世間一般では───普段怒らない人物が珍しく怒ると異常に恐い───と、よく言われている。
多分……というか実際その通りで、みんなもそう思っているだろうし、俺自身もその通りだと思っている。
しかしだ。それだけでは物足りないと、俺は先程から考えるようになった。
 普段大人しい人が怒ったら確かに恐ろしいが、それ以上に怒ったら恐ろしい人物は存在する。
 できれば、心の中に刻んでおいてほしい。

───普段クールで、冷静沈着な情報屋が珍しく、珍しく怒ると……その恐ろしさは、それを遥かに凌ぐ───と言うことを。

「コナミ君」
「……………………はい」
「これは何?」
正座状態の俺の目の前に広げられる、表紙が女性の裸の雑誌の数々。
 目の前に立ち塞がる黒いコートが身動きを、そして精神を奪う。
「……………………本です」
 ささやかな抵抗。事実を先延ばしにする。
「何の?」
「……………………ご、娯楽の……」
「じゃあ、その娯楽って何?」
しかし容赦ない追及。いや、もはや追及じゃない。尋問………ひょっとすると拷問だろうか。
これから向かう自分の運命に血の涙を流しつつ、覚悟を決めて答えた。

「……………………Hな事です」
「コナミ君、辞世の句は決まった?」
黒いコートが近づいてくる。輝く眩しい笑顔が逆に怖い。
 必死で後ろに後ずさるが、足がしびれて体が上手く動けない。
最終的には壁に追い詰められて、レーザーポインタのような視線が上から降り注ぐ。
 視線の先は俺。そして眼差しは怒り。
「ま、まてリン! 話せば分かる!!」
「大丈夫よ。苦しいのは一瞬だから」
そう言うとリンは一瞬で間合いを詰めてきた。無秒子───武術の極みがこんな所で見れとは。
振り上がる右足。脳裏に浮かぶ走馬灯─────────

ズドムッ!!
「たわばっ!!」

 フットスタンプが腹に炸裂し、俺の意識は暗転した。


『もしもリンとこんな関係だったら』


砂漠の惑星ウインダストの宇宙港。そこに数多く並ぶ宇宙船の中の、俺達の宇宙船の中の、ある一室で、この惨劇が繰り広げられていた。
 オチタ君やブラック、そしてリコは今は船の中にいない。皆して出かけて行ってしまった。行き先はおそらくあのツインテール少女の所だろう。
「小波君、起きなさい?」
「……………………」
自分でやっといてその言葉はないと思う。いやだ。と口にする勇気はないが、起きたくもない。
とりあえず、まだ気絶しているふりをする事に決めた。
「起きないと……小波君の○○は□□で☆☆だ。って情報が世界規模で流出するわよ?」
「起きてます! さっきからずっと起きてます!!」
……どうやらそれも許してくれないらしい。脊髄反射的に、俺は思わず起き上がった。


「さて、ゆっくり説明してもらいましょうか」
「説明する前に、問答無用でぶっ飛ばしたのは誰だよ」
「文句あるの?」
「いいえ、別に」

俺もずっと正座の状態でいるのは少々キツイものがある。
 今は『落ち着いてちゃんと座って話そう』という提案をリンが受け入れ、俺はベッドに、リンは椅子に、対面して腰掛けている。

「ま、この本の山なんだけど……」
リンの前に積み重なる雑誌の束。1番上の物の表紙にはスズネ姫のコスプレをした少女が印刷されている。
 その下には露出系、マンガ、SM、etc……充実した品揃えが控えている。
(洋モノの中に自分と似ている人がいたのが、リンは気に入らなかったらしい)
「よくもまぁ、こんなに集めたわね」
上から数冊とってパラパラとめくるリン。ここまできたら恥ずかしくとも何とも感じない。
「俺だって男だ。持ってて当然だろ」
「そうかもしれないけど……」
 呆れたようにリン。それでも俺は主張したい。
「だいたいな? 今じゃ未成年の高校生だって当たり前のように持ってるんだぞ? 下手りゃ中学生、小学生だって1、2冊は持ってる!
 それから考えれば俺が持ってるなんて当然の事!! むしろ持ってない方が犯罪だ!!」
「正論のような極論でごまかさないでくれる?」
口ではそう言うがリンも大人だ。男がどんなものかを分かっているのか、大して批判をしない。
「じゃあ一つだけ聞くわ」
 どこか諦めたようにリンは続けた。
「この部屋にリコやブラックが入ったりする?」
「……二人とも結構頻繁に来るな」
実際にブラックは修理報告やら体の調子やらで、俺の部屋を出入りする事が多い。最近では話をする為に来るようにもなった。
 リコなんて時間があれば必ずやって来る。そのたびに何かをやらかすので頭痛の種であるのだが。
「小波君」
「な、なんだ?」
リンの目付きが変わった。
「未成年者が頻繁に出入りする部屋にこれはマズイんじゃない? 見つかったら二人の教育によくないわ」
「む………………」
 お前は二人の成長を見守るお母さんか。と突っ込みたかったが、今は置いといて。
「そうかもしれないが……欲求不満になった俺が二人を襲ったらもっとマズイだろ」
男として……というか、もはや人間として危ない。
俺自身、耐えれる自信がないのも問題なのだが。
「だからって、この量も十分危ないと思うけど」
「ぐ……………」
 こう正論を言われると反論もできない。考えを巡らすが、何も思いつかない。
「じゃあ、どうすればいいんだよ……………!!」
疑問を投げかけたその瞬間、頭に稲妻が走った。
素晴らしい解決策を思い付いた。顔がにやけるのが分かる。


