「はぁ……はぁ……」
体が熱っぽい。けど行かなきゃいけない……。
冷たい風が吹き荒れ、雪の舞う街を一人、智美は歩いていた。


『あのひと』


 傘を持ってくるのを忘れていた。まさか雪が降るなんて思っていなかったからだ。
日の沈みかけた冬の街は冷たい。智美はそれを首や頬に直に感じた。服のあちこちに雪が付いている。
でもそんなことを気にしている余裕は今の智美には無かった。何故なら―――――。
(最後に彼と会ったのはあの島が自爆する直前だったっけ……あれから何年たったかな……どうにか
組織が壊滅してからの混乱を抑える事ができたけど……私の事覚えてくれてるかな……)
 智美はプロペラ団壊滅後の後始末をさっさと片付けて小波に会いに行くつもりだったが、予想以上
に時間がかかってしまった。もしかしたら小波はもう既に他の大事な人を見つけているかもしれない。
そう考えると智美は弱気になった。
 それにしても、寒い。何だか頭がクラクラする。悪寒もしてきた。
(確か…情報によるとこの辺りのはず……)
人気の多い街の中心から住宅街に入っていく。既に周りは夕闇に包まれていた。雪も少しづつ積もってきている。
(ううっ……)
急に激しい悪寒が智美を襲った。ズキン、ズキンと頭痛もする。
(いけない……こんな所で……)
そばの家の塀につかまり、体を支える。
体全体が寒さに震え出す。
(もうダメかも…)
智美の意識はそこまでだった。

 (あれ……ここどこ………?)
智美は丘の上に座っていた。何故か高校の時の制服を着ている。遠くに山が見える。
(なんであたし制服着て………あっ……!)
先ほどまでの疑問は一瞬でどうでも良くなってしまった。隣に小波がいたのだ。
小波が笑顔で話しかけてくる。幸せな時間だった。でも、何だか朧気だった。小波の手と智美の手が重なった…。
そこでまた意識が途切れてしまった。

 次に目に映ったのはとても暗い所だった。微かに明かりがあるけど周りの雰囲気は凄くダークだった。
大型倉庫のような建物も見える。
(今度は何……?)
智美は真っ黒のコートを着ていた。黒服の男が二人、後ろから付いてくる。
倉庫の前にマフィア風の男が数人いた。黒服の内の一人がマフィアと何か話している。そしてマフィアは持っていたカバンから薬のサンプルのようなものと何か書かれた紙を黒服に手渡した。
(何これ…薬物の取引なの…?)
黒服がそれを確認すると、頷いてもう一人の黒服に合図した。次の瞬間もう一人の方が懐から銃を取り出し、マフィアを一人ずつ射撃していった。マフィアが、全員倒れていく。そのうちの一人が息も絶え絶えに何か叫んだ。
黒服はその男に無表情で頭に止めを放った。黒く身を包んだ智美はそれを後ろでただ黙って見ていた。
(嫌……何これ、こんなの私じゃない……!)

 また、意識が飛んだ。
今度の光景は見覚えがあった。プロペラ島の通路だった。ビッグボスとイワノフがいる。
(これは……あの時の…)
ビッグボスが智美に向かって銃を二回、撃った。
(え……)
あのベストは着ていなかった。弾は二発とも急所を貫いていた。智美はその場に倒れ、二人は立ち去った。
少しして、小波がやってきた。
(小波君……)
智美は小波に向かって言葉を発し、倒れた。意識がどんどん遠のいていく。小波の目が涙にぬれているのが見えて、真っ暗になった……。
(私……死んじゃったのかな……もう一度小波君に会いたかったな…)

 目の前が真っ白だった。柔らかい、ふわりとした感触がする。いい匂いがする。
(あれっ………)
さっきまでの光景とは違って朧気ではなくしっかりとした感触があった。
柔らかい布団が智美の体の上に乗っていた。暖かい。
(さっきまでのは…なんだったの…夢……?)
周りを見るとそこはちょっぴり狭くて、古い感じのする居間だった。とても静かで時計の音だけが辺りに響いていた。向こうの方から何だかいい香りがする。
(これ………なんだろう…卵焼きかしら……)
布団と距離を隔ててみかんの乗ったこたつがあった。食べかけの実が入ったむきかけのみかん。
(それにしても…ここはどこなの……?)
壁にはメダルやら何やら色々な物がかけてあった。その中の一つに古い集合写真があった。
(あれ……あの写真って……)
極亜久高校の甲子園優勝のときのものだった。
(じゃあ…この家は………まさか…!)

