目を戻し、森の中を歩き続ける。

特別な物はない。
いや、目に映る全てがこの迷宮では特別ではある。
ただ単に、この楽園の中ではあらゆる物が正しく保たれ続けている。

その世界は、あなたに何かを与えてくれたわけではない。
だが、確かに心を軽くしてくれた。



【22:45】


>>↓1  どうする?

少年と今後の予定を相談


あなたは木々の間を抜け、入り口近くへと戻ってきた。

そして気付く。
そういえばこの後どうするのかを確認していなかった、と。

聖地を抜け街に戻るならば、再び縄張りを抜けねばならない。
相当の時間が経っている今、猿達は目を覚ましてしまっているだろう。
聴覚が満足に機能していないとしても、もし見つかってしまえば風の刃が襲い掛かるのは間違いない。


あなたは慌てて、少年に相談する。
だが、少年の反応はあなたの予想と異なっていた。


『あぁ、その事なら心配ありません。
 帰り道の障害は、今消えようとしています』


透明な微笑みで少年は答える。


……あなたは唐突に、その透明さに危うさを感じた。

悪い物が全て流れ落ちたような透明さ。
それはそうだろう。
少年の顔からは今、微笑み以外の何もかもが消えうせている。
あなたの知る、人間らしい少年の笑顔とは、余りにもかけ離れすぎている。


障害が消えるとは、どういう事か。
あなたは、少年へと問い質す。



◆ 友好度判定……成功



『……エルフがどういう種族か。
 あなたは知っていますか?』


その話題の転換に、あなたは何故か寒気を感じた。
答えを返す事も出来ず、言葉を待つ以外に何も出来ない。



『簡単に、並べていきましょうか。

 彼らは、排他的で余所者を拒み、
 風の精霊の加護を受け、
 森の中で暮らし、
 極めて鋭い感覚を持ち、
 仲間を愛する。

 エルフはそういった生き物で。
 そして、その命は精霊に近い。

 彼らの生を支えているのは肉の体ではなく、聖地に存在する大樹です。
 大樹が失われれば、その身は露と消えてしまう。


 ……最後の巫女が彼女で本当に良かった。
 それだけが、僕達の最後の希望だったんです』



あぁ、とあなたは理解した。
全てが音を立てて繋がっていく。

そして、今少女が何をしようとしているのかも、あなたは知ってしまっただろう。


◆ 魔物の情報を獲得しました、情報を開示します


■ ミュータント・エルフ


不確定名 : 無毛の猿

極めて醜い姿を持つ、毛のない猿のような魔物。
皺だらけの肌色の皮膚、黄色く濁った瞳、ぶよぶよと膨らんだ頭部、顔より大きい異様な耳が特徴。

知能が高く、狡猾で、魔法を扱い、集団を形作る。

昼行性の個体と夜行性の個体が存在し、昼夜問わず縄張りの見回りを行っている。
ただし、夜はその数が少ない。

リーダーの存在は、少なくとも現時点では確認されていない。

その正体は、迷宮化以前の森で暮らしていたエルフ達である。


僕達は、何もかもを終わらせるために、ここに来たんです。



少年はそう呟き、静かに目を閉じた。


あなたは、少女が今まさに何を行っているのかを知った。
勿論、細かな手段についてはまだ分からない。
しかしその目的は、少年の言を鑑みれば明白だ。

迷宮によって魂と肉体を異形へと歪められた同胞を、救わんとしているのだ。
自身すらも巻き込んだ、死による絶対の安息をもって。


あなたは荒れ狂おうとする心の内で必死に考えた。

どうするべきなのだろうか?
少女を止めるべきか、ただ見守ってやるべきか。
止めるとしても、自身の言葉がそれほどの重みを持っているのか?



>> 【19:20】以降の書き込みのみ有効 ↓  どうする?

