っていたのだ。


唐突な再会に、あなたの息は一時止まる。

二人も何かを察したのか、何を言う事もなくあなたに背を向けたまま。
あなたはそれに感謝し、折れた刃を胸に抱いて、一粒の涙を零した。





※ 獲得アイテムの完全鑑定に自動成功、情報を開示します


■ 大英雄の剣片

大英雄の愛用した双剣の内一本、その折れた刃先。
血に塗れたまま放置されていても錆びすら浮かない希少金属で作られている。


◆ 特殊能力

【貫通 : 魔】

このアイテムを用いた攻撃は魔力による防御を無効化する。


【8:00】



しばし経ち、あなたは刃先を丁寧に荷物に仕舞う。
二人に振り向き、時間を取らせた事を謝れば、二人は無言であなたへと笑みを贈った。


周囲に変化はない。
異形のエルフ達が物音を聞きつける事はなかったようだ。



>>↓1  どうする?

腹痛予防にポーションは効果あるのか聞く 後薬草とかないか少女にきく


落ち着いたあなたは、少女へと質問を投げかけた。
ポーションによる腹痛予防と、薬草についてである。


『ポーションはあくまで外傷の治癒に効果がある物よ。
 腹痛に効く、なんて聞いた事もないわ。

 薬草は……精霊に聞けば見つかるだろうけど、私自身は専門外。
 そういうのは巫女じゃなくて薬師の役割だったもの』


少女が言うには、エルフは完全分業制であったらしい。
そしてまた、少年の治癒がある以上、二人での探索中も調べてはいなかった、と。

あなたは僅かな落胆を抱くのだった。



>>↓1 コンマ判定 【不運の回避】

幸運 9

目標値 9


【不運の回避】

目標値 9  出目 10

ファンブル!!




【8:15】



その時、少女が跳ねるように南を振り向いた。
少女の耳は激しく、そして細かく動き、何かを探っている。

そして、あなた達に良く見えるように手を上げた。

少女の指の形は、なんと敵の接近を示している。
素早く組み替えられた指は六という数を、更に伝えた。


あなた達は敵地でただ中で相談を繰り返し、時間を費やしすぎたのだ。
異形のエルフ達の歩哨は、すぐそこまで迫ってきている。


耳を潰され弱体化しているといえど、彼らの魔法の脅威は揺るがず、その速度を減じているという予想は楽観的に過ぎる。
あなた達に許された対処の猶予は、僅かな物でしかないだろう。



>>↓1  どうする?

聖域に撤退



あなた達は即座に撤退を選択した。
現在地は聖地に最も近く、脱出口には最も遠い。
エルフ達に発見されてからの強行突破など、およそ考えるべきではない。

駆け出すあなた達の背後から、歩哨が迫る。

聖地までの距離は近い。
あなた達の撤退は間違いなく成功するだろう。


残る問題は一つ。
果たして猿が部屋に踏み込む前に、脱出の全ては終えられただろうか?



>>↓1 コンマ判定 【敏捷対抗】

基準値 5

敏捷 1
装備 2
少女 2
距離 5

敏捷 -13 (ミュータント・エルフ)

目標値 2


【敏捷対抗】

目標値 2  出目 3

失敗……



>>↓1  【雷速】 を用いて判定結果を覆しますか?

使うか
食料欲しい


あなたは咄嗟に二人を抱え、そしてブーツへと命じた。

瞬間、あなた達は一条の稲妻と化す。
音すらも残さぬ疾走によって、瞬く間に聖地に続く通路へと姿を消した。

勿論、迫るエルフ達があなたの背を見る事はありえなかっただろう。



無事に逃げ切り、大樹の根元まで辿り付いたあなた達は、揃ってため息を吐いた。


『……幾らなんでも、敵地でのんびりしすぎましたね。
 どこか気が抜けていたのかも知れません』

『私も、一回抜けれたんだから、って思ってたのかも……』


あなた達は互いに謝り、そして互いに戒めあった。
今後は油断を消し、確実な脱出を成功させよう、と。


【8:30】



あなた達の一度目の脱出はこうして失敗に終わった。

今、村の残骸が残る部屋に出れば、エルフ達と鉢合わせする可能性もあるだろう。
少年と少女は再び木の根に座り込み、時を待つ事としたようだ。



>>↓1  どうする?

