「小波君が甲子園で優勝することだけが私の願いなの。
だから…、今は甲子園に集中して。私、応援してるから」
「……わかった。俺は絶対に甲子園で優勝してみせるよ。
だから、絶対に見てくれよな!」
高校野球地区予選大会で優勝し甲子園へ出場することが決定した時に、私は倒れる。
そんな私を心配する野球部キャプテンであり私の愛する人と交わした約束だった。
『幸せの始まり』
彼がこの極亜久高校へ転向してからもうすぐ二年になる。 小学生の時に幼馴染だった私は彼が転向してきた時は病気で学校を休んでいて、 一週間後に彼との再会を果たした。 彼は小学生の頃から大の野球好きでよく同級生と一緒にキャッチボールをしてたのを
私は彼の側で見ていたことがある。
彼には弟が生まれる予定だったけど、 彼のお母さんの様子が悪くなってそれは叶わなかった。
そんなお母さんと生まれるはずだった弟の分まで彼は野球に打ち込み、
その姿は私をうっとりさせた。
その時から彼のことが好きだった。その気持ちは高校に入学してからも変わらない。
だから彼がここに転向してきたのは私にとっては嬉しい上に、
すぐに野球部に入っていった。
彼は壊滅した野球部を部員から集めて一から立て直して、昨年には甲子園には行けなかったけど、地区大会優勝を果たした。
それでも私の病気を心配してくれていて気にかけてくれていて、
彼から告白を受けたときは、体中が熱くなって興奮した。 私が小さな頃から思ってた想いが叶ったことを喜びを隠せなかったから。 彼にタコ入りの弁当やプレゼントを渡すことが何より楽しい高校生活。 私は病気に侵されながらも幸せな高校生活ができていたと思う。
だからこそ、私もこの病気を乗り越えなくちゃと思った。
(小波選手、ここにきて試合を決めるツーランホームラン!
これは決勝打になるのではないでしょうか)
(三鷹選手、先発の平山選手に次いで見事抑えました。 極亜久高校、これで聖皇学園に次いで甲子園決勝のキップを手に入れました!) 「やったっ!小波君、おめでとう!」 病院のベッドの上で一人飛び上がって喜んでいる私がいる。 甲子園にて試合をしている彼は順調に勝ちあがってきていた。
テレビでは野球マスクとかいう人の試合で持ちきりだけど私は
彼の活躍をテレビの前で見守っていた。
「もう今からじゃ決勝戦には行けないかしら。 最後だけ応援に行きたかったな……」
ずっと野球が好きだった彼。
甲子園決勝は念願の夢だったのだろう。
だからこそ、彼は必死に野球部を立て直して私も彼の応援をしていたかった。
彼に勝ってほしい。勝って最高の笑顔で私を迎えにきてほしい。 体に異変が起きたのはその時だった。 「…うっ!ああああっ!!」 突然胸の中から強い衝撃が起きて、呻く。
その瞬間に胸の中の心臓を強く握り締められるような感触に襲われてしまい、
あまりの痛みに声を上げてしまう。
「きゃああっ!誰か……」 病気が遂に私の体の中心を蝕み始めたのだろう。 胸から全身に伝わる痛みと心の苦しみから必死に耐えながらも、 少しずつ意識がぼやけていく。 私はもう助からないのかしら……。 「こ…小波……君…」 彼の名前を呟きながら意識が消えていった……。


ぼやけた意識の中に私は体を浮かべていた。
まるで水の中で自由に動き回れるような感触。
目の前に映り始めるのは彼と共に過ごした高校生活。
(あら、小波君?今から帰る所なの?) (ああ、明日香。君も今帰るとこなんだ。一緒に帰らないか?) (ええ、いいわよ) (そうだ、亀田君も一緒に帰ろう!) (わーい、嬉しいでやんすっ!一緒に帰るでやんす!) (小波君。わざわざ来てくれてありがとう) (大丈夫か、明日香?) (うん、小波君が着てくれたおかげで元気がでたわ。 明日からはちゃんと学校に行けるから、ありがとう、本当に嬉しかった…)