止めるにしても見守るにしても彼女と話したい

...自分はまだ彼女に言いたいこと、聞きたいこと、
知りたいことがいっぱいあるんだから


……少女と、話をしなければならない。

あなたはそう結論した。


止めるか、見守るか。
どちらを選ぶかは未だ考えられない。

当たり前の事だ。
あなたは何も知らない。
たった今僅かな情報を与えられただけで、あなたが考える全ては想像によって補われた物でしかない。

二人の味わっただろう絶望も、心を蝕んだであろう苦痛も。
何もかもが空想の産物でしかありえない。


話をしなければならない、とあなたは断じた。

現実によって空想を塗りつぶすために。
正しい判断をするために。

そして何より。


"……私にはまだ、彼女に言いたいこと、聞きたいこと、知りたいことがいっぱいあるんだから"





少女へと歩むあなたを、少年は無言で見送る。

異端者たる少年は祈らない。
神などいないと信じる彼は、ただあるがままを受け入れるように、木々に体を預けるだけだった。


『……聞こえてたわ。
 全く、お喋りなんだから。
 いつもいつも余計な事ばっかり』


少女は、あなたが何を言う前に、そう切り出した。


『昔っからそうなのよ。
 口を噤むって事ができないの。
 にこにこしながら要らない事を言うせいで、村に遊びに来た時も大人達に怒鳴られてたわ。

 最後くらい黙ってくれるかと思ったけど、やっぱりダメだったかぁ』


額を幹につけたまま、おかしそうに少女は笑う。
その声は、少年の透明さとは少し違っていた。

……少女の心は、穏やかに凪いでいる。
少年のように感情が切り落とされたものではない。
これで良いのだと全てを納得した者だけが持つ平穏のように、あなたには感じられただろう。


『それで、あんたはどうするの?
 ……出来たら、静かにいかせてくれたら、私は嬉しいけど』


まだ決められない、とあなたは答え、続けて言葉を返す。
話をしたい、と。


『……そう、分かった。

 いいわ、何でも聞いて。
 あんたには返しきれない恩が出来たし、それに』


少女は幹から額を離し、あなたへと向き直って微笑んだ。


『対等の仲間、って言っちゃったしね』





少女はその最期の儀式を、あなたのために中断した。
あなたに与えられた猶予は、十分にあるだろう。



>>↓1  どうする? (あなたはまだ結論を出していないため、少女を止める、あるいは別れを告げる事は出来ません)

エルフの里がダンジョン化した理由とエルフがミュータント化した事の関係について聞く


あなたの問いに、少女は答える。


『森が迷宮になった理由は、私には分からない。

 でも、神殿の連中は言ってた。
 ……神様の奇跡。
 人々の成長を促すために、天より与えられた試練だ、って。

 馬鹿みたいな話。
 自分達に降りかからなかったから言えるのよ。

 神なんて居ない、お前達が祈っている相手は悪魔だって、連中相手にあいつは言ったわ。
 そっちの方がきっと正しい』



少女の声は、平穏に満ちたままだ。
辛いはずの過去の事実を、淡々とあなたに伝えていく。

……だが、その手が握り締められているのを、あなたは気付いただろう。



『……変異の理由は、私達も調べたわ。
 あいつを死なせないように毎日迷宮に潜りながら、ずっと。
 皆を元に戻す方法はないかって、必死になってね。

 でも、欲しかった情報は一つもなかった。

 迷宮は、誕生の際に内側に居たものを怪物として変異させる。
 それが元に戻った事は一度もない。
 私達に分かったのは、たったこれだけ』


少女は言葉を止め、あなたを見つめた。
その瞳に揺らぎはない。



>>↓1  どうする?

少年と少女の関係と過去を聞く


あなたの次の問いは、予想の外だったのだろう。
少女は目を丸くして、不思議そうな様子だった。


『……そんな事聞かれるなんて思ってなかったわ。
 あいつと私の関係かぁ……。

 幼馴染、ってやつなのかな。
 今は落ち着いてるけど、昔は好奇心まみれの奴でね。
 森に入って探検してるところに、たまたま私が鉢合わせたの。
 本当にまだ小さい頃にね。

