プーチンとロシア

プーチン大統領がいかにに 20年でロシア軍を再建し、ウクライナで破壊したか(2023)


以下、ロシアBusiness Insiderに掲載された、マーク・ガレオッティのインタビュー記事の訳:
ロシアのプーチン大統領が 1999 年に権力を握ったとき、ロシア軍はソ連崩壊後の10年間の衰退を経験していた。次の 20 年間で、プーチン大統領と彼の軍事指導者たちは、世界最大の核戦力に支えられた高度な軍艦と航空機、強力な武装部隊を備えた、世界中でさまざまな作戦が可能な部隊にそ軍隊を再構築した。

冷戦の最後の年からロシアを研究してきたロシアの安全保障問題の学者であるマーク・ガレオッティは、自著「プーチンの戦争:チェチェンからウクライナまで」で、プーチン政権下のロシアがどのように軍を改革し、刷新し、それを ヨーロッパと中東での戦闘でのテストした結果を記述した。

以下で、ガレオッティは、これらの改革、それらが達成したこと、そしてウクライナでの壊滅的な戦争で、プーチンが彼が構築した軍隊をどのように浪費したかについて説明している。

このインタビューは、わかりやすくするために軽く編集してある。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

プーチンの権力獲得時のロシア軍
プーチンが1990年代末に権力の座に着いたとき、ロシア軍はどのような状態だったのか? どのような様相にあったのか?

本当に壊滅的な状態だったというが、正直な答えだ。本質的に、意味のある改革の試みなされていなかった。率直に言って、当時のロシア国家には、軍を管理し、制御し、保護するためのリソースがまったく不足していており、軍はまさに、シュリンクした赤軍だった。

そのため、ドイツから撤退した兵士たちの例のように、家も兵舎もなく、暖房のないタンク小屋に住んでいた。給料をもらっていない兵士がいたので、彼らが建設労働から契約殺人まで、あらゆるものとして副業をしていたのも不思議ではない。

このコンテキストで、実際に起こっていたことは、軍がロシアの安全を保証するものではなかったということだ。軍は実際には、ロシアとその近隣諸国の安全に対する脅威だった。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

プーチンの権力獲得時のロシア軍との関係
プーチン自身、ソビエトの諜報機関で訓練を受け、出世したが、権力を掌握したときのロシア軍との関係はどうだったか? そして彼はそれに対してどのような役割を想定していたか?

プーチンは実際、軍と何の関係もなかった。結局のところ、プーチンはタフガイの活動的人物を装うのが好きな男であること留意すべきだろう。彼は、コクピットでの写真撮影以外で、戦車やジェット戦闘機の前を通り過ぎることはほとんどなく、意味のある軍隊経験はない。

彼は大学在学中に最低限の予備士官の訓練を行い、大学を離れてKGBに入局するとすぐに、将来の予備士官の責任から逃れるためにKGB職員であることを利用した。彼がKGBを離れたあと、それ以外のキャリアは、実際にはサンクトペテルブルクで一種の政治的フィクサーであり、当時、軍駐屯地と取引をしていて、実際には何よりもビジネス取引だった。

そのため、プーチンは軍事経験がないものの、ロシアが本格的な軍事大国になる必要があるという非常に明確な信念を持って権力の座に就いた。大国の地位に関する彼の考えは、非常に19世紀的なものであり、大国には他国にたいして望むことを行うように威嚇したり、強要したりする能力があるという事実を含んでおり、最終的にはロシアが強い軍隊を必要とするというものだった。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

ジョージア紛争におけるロシア軍
次の8年間で、ロシアは2つの戦争を繰り広げた。ひとつはチェチェンで、その次がジョージアでより短い戦争だった。2008年のジョージアでのロシア軍のがっかりなパフォーマンスにより、プーチン政権の国防相はいくつかの深刻な改革を推し進めることができたとあなたは書いている。ジョージア紛争で、ロシア軍はどのように劣勢だったか?

ジョージアとの戦いという問題は、まったく疑念の余地のないことだった。ロシアとジョージアの戦力と規模の差異はあまりに大きく、したがって当然のごとくロシアが勝利した。しかし、現実に起きた結果より、はるかにきちんと効果的に勝つという思われていた。

実際、これは実際には、攻撃を受けて長期間にわたり機能を停止して空軍基地、誤射事故、ある例では将軍が軍の通信ネットワークを使って自分の指揮下の軍と連絡できず、通話するためだけに、ジャーナリストの衛星電話を借りねばならないことさえあった。このような不手際を実際にまとめると、多くの苦情につながった。

ロシアは、ジョージアの防空戦力によるものよりも、自国の誤射で多くの航空機を失った。戦闘による損傷よりも多くのロシアの車両が再び故障した。つまり基本的には、反抗的で保守的な最高司令部に改革の必要性を認めさせるために必要な材料が手に入った。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

ロシア軍改革の意図
そこから生まれた改革「ニュールック」軍において、ロシアの指導者たちは、、軍の外見と機能について何を変えようとしていたのか?