取り合えず、食糧庫から食糧を奪えないか提案


あなたは二人に対し、貯蔵庫からの食料の奪取を提案した。
可能であれば、聖地に篭城して準備を整え、機を待つ事も出来るだろう。


『可能だと思いますよ。
 山になる程の貯蔵量ですから、幾らか抜いた所で気付かれる可能性は少ないでしょう。
 ただし、人間が食べて害のない物かどうかが不明ですが』

『私も見た事のない野菜だったわ。
 多分、森が迷宮になってから生まれたやつね。
 実際に調べてみない事には、毒の有無も分からない』


道理だと、あなたは感じた。
現物も無しに食用可能かどうかを論ずる事は難しい。

勿論、異形のエルフ達は元々人間に近い生物である。
変異したからといって人にとっての毒を易々と食べられるようになるとは考え難いだろう。
だが、確実と言えるほど迷宮が優しくはないという事実は、あなたも知っている事だ。


◆ 次スレ

【安価コンマ】理不尽難度のダンジョンアタック その5【オリジナル】

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/14...





【8:45】



食料奪取について話し終えたあなたは、ふと精霊が周囲に近付き始めている事に気付く。
彼らがあなたに感謝を伝えた時ほどではない。
だが、少女と戦闘を行って以来離されていた距離が、縮まろうとしている。
少女と話すあなたを見て、害はないと判断してくれたようだ。


聖地において余程おかしな行動を取らない限り、彼らがあなたに敵対する事はもうないだろう。



>>↓1  どうする?

休憩ついでに精霊にも意見を求める


あなたは近付いてきた精霊にも意見を聞いてみる事とした。
彼らはこの聖地の主であり、エルフ達に加護を与える存在でもある。
脱出のために、何か参考になる情報を持っているかも知れないと考えたのだ。


"ききたいの?"

"こたえたくない おしえたくない"

"なにを ききたいの?"

"わたしのこどもを きずつけた"


……残念ながら、彼らの全てがあなたを許した訳ではないようだ。
無害と判断し敵対は取り止めたようだが、積極的な協力を行ってくれる個体は少なそうである。


恐らくは二回。
それがあなたの質問の限度であろう。
勿論、彼らの期限を損ねるような事があれば、その回数が減る事は間違いない。


"ききたいの? ききたいの?"

"おしえてあげる こたえてあげる"



>>↓1  何を聞きますか?

迷宮の奥にいる強そうなやつの印象


あなたは精霊達に、迷宮の奥地に居る強者について尋ねた。
無論、その代表となる者は迷宮の主だろう。
あなた達の目的は主の撃破である。
この情報を求めるのは当然と言えた。

だが……それに対する精霊の反応は、あなたの予想を容易く裏切った。


"おかあさま"

"わたしたちの おかあさま"

"わたしをすてた わたしをころした"

"くるってしまった"

"おかあさまは くるってしまった"

"ころしにくる"

"おかあさまが ころしにくる"

"わたしたちを おわらせに おかあさまがめをさます"


精霊達は怯えたように、あるいは狂ったように騒ぎ始める。
あなたへと届く意思は既に津波のようだ。

処理しきれずに頭痛すら生み始めたそれは。

ぱちん、と音を立てて突然に収まった。


あなたが気付けば、問いに答えた精霊達は極小の光の粒となって消えていこうとしている。
思わず手を伸ばすも、彼らは何も残さずに、溶けるようにその命を終えた。



呆然とするあなたと、精霊の死に、他の何者も気付いた様子はない。
不自然すぎるほどに、誰もが何も起こらなかったという体で時を過ごしている。


【9:00】



……あなたに協力的な精霊は、失われた。
最早あなたが精霊から知りうる事は何もないだろう。



>>↓1  どうする?

【少女と少年の様子を探る】

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