古今東西・ジャンル問わず報われない恋をするサブヒロイン、通称負けヒロインの情報をまとめていくwikiです




キャラクター名

山田あゆみ(やまだあゆみ)

作品名

漫画

羽海野チカ『ハチミツとクローバー』
集英社
2000年〜2006年

アニメ

『ハチミツとクローバー』
J.C.STUFF
2005年, 2006年

映画

『ハチミツとクローバー』
2006年

ドラマ

『ハチミツとクローバー』
フジテレビ
2008年

CV・キャスト

高橋美佳子(アニメ版)
関めぐみ(映画版)
原田夏希(ドラマ版)

作品概要

美術大学を舞台にモラトリアムを過ごす若者たちの日常と恋模様、そして葛藤を描く青春群像劇。
「登場人物全員片想い」というキャッチフレーズに象徴されるように、登場人物それぞれが叶わない想いに悩みぶつかっていく作品。
山田あゆみはその中でも、物語冒頭から想い人である真山巧に振られているという境遇であり、特に片想いの描写が多い。

彼女は陶芸科に通う学生で、実家は商店街の酒屋。
その美しい容姿と恵まれたプロポーションにもかかわらず、酒乱であり合コンに呼ばれては空気をめちゃくちゃにする破壊神。

ずっと前から同級生である真山(一浪しているためひとつ年上)に片想いをしていたが、当の真山はバイト先である建築デザイン事務所を切り盛りする未亡人・原田理花に想いを寄せていたため、あゆみの告白を断っていた。
しかし、あゆみは諦めきれずに真山との距離を縮める方法を模索し、一方の真山側もあゆみに対しての距離感を測りかねながら、微妙な友人関係を続けていた。
いつか彼の想いが動くことを期待して、何度もアプローチをかけたりおめかししてみたりするものの、それでも彼の心を動かすことができない現実にやきもきするのだった。

そんな中、真山の働く建築事務所の先輩である野宮匠があゆみに接近する。
最初は大人の立場として、片想いに悩む二人をおちょくるような言動が目立っていたが、やがて野宮は真剣に恋をする山田に惹かれ始め、遂には彼女に告白をする。
その告白に揺らぐ山田だったが、いつしか真山を想い続けることそのものがアイデンティティの一部となっていた彼女は、かえってその心を閉ざすのだった。

しかし、その片想いにも終局が訪れる。
真山の積年の片想いが理花の心を動かし、二人の仲が急接近したのだ。
(最終的には二人は微妙な距離感に着地するが)

その結果を受けて悩む彼女だったが、遂にその恋と決別することを決意する。
そして、なおもしつこく傍に居続ける野宮と「話をしていく」ことを決めるのだった。

見どころ

片想い渋滞漫画である「ハチクロ」だがその中でも中心に位置する人物。
最初からフラれているところからスタートしているために、作中を通しても特に片想いに悩む切ない描写が多い。
想い人である真山もまた、未亡人への叶わない恋に悩まされており、その身体にもじれったさを感じている。

酒乱という欠点はあるものの、スタイルに恵まれ美人で気立てもよい彼女。
そんなスペックを有していても、最愛の人に振り向いてもらえないというもどかしさと、出口のない答えに(酒と共に)悩む姿が、とてもいじらしい。

だが、そんな彼女の何よりの魅力は、長年熟成されてきた片想いが織り成す、愛憎の入り混じった真山への屈折した思いだろう。
真山の嫌なところをいくつもあげられると言ったり、一生片想いして困らせたいと願ったり。
叶わないからこその恨みとそれでも嫌いになれないという消せない好意、複雑に重なった感情のハーモニーが彼女の人間味を引き立てる。

単にかわいく甘酸っぱいだけが片想いではない。
酸いも甘いも噛み分けた片想いならではの複雑な感情の揺らぎを見せてくれる素晴らしいヒロインだ。

なお、作者の次回作である「三月のライオン」にて、野宮と結婚した姿が描かれている。
彼女の想いが最終的にどう着地したのかは語られていないが、そこを敢えて描かないのもまた美しさか。

名言・名シーンなど

「わかんないのよもう」
「ずっと好きで」
「でももうずっと悪口しか浮かんでこなくて」
「でも、声とか聞きたいし手とか触りたいって思うんだもん」

片想いを拗らせすぎて、悪口の方がたくさん出てしまう。
愛と憎は紙一重ということを感じさせる、片想いならではの感情が詰まったセリフ。

「どうして私は夢を見てしまうんだろう」
「くり返し、くり返し、あきもせず」
「バカのひとつ覚えみたいに」


夏祭りにて、真山に浴衣姿を褒めてもらった後のモノローグ。
たしかに欲しい言葉だったはずなのに、それが心からの言葉ではない、相手の心を動かしたわけではないということを悟ってしまう。
それでも微かな希望を捨てられない。

「私は救われたくなんかなかった」
「ずっと真山を想って泣いていなかった」
「10年でも20年でも、ずっと好きでい続けて、どんなに好きか思い知らせたかった」
「そんなコトに何もイミがないのもわかってた」
「でも止められなかった」
「恋がこんなにつらいなら二度としたくないと本気で思った」
「なのにどうしたらいいの」
「ぜんぜんもう」
「わからないよ」

真山と理花の仲が進展し、自分の失恋が決定的となったあゆみ。
そこに再度アプローチをかけてきた野宮に対して心が揺らぐも、それでもこの恋を捨てたくないという葛藤が語られるモノローグ。
彼女にとって片想いはいつしかアイデンティティの一部となっていた。
それほどに重たく、苦しかった恋をどう乗り越えて次へ進むのか。
その簡単ではない問いに対して、本編ではその第一歩だけを描くにとどめている。
それもまた彼女と読者がじっくりと吸収し飲み込んでいくものなのだろう。

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