久しぶりの再会と言うのは心が揺れ動く物だ。 

空白の部分を話したりするのは俺は好きだ。 

 人が賑わう繁華街の通り道、そこで偶然に 

「…先輩?」 

彼女と 

「あれ」 

出会った。 

「春香ちゃん?」 


… 


「…俺?まぁ頑張ってるよ。まだ中々表舞台には出してもらえないけど」 

積もる話もあり、俺達は一角にあるファミリーレストランで談笑している。こちらの手持ちも有ったしもっとしっかりした店でもよかったのだが、彼女の要望もあり、庶民的なこの場所になった。まぁ昔からこういう性格だったが。 

「んー、確かにあまり見たことないかも。先輩の晴れ姿」 
 「まだ二年目だからね」 
 「…二年かぁ。まだわたしは高校卒業してから一年ですけどね」 

そう。彼女は一つ下の後輩。だけど、女の子と遊ぶのは同年代より後輩のこの子とのほうが多かった。他に仲の良い女友達といったらマネージャーだった霧島さんや同じクラスだった小晴ちゃんぐらいだった気がするが。 

「どう?大学生活は」 
 「まぁ…思ったよりは普通、ですかね?」 
 「なに、それ」 
 「それよりも先輩はどうなんですか?」 

 「こっちは…思ったより楽しい、かな」 
 「先輩野球好きですからね」 

昔っから野球一筋だった俺には夢のまた夢だったプロの世界。ここに至るまでには簡単には纏められない出来事でいっぱいだ。 

「うん、天職って奴かな」 
 「早く毎日テレビに映ってくださいよ」 
 「それは、まぁ…後2、3年ぐらい待ってくれないかな」 


… 


そうこうお互いの近況諸々を話している内にすっかり世間的に深夜と呼ばれる時間になってしまった。 

「…おっと、そろそろ店出よっか。ここは俺がだしとくよ」 
 「え、悪いですよ。でもやっぱりお願いします!」 
 「はは、春香ちゃんらしい答え」 

外に出ると秋独特の涼しい夜風が肌を通る。商店街の通りは昼間とは打って変わって人の出が少ない。その少ない人影も仕事帰りであろうサラリーマンやカップルばかりだ。 

「春香ちゃん、時間は大丈夫?」 
 「あ、親には遅くなるって連絡入れたので」 
 「そっか」 
 「あの、先輩」 
 「ん?」 
一呼吸置いた後、落ち着いた様子で。 
「明日、空いてますか?」 
 「明日?明日は確かオフだね」 
 「それなら…先輩がよければ、明日どこか遊びに行きません?」 
 「いいよ」 
 「ホ、ホントですか!ありがとうございます!それじゃ明日は…」 



… 

(…春香ちゃんと遊ぶなんて、高校以来か) 

プロに入ってからというもの、色恋沙汰には点で疎くなってしまった。 
…いや、昔からだったかもしれないが、高校の頃はまだ遊んでいた。この世界に踏み出してからは惚れたの腫れたのだと言ってられる場合ではないんじゃないかと自分は勝手に思い込んでいた。 
 休日も同期や先輩と街に繰り出したりするだけで女性と縁が全く無かったわけではないが、かなり少なかったと思う。 

 俺は春香ちゃんをどう見てたのだろう。高校の時はどうだったのだろうか。俺は、彼女が好きだったのか。言うのもおかしいが、よくわからない。今日、彼女に会って感じたのは、 
「変わってない」 
もちろん女性に久々に会って変わってないなどと言う程野暮ではないが。それでもやっぱり彼女は、変わってない魅力がある。 

…思えば高校は彼女の1人も出来ずにいた。まぁでも甲子園優勝という快挙を成し遂げたし、何も高校生活の記憶に残せなかったわけではない。 
でもやはり青春と言えば恋だと持論が有った。それでも野球、主にヒーローのことで忙殺されてたかもしれない。結局恋愛に関してはしどろもどろの内に彼女1人も出来ずに卒業してしまった。 


