「なぁ、ピンク」
「な、何よ、いきなり!」
ピンクは予想外の呼びかけに少し驚いたようだ。
「今ふと考えたんだがな」
「だからなんでそんなにいきなりなのよ!」
ピンクが驚くのも無理はない。彼女は今、ありのままの姿(人間ver)で股を開き、今にも俺にのしかかられようとしている。
つまり、アレの本番直前なのだ。彼女が十分に熟し、俺を受け入れる準備が整い、一つになろうとしたその瞬間、俺は彼女の期待や不安を裏切り、ふと彼女を呼んだのである。

「今日はこっちでやってみないか?」
俺は彼女の可愛いお尻のやや背中側――キュッと閉じている菊門を指差した。

「こっちって…えぇぇぇえぇ!!ちょっと!小波何言ってるの!?」
彼女は目を小波の言ってることの意味が理解できないかのように目を白黒させた。もうさっきまでの甘い雰囲気は一瞬にして消えうせている。

「いや、だから今日はこっちに入れてみようかなって…」
そういいながら俺は驚いたまま固まってしまったピンクの菊門の表明をすうっとなぞってみる。

「きゃあ!ちょ、やめてよ!」
「………」
彼女はソレを触れられた瞬間ビクッと体を震わせ、俺に抗議してくるが、俺はそれを無視し、指の往復を続ける。

「こ、こら!ホントに駄目だってぇ!んんっ……」
彼女の抗議は依然として続いているが、俺はそれをよそに昨日開田くんに言われたことを思いだしていた。



『ぐふふ……』
『おい、なんだ気持ち悪い。何読んでんだよ開田くん』
『オイラのお気に入りの漫画家の新作でやんす!』
『へぇ、どれどれ…って成人漫画じゃないか!』
『ただの成人漫画と一瞬にしないで欲しいでやんす!この人の作品は別格でやんす!』
『別格って………。うわぁ、これマニアックなだけじゃないのか?』
『マニアックの一言で片付けるなでやんす!小波君だってこういうのを彼女としたいと思ってるくせに!』
『いや、ないな。全く』
『こ、小波くんはわかってないでやんす!外道でやんす!低所得者でやんす!』
『低しょ…あぁ!開田くん……!いっちゃったよ。漫画置きっぱなしじゃないか。こんなマニアックなの俺がしたいと思うわけないのになぁ…』

ペラッ……


ペラペラ……


ペラペラペラペラ……


『………ぐふふ』

――ズプッ!

「うにゃあ!!」
「どう?」
「嫌に決まってんでしょうが!!」

俺は指に力をいれてピンクの門をこじ開ける。人差し指の第一間接までが通った。
ピンクはやはり楽しくないようで俺の行為を拒むが、俺は気づいてしまった。

……その拒む姿に魅力を感じていることに。


「開田くんに謝らなきゃな……」
「何をいって…きゃあ!」

ズブズブッ!

俺はさらに力を入れ、指を入れていった。人差し指が完全にピンクの中に入っていった。

「だからやめてってホントにぃ!汚いからっ!」
「俺は気にしないよ」
「私が問題なの!やめてよ!へ、変態!」


「ぐっ……」
ここまでくると流石にピンクが可愛そうになってきた。彼女の抵抗する姿がいいとはいえ、本当に彼女の嫌がることをするのは本望ではない。

「ゴメン、ピンク。今やめr……」
ピンクに謝り、指を抜こうとした俺の頭に数日前の出来事が頭を駆け抜けた。

『はぁ、今日は仕事で失敗しちゃったなぁ…。帰ってピンクと……いやいや、駄目だそんなこと考えたら!』
『……小波。』
『うわっ!ぶ、ブラック!いつからそこに!』
『あなたが仕事の失敗のストレスを紛らわす為にピンクの体を求めようとしたけど、いや、それじゃ満足できない。もっとイジメようと思ったとこから。』
『恥ずかしいこと聞かれた!しかも悪い方向に脚色されてる!?』
『落ち着いて。ピンクはイジメても喜ぶからストレス解消には向いてない。』
『アンタが落ち着きなよ!?それにピンクはそんなんじゃないはず!』
『……こういう言葉がある。』
『え?』
『嫌よ嫌よも好きのうち。』
『……ブラック、それどこで聞いたの?』
『……道端に落ちてた本。』
『エロ本だよそれ!』
『エロ本……。小波のえっち。』
『アンタだよぉおぉ!!』



「ゴメン、ピンク。今やめr……」
ブラックとした会話が俺の頭に響く。


『嫌よ嫌よも好きのうち。』


(もしかしたら本当にそういうものなのかもしれない……)

「ゴメン、ピンク。今やめr……」
「うん、わかってくれればそれで…」

――ズブッ!グリグリ!