 足音と共に誰かが向こうからやってきた。
「あ、良かった。目が覚めたんだね。体の調子はどう?」 そこにいたのは紛れも無い小波だった。
「小波君…」
智美はさっきの悪夢のこともあって目の前の現実が信じられなかった。
ほっぺたをつねってみた。痛い。
「どうして…どうして私を……」
「帰り道に君が倒れているのを見つけて。びっくりしたよ。連絡してくれれば良かったのに。」
「だって…」
電話をかけようとも思ったがもしだれか他の女の人がいるかもしれないと思うと、怖くてかけられなかった…
……なんて言えるわけない。
「だって?」

「俺が誰かと付き合ってると思ったからかけれなかった?」
「(ズキン!)そ、そんな……」
(図星か…)
小波はあえてそれ以上は聞こうとはしなかった。
「それより熱下がった?」
小波が智美の額に手を触れて、確かめようとする。
「えっ…」
智美は予想外の出来事に驚く。急に心臓の鼓動が大きく、そして早くなる。
どっくんどっくんどっくん……
「大分下がったかな。良かった〜。」
すっと小波の手が智美の額から手が離れた。
「そうだ……良かったらこれ、食べる?」
小波は卵焼きの乗ったお皿を差し出した。
「こんな物しか作れないけど…」
おいしそうな卵焼きだった。
「い、頂くわ…。ありがとう…。」
あったかくて、甘くて、おいしい。お腹も空いていたので智美は夢中で頬張った。
「しかし驚いたな〜智美がいきなり戻ってくるんだから。」
「……組織の後片付けは終わったのかい?」
「うん。大変だったけど、大分片付いたわ。小波君は最近どうなの?」
「無事人間に戻って、またプロの世界で野球してるよ」
そう言って小波は微笑んだ。
「そっか…………………。」
智美はそう一言だけ呟くと急に黙り込んだ。
「…………………………。」
二人の間に沈黙が流れる。聞こえる音は時計の針の刻む音だけ。
「…………どうしたの…急に黙って?」
「ごめんなさい…なんだかこう、上手くいえないけど…胸がいっぱいで…何話して良いのか…」
そう言う智美の目は少し潤んでいるようにも見えた。
小波と再びこうして会えている事に智美は本当は飛び上がって喜んでいるぐらいに嬉しいのだが、
いざ小波を目の前にすると動揺して何も話せないでいた。
「俺…昔の記憶…戻ったんだ。だから…君のことも思い出したんだ。」
「………。」
「妨害作戦……今思うと楽しかったな…みんなで色々やって…」
「………。」
「3年の夏の大会の後智美が急にいなくなった時は…正直…寂しかったな…」
「………ぅっ……うっ……うぅっ……」
見ると智美は涙を流していた。自分の中に押し込めていた様々な思いが一気に涙となって流れ出していた。
小波はそんな智美を自分の元に抱き寄せた。
「うんうん…」
「グスン…ううっ…ありがとう……」