本質的には、軍をソビエト時代から脱却させようとするものだった。問題は、ソビエト軍は、第2次世界大戦のトラウマと、ある種の大規模な数百万人の軍隊によって祖国を守る必要があるかもしれないという考え方に基づいていたことだ。なので、必要とあれば、予備役を動員できる組織構造を持っていて、そのために、備えのできている多数の徴集兵がいたので、改革の主眼は量より質だった。
~^ 論点は、当時のロシアの指導部が認識していたのは、実際にはロシアは自らの生存にかかわるゆおな大戦争に直面するつもりはないということだった。プロパガンダを広めていたものの、実際にはNATOに東方拡大する意志はなかった。もし中国が侵略したとしても、率直に言って、それに対する唯一の有意味な対応は核攻撃だけだった。その代わりに、彼らが考えていたのは、ロシアは将来、より小規模でよりまとまりのない国境紛争や戦力投射任務に関与する可能性が高くなるため、より柔軟で効率的で全般的に近代的な、より小規模な軍隊が必要だということだった。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

ロシア軍改革の効果
2015 年までに、ロシアはさらに2つの戦争に関与した。2014年のウクライナでの戦争は、主に代理戦争だった。その後、シリアへの限定的な介入が行われた。これらの紛争は、ロシア軍の能力と、それらの改革の影響について何を示したのか?

それら、ロシア軍の改革が実際に機能していることを示していた。改革は進行中ではあったが、2014年のクリミア占領では、ロシアの特殊部隊が我々の予想よりもはるかに専門的かつ効率的であることが実証され、同様にシリアでは、我々が考えていたよりロシア空軍ははるかに効率的に機能した。

最初の部隊が(シリアに)展開されたとき、西側の防衛アナリストのサークル内では、ロシア軍はその部隊を維持できず、整備が悪く、必要なロジスティクスを得られないなど、遅かれ早かれ、ロシア空軍機は落ちてしまうだろうと考えられていたが、そでもロシア軍は何とかした。

つまり、改革が実際に大きな影響を与えていることを示していたが、後になって考えると、それは他にも2つのことを示していたと思われる。まず第1に、実際の改革は依然として軍隊内の少数のエリート要素に限られていて. 全ロシア兵がその能力を持っていたわけではなかった。しかし、第2に、ロシアは大戦争を戦わないだろうから、それはうまくいっていた。そして、2022年2月に、しっぺ返しをくらうことになった。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

ロシア軍の近代化の取り組みの実際
ドンバスとシリアについて章の後、ロシア軍への投資と近代化の取り組みについての章がある。高額の投資とは何か、ロシアが新しい装備をすべて購入することで軍隊に何をしようとしていたのか?

多くの点で、実際には米国を模倣しようとしたが、もちろん、スペインと同程度のGDPの国には、米国を模倣するのはいささか困難だ。にもかかわらず、ロシア軍の投資の考え方は、軍事作戦の全範囲にわたって作戦行動できる、近代的で柔軟な部隊を創るというものだった。

たとえば、近代化された核戦力が、国家安全保障の最終的なバックストップとして存在し、多様な小規模で、しばしばある種の政治的作戦を遂行する非常に柔軟な特殊部隊があり、その中間のすべてを実現すべてがある。繰り返しになるが、彼らはあらゆる基地を攻撃しようとしていたため、非常に野心的だった。それでももちろん、焦点は核戦力と戦力投射能力にあった。

ロシアは実際には外洋の海軍大国ではないので、海軍はある意味で問題児であり続けたが、それでも海軍でさえ、新しいキットなどの公平なシェア以上のものを手に入れていた。つまり、基本的に何でもできる軍隊を作ろうという試みだったと思う。これは、アメリカの防衛予算と同等の予算があれば素晴らしいことだ。しかし、予算がなければ、つまるところ、あらゆることを少しずつ実施することになり、計画のどれも実際には実現できなくなる。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

2022年からのウクライナでの戦争は、大戦争を意図したものではなかった
ウクライナでの2022年の戦争は、ロシア軍参謀本部が行うような戦争ではなかったという「無数の」兆候があったと書いているが、現在の戦争の遂行は、ロシア軍について想定していたものとどう違っているのか?

