COVID-19否定論

DesmogBlogのCOVID-19否定論概観(2020)


[ DESMOG: "COVIDenial Executive Summary" (2020/04/22) ]

Richard EbelingはHeartland Instituteが3月24日に再版したCOVID-19についての記事で「政府はほとんど何もすべきでない、あるいは無に等しいことしかすべきではない。問題は社会及び医療の問題であった、政治問題ではない」と書いた。

Heartlandの編集長でリサーチフェローである Justin Haskinsは3月13日のポッドキャストで、COVID-19について「私は我々はうまくできる。すべてうまくいくと思う。今後、2〜3か月の問題にすらならないと思う」

2019年12月31日「原因不明の肺炎」がWHOの中国事務所への最初の報告だった。そして、続く数か月で、病気はCOVID-19と呼ばれ、世界の数百万人に感染し、死者は数十万人に至りそうであり、推定死者数は我々が知っているよりも多いかもしれないと警告している。

ウイルスの感染が広まるとともに、誤情報も広まっていった。病気は重大な害を及ぼさないという根拠なき予測、奇跡の治療法があるという主張、ウイルスの起源についての陰謀論などだ。多くの場合m誤情報はホワイトカラーのプロたちによって広められた。彼らの多くは、過去に、気候科学に疑いを投げかけたり、科学界で決着のついた問題について論争を仕掛けようとしたりしたことがあった。この重なりは印象的であり、3月には元大統領Barack Obamaとlast-night hostのJimmy Kimmelの関心を引いた。

COVID-19に関する誤情報のいくつかは、トランプ大統領が発している。しかし、コロナウイルスに関する誤情報は、気候科学を否定したり、気候危機への対処を遅らせたり止めたりしようとしたシンクタンクや(一部は自称の)専門家や、学術界や、プロの右翼活動から出てきている。

COVID-19をインフルエンザやその他の脅威と比較して、インフルエンザの方が脅威であり、新ウイルスの感染拡大を抑制する行動は過剰反応だと言う者もいる。COVID-19の感染拡大に伴って、ウイルス拡散が最重要の脅威であり、気候変動抑制行動は不必要だと言う者もいる。偽りの治療法や実証されていない治療法の情報を広める者や、パンデミック期には使い捨てプラスティック使用のメリットがあると宣伝する者もいる。(プラスチックや石油化学製品が生産される場所に住む人々の健康はさておき、そのような場所のひとつルイジアナ州Saint John the Baptist郡は4月16日時点では、人口あたりのCOIVD-19死亡者数が米国最大である。)

再生可能エネルギーを攻撃する者や、Green New Dealを攻撃する者や、WHOを攻撃する者もいる。感染者数曲線を平坦化する努力を、自由への侵害あるいは不要な行動だと批判する者もいる。一方で、スティグマと差別につながるとしてWHOが使用しないようにと警告している用語を使う者もいる。気候変動否定論者の中には、ウイルスは外国の生物兵器だという陰謀論を広めたり、エレクトロスモッグや5Gネットワークなどと関連付けたり、「WHOによる近代史上最大の詐欺行為」だと言う者もいる。

化石燃料企業は数十年にわたり資金提供してきた、気候科学者たちの結論を弱体化させ、科学自体への疑念を築こうとする組織が、今や、気候変動に対して使ったのと同様のスキルで、今日の我々の関心事である公衆衛生危機に対して、使っている。


化石燃料企業のおかげでCOVID偽情報を拡散している者たちの多くは影響力を持っている

・化石燃料業界が温暖化ついて大衆を誤解させるために世界全体に幅広い協調的な努力をしたときに、Steve MilloyPatrick Michaelsのような人々や、Competitive Enterprise Institute(CEI)The Heartland InstituteManhattan Institutesのような組織は、気候科学の否定の全盛期の早い時期に影響力を獲得した。