そのまましばらく時間が経った。そしてすっと智美の顔が小波から離れた。
目が合って、数秒。
「あっ」
小波は智美の唇に口付けした。舌を入れたりはしなかった。唇同士が触れ合うだけのキスだった。
唇を離すと、智美の頬がちょっぴり赤くなっていた。小波から目線をそらそうとする。
「智美……」
「きゃっ」
智美を覆っている布団を小波がめくり、その中へ侵入し、智美の上に覆いかぶさる。
「智美、その…智美さえ良ければ……智美とあの…その…エ、エッ…」
「構わないわ」
小波が言い終える前にそう言って、にっこりと智美が微笑む。
「ほんと!?」
「ええ。」
智美の上に覆いかぶさった小波は智美の服のボタンをプチンプチンと外していく。
服を脱がすと、小波はすばやく智美の背中に手を回しあっさりブラを外してしまう。
智美の胸が露になる。はじめてみる智美の美しい双丘にしばらく小波は見とれていた。
あえて小波は胸に手をつけず、今度はスカートを脱がしていった。
智美の下半身もついに小波は露にすると、彼女の体全体をじっと眺めた。
「きれいだよ…智美…」
「なんだかありきたりなセリフね。」
得意のしらーっとした目で小波を見つめる智美。
この言葉にむっときた小波は「何を!」とばかりに急に智美を大きく開脚させ秘所をよく見えるようにした。
「ちょ、ちょっと!あっ!ぅあっはあ……ああっ…」
秘所に顔を突っ込み舌で智美の大事な所を蹂躙していく。少し濡れていた。
「んッ!ふうっ!ああっ!あっ!くぅっ…………」
智美の嬌声を楽しんだ小波がすっと顔を上げると、智美は汗をかいて、目つきはトロンとしていて、頬が上気していた。さっきまでとは様子が全く違う。
(ちょっとやりすぎたかな…)
小波は智美を抱き起こし胸に口を近づける。さらに腰から柔らかいお尻へと手を伸ばしさっき舌で蹂躙したそこへと手を伸ばす。もうかなり濡れている。しかし小波は智美への愛撫の手を緩めない。乳首を舌で転がしつつ、指で智美の膣に刺激を与え、いじくり回していく。
胸と秘所の二重攻めに智美はもうどうにかなってしまいそうだった。
「んくぅっ!はぁん!ん!ああっ!ああん!あああっ!!」
もういいかな、と小波が愛撫を中止した。智美は既に半ば意識が無い状態だった。
怒張した小波の息子が小波がズボンを脱ぐとそそり立った。
小波はあぐらをかくと、智美をわきの下から支え、軽く持ち上げる。体を鍛えてるだけあってこの程度はお手の物であった。お互い正面に向き合い、智美が小波の上に乗る形だ。対面座位というやつか。智美の秘所に自分の肉樹が入り込むように小波は息子をあてがう。
「智美…いいかな?」
少し意識が戻ってきていた智美が返事をする。
「うん…来て…」
智美の体を下ろしていく。
「……あっ!!」
二人は結ばれた。

「んあっ!ぁあっ!んっ!んんっ!!」
しっかり十分に濡れていた智美の秘所は挿入してすぐに激しく動いても問題は無かった。
それどころか、智美も自ら腰を振って快感を貪ろうとする。
「はぁあ!あっあっあっ!気持ち、いい!小波、く、ん!!」
暖かい膣が小波をぎゅうぎゅうに締め付け、さらに腰の動きが亀頭と膣壁を互いに擦りあわせる。
恐ろしい程の快感に早く射精してしまわないよう小波は必死に耐えていた。お互い抱き合ってさらに体を密着させる。汗やらなにやらでべたべたになっている二人だがそんなことは気にしない。
確実に絶頂へと向かっていく。今まで会っていなかった時間が二人のお互いを求め合う激しい腰の動きに変わっていた。
「っ…んぁああ!!小波君……もうあたし…あはぁっ…いく!…」
「俺も……そろそろ出そうだ…!」
智美は小波の背中に回した手にさらに力を込め、脚を小波の腰に絡ませた。
さらに舌を絡ませ濃厚なキスを交わす。
「くぅっ…出るっ…!」
「ああっあっあああっ!!!小波君、小波君、だいすきぃ…んぁああっ!!!!!」
小波の熱くて濃厚な液体が智美の中に流れ込んだ。智美はお尻をビクン、ビクンと震わせつつ絶頂を迎えた。






「いや〜…少し燃えすぎたかな…」
散乱した布団と愛液の飛び散ったシーツを見て小波が呟く。
布団が大変なことになってしまったため、今は智美はこたつに入っている。
「緊張してたのかな…」
智美はこたつのわきの座布団に頭を載せすやすやと寝ている。
そっと小波は智美の髪に触れる。智美が自分の知らない間に今までたくさん辛い思いをしてきた事を思うと、
小波はやりきれない気持ちになった。かけがえのない大事な人を見ているうちに小波にはある決心がついた。
(智美が起きたら、プロポーズしよう。それで二人でいつまでも一緒に暮らしていこう…)
小波はプロポーズの言葉をどうしようか考え始めた….

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