「きゃああぁぁあぁ!!何!?ちょっと!やめるんじゃなかったの!?」
「嫌よ嫌よも好きのうち……」
「何いって…痛っ!痛いって!気持ち悪い!」


グリグリグリグリ…グリグリグリグリ…


〜〜〜〜〜

「………」
「………」
俺はフローリングの上で星座をさせられていた。寒いし膝が痛い。

「……あのー、ピンクさん」
「何よ。」
「膝が痛いかなーって。ははっ」
「それさっきまであんなことされてた私に言える言葉なの!?」
「ははは……。」

服を着て腕を組み仁王立ちで俺を見下し、睨みつけているピンク。しかし、その目は充血し、目元はその名の通り桃色……を越して真っ赤になっている。泣いていたためである。

「で、でもピンクだって……、その……イッたじゃないか」
「はぁ!?」

確かに攻め続けられたピンクは「絶頂」を向かえたが、それが彼女にとって快いものだったかはまた別の話である。

「……本気でいってるの、それ?」

(こ、怖い!なんとかしないと)
今まで何回か喧嘩したことがあったが、こんなに恐ろしい形相のピンクを俺はみたことがなかった。こんな顔を人(正確にはピンクは人ではないが)ができるなら人に顔なんてなかったほうがよかったと思った。

「悪かったわね怖くて!!」
「よ、読まれた!?」

いよいよまずい。はやくなんとかしないと。

「ぴ、ピンク…」
「何よ!」

「嫌がってたピンクも可愛かったよ…」
「……えっ?」

不意をつかれたピンクが目を丸くする。俺は立ち上がり、固まったピンクの肩に手を回し、耳元でささやく。

「……本当に可愛かった。愛してる」
「………小波」

ギュッとピンクを抱きしめる。
ピンクも手を俺の背中に回し、キュッと力を入れる。

「……愛してる」
「私も……って、」

――ギュイッ!!

「え?」

ピンクの手の力が強くなる。そしてまるで万力のように俺の体を締め上げる。

「そうなるわけないでしょうがぁああぁあぁぁ!!!」


――ドッッッシーン!!


ピンクによって抱きあげられ、位置エネルギーを得た俺の体はピンクのすばらしき背筋によりさらに力を加えられ、そのまま床に頭から突き落とされた。


「バック……ドロップ……。ガクッ」


こうして俺の意識はシャットダウンした。

「……ってことがあって今だにピンクが口を聞いてくれないんだ」
「愛、なぁ………」
ピンクが口をきいてくれなくなってから一週間。それでも俺は彼女の廃ビルにいた。
二人の異変に気づいたダークスピアが訳を聞いてくれたので俺はあの日のことを話したが、ダークスピアは話を聞いた途端、何かを思いだすかのようにボーッとしている。


「小波……」
「は、はい!」
「愛ってことばで何でも解決しようとしたらあかんで」
「はぁ……」

それだけ言ってダークスピアは黙ってしまった。

「ねぇ、ブラック」
「何…?」
「アンタなんかアイツに変なこと言った?」
「………?」
「なんかアイツに……その、変なことされたからノシてやったら、気絶しながら『ブラックが…』って言ってたんだけど」
「ピンク……。嫌よ嫌よも好きのうち。」
「やっぱりお前か!変なこと言わないでよね!」
「…でも、実際少しは楽しんでた。」
「―!?まさか、見てたの!?」
「『なぁ、ピンク』のところから」
「全部じゃないのよ!!」
「……嫌よ嫌よもs」「まだ言うかぁぁぁ!」




――ドーン!バーン!ガシャーン!


「えらい向こうが騒がしいな」
アジトの奥のほうから何やら騒がしい音が聞こえる。

「小波っ!」
「はいぃっ!」

急に名前を呼ばれて驚く。すると顔を真っ赤にしたピンクが奥から走って来た。

「小波合体よ!」

「え、でもお前……」
「いいから早く!」


「よかったやん、ほれ、行ってき」
ダークスピアに肩を押され俺はピンクに駆け寄る。

「ピンク…でも、俺…」
「ええ、嫌よ!でも今はブラックをこてんぱんにしてやるのが先なんだから!」

ガシッとピンクは俺の腕をとり引き寄せた。

「よし、いくぞピンク!」

「『合体っ!』」


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