 私は人間ってそれまで見た事なくて、短い耳が不思議だったわ。
 その日はなんとなく一緒に遊んで、それ以来時々、森の中であいつを探すようになった。

 大人達に知られた時は大変だったっけ。
 次代の巫女たる者が余所者と戯れるとは何事か、なんて。
 勿論そんなの無視して遊びまわってやったんだけどさ』


少女はおかしそうに、くすくすと笑う。
それはあなたが見た中で、最も輝かしい少女の笑顔だった。
懐かしむように、少女は続ける。


『森がこうなってからは、ずっと二人で支え合ってきた。

 ううん、違うかな。
 ずっと、支えてもらってたんだと思う。
 あんたが居なかったら、私はここに来れなかったけど。
 あいつが居なかったら、私は今日まで生きていなかったわ。

 ……それと、これは誰にも秘密だけど。
 あいつが神殿の連中に呪われてなかったら、私はきっとこの森を諦めてた。
 どこか別の聖地を探して、新しい村を作ろうとしたでしょうね。
 あいつの子供を沢山産んで、二人で育てて、大きな村の礎になる……。
 そんな夢を見た事もあるわ。

 私達の関係は、そんな感じ』


少女は言葉を止め、あなたを見つめた。
その瞳に揺らぎはない。



>>↓1  どうする?

もし儀式を行う前に死んだらどうするつもりだったか聞く(もしかしたら死なせずに済むかも知れないから)


『あぁ、それね。
 あんたの荷物に突っ込んだ紙、あるでしょ?
 それを見るのが早いわ』


その言葉に、あなたは荷物を漁った。
すぐに折り畳まれた切れ端を見つけて開き、書かれている文章を読む。


"目の前にある大樹をどうにかして切り倒して。
 やって欲しい事はそれだけで、安全に脱出する方法も同じ。
 木を切り倒せば、猿は消えて居なくなる。

 ただし、脱出は素早くするように気を付けて。
 縄張りが開放されて時間が経てば、新しい棲家を求める魔物で混乱が起きる可能性もある"


『読んだ?
 そういう事。
 精霊に負担をかけたくないからゆっくりやってるけど、無理に力で終わらせる事も出来るわ。

 ……まぁ、その、怒った精霊に何かされる可能性はあったけど』


少女は気まずそうに顔を逸らし、小声であなたに謝った。


『あんたに会う前の事なら、私が死んでもあいつが居る。
 きっと一人になっても心を折らないで、何とかしてくれるって信じられた。
 それでダメなら、私が何をやってもダメだったんだ、って諦めもつくわ』


少女は言葉を止め、あなたを見つめた。
その瞳に揺らぎはない。



>>↓1  どうする?

本当に他に方法は無いのか?
ダンジョンの主を倒すとか


『他の方法……?

 あぁ、もしかして知ってるの?
 吟遊詩人が時々歌っているものね。

 あの異端の英雄の話は』


あなたは少女の言葉に、首を捻った。
初めて聞く話である。
だが、その名を聞く限り、少年の呪いに関する事のように思える。


『異端の烙印からは、迷宮の主を殺せば開放される。
 過去にそういう英雄が居たって実例があるし、神殿も認めている事よ。

 もし、主が本当に倒せるなら、全てが上手く行くわ。

 主が死んだ迷宮の魔物はその全てが命を落とす。
 エルフは死によって救われて、あいつは呪いから逃れられる。

 ……だけど、そんな事が出来るなんて信じられるほど、私は自惚れてない。
 あの大英雄を殺した化け物を相手取るなんて、ただの自殺。

 そうなれば、何も救えないまま、ただの無駄死にで終わってしまう』


あなたは、自身の心がざわつくのを感じただろう。
大英雄を殺した。
つまりは、あなたの姉を。

あなたはついに姉の最期にまつわる情報を獲得した。
それがこのような機会でさえなければ、胸の内に達成感を得る事も出来たかも知れない。


少女は言葉を止め、あなたを見つめた。
その瞳に揺らぎはない。



>>↓1  どうする?