 今になって思い起こせば、それだけが幼い頃からの夢を果たした俺の唯一の心残りなのかもしれない。 
 別に恋なんていくらでもできる。これから先も幾度と機会があるだろう。だが高校の恋は三年間だけだ。春香ちゃんを思い浮かべると、なんと言うか、忘れかけていた甘酸っぱい想いというか、なんというか。 

(…未練、なのかな) 
これは一種の憧れだったのか。俺は意外と泥臭いロマンチストなのかもしれない。 

(なんだこれ…もういいや、寝よう) 


… 


「…」 
約束の時間約10分前。待ち合わせ場所は昨日、俺達が偶然再会した場所。 
 人混みの多い雑踏の中、建物の壁に寄りかかり、特に何かに興味を示すわけでもないが辺りを見渡していた。 


(…春香ちゃん、彼氏いるのかな…) 

もう一年と半年も会ってなかったし、彼女にも彼氏の1人居てもおかしくない。何より人なつっこいし、人見知りしないような性格だ。男の1人ぐらいすぐにできるだろう。 

(…そういうところに、俺は今さら惹かれたのかな) 

はは、と自身に嘲笑する。後悔先に立たずとは、正にこのことだ。まだ彼女に男がいるかどうかはわからないが、俺は半ば諦めかけていた。 


 一か八か、当たってみるか? 

…いや、無理だ。もし砕けて、あっちが気にせずとも俺は気にするだろう。恐らく、この今の関係すら崩れるだろう。 
 俺のくだらない意地、知らない相手に対する嫉妬が彼女の顔を見れなくする。それは…イヤだ。ならこのままでいい。友達でいられなくなるぐらいだったら、俺は臆病のままで、 


… 

「…先輩、先輩!」 

 「あ、春香、ちゃん」 
 「もう、どうしたんですか!ボーっとしちゃって」 

どうやら近づいて来たのに気づかなかったらしい。 

「ああ、ゴメンゴメン」 
なんとなく、彼女の顔が見づらい。 
「らしくないですよ、先輩。とりあえずご飯でも食べましょうよ!」 
 「そうだね、店は…」 


 「先輩、これ私に似合うと思います?」 
 「うーん、よくわからないけど似合うんじゃないかな」 
 「やっぱりこっちに…うーん…」 



 「フォーザーキーンフォーザーラーン〜」 
(何、この歌…) 
「先輩ほら!マイク!激流に身を任せるんですよ!」 
 「こんな歌知らないよ!」 



 「先輩、ホントごめんなさい!お金全部持ってもらっちゃって…」 
 「いいっていいって。一応俺もう社会人なんだから」 

一日中遊んで回り、時間は夕暮れ時。日も落ち掛けている。夕日が眩しくて綺麗だ。 


「あ、この道懐かしい」 
 「そうだね」 
昔一緒によく歩いて帰ってた河川敷だ。思えば昨日から何もかもが、高校だ。がらにもなく、黄昏てみる。 

「…ねぇ、先輩。先輩は、その、今、彼女います?」 
 「突然だな…」 
 「突然じゃないですよ。ずっと前から聞こうと思ってたんです!…具体的には一年か二年ぐらい前に」 
 「…いないけど」 
自分で言って少し情けなくなったのは心に閉まっておこう。 
「じゃあ…好きな人もいないんですよね?」 
…これは。もしかして。 

