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被害者の社会的構築と犯罪学理論


[ Social Construction of Victims | Victiminology Theories (2018/07/18) on UKessays ]

“Some victims are more deserving of the label ‘victim’ than others. Critically analyse this statement in light of your knowledge of theories in this area.”

「一部の被害者は、他の被害者よりも『被害者』というラベルに値する。 この分野の理論に関する知識に照らして、このステートメントを批判的に分析してほしい。」

『被害者』という言葉は、何らかの形の不幸や苦しみを経験した人に関連付けられるが、警察の観点から考えるなら、『被害者』という言葉は、通常は「犯罪の告訴人を指すのに使われる」(Wakefield, 2008:315)。このエッセイは、「一部の被害者は、他の被害者よりも『被害者』というラベルに値する」というステートメントを、これに関連してさまざまな理論を使用して、批判的に分析することを目的としている。エッセイは第1に、被害者化に関連する2つの理論を分析する。第2に『理想的被害者』へのNils Christieのアプローチを探求する。第3に『理想的被害者』を表現するメディアの役割を、Madeline McCann事件とShannon Matthews事件の報道を比較することで描写する。

歴史的に犯罪学と刑事司法は刑事犯罪の理解にのみフォーカスしてきたが、1960年代以降「さまざまなパラダイムシフト、科学の進歩、社会的および政治的勢力…被害者学の理論が生まれた基盤を提供した。」これは、被害者学研究(Wilcox, 2010:978)として知られている。学者たちが、『犯罪」を犯罪者の行動と行為ではなく、加害者と同様に、被害者と時間と場所を含む『システム』として、調査すると決めたとき、この変化が起きた(Wilcox, 2010:978)。犯罪被害者と刑事司法制度における被害者の権利により大きな注目が集まることを、社会政治運動が期待したのは1960年代のことだった。そのことは、科学的運動と社会政治運動の両方で、被害者に関するさまざまな理論的展望を発展させるための理想的な機会を生み出した。まとめると、これらの視点は、ライフスタイルから広範な社会的不平等までの多くのカジュアルな影響にフォーカスしていた(Wilcox, 2010:978)。これらのさまざまな影響を強調する主要な理論は、被害者学の根本的な理論である。

1960年代と1970年代に登場したラジカル被害者学理論は、Benjamin Mendelsohnの研究に関連付けることができ(Friday, 2000:62)、ラジカル犯罪学と社会学の子孫だと考えられる。誰が『正当な』被害者であるかを決定する際の国家の役割と、刑事司法制度が犯罪者と被害者を作ることにどう関連しているかについての探求する、人権を見据えた犯罪学についてのMendelsohnの議論は、ラジカル犯罪学の起源と考えられるものだった。この議論の結果として、「ラジカル被害者学は、特に、目に見えなくなった被害者を認めている」(Marsh、2004:110)。Quinny (1972)によれば、これらの被害者は、「警察の被害者、戦争の被害者、矯正制度の被害者、国家暴力の被害者、およびあらゆる種類の抑圧の被害者」である(Marsh, 2004:110)。Marsh(2004:110)によれば、『従来』のラジカル被害者学の考えは、被害者の限られた構造的基盤の結果である貧しく無力な人々が直面する問題を表現するための助けとなったものであると言える。ラジカル被害者学と同様に、人々が「自分たちの社会的現実を認識している」かどうか、そして「国家は犯罪と被害者への対応において中立である」と考えるのが安全かどうかという考えにも取り組む批判理論家がいる(Marsh, 2004:111)。

ラジカル被害者学と批判的被害者学の類似点は、どちらも被害者学内の社会問題について理論化しようとしていることである。この被害者学の理論の1つのバージョンは、ラベル付けの重要性を通じて実証できて、Meirs (1990)が示唆するように、人々は「ラベルを主張できるが、批判的被害者学の重要な問いは、誰がラベルを適用する力を持っているか、その決定においてどのような考慮事項が重要であるか」である(Davies, 2004:38)。このバージョンでは、Meirsは「シンボリック相互作用」の仮説的見通しを使って(Davies, 2004:38)、「批判的」という言葉の実践を啓蒙している。一般に、批判的被害者学は、国家とその市民との関係に含まれる問題に注目する。「それは国家を中立とは見なさず、むしろ国家のメカニズムが我々が見ている被害者と我々が見ない被害者に貢献していると見なす」(Marsh, 2004:112)。したがって、それは中立ではなく、代わりに自発的で自己利益があり、批判的被害者学によれば、これは性別、人種、階級、およびこれらが政策用語でどのように表現されるかに関して問題を引き起こす。したがって、批判的被害者学は「資本主義と家父長制が被害者の認識と対応の方法に影響を与える方法」にフォーカスした現代社会のより広い社会的文脈を調べる理論的視点であると言える(Marsh, 2004:112)。

これらの理論はいずれも、一部の人々が特定の犯罪の被害者になる可能性があるさまざまな理由を探っている。理想的な世界では、犯罪の犠牲になった人は、心理的、肉体的、経済的、社会的に傷つけられたかどうかにかかわらず、平等な被害者と見なされ、扱われるべきだが、何が「理想的な」犠牲者を作るもかについては常に議論が続いており、Nils Christieはこの考えを探求した最初の犯罪学者だった。