正体明かす

そして一緒に主を倒そうと誘う


解決法は、至極単純なものであったと、あなたは知った。
主を倒せば良いのだ。
何もかもを救うには、それで事足りる。

残る問題は一つ。
それが可能であるという可能性を、少女に示さなければならない。


そして、都合の良い物を一つ、あなたは生まれつき持ち合わせていた。

フードに手をかけ、取り払う。
そこにあるのは当然、大英雄と酷似した、あなたの顔。


少女は驚愕に息を呑んだ。

そこへ、畳み掛けるように声を投げかける。
主を倒そう。
倒して、一緒に全てを救おう、と。

返答は―――。



◆ 友好度判定……成功


返答は、すぐにはなかった。

少女はただ、何かを堪えるように体を震わせている。

凪いでいたはずの少女の瞳が様々な感情に揺れる。
その中に憎悪が含まれているのを、あなたは確かに見た。


『そう……あんただったのね。

 ……あんた、この街だと一部で有名よ。
 大英雄に、迷宮の攻略を諦めさせた女、ってね。

 最期を伝えた連中が、口を軽くして漏らしたせいよ。
 一時期、流行ったもんだわ』


少女は吟遊詩人のように、語る。
いや、恐らくは実際に真似ているのだろう。
いつか少女が聞いたであろう、その詩をあなたへ披露する。


『迷宮の果実を手に入れた大英雄は、しかし主によって追い詰められる。
 けれどその手にある秘宝を使えば、たちまちあらゆる傷は癒え、奇跡の力が溢れ出る。
 魔物ごときなにするものぞ。
 かの輝かしき双剣は、ついに十の偉業を成し遂げるのだ、ってね。

 ……そう、秘宝さえ使えば、とっくの昔に解決していた』


そして、そうはならなかった事は、あなた自身が最も良く知っている。

少年は言った。
少女があなたの正体を知れば、きっと感情を抑えられない、と。

それをあなたは誤解した。
少女と姉の間に、因縁があるのだと。

しかし、事実はそうではなく。
少女の憎悪は、今明確にあなたに向けられている。



『これがただの八つ当たりだって言う事は、分かってる。
 あんたが恩人である事も、間違いない。

 ……だから命は取らない。
 後に残るような怪我もさせないと誓うわ。

 でも、私の邪魔もさせない。
 儀式が終わるまで、そこで寝ていてちょうだい』


風が渦巻く。
それは少女の魔力ではない。
少女の感情に呼応した精霊達が、怒りを纏ってあなたへと敵対していた。





◆ 対友好的NPC戦闘を行います
◆ 友好度判定に成功したため、この戦闘であなたが死亡する事はありません



◆ この戦闘における特殊ルール

対友好的NPCとの戦闘では、自動的にあなたは手加減します。
あなたの攻撃でNPCが死亡することはありません。
この手加減は明確に『殺す』などのキーワードを用いる事で解除する事も出来ます。



【先制判定 敏捷対抗】

基準値 5

敏捷 1 (あなた)

敏捷 -8 (少女)

目標値 -2 (自動失敗)



楽園に荒れ狂う風は、一点へと集中を始めた。
あなたへではなく、少女へと向けて。
たちまちの内に暴風と化したそれは、容易く少女の体を樹上へと打ち上げた。


『あんた相手に接近戦をやる気はないわ。
 精々石でも投げてなさい。
 この風に通用すると思うのならね』


巨木の枝、その一本に立ち、少女はあなたを睥睨する。
その周囲には人間一人程度はあっさりと吹き飛ばすであろう、竜巻のごとき轟風。
少女の言の通り、投石程度での貫通は考えるだけ無駄だろう。


あなたは少女を見据えながら、自身の心臓に意識を向ける。

……芳しいとはとても言えない。
あなたがここまで通った道程は縄張りの北部。
霧が薄く、聖地での休息を含めても完全な回復は望めなかったのだ。

全力の魔力撃は二回撃てるかどうか。

肉体の強化も考えれば、限界は一度か。
それも、その一撃で仕留め損ねれば意識を保てるかは怪しい所。

意識を失ってしまえば、その後どうなるかは、簡単に想像がつくはずだ。
あなたが目を覚ました時、少女は既にこの世にいないだろう。


少女は枝の上で、余裕を見せながら魔力を手に集めている。
少女の能力を知るあなたは、それが魔力を物質に変換しているのだと、気付く事が出来た。



>>↓1  どうする?