「いるよ」 
さすがに鈍感なんじゃないかと思ってた俺でも。 

「あー…やっぱりいるんですか…」 

勘違いしても、いいんじゃないか。 

「うん。春香ちゃんは?」 
 「え!?わ、わたしですか?わたしは…えーと…」 

微妙な間が空く。言葉を選んでるのだろうか。まだ幼さを残す、なんともかわいい悶々とした有り様。上気した顔。やっぱり俺は… 

「いません!いるわけないじゃないですか!嫌だなぁ、あはは、わたしには彼氏も好きな人も…」 
 「うーん、そっか、残念」 

昔から、惚れていたんだ。俺は。 

「え?」 
 「この展開はちょっとは期待してたんだけどな」 
…先は予想できるけど、敢えて。この発言で惑わせてみる。 
「期待って…」 


 「俺は」 

昨日からもやもやしてた想い。だが今は違う。彼女への気持ちを表す言葉は。 

ストレート、直球でいこう。 

「春香ちゃんが好きだよ。いや、昔から好きだったよ」 

告げる。羞恥心などない。これが、今の俺の鮮明な、純粋な心情だ。 

「え、ええ!?でも、さっきは好きな人がいるって…」 
…完全に混乱しちゃってるな。そんなに予想外だったのか。だけどそんなところも。 

「うん、だから春香ちゃんが好き」 

彼女の、一つの魅力だと思う。 

「う、うわぁ…不意打ちです…いるって言うから、てっきり別の…」 

… 

場が沈黙する。ここは、彼女が続ける所だろう。なにより今の春香ちゃんを見るのが楽しい。俺の気持ちは、伝え切った。 

「……あ、あの!」 
 「うん」 
 「さっきの嘘です!わ、わ、わたしも好きです!」 

…ああ。こんなに嬉しいのはあの時以来か。甲子園で、優勝したときのような。…いや、それに勝るとも劣らない高揚感だ。随分と永かった気がする。 

「先輩のことが…」 

喜悦が抑えきれず、 

 彼女の背中に手を回し、引き寄せる。 


「…先輩の体、暖かいです」 
俺も感じられる、彼女の体温、温もり。こんな幸せなことがあっていいのかと意味不明な錯覚までしてしまうほど今の俺は舞い上がってる。外面には出さないが。 

「…えへへ、先輩、キス。お一つ、いかがですか?」 
ちょっぴり背伸びして挑発的な目で見つめてくる彼女に、俺は自分が抑制できなくなり 


「んっ…」 


唇を合わせる。 

 漂う、鼻をくすぐる甘い髪の匂い。そして柔らかいリップ。女の子の唇ってこんなにも妖艶で甘美なのか。 

どれぐらい時間が経ったのだろうか。一秒が十秒にも感じられるスローな世界にいるようだ。あまりにも気持ちいい、離したくない。湧き上がる情欲。軽めな口づけじゃ足りない、もっと深い… 

「…んん、がっつきすぎですよ」 

さすがに苦しくなったのか、唇を離される。でも危なかった。このまま過激化したら止まれなかっただろう。 

「ごめんごめん」 
 「ふふ…先輩、そんなに良かった?」 

心なしか、彼女が 

「春香ちゃん、何か凄く…」 
 「ん、何ですか?」 
 「いや、ごめん、なんでもない」 

(妙に色っぽい…) 



… 


「あ、そだ。夕食はどうしましょうか」 
 「んー、どっか食べに行く?」 
 「それなんですけど、私の家で、食べません?ご飯作りますよ」 
 「お、嬉しいな。けど…」 
思い出される、昔の記憶。確か前に焦げたクッキーとか食べさせられたりしたな。まともな物を頂いた覚えが…ない。 

「春香ちゃん、料理…できたっけ?」 
 「失礼な!それぐらいできますよ!だいたい高校のバレンタインで先輩にあげたチョコレートだって手作りなんですよ?」 
 「あ…それは失礼。てっきり買った奴かと…」 

…ごめん春香ちゃん。あまりにも丁寧だったから、手作りだとは思わなかった。 
「あー!チクショー!今夜、分からせてあげますから!覚悟してくださいね!」 



… 



「おじゃましまーす…って春香ちゃん、一人暮らし?」 
 「はい。今年の春からですね」 
 「なるほど。女の子の一人暮らしか。危ないんじゃないの?」 
 「何ですかそれー。大丈夫ですよ。今のところは。それよりもご飯作るんで、適当に…」 



… 



「ご馳走様。すごい美味しかったよ」 
…意外だ。完全にノーチェックだった。こんなに美味しいとは思わなかった。例によって彼女には言わないが。 

「これでも一人暮らしするようになって腕前、上がったんですよ?」 
 「なるほど、ちゃんと自炊してたのか」 
 「あー!ひどいですよー!そんな悪いこという先輩の口は…」 