「まさかとは思うけど……『俺の欲求不満をお前が解消してくれよ』みたいな事考えてたりする?」
「知っているのか、リン!」
「小波君………私はそんな冗談が嫌いだ、ってよく知ってるわよね?」
ゆらり、といった感じでリンが立ち上がった。体中から汗が噴き出す。
「ま、待て待て! 落ち着け!!」
また問答無用でやられたらたまったもんじゃない。
十分に距離が詰まったあたりで、ようやくリンの動きが止まった。
「何か言い残したい事でもあるの?」
「違う! 俺だって、お前がそんな奴だって事よく分かってるさ」
「………じゃあ何なの?」
リンの表情が今日初めて見るものに変わった。珍しく首を傾げ、頭に疑問を浮かべている。
そんなリンの瞳を見つめて、俺は真剣な顔で言った。
「冗談じゃないからさ」
「……………………………………え?」
不思議そうなリン。きっと言葉の意味は理解できただろう。
頬がほんのり赤く、本当に少しだけ赤く染まっているのがその証拠。
「………小波君。私はそんなに………」
「軽い女じゃない、か?」
リンの言葉を封じる。お前が言いたい事くらい俺にだって分かるさ。
確かにお前はすごい女だと思う。だけどな?
「俺だってそんなに軽い男なんかじゃないぞ?」
「………………………」
こんなリンは久しぶりだと思う。目を大きく開いた驚愕の表情、それでいて驚きを隠そうとしているところがまたリンらしい。
「好きでもない女を抱くなんてこと、俺には出来ないさ」
言葉を切ってリンの反応を待つ。言いたい事は言った、もう言う事はない。
何かを考えるリン、リンを見る俺。重い沈黙が辺りを包む。
「……………二つ、条件があるわ」
「……何だ?」
それから5分ほど経った頃だろうか、リンが重い空気に終止符を打った。
「一つ、あの本を全部捨てる事。二つ、あの娘達────いえ、他の娘に手を出さない。これが条件よ」
「む…………」
後者はともかく、前者は厳しい条件だ。リンの言う通り集めるのにどれだけ時間がかかったことか。中にはもう手に入らないレア物もある。
………しかしそれでも、リンの方が何倍も、いや何十倍も、いやいやいや何百倍も、いやいやいやいや…………………………
 とにかく、リンの方が圧倒的に魅力的だと思った。「そんな条件たやすいもんだ」
「…………そう」
そう言うと、リンが腰を下ろした。さっきまで座っていた椅子にではなく、ベッドに座る俺の横に。
「………………」
「………………」
無言で見つめ合う。表情はいつもの通りだが、心なしかほんのり赤い。
照れているのか、それとも恥ずかしいのか。まぁ今はどっちでもいい事だけど。
「リン………」
「ん…………」
どちらかともなく近づいて、俺達はキスを開始した。