ライトニングさんはまだ少女知らないだろうしなるべく伏せときたいな

とりあえず防御を固めとく


あなたは一先ず防御を固める事を選択した。

枝は遠く、とても一度の跳躍で届く距離ではない。
あなたは一度だけ、自身の履いているブーツを見た。

雷の速度で体を運ぶ、とそれはあなたに語りかけた。
だがそれは、あなたの可能な範囲の行動を一瞬で完了させる、というだけのもの。
その身を雷そのものと化して樹上への道を開く力では、決してない。

……今は届かない、とあなたは唇を噛んだ。
少女の攻勢を耐え凌ぎ、好機を待つ他に手段はない。



◆ 防御選択により、攻撃への対処判定に補正が与えられます


少女はその手に生み出した五本の短剣を、そっと放る。
何かを狙う、などという動きではない。
それをあなたが訝しんだ、次の瞬間。

少女の周囲の風が下方へ、あなたへと向けて開放された。
短剣は暴風に背を押され、一本はあなたの胴へと、残る四本は逃げ道を囲むように降り注ぐ!



>>↓1  どうする?

双剣で弾いてフィジカル敏捷に3振って接近


あなたは咄嗟に双剣を抜き払った。

五本の短剣は逃げ道を塞いでいる。
とても避けきれるものではない。

ならば剣で弾く。
幸い剣は実体であり、防ぐにあたって特別な力は必要ない。
それがあなたの判断だった。


高速で迫る短剣へ向けて、あなたはその腕を振るう。



>>↓1 コンマ判定 【短剣の打ち払い】

敏捷 1
装備 1
防御 3

目標値 5


しかし、あなたの剣は虚しく空を切った。
短剣を止める物は最早なく、正確にあなたの胸へと突き進む。


>>↓1 コンマ判定 【物理的被害の軽減】

耐久 7
装備 1

目標値 8

※ この判定は、目標値と出目の差によって結果が変動します


ざん、と音を立てて、短剣は革鎧を穿った。

だがそれだけ。
あなたの肉体に触れているのは、ほんの切っ先のみ。
僅かに血が流れた程度だろう。
行動には何の支障もない。

そう考えたあなたが、次の行動のために短剣を抜こうとした、その時だ。

黒い雷があなたの視界に映る。
その現象をあなたは良く知っている。
この後、自身の身を何が襲うのかも。

それは予想通りに、魔力の爆発となってあなたを襲った。

体を硬直させながらも、あなたは被害が軽い事を悟る。
焼け付くような痛みはあるが、少なくとも動きが鈍る事はないだろう。

だが……。



◆ 対処失敗により、行動がキャンセルされます


【敏捷対抗】 自動失敗


『……なるほど、これは通るのね。
 じゃあ次、ダメ押しさせてもらうわよ』


樹上から声が降る。
攻撃を受けたあなたが動きを止めていた間に、少女は次の手を用意し終えていた。

あなたの周囲に風が渦巻く。
極小規模の竜巻が、内部に石や枝を巻き込んであなたへと集束する。
悪い事に、そこには外れた後に風で回収されたのか、四本の短剣までが見えた。



>>↓1  どう対処する?


雷速で竜巻を突破して少女に接敵、魔力撃全力のパンチ
---

迫る竜巻を睨み、あなたは決断した。
あなたが持つ戦闘手段の全てを知る少女は、かつてない強敵である。
様子見に回る暇などなかった。

一撃での速攻に賭ける。
最早それしかない、と。

次の瞬間、あなたは竜巻へと踏み込み……。


◆ 雷速により、竜巻を確定回避します


そして誰の視界からも消え去った。

少女は元より、精霊ですら目を見開いただろう。
あなたの速度は今や雷と等しく、一瞬という言葉すら長い。
誰にもその挙動を悟られないままに跳躍し、巨木を駆け上がる。


……しかし、そこまで。
幹の半ば、少女に手が届くまで後半分を残して、ブーツの魔力は失われる。
そして、あなた自身の足は、巨木を駆け上がるだけの力を持ってはいないのだ。



【壁走り】

敏捷 1
装備 2

壁走 -5

目標値 -2 (自動失敗)



体の勢いを失って、あなたは慌てて幹に手をかける。
無様な落下はそれで防げたが、道程は遥か遠い。


一つだけの良い材料は、少女が未だあなたを見失っている事だけだ。
あなたは焦る心を必死に抑え、次の一手を導き出す。



>>↓1  どうする?