ぴょんっと俺の目の前に踏み出して 

「ちょっ…」 

唇を奪われた。 
 虚をつかれたがすぐに自分を取り戻し、俺は 

「んんっ!!」 

舌を彼女の口内に入れた。舌同士が触れ合い、否、交わり合い、互いの色欲を高ぶらせる。唾液を流し、流される。雄の舌で雌の舌を犯す、犯される。 


ぷはぁっ、とお互いに唇を離す。二本、三本と糸になった唾液が俺たちの間を滴る。 

「はぁ、はぁ…春香ちゃん、積極的だね」 
 「わ、私だって、先輩といっぱい触れ合いたいんですよ。…溜まってたんですよ…」 

彼女の体に手を回し、ソファに軽く押し倒す。そんな欲望を煽られたら。 


「それ、女の子が言うとなんかやらしいね」「…ちょっと、先輩…せめて、服、脱ぎましょう?」 

おっと。彼女とは予定していた順序が違ったようだ。自分で脱がしたかったが。 
「あ、こっち見ないでくださいね。…その、恥ずかしいし」 

しっかり釘を刺されてしまった。仕方なく、背を向けて俺も服を脱ぎ始める。 

「春香ちゃん?もういい?」 

…実はさっきから後ろを振り向きたくて仕方がなかった。衣擦れの音を聴く度に俺の頭の中で卑猥な妄想が駆り立てられた。 

「…それっ!」 
 「うわっ!」 

突然、後ろから下半身に抱きつかれた。 
そして、彼女の指の向かう先は、俺のペニスだった。 

「お、おい春香ちゃん…?」 
 「さっきのお返し…ってことで、ダメですか…?」 

左手で睾丸を揉まれ、右手で陰茎を上下に擦る。少々ぎこちないが、十分すぎる刺激に、俺は早くも翻弄されていた。 

「まるで、先輩を犯してるみたいです…病みつきになりそう」 
 「…笑えない冗談、だね…」 

彼女はこういうところはサディスティックなのか。白昼は天使のような笑顔を見せて、深夜は悪魔のような笑みを零すという奴か。…何言ってんだろう俺。 

「あ、イキそうですか?…最後は口でしてあげますね」 

俺の耐え難い様子を見て察したのか、後ろに居た彼女が前に周り込んできて、屈んだ後に一気に俺の陰茎を頬張り、前後に動く。 

「うぁっ、春香ちゃん、ヤバい、でる、っつ!」 
 「ん、んんっ!」 

彼女の口内に白濁色の液体を盛大にぶちまけた。最近疲れで処理を怠っていたせいか、かなりの量を吐いた。 


「んんっ…先輩の、十二分にいただきましたよ」 

彼女が精液の絡んだ舌を出す。糸を引いて落ちる俺の欲望。彼女の厭に妖艶な表情も相まって、俺のペニスは早くも反応し、復活しようとしている。 

「…?先輩、きゃっ!んむっ!」 

無言で彼女をソファに押し倒す。唇を塞ぎ、右手の人差し指を彼女の陰部に差し込んだ。 

「あ、あんっ!セ、センパ、あ!」 
 「…悪いけど、止まんないよ」 

すでに脳は彼女を征服することしか欲してない。ほかのことはもう、どうでもいい。 

「もうこんなに濡れてるじゃないか。やらしい娘だね、春香ちゃんは」 

彼女の膣からとめどなく液体が溢れだす。指を動かす速度も段々上げる。それに反応して彼女の嬌声も抑えが効かなくなる。彼女の叫喚の声がピークになったのを確認して、指を引き抜く。 

「え…?先輩…」 
 「ほら、どうして欲しいの?」 

自分もさっきのお返しと言わんばかりに、鬼畜に迫ってみる。やられっぱなしは性に合わないからな。 

「…お願いします、先輩。イかせて…」 

甘い顔で懇願する、尋常じゃなく艶めかしい様子に背中がぞくりと震え上がる。 


「…イっていいよ」 
呟き、再び膣内に指を入れ、かき回す。訪れる絶頂。 

「ああ、あああ!ふぁああぁあ!んんっ!」 

ぷしゅっと軽く愛液が噴き出る。その様子を見かねて、また唇を重ねる。 

「ふぅ、春香ちゃん、大丈夫?」 
 「は、はい…あ、先輩の、苦しそう。…そんなになっちゃって」 
 「…正直、我慢の限界」 
 「いいですよ、先輩。あたしの初めて、もらってください…」 