・現在、同じ人々や組織の多くが、1990年代に研ぎ澄ました戦術を利用して、致命的なコロナウイルスのパンデミックについての疑念を煽っている。

・DeSmogや他の人が以前に文書化したように、現在、誤報を広めている組織の多く(例:Reason Foundation、Independent Institute、Texas Public Policy Foundationなど)は、化石燃料会社や業界団体から数十年にわたって資金を受け取っている。


COVID否定論者たちは、気候変動否定論が公衆衛生と科学に及ぼす脅威と同様の脅威をもたらす

The American Petroleum Instituteの1998の“Victory Memo”は気候変動のみならず科学への大衆の信頼を損なうための、広範なロードマップを提示している。それらの戦略には「気候変動論争」について「メディアアウトリーチに参加」できるメッセンジャーを「特定・リクルート・訓練」する計画がある。戦略は、気候科学への疑問をかき立てる業界の取り組みを支援するために、個人とサードパーティ組織の両方を利用するよう求めている。

・気候変動関連の規制や政策立案を遅らせるために、石油・ガス産業は、国民や議会を誤解させ、メディアへの不信感を生み出そうとした。

・数十年前、モービル社の幹部によって起草された業界レポーは、「気候逆張り」によって反転させた理論は理屈に合わないと結論していたが、業界はそのような気候変動研究に資金提供し、今や、同じ専門家たちの一部がCOVID-19について語っている。モービル社の幹部Lenny Bernsteinは1995年に、Global Climate Coalitionのための報告書草案にある「気候逆張り」の成果を精査した。(報告書はその精査結果を除外して出版された。)Bernsteinの草稿は「逆張り理論は我々の気候プロセス理解について興味深い疑問を呈しているが、温室効果ガス放出による気候変動という通常モデルを否定するにたる説得力のある論を提示していない」と結論していた。特に「説得力がない」とラベルが付けられた報告書草稿の主張の1つは、University of Virginiaを拠点とするPatrick Michaels教授によるものである。2010年当時、Cato Instituteを拠点としていたMichaelsは、CNNのインタビューで自分の資金のおそらく40%は石油及びガス会社からのものであると概算していた。

・2020年3月9日のWashington Examinerの記事で、Competitive Enterprise Institute (CEI)のシニアフェローになっていたMichaelsは、提案された欧州連合法(気候変動を遅らせることを意図した法)がCOVID-19よりも経済と「環境回復力」にはるかに悪影響を与えると予測した。「間違いない。提案されているEU気候法は、あらゆる予想される気候変動、さらに言えばコロナウイルスよりもはるかに多くの進歩と、はるかに多くの経済的および環境的回復力を覆すだろう。」とMichaelsは書いた。(Global Climate Coalitionの草案で、信頼性のない科学者一人Richard Lindzenは、2020年3月23日に、気候変動をCOVID-19と比較して「問題なし」とする公開書簡に署名した。 「過去150年間は、CO2の増加が自然にとって有益であり、地球を緑化し、作物の収量を増加させることも示されている。なぜ世界の指導者はこれらの難しい事実を無視するのか?なぜ世界の指導者は自分たちのGreen New Dealに反することを行い、高コストで疑わしい低炭素エネルギー技術を市民に強制して生活の質を低下させるのか?」)


COVID否定論は気候変動否定論者の信頼を損なう

・地球規模の世界的流行を悪用して、気候変動否定組織のアンチサイエンスアジェンダを促進しようとするこれらの試みは、生命の喪失を意味し、ウイルスがさらに迅速に広がることを可能にすることによって、最前線の医療関係者を不必要に危険にさらす。

・一部の気候変動否定論者は、COVID-19についての陰謀論を全面的に推し進めてきた。Piers Corbynは「パンデミックBill GatesとGeorge Sorosによって支えられた世界人口の間引きニューヨーク司法長官によれば、Alex Jonesはいんちき商品販売でCOVID-19から直接利益を得ようとしており、いずれもJonesに「SARS及びコロナウイルス全体を至近距離で殺す」という歯磨き粉の宣伝販売を中止するように警告している。