熱い唇、柔らかい感触。ぬめぬめとした生暖かい液体が俺の唇に付着する。
「ん…………はぁ…ん」
一端離れ、再び開始。目を閉じたリンの顔が目に映る。
「………そんな顔もできるんだな」
「あなた……私を何だと思ってるのよ」
唇を離しジト目で睨むリン。普段なら恐ろしいが、今は、これはこれでいい。としか感じない。
「いや、少し意外だっただけだ」
「……私だって女なんだから、こんな時はこうなるわよ」
「それもそう、か」
「ぁ、ん…………」
顔に手を当てて引き寄せる。目を閉じ、今度は大人のキス。
「ん…………ふぁ、んん…」
舌でリンの中を掻き乱す。リンもそれを追うように舌を動かしてくる。
絡み合う唾液、溢れたそれが口から垂れる。
「ん………ふ………! …………ちょっと待って……」
フレンチキスを堪能している内にコートを脱がそうと、影で努力していた俺に制止の声がかかった。
体を離して一呼吸。
「こんなの……自分で脱げるわ」
羽織っていた黒いコートが外される。初めて見るコート下────案外普通の服だった。
「いや……女の服を脱がすのは男のロマンなんだが……」
「だから、何?」
「いいえ、何でもゴザイマセン」
そう綺麗に微笑まれたんじゃ、従うしかない。
決してそれが逆に怖かったからじゃない。断じて違う、絶対に違う。
「ほら、コナミ君も脱いで」
「あ、あぁ」
促されるままに服を脱いでいく。生まれたままの姿───とまではいかなかったが、お互い下着姿になった。
上下黒色のリンの下着。やっぱりなと、どこか納得した。
「リン………」
「あっ………」
どこか恥ずかしいそうに腕を組むリンを押し倒す。こいつを押し倒すなんて、もう二度とないかもしれない。
大人の雰囲気を感じさせるその胸に軽く触れた。
「んっ」
ピクリ、と可愛い反応が返ってくる。もしかしたらこういう事には案外弱いのかもしれない。
流れるようにブラの隙間から手を入れる。柔らかい、だが弾力のある感触が手を包む。
「リンの身体って敏感なんだな」
「慣れてっ……ないだけ、よ……んんっ!」
軽く揉むだけで言葉が途切れる。何だろう、すごく楽しい。あのリンを俺が手玉に取っている。
 ならば存分に楽しまなくては。胸を隠す黒い布を、手品の様に抜き取った。
「………でかいな」
「………普段なら殴るところだけど………今は誉め言葉として受け取っておとくわ」
一瞬殺気が飛んだが気にしない。しかしお世話じゃなくでかい。リコなんて相手にならない。
果物に例えるなら、リコのはリンゴ、リンはグレープフルーツだろうか。ブラックは…………………………いや、何でもない。

「触るぞ?」
「さっきから何度も触ってるじゃない」
「……………」
リンの言葉に答える事なく、目の前の乳房に再び触れた。
先端を軽く摘む。くすぐったいのか、リンが震えた。
「ふ………あ、はぁ………」
ピンク色の先を弄りながら円を描くように胸を揉む。だんだん指先に触れる突起の固さが増してきた。
それに便乗し、胸にあった片腕を下半身に滑らしていく。
 雌の臭いが漂うその股間に、指先が触れた。
「うぁっ!」
「へ?」
 思わず手が止まる。そんなに強く刺激したつもりはないんだが……。
「リン………敏感すぎやしないか?」
「しら……ないわ」
「でもなぁ」
ショーツの隙間から手をいれ、直に割れ目を擦った。
「!!」
飛び上がるように体が反応する。………やり甲斐のある身体だ。気分はそれとなく悪代官様。
 リンの最後の砦を剥ぎ取りにかかる。
「リン、少し腰を上げてくれ」
「ん……」
腰が上がったところで素早く脱がせる。股間が触れる股の部分、そこは既に湿ってシミになっていた。
 蕩けそうなくらい熱そうなアソコに顔を近づける。
「……綺麗な色してるな」
「こ、こら! やめなさい!!」
「いや、ここは引けないな」
「あとでひど………んっ、ああっ! ぁあ!!」
股間を舌で舐めていく。割れ目をなぞるように丹念にそして丁寧に。
しかし湧き出る液体は止まらない。寧ろ量は増えてきている。
「吸っても吸っても、どんどん液体が溢れてくるな」
「ゔぁ……そんな、のあっ、たりまえ……!! じゃない」
「…そうかもな。でもなリン」
そう言って一端顔を離す。割れ目に指を当て、左右に開いた。
「お前のココ、さっきからずっとヒクヒクしてるんだぞ?」
「う、うそ…………っ、やぁああ!!」
豆を剥いた。悲鳴に似た絶叫。物欲しそうにリンのアソコと俺の息子が疼いて主張する。
 まだダメだ。自分にそう言い聞かせ、割れ目の中に指を挿入した。
「あっ、ゔぁ、ぁああ゙あ゙!!」
指にひだが絡み付いてくる。熱く、とろとろした快感。指でこれだ、俺自身を入れたらどんなに凄い事になるのか……。
 だが、それにしても
「リン……お前、結構淫乱だったんなんだな」
「ぁ゙あ゙! ち、ちがっ! う!」
「違わない………さ!」
指の数を増やし、更に深くまで挿入する。
難無く受け入れるリンの秘部、中を指で掻き乱した。
「ゔぁああ゙あ゙! だめ……だめぇ!!」
口ではそう言うが、抵抗を全く見せない。
……ダメだ。俺ももう我慢デキナイ。
リンに快楽を与えていた指を引き抜き、変わりに息子を擦り付ける。
「いくぞ、リン!」
「ふぁ……あぁ…………え?」
リンの返事を聞く前に、リンの中に息子を一気に挿入した。