小枝を切って投げ落とす


あなたは手近な枝を一本、音を立てないよう慎重に切り取った。

相手はあなたを知っている。
だが、逆にあなたも少女について、知っているのだ。

少女の索敵方法。
それは音による探知が主軸となっている。

つまり、少女の注意を逸らす方法は、これである。


あなたは枝を、地面へと向けて放り投げた。
当然の事としてそれは、小さな音を立てる。


『……そこかっ!』


暴風が再び短剣を走らせる。
だが当然、そこにあなたは居ない。

少女は、その一音をあなたが地を蹴った音とでも思ったのだろうか。

幹にあなたが居るとは思わないらしい。
必死になって地面に目を向けている。


ひとまずは時間を稼ぎ出す事に成功した。
だが、それも多くはない。
もし少女が周囲全てを巻き込む竜巻を呼びでもすれば、幹にしがみつくだけのあなたは一たまりもないだろう。


>>↓ どうする?

アイデア列挙してからの投票を希望
もしかしたらアイデア一つしかないかもだけど


↓3つの候補を募集します。
--

1)
石をばらまいて音を立てる


2)
コルクで耳栓をしてフィジカルブーストで敏捷極振り少女に可能な限り近づいて魔力撃最大で近場を殴って轟音を鳴らして少女を気絶させる


3)
石をばら撒いて音を立ててから
フィジカルブーストで樹を駆け登って、少女の足場を魔力撃で切り落とす
音は耳栓で対処
魔力は殴り合いができる程度には残しておく



1)
石をばらまいて音を立てる

に決定されました。


何をするにしても、まず時間が足りない。
あなたは更なる時間稼ぎを選択した。

荷物からそっと取り出すのは、投擲のために拾い集めた石。
少女は、今あなたが何をしているのかを理解できていない。
軽度の混乱状態にあると言って良いだろう。
それを加速させるために、あなたは石を広範囲にばらまいた。


石達はバラバラと音を立てて地面に落ちる。
少女はそれを目で追って……。



>>↓1 コンマ判定 【不運の回避】

幸運 9

目標値 9


少女は音の正体を知っただろう。

注視していた地面へと降って落ちたのだ。
当然の事ながら、石がどこかから投げられたと気付かないはずがない。

幸運な事に、あなたの居場所までは分からなかったようだ。
だが、その目は地面を離れてしまった。


少女は舌打ちを漏らすような仕草の後、短剣を風で呼び戻す。
暴風を超えて少女へと到達したそれは、胸の中に吸い込まれて消えた。



>>↓1  どうする?

フィジカルブーストで樹を駆け登って、少女の足場を魔力撃で切り落とす


魔力を心臓から汲み上げ、肉体の各所へと浸透させる。
木を駆け上り、少女に接近するために。



>>↓1  数値を指定して下さい (大樹駆け上り用のブーストのため、敏捷を主として下さい)

最大で


体内に嵐が起きる。
轟々と魔力が渦巻き、あなたの全身を変異させていく。

今、あなたの力は既に人の域には無い。

最早迷宮の怪物と同じ。
いや、それと比してもなお強者の領域に踏み込んだ。



眼前の樹皮に爪を立て、強靭なバネそのものと化した両足を引き絞る。
あなたはこれより、上空へ放たれる一本の矢に変貌する。




―――ところで、あなたは覚えているだろうか?




マナ・エクスチェンジという魔法は、術者の持つ全ての魔力を物質へと変換するものである。

この魔法は習得の難度と比べて、非常に強力な効果を持つ。
魔力が凝固したそれは、武器として扱えば他に類を見ない名剣となり、一部の天才のみが扱う魔力撃すら限定的に可能にする。



しかし、その代償も大きい。
その一つに、一時的な魔力感知能力の喪失が上げられる。


『ああ』


……今、少女は短剣を消し去り、この魔法を解除した。
それが意味する所は、つまり。


『そこに居たのね?』


>>↓1 コンマ判定 【敏捷対抗】

基準値 5

敏捷 9

敏捷 -8 (少女)
距離 -3

目標値 3


少女とあなたの目が合う。
その瞬間、少女は一切の躊躇なく、その体を宙に躍らせるべく身構える。

轟風に身を任せ、あなたの跳躍が届かぬ遠方へ流れ行こうと。


だが、それよりも早くあなたは駆け出した。

最早一秒未満の猶予すらない。
ここで逃げられれば、少女は二度とあなたの射程内に近寄らないだろう。


全身の力を幹に叩き付け、少女の立つ枝へと飛び上がる!



