古今東西・ジャンル問わず報われない恋をするサブヒロイン、通称負けヒロインの情報をまとめていくwikiです




キャラクター名

草摩楽羅(そうまかぐら)

作品名

漫画

高屋奈月『フルーツバスケット』
白泉社
1998年〜2006年

アニメ

『フルーツバスケット』
2001年
2019〜2021年

CV・キャスト

三石琴乃(2001年版)
釘宮理恵(2019年版)
白鳥由里(ドラマCD版)

作品概要

わけありで家を失った少女・本田透が十二支の呪いを受け継ぐ草摩家の少年・草摩夾と草摩由希がクラス家に居候するホームラブコメディ。
十二支あるいは猫の獣憑きとなった草摩家の者は、異性に抱きつかれることによってその獣の姿に変身してしまうという性質を持つ。
ドタバタとシリアスのコントラストが心地よい作品。

草摩楽羅は草摩家の一員で猪の十二支憑きの少女。
透や夾、由希とは2歳年上で、作中では女子高から短大に進学している。

普段はガーリーで乙女チックな少女。
しかし、幼馴染でもある草摩夾のことが大好きで、まさに猪がごとく夾のことを追い回している。
夾に拒絶されると、烈火のごとく怒り彼のことをギタギタにするところまでがお約束。
(なお、獣憑き同士は抱き合っても獣には変身しない)

一方の夾も楽羅のことが大嫌いというほどではないために、曖昧な関係を続けていた。
しかし、透との交流をきっかけに内面に変化が生じ始めた夾は、楽羅との関係に決着をつけることを決意する。
そのことを察した楽羅は、最後のわがままとしてデートを申し出るのだった。

最後のデート当日。
楽羅は二人が出会った想い出の公園で自身の想いを語る。

かつて、楽羅は十二支の呪いを背負って生まれた自身の境遇を呪っていた。
しかし、十二支に入れなかった猫憑きである「より可哀想な」夾のことを見ている時だけ、彼女は安心することができた。
幼馴染である二人だったが、彼女はそういった打算で夾に接近していたのだ。

ある時、楽羅は夾の力を封じていた数珠を外してしまい、怪物としての彼の姿を目の当たりにしてしまう。
それを見た楽羅は恐怖のあまり逃げ出してしまい、事態を重く見た彼の親の影響で、夾はより一層外に出られなくなってしまった。

相手を見下して安心していた醜い自分、相手の不幸によりそわずに逃げ出した自分。
楽羅はそんな自己嫌悪に苛まれた。
そして、自己嫌悪と罪悪感を打ち消すために「化け物の夾くんによりそう私」を作り出そうと彼に恋をした。
そんな「つじつま合わせの恋」だったと、彼女は夾に懺悔するのだった。

その言葉を受けた夾は、「もういいんだよ」と彼女の懺悔を受けいれる。
そして、自分は今後決して楽羅のことを好きになることはないだろうと告げるのだった。

その一方で、彼は楽羅のことをただ嫌がっていたわけではない、楽羅が一緒にいてくれたことで、彼が救われていたという事実も伝える。
その言葉を受け、感極まって泣く楽羅。
そんな彼女を、夾は「ありがとう」と伝えながら傍で見守るのだった。

見どころ

自称彼女で夾のことを振り回し、怒れば暴力も辞さないというややメンヘラみのある少女。
ふわふわとした可愛らしい外見と猫のぬいぐるみの形をしたリュックというビジュアルも相まって、爆弾臭がすごい。

基本的には夾にベタベタとすりよって、拒絶した彼を制裁するというギャグ要員としての登場が多いが、その恋はあくまでも真剣そのもの。
この一生懸命に片想いをする可愛らしさが彼女の魅力の一つと言えるだろう。

しかし、彼女の恋は一途なだけではない。
その猪突猛進な恋の出発点がとても利己的なものだったという、人間臭さが彼女の何よりの魅力だ。

哀れな自分よりもよほど哀れな存在を見ることで、自分を慰めようという打算。
夾から逃げ出したという事実を打ち消しにするために、彼に好かれたらその過去もなかったことになるという保身。
そして何よりも、そんな汚い自分に対する自己嫌悪。
強い肉体とは正反対の、弱くて脆い人間性が垣間見えるのが、彼女の不器用さを際立たせている。

だが、つじつま合わせで始まった恋であったとしても、彼女の想いは間違いなく本物であった。
そんな彼女の恋が真剣であったことが痛いほどに伝わる失恋シーンは素晴らしい。

そして、ただ失恋して潔く終わるのではない。

夜、彼女は一人で夾への執着を語る。
誰とも共有できない、ただ自分だけが証明できるその想いの存在を一人抱きしめる。
ただ潔いだけでは終わらない、エゴと執着を見せてくれるのもまた、失恋ならではと言えるだろう。

なお、失恋後は出番はそこまで多くはないものの、完全には夾への想いを捨てきれない姿が描かれる。
煮え切らない態度の透に激昂するシーンや、気まずそうに夾と挨拶するシーンなど、失恋後の魅力もたっぷり詰まっている。

名言・名シーンなど

「お願い……もう少しだけ、私のことで困って見せてよ」

夾を最後のデートに誘うシーン。
想いが届かないことを悟っている姿が実に切ない。

「夾くんを好きになれば……夾くんとの距離を縮められれば……夾くんが私を好きになってくれれば……」
「逃げた自分も、汚い自分もなかったことになるんじゃないかって思ったの」
「つじつま合わせの……恋だったの」

自身の恋を振り返る言葉。
この打算もまた年頃の少女らしさではないかと思う。

「確かにつじつま合わせで始まった恋だったけど――」
「私を呼んでくれた夾くんを、不器用だった夾くんを、私はいつしか――」

打算にまみれた彼女の恋の全てが嘘だったわけではない。
この後、彼女は「夾ちゃん」というかつての呼び方で彼の名を呼び、彼の胸の中で涙を流すのだった。

「ごめんね……同情も同調もいらないの」
「誰かと分かり合うつもりもないの」
「切ない気持ちも、嬉しい気持ちも、私だけのものだよ」
「あの頃の夾くんは、私だけのものだよ」
「私みたいじゃなく、ごめんじゃなくありがとうって言ってくれた夾くんは――泣き止むまでずっと傍に入れくれた夾くんだけは、私だけのものでいて」
「せめて、この夜が明けるまでは――」

失恋した楽羅の一人部屋で月を眺めながての言葉。
真剣に恋をしていたという事実を証明することはできないが、それでも自分だけは知っている。
誰に理解されなくても、確かに存在していたその恋を抱きしめていたい。
そんな失恋ならではの魅力が詰まった素晴らしい独白。

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