「!! やあぁっっ!! あ、うぁあ゙!!」
「やばっ………すごい!」
リンの中は想像以上に気持ちよかった。少しでも気を抜くと全て持って行かれそうになる。危なく、挿入しただけでイってしまいそうだった。
……まぁリンも同じようなところだろうが。
「あ゛っ……ぁ゙あ゙あ!!」
いつものクールな表情からは想像も出来ないほど乱れた顔。快楽に酔いしれているのか、無我夢中なのか、手を伸ばして俺にしがみついてくる。
「お、おい! そんな、に……締め、付ける、な!」
「あ゙あ゙! だ、だめっ……こわ、れる!」
腕の力が更に強まる。密着して離れない肌と肌。
息子が熱い。ぐちゃぐちゃと卑猥な音を発てながら、リンの愛液を纏っていく。
「ん゙!! や、あ゙あ゙!!」
「リン………リン!」
もっとリンを味わおうと腰を更に大きく動かす。顔を起こして乳房にしゃぶりついた。
まだ何も出ないだろう先端を少し強く吸ってみる。
「ひぅうっ! あ゙、はぁ!!」
予想通り何もでなかったが、リンが俺を胸に押さえ付ける結果になった。いわゆるパフパフの状態、至福の瞬間だった。
「ん゙ぁっ! ……ひ、やぁ………ああ゙っ、ゔぁあ!」
「うぁ……! 俺もヤバイ……!!」
だが終わりの瞬間もどんどん近づいてくる。締め付ける肉圧が俺を責めたてる。
裏筋からカリの部分まで全体に、余すところがない。
「もう、だめ! とん…じゃう!!」
「リン………いくぞ!」
 もう限界だ、とラストスパートをかける。今まで以上に深く打ち込み、腰を前後する。
先端が子宮か何かに触れた瞬間、俺の防波堤は決壊した。
「あ、ぁ、ぁぁああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
「ぐぁああああ!! あ………あぁ……」
リンの中に俺の欲望が吐き出される。アソコを白く汚し、入りきらなかった精子が溢れてベッドを汚す。
抱き合う二人、乱れた呼吸音、終戦。静けさが辺りを包んだ。
「…………コナミ君」
しばらくそのままで動かないでいると、リンが俺の方に首を向けた。
……すごく優しい笑顔で。
「…………あぁ」
俺もその顔を見つめ返す。そしてそのまま再びキスを────と顔を近づけると。
ダダダダダダダ!!
響く足音。
バン!
開いた扉。
「ただいまーコナミ! 帰ったよー」
「キャプテン………ただいま」
部屋中に木霊する声。
リコとブラックがやって来た。


「「「「あ゛」」」」
 空気が凍った。身動きをとるものなど誰もいない。
この部屋の時間が止まったかのように、四人とも固まってしまっている。
その部屋にやって来る足音がもう一つ。
「コナミ君、ただいまでやん……す……」
オチタ君の帰宅。俺の部屋の中を見るなり、先人二人同様に凍りついた。
「…………………あー」
が、意外とすぐに立ち直って、俺達に向かって言葉を放つ。
「………倉庫でいるから、終わったら来いでやんす」
刺のある言葉を吐くと、ズカズカと不機嫌そうな足音をたてて向こうへと行ってしまった。
……いまだ固まって動かない、リコとブラックを引きずりながら。
「……………………おい、リン」
オチタ君の足音が完全に聞こえなくなってから、俺はリンに重い口を開いた。
「これって………俺にしても、お前にしても………一番最悪の状況になったんじゃ………」
「………………………」

バキッ!
「ひでぶっ!」

無言のリンの鉄拳を頭にくらい、俺の意識は再び暗転した。

その後、リコのリンに対する闘争心は一層激しさを増し、ブラックまでリンを敵対するようになったのだが、それはまた別の話。

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