・Judicial Watchは、COVID-19が「中国の敵と認定されたものに対して使用される生物兵器として準備および備蓄されていた」と主張して訴訟を起こした。Principia Scientific Internationalは(初期の世界保健機構の死亡率を引用して)「WHO事務局長が基本的数値の誤りで世界的コロナウイルスパニックを起こしたことで、経済が止まりかけている」と主張した。Steve Milloyは、「New York City hospitalでパンデミックに対応して働いているDr. Cornelia GriggsのNY Timesの意見記事」へのリンクをツイートして、彼女を「ヒステリー医師」と呼び、「パニクるな」と書いた。(それから一週間もたたないうちに、Milloyは「#Coronavirus has given us the #GreenDream: —Deprivation — Destroyed economy — Police state」とツイートした。世界中で92,000人を超える死者が報告された4月10日の時点で、Bjorn Lomborgは「重要なデータはコロナが一般的なインフルエンザよりも悪化していないことを示している(Significant data indicate corona is no worse than the common flu.)」と書いた。また、ニューヨーク市のRudy Giuliani元市長は、3月10日に主要な死因のリストをツイートした。その6週間後、ニューヨーク市で14,400人以上がウイルスに感染して死亡した。

・彼らのパンデミックメッセージは気候変動否定論者の信頼性を損なう。さらに両否定論で共通に見られる誤った考えのいくつかが示されている。同じ論理的な誤りが関係していることがわかる。基本的なモデリング手法が否定されている(そして、COVID-19と気候の両方の初期のモデルは、最終的に悲劇的に正確であることが証明されている)。指数関数的な問題が加速することを把握できていない。証拠に指示されていない根拠なき主張を作成する意欲と、証拠を考慮せずに問題がないと全面的に保証しようとする意欲が見られる。そして、人身攻撃とほのめかしに依存している。両方の問題で使用されるこれらのコミュニケーション術は、お互いを反映している。

・気候科学とCOVID-19に関する偽情報を広めている個人と組織は、歴史の間違った面での評判を永久に固めるだろう。


気候変動とCOVIDは両方とも危機である

・気候科学の否定者の中には、COVID-19が「本当の」危機であると主張している者もいるが、これは同時に複数の危機に直面する可能性があるため、もう1つの論理的な誤りである。COVID-19と戦うための行動と気候変動と戦うための行動のどちらかを選択する必要があると主張する者もいるが、COVID-19の緊急性と気候危機に同時に対応する方法を強調したいくつかの擁護者によって提案された政策オプションは無視される。

・一部の気候変動否定論者は、「再生可能エネルギーと電気自動車への管理された移行による炭素排出の削減」の影響を、「即時命令によって引き起こされた旅行の劇的な低下に起因する削減された排出」というまったく異なる道筋からの影響を混同させている。DeSmog UKによればKochの資金で運営されているウェブサイトSpikedの編集長Brendan O’Neilは『このパンデミックは、環境保護主義者が道を譲ったら、どのような生活になるのか我々に示した。このウイルスに対する政府の対応は、 George Monbiotのような環境保護活動家が求めてきた歪んだディストピアを象徴している。』と主張した。


気候変動について何もしないことを主張する人々が、パンデミックについて読者を誤解させた記述を詳しく見ることで、誰がCOVID-19に関する信頼できる情報を提供したか、誰が誤解させたかだけでなく、多くを学ぶことが可能である。

このパンデミックと気候危機の間には顕著な類似点がある。ウイルスの拡散は、指数関数的な速度で加速する能力があることが証明されている。同様に、気候変動の科学者たちは、気候変動が指数関数的に加速する可能性があると何十年も警告している。つまり、どちらの危機でも、早い段階で対策を講じれば効果が高まり、費用対効果も高くなり。

我々一人ひとりが直面している問題は、公衆衛生分野や気候学者から出てきた助言に耳を傾けるかどうか、あるいは怠慢を主張する人々が彼らの声をかき消すことを容認するか否かである。





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