1986年、犯罪学者Nils Christieは「理想的被害者」の概念を作った。Christieによれば、理想的被害者みは少なくとも6つの主要な特徴が含まれる:被害者は弱い。事件の時に立派な活動に関与していた。被害者は事件の時に非難され得ない場所にいた。被害者は彼加害者を知らなかった。犯罪者は『大きくて悪い』と見なされるか、非常に否定的な意味合いで描写される。そして最後に、被害者は被害者のステータスを主張するのに十分な影響力を持っている(Lindgren, 2011:21-22)。Christieは、誰が理想的被害者であるかの完璧な例として、「病気の兄弟を見舞に行く途中で、薬物乱用者の男性に強奪される、年配の女性」という状況を使ったが、Christieによれば、理想的被害者に対応者がいる。この例には、酔っ払って薄汚いパブにいて、自分が関係している人々に強奪される若い男性のラインに沿った何かがある。Christieはこの状況に道徳的説明責任を主張できる見通しがあると考えている:「彼はそのようなバーに行くべきではなかった。彼は酔っぱらうべきではなかった。彼はそのようや奴らと関わるべきではなかった」(Lindgren, 2011:22)。身体的、心理的あるいは経済的危害の証拠に関係なく、ある人物が『被害者』として分類されない場合、その人物は犯罪被害者の『標準的』なビジョンで構築されていないため、保護がほとんどないか、まったくなくなるというリスクをとることになる。したがって、次の議論が提起される:他の人より『被害者』というラベルに値する人はいるのだろうか?そして、影響を受けるに値するという決定ものは何だろうか?

『理想的被害者』現象は、Christie理論の各カテゴリを明確に見たいしてるにもかかわらず、通常は社会的に恵まれない背景や少数民族の人々のような一部の人々が、被害者ラベルに相応しくないように見える理由は何かという疑問を引き起こす。すべての犯罪被害者がニュースやメディアで平等に注目されているわけではないので、メディアは「被害者」というラベルの非常に多くの人々から奪ったと非難されるべきと論じうる。「メディアや公式の言説に反映され強化された『被害者の階層』が存在する」と言われてきた(Greer, 2007:22)。一方で「理想的被害者」の地位を獲得し、メディアの注目を集め、世界規模の悲しみを共有し、刑事司法の方針と慣行に変化をもたらす可能性のある人物がいる(Greer, 2004; Valier, 2004, Cited by: Greer, 2007:22)。階層のもう一方には、被害者の地位を獲得できず、あるいは『不当な被害者』と見なされ、その結果、「メディアの注目をほとんど受けず、より広い範囲で社会的世界で事実上気付かれずに通り過ぎられる」人物がいる(Greer, 2007:22)。Madeline McCannの失踪とShannon Matthewsの失踪のニュースとメディア報道の比較は『理想的被害者』を表現するメディアの役割を説明するのに役立つ。

2007年5月、3歳のMadeline McCannは、ポルトガルでの家族休暇中に行方不明になったと報道された。Madelineの両親は、Madelineと2人の兄弟を残して、夕食に出かけ、戻るとMadelineはベッドからいなくなっており、不幸なことに今日に至るも、行方不明である。Madelineの失踪はメディアから国際的な注目を集め、Daily Telegraphは「現代史で最も多く報道された行方不明事件」と評された。その後、Madelineの失踪から9か月後の2008年2月に、9歳のShannon Matthewsが母親のもとから行方不明になったと報道された。Shannonは3月14日に無事であることが判明し、母親はその後、お金を受け取るためにすべてを仕組んだとして、「児童虐待と娘の失踪をめぐる司法妨害の罪で起訴された」(BBC)。Matthews事件が仕組まれたものだとしても、Shannonが報道から消えたのは24日であり、Shannonへのニュース報道と関心はMadeline McCannのよりも大幅に少なかった。9日後のインディペンデントのニュース記事によると、Madeline McCannに関する英国の報道記事は465件だったが、Shannon Matthewsについては242件だった。またWikipediaの記述も大きく異なっていた。Madeline McCannの項目は9日後には2182ワードに到達していたが、同日後のShannon Matthewsの項目は151ワードだった。同じIndependentのニュース記事によれば、2人の女の子についての情報提供に対する賞金は大幅に異なっていた。Madeline McCannの賞金は260万ポンドに達したが、Shannon Matthewsの報酬はわずか25,000ポンドだった。したがって、報道記事、Wikipediaの記事、賞金額の違いは、2つの記事の間のメディアの差別をどのように理解するのかという疑問を引き起こす。