ゴクリと生唾を飲み込む。こんなにも女は生々しく感じられるものなのか。 


「それじゃ、いくよ…」 
 「はい、先輩…」 
正常位。先端約一寸だけ挿れる。既に痛みがあるのか、彼女は苦しそうな声を上げる。その声に俺の動きも思わず止まってしまった。 

「ん、大丈夫?」 
 「…ゆっくり…してください…」 

俺に苦は伝えないようだ。彼女なりの配慮なのかもしれない。再び腰を沈ませ始める。ゆっくり、ゆっくりと突き入れる。 

「…っ奥まで入ったよ」 
 「あ…先輩…私、幸せです…」 
 「…俺も」 
 「もう、動いて、いいですよ」 

水音をかき鳴らしながら抽出、挿入を始める。だが飽くまで彼女になるべくに痛みを与えないように。静かに、ゆっくりと。 


… 


「んん、あん、はぁ」 
驚いた。苦痛に、嬌声も混じり込んでいる。もう良好に感応しているのか。 


「先輩、もう、我慢しないで、いいですよ、ああ!」 

言われ、俺の頭に鉄骨でも落ちたかのように理性がなくなり、無心で腰を動かし始める。 

「あん、あぁうん!気持ちいい、よぉ、先輩、ああ!」 

お互い息がかなり上がっていて、荒い。酸素、酸素が足りない。目の前の雌を突くことしか、俺は、考えられない。 

「はぁ、はぁ、ヤバい、出そうだ、くっ」 
 「せ、先輩、んあっ!」 

これとばかりに腰を速め、更に排出感を煽られる。そして、 

「…っっ!!」 
 「ふぁああああ!!」 

膣内に、欲望を吐き出した。底が見えぬ絶頂、射精。ひとしきり出し切ると、彼女の横にそのまま倒れ込む。熱気に包まれた体に冷気が感じられる。 

「先輩、私の、先輩…」 
 「……」 



… 



「ごめん、もう寮に戻らないと」 
 「いえ。…あの、今日はありがとうございました」 

情事を終え、風呂を借りて服装も整えた。…さすがに共には入ってはいない。 

「こちらこそ、ありがとう。…忘れられない日になったな」 

明日も試合だ。そしてまだ俺は寮住まいだ、遅くなると宜しくない。 

「そうだ、春香ちゃん」 
 「何ですか?」 
 「実は俺、春香ちゃんに今日自分から告白するか迷ってたんだ」 
 「え、そうなんですか」 

 「うん。春香ちゃんには彼氏いると思って、言えなかったけど」 
 「そうだったんですか…ふふっ、てことは私が告白しなかったら今の幸せはなかったと言うわけです。これは貸しですねー!」 
 「なんだそれ」 
 「だって今の関係も、私のおかげって奴ですか?まぁ昨日から奢ってもらった分とかこれでチャラってことで。…ダメですか?」 
 「いや、全然いいよ」 
こっちは貸しのつもりなんて毛頭なかったけど。本人が納得してるならそれでいいか。 

「んー…」 
 「?先輩?」 
 「えっと…なんか、恥ずかしいな。春香ちゃんの恋人、か」 
 「…なんか、その表現は照れますね」 
 「…そういえば、まだ俺のこと先輩って呼ぶの?」 
 「えー?先輩は先輩だから先輩なんです」 
 「ううん、将来一緒になって…あ、いや、ごめんなんでも」 
 「あー!そこまで言って止めないでください!」 
 「いや、その、ね…」 
…照れくさくなって顔を背けてポリポリと頭を掻く。 
「…結婚してもそのまんまなんて、ね、うおっ!?」 
突然額をど突かれた。何故。言わせたのはそっちじゃないか…。 
「もー、恥ずかしいなぁ。仕方ないですねー、私もその…大学卒業したらですよ!」 
彼女は一呼吸置いて。俺に告げる。 

「…末永く宜しくお願いしますね。先輩」 
 「…もちろん」 

最高の笑顔に、 
 俺も最高の返事を一つ、応えた。 .
 
 


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