結局のところ、ロシア軍は戦闘に対してこの非常に知的なアプローチをとってきており、それについては非常に退屈な学術記事が多く書かれており、実際に戦争をどのように戦うかについて非常に明確でほとんど方法論的なアプローチをとってきた。あらゆる種類のスペクトルに沿った戦争を分類し、それぞれの分類された戦争に対処するさまざまな方法があった。

現在、4,000 万人以上の人口を抱える国での戦争は、明らかに深刻な紛争、少なくとも地域戦争にあたるだろう。ロシアの軍事ドクトリンがこのような戦争に対してどうアプローチするかについて提示する方法は、第1に長期の準備期間をかけて、それを計画するために慎重に構造化された要素を設定し、明確な指揮系統を確立し、兵士であろうと弾薬であろうと、そのために必要なさまざまな手段すべてを組み立てる。

国民はそのような準備に何か月もかけ、戦争が始まれば、自軍が国境線を越える前から、敵側の全要素を粉砕すべく、彼らがMRAUと呼ぶ、大規模なロケット砲による攻撃を行う。そして自軍が国境線を越えれば、戦争に勝つ方法について実際に1つのビジョンを持つ、明確な全体指揮官がこれを率いることになる。

この紛争には実際にはそのどれもが存在しなかった。プーチンは本当に戦争になるとは思っていなかったので、この戦争がどうなるかについてのコンセプトが存在しなかった。戦争のための特別な軍構造も確立されなかった。長期計画もなかった。必要なロジスティクスがすべて揃っているわけでもなかった中央司令官はいなかった。つまり、本質的に、この戦争はすべての規範を破っており、これはプーチンに関する限り、このような戦争になるとはことはないと考えていたことによる。プーチンは、ウクライナは黒海ではなく、国民によって守られることはなく、基本的に最初の一撃で崩壊するだろうと心から信じていたようだ。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

2022年からのウクライナでの戦争におけるロシア軍の実際
ロシアによる攻撃から 14か月が経過したが、ロシア軍の指導者が、もともと予期していたものに、立ち戻っているか?

本当の問題は、スターリンが学んだ教訓をプーチンが学んでいないことであり、それ故に、大体において、ロシア軍は行き当たりばったりである。有名かつ悲惨なことに、スターリンは第2次世界大戦の初めに、もちろんドイツがソ連を攻撃したとき、ドイツはソ連を攻撃する意図はないと考えていた。

ドイツ侵攻の最初の打撃の後、スターリンは、一歩下がって、将軍たちに将軍たちの仕事をさせ、自分は政治目標を設定する必要があると気づいた。一方、プーチン大統領は引き続きマイクロマネジメントを試みており、この場合の問題は、将軍たちが必要だと感じているだろうことを実行する権限を持っていないことだろう。古典的な例は、前統合軍司令官であるスロビキンで、彼は本質的に、ウクライナ軍の攻勢を防御するための防御を確立し、準備する必要があることに気づいたが、プーチンは彼が十分に攻撃的でないという理由で彼を解任した。

なので、将軍たちはベストを尽くしているとは思うが、戦争の初期の数週間から数か月の間に最の装備と最高の兵士を失ったという事実に対処していない。そのため、将軍たちが持っている権限では、独創的で巧妙なことを実施できるようなものではなく、プーチンは常に彼らにあらゆる種類の戦略を歪めるような政治的要求を課している.

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]

2022年からのウクライナでの戦争のロシア軍への影響
これらの失点で、開戦から1年余りで、ロシア軍は数千台の装甲車両、数十台の戦闘機を失い、数十万とまでは言わないまでも数万の死傷者を出した。戦争はまだ終わっていないようだが、この戦争の最終的な影響は、ロシア軍と軍として機能する能力にどのような影響を与えると考えるか?

より広い意味で、ロシア軍は粉砕されたと思う。戦争が明日終わったとしても、私の意見では、ロシア軍を昨年1月のレベルに再編成するには10年かかるだろう。ただし、それは、ロシアが再編成に要する費用を支出する気があり、実際に支出することが可能であり、ある種のコンピューターチップなど必要となるものすべてを入手できるとした場合だけである。率直に言って、非常に疑わしい想定だ。

プーチン大統領は、彼自身の軍事構造を大部分破壊したと思う。そのことがプーチンの政治的失墜につながるか否かにかかわらず、この戦争がプーチンの最後の戦争だと私が考える理由である。いずれにせよ、彼はおそらく将来の冒険について非常に慎重になるだろう.。しかし、私は単純に、彼は最も限られた種類の軍事展開を行う以上の軍事能力を持てなくなると考えている。要するに、プーチンは22年かけて軍事構造を構築し、それを破壊したのだ。

[ Christopher Woody: "How Putin spent 20 years rebuilding Russia's military 'and then just simply destroyed it' in Ukraine, according to an expert who watched it happen" (2023/04/25) on BusinessInsider ]





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