>>↓1 コンマ判定 【壁走り】

敏捷 9
装備 2

壁走 -5
不利 -2

目標値 4


……そうして、全てが終わる。
あなたの双剣が届く一瞬前、少女は風に連れ去られ、視界の外へ消え去った。

対空するあなたへ、声だけが届く。


『最初からこうしておけば良かったわ。
 あんた、浮いてる間は何もしようがないんだし。

 ……怪我させちゃったらごめん。
 あいつに治してもらうから許しておいて』


轟、と風が鳴く。
暴風が、あなたの体を空に持ち去ったのだ。

あなたに為す術は最早ない。
風を蹴る術も、空を舞う術も、あなたは持たないのだから。

やがて下方からの風は消え、地面へ叩き付けるために、巨大な風の塊が……。


『さようなら。
 ……一応もう一回言っておくけど、脱出は早めにね』





>>↓1 コンマ判定 【物理的被害の軽減】

耐久 9
装備 1

目標値 10

※ この判定は、目標値と出目の差によって結果が変動します


衝撃が、あなたの何もかもを断ち切った。

瞳は白く閃く世界しか捉える事はなく。
耳は大河の流れのような雑音しか齎さない。


ごぽり、と、あなたの口から鮮血が漏れた。
恐らくは折れた骨がどこかに突き刺さったのだろう。
だが、その事実を認識する事すら、今のあなたには出来ない。


……意識が暗い世界に呑まれる前。
最後に見たものは、全てを削ぎ落とした表情であなたへ歩み寄る、異端の少年の姿だった。


……あなたが目を覚ました時、森の聖性は既に失われていた。

ばきり、ばきり、と、不吉な音がする。
その正体をあなたはぼんやりと認識した。

聖地が迷宮に呑まれようとしているのだ。
正しい姿は奪い去られ、異形へと歪み行く。



"まただ"



体を起こしたあなたは、そこに更なる絶望を見た。

大樹に、少年が凭れている。
その半身を真っ赤に染めて。
最後の宝物であるかのように、一本の短剣を握り締めて。



"まただ"



少年の首筋には傷。
……少女を見送った後に、きっと彼には何も残らなかったのだ。



"また、わたしのせいだ"



いつかの悪夢があなたを苛む。

姉が死んだ。
あなたのために。

鼠達は死んだ。
あなたのせいで。

二人も死んだ。
あなたのおかげで。




【発狂抵抗】

意思 3

仲間 -3

目標値 0 (自動失敗)



何かが砕ける音が、あなたの中から響いた。


捩れる木々があなたに迫る。
それでも、立ち上がる気力は、いや、逃げようとする正気はどこかへ消えた。

静かに涙を零しながら、あなたは自身を嘲笑し続ける。



◆ 状態異常 【発狂】 により自殺が解禁されます

>>↓1  逃げますか?

逃げるなんてとんでもない
あの世へ行った二人の後を追いかけるのだ


"こんなことなら、はじめから"


悪意に満ちた枝が、腕のように伸びあなたを拘束する。
それすら認識できないあなたは嗤い続ける。


姉を思う。
きっと世界を駆け巡っていた。
誰をも笑顔に変えて、誰より輝かしい笑顔で。

鼠達を思う。
きっと森を走り回っていた。
あの幼稚で温かい、仲間への愛を抱えて。

二人を思う。
きっと酒場で料理に舌鼓でも打っていた。
いつか聖地に辿り着こうと、苦痛にその胸を苛まれても、二人で寄り添って。


そう、全て、たった一人、この自分さえ居なければ、今もそうなっていた。



"はじめから、わたしなんか、うまれなければ―――"





DEAD END


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