負けヒロイン・当て馬女子データベース

リルカ・エレニアック（りるか・えれにあっく）

『WILD ARMS 2nd IGNITION』
ソニー・コンピュータエンターテインメント
1999年

有島モユ（ドラマCD版）
日高里菜（スマホゲーム版）

「英雄とは何か」をテーマとして掲げる名作RPG。
古の英雄の力・ロードブレイザーを手にした少年アシュレーが、新生「ARMS」として世界の支配を企むテロ組織との戦いに挑む。

リルカは三人の主人公のうちの一人で、荒野の世界観に似つかわしくない可愛らしい格好をした魔女っ娘。14歳。
もともとは姉が新生ARMSの一員として参加する予定だったが集合地点であるヴァレリアシャトーへ向かう時空転移の最中に事故が発生し、姉が「死亡」してしまう。
空間の狭間であるミレニアムパズルの中から何とか抜け出したリルカは、急遽代理としてARMSの一員となる。

パーティーの中でも年少な方でありながら言いたいことはズバッというムードメーカー的な存在で、クセの強いメンバーの中では比較的常識人。
しかしその一方で、天才と評された姉に対してあくまで凡人に過ぎない自分に対するコンプレックスなどが垣間見える。
また、冒頭の事故の原因は自分にあると考えており、その罪悪感も抱えている。

そんな彼女に試練が訪れたのが、オデッサとの最終決戦。
オデッサのボスヴィンスフェルトとの一騎打ちの後、行方不明となってしまったアシュレーを探すため彼女の魔女としての力が必要された。
アシュレーのサルベージを行うため、リルカは再びミレニアムパズルに挑むことになる。
しかし、彼女の懸命な努力も虚しく、サルベージは失敗。
天才の姉とは異なる無力感に苛まれることになるのだった。

そしてアシュレー自身は最愛の幼馴染であるマリナの感応石を追い求める形で自力で帰還していた。
帰るべき家である故郷で、愛を確かめ合い抱き合う二人。
その二人の様子を見て、リルカは一人失恋の涙を流すのだった。

そのような経緯もあって物語の終盤、レイポイントにて再び彼女の魔力によるマナの解放が必要とされた時、彼女は躊躇する。
聞こえてくる姉の声に対し、姉の代わりに過ぎない自分は必要とされていないと答えるリルカ。
それに対して、あなたは誰かの代わりではないと告げる姉。
どんな時でもめげずに立ち直り、失敗を恐れない心こそがリルカにしか使えない魔法であると彼女は答える。
その言葉を聞いて自分にしか使えない魔法を手に入れた彼女は、見事マナの解放に成功するのだった。

主人公の一角でありながら、誰がここまでしろと言ったというレベルの徹底的な不憫にさらされる少女。
「英雄」をテーマにしたストーリーにおいて、彼女は「英雄の代理＝まがい物の英雄」というテーマを背負わされる。

そのとどめとして描かれるのがアシュレーに対する失恋のシーンである。
自身ではアシュレーを助けられなかったという無力感。
追い討ちのように、幼馴染であるアシュレーとマリナの絆が奇跡を起こしたときの彼女の絶望はいかほどだろうか。
誰にも想いを告げることなく、ただ涙するだけといういじらしさが非常に胸を打つ。

古いRPGということもあり、決して多くはないテキストで彼女の失恋は語られる。
そもそも、アシュレーに対する想いなども数少ないテキストの中でほんの少しにおわされる程度であったため、失恋シーンの衝撃は大きい。
そんな不憫な目に遭いながらも、それらの痛みを乗り越えて、最後は自分だけの魔法を見つけて立ち上がる強さこそが彼女の魅力だろう。

ちなみに某戦記絶唱アニメの主人公の口癖として名高い「へいき、へっちゃら」は、もともと彼女のセリフである。
（ディレクターによるセルフオマージュ）

「へっちゃらじゃ、ないよ・・・」
ミレニアムパズルによるアシュレーのサルベージが失敗した時の心の声。
「へいき、へっちゃら」という言葉がある種の強がりであった彼女の内面を端的に表現した言葉。

「うれしいわよ　うれしいに決まってるじゃない」
「うれしくて、うれしくて、たくさんうれしくて、そして――少しだけ、寂しい・・・」
アシュレーの帰還を喜ぶティムに、どうして泣いているかを尋ねられた時の言葉。
プレイヤーはここで初めてリルカの恋とその終わりを知ることになる。

「私にできるかな？」
''「大好きな人がいるの」
「守りたい人がいるの」
「その人の笑顔が見たいんだ・・・」
レイポイント・フレイで、自身のコンプレックスを乗り越える際の言葉。
報われなくてもあくまでも一途な姿が涙を誘う。