この問いへの答えは、正当で『ふさわしい被害者』の起源の中にある。Madeline McCannは『理想的被害者』の古典的バージョンだった。彼女は、若く可愛く、フォトジェニックな少女で、Leicestershireの一戸建て住宅に住む両親が医師夫婦である、安定した中産階級の出身だった。一方のShannon Matthewsは、Dewsbury Moorの公営住宅に住む労働者階級の家族だった。彼女が母親と継父と。5人の異なるパートナーと母親から生まれた6人の兄弟と一緒に住んでいる一方、彼女の父親は何年も彼女に会ったことはなかった。Madeline McCannのストーリーに捕らわれた大衆の心は、Shannon Matthewsのストーリーには同程度の注目をしなかった。Shannon Matthewsへの大衆の寄付はせいぜい数千ポンドにしか達しなかったが、Madeline McCannへの大衆の寄付は110万ポンドを超え、これらの寄付の一部はDavid BeckhamやChristiano RonaldoやJohn TerryやJ K Rowlingのような有名人によって行われた。Madeline McCannは『理想的被害者』の概念を擬人化したが、Shannonのバックグラウンドが彼女の『相応しい』被害者ラベルを否定した。「理想的あるいは正当な被害者の地位とそれに関連するメディアの関心のレベルは、デモグラフィックな特性によって明らかに影響を受ける」(Greer, 2007:23)。

これら2人の行方不明の少女の事件を表現するメディアの役割は、『階級』が『被害者』というラベルに値する人物を描写する上での主要な要因になる可能性があることを示している。『階級』の要素だけでなく、年齢、性別、人種、性別などの他のデモグラフィック特性によって、メディアの関心がやや直接的なスタイルで決まる場合がある。それでも、刑事被害の大部分は社会的不平等と分裂を強調し模倣するという考えが残っており、これを行う一方で、「権力、支配、征服のより広い構造に影響を与える」(Greer, 2007:42)。失踪事件やこれに類似した犯罪の『被害者』のメディア表現において、これらの不平等が依然として最大の影響を及ぼしていると言える。この影響は、報道価値の見通しを示しているように見える被害者の描写を通して示される。ただし、報道価値の地平を示さない人々の考慮からも同様に影響を検出することができる。

結論として、このエッセイは、特定の被害者が他の被害者よりもラベルに「ふさわしい」かどうかという問題を調査し、これを分析するためにさまざまな理論と概念を使用した。最初に、エッセイはラジカルと批判的という被害者学の2つの理論に注目した。そして、主に国家の権力の社会構造を通じて、さまざまなタイプの人々が他の人々よりもどのように被害者化される可能性があるかを示した。これらの理論から、『理想的』被害者が何を構成するのかという疑問が生じ、この概念は「(若いか年配の)弱い人物が、イノセントなタスク(家族や友人を訪ねる)を実行中に、自分を制御できない(強くて、薬物やアルコール乱用者)に強奪されたり、攻撃たりするという理想的被害者という見方を提示した」犯罪学者のNils Christieを通じて探求した。次に、この概念から次の問いが生じた。被害者ラベルに相応しい特定の人々がいるのか、そしてこの判定は何に基づいているのか?このエッセイは、理想的被害者が誰で、誰がそうでないかを描写する上でメディアが大きな役割を果たすという考えを使用した。この描写は、2007年のMadeline McCannと8か月後の2008年のShannon Matthewsの2人の少女の失踪に関するニュース報道と物語を通じて使用した。Madeline McCannは中産階級出身の若い可愛い女の子だった​​が、Shannon Matthewsは異なる父親を持つ兄弟姉妹と一緒に公営住宅に住む労働者階級出身だった。Madeline McCannのニュース報道はShannon Matthewsよりもはるかに多く、世界中の誰もがMadeline McCannをファーストネームで知っていたが、Shannon Matthewsは英国全体にすら、なかなか知られなかった。したがって、メディアは、Madeline McCannがその外見、バックグラウンド、「報道価値」に基づいて、Shannon Matthewsよりも被害者に値するものとして描写した。これの証拠は、大衆の寄付額、情報提供に対する賞金、Wikipediaの記事、失踪から9日後に各少女について印刷されたニュース記事の数に見られる。


参考文献
BBC. 2010.Shannon Matthews Timeline.
Pamela Davies 2004. Victimisation: Theory, Research and Policy. Edition. Palgrave Macmillan
Paul C. Friday, 2000. Victimology at the Transition From the 20th to the 21st Century. Montreal, Canada: World Society of Victimology.
Chris Greer, 2007. News Media, Victims and Crime. Chapter 2, Pages 20-49
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Independent. 2008. Missing: The contrasting searches for Shannon and Madeleine.
Magnus Lindgren, Vesna Nikoli-Ristanovi, 2011. Crime Victims International and Serbian Perspective. 1st ed. Organization for Security and Cooperation in Europe, Mission to Serbia, Law Enforcement Department
Ian Marsh, 2004. Criminal Justice: An Introduction to Philosophies, Theories and Practice. 1 Edition. Routledge.
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Alison Wakefield, Jenny Fleming, 2008. The SAGE Dictionary of Policing. Edition. SAGE Publications Ltd
Pamela Wilcox, 2010. Victimisation, theories of. Encyclopaedia of victimology and crime prevention. Pages 978-986. Sage Publications.
Brian Williams, 2009. Victims and Victimisation: A Reader (Readings in Criminology and Criminal Justice). 1 Edition. Open University Press. 2015.>http://www.ucs.mun.ca/~skenney/courses/4099/VCLASS...]]




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