また目の前がぼやけ始めて再び新しい景色が見え始める。
(これは…甲子園?それにバッターボックスに立ってるのは…小波君!?)
ピッチャーマウンドにいるのは緑の仮面を来た男…野球マスク。
(じゃあこれは今起きている決勝戦、私は夢の中で現実を見ているの?)
その時に野球マスクが投げた球が彼のバッドを避けキャッチャーミットに入る。
(9回裏のツーアウト一塁…二対一の聖皇学園のリード、打者は小波君。 小波君が打てば逆転サヨナラ…駄目だったら……) 再び野球マスクが球を投げる。 「ストライクツーっ!」 追い込まれてしまう。もしこれが夢の中だとしても私は祈るしかなかった。
あと一つですべてが決まる。彼の運命が…。
そしてそれは私自身の運命も決めるんじゃないかという想いもあった。
「タイムっ!」 主審が声を上げた後、場は静まり返って彼は歩き始めた。 偶然にもそこに意識を残している私の方へ向かって…。

「明日香…」 「小波君……?」 私の声はきっと彼には届いていないのだろう。彼の独り言だ。
それでも私にとっては彼が私に交わしている言葉を最後まで聞く。
「俺には二つの選択があったんだ。 君が危篤だと知ってからすぐに君の所へいくか、このまま決勝戦に出るか、 俺は決勝戦に出ることを決めたんだ。 君だって俺が途中で投げ出したら嫌だろう?だから君の願いどおりに試合に出た。 俺は最後まで諦めない。かならず優勝してやる。だから力を貸してくれ…明日香…!」 再びバッターボックスに戻る彼。プレイと言う主審の声が聞こえる。 力を貸してくれと言われても私には祈ることしかない…と思っていた。
それだけじゃなかった。私にはもう一つできることがあった。
私の心の声を、願いを届けることが……。 再び野球マスクが振りかぶって…投げる。 (お願い…小波君…打って……夢を叶えて!) 金属の音が激しく響いた時、ボールは空高く飛び上がっていった。
そしてそのまま球場を飛び越え空へと消えていく…。
球場が一斉に静まりかえる。 「か、勝ったのか…?」 「勝てたみたいでやんす……」 「……やったあーっ!!」
チームメイトの皆が一斉にグランドに飛び上がり喜びの声を上げる。
その瞬間球場全体に歓声が響き渡り、喜び、悲しみの声が響いた。
チームメイトに抱きつかれながら喜びの表情を見せる彼。
とても幸せそうな満足に満たされた顔……。
それを見るだけでそこにいた私も飛び上がりそうな喜びを隠せなかった。
(よかった…よかった…おめでとう…小波君) 「はっ、こうしている場合じゃない!明日香の所へ向かうぞっ!」
そう彼が言った途端、私の意識は再び消えた……。
喜びと満足の心と一緒に……。

「明日香っ!明日香っ!」 血相を変えて彼が飛び込んできたのはその次の日。 奇跡的に私は助かり命を取り留めた。 「お帰りなさい、小波君…」 「ああっ!ただいま。明日香。体はもう大丈夫なの!?」 「ええ、こうしてね」 病気の大きな所は治り、退院できる日のそう遠くはないと。
そしてこの病気が完治する日も近いと聞かれた。
それを話すと、彼は感激の表情を見せて私を抱きしめる。
「明日香っ!よかった、よかった…!」 「ありがとう、嬉しい……。私との夢をちゃんと守ってくれたから」 「どうしてそれを?」 彼がきょとんとした表情を見せて私は微笑みながら答えた。 「私ね、夢の中だったけど、決勝戦の試合の中で私、見てたんだよ。
あなたがサヨナラホームランを打った時のことも、
最後の打球の前に私に言ってくれてた言葉も……」 「そうだったのか……」 「あなたがホームランを打ってからチームのみんながあなたに飛び込んできて、
あなたはとても嬉しそうな顔をしてたよね。
あの顔を見て、勇気が湧いたのかしら。私も生きてあなたを待たなきゃって思ったわ。
あの後私の所へ行ったのも」
「はは、なんか君から言われると恥ずかしいよ」 「小波君……」 「何……?」 「甲子園優勝おめでとう。夢叶ったよね、おめでとう」 「明日香…」 再び抱きしめてくる。彼の逞しく暖かい腕で…。 「明日香…ありがとう…大好きだ…明日香…」 「ええ…私も…小波君…大好きよ…」 抱きしめあいながら彼の温もりを感じていた。
「明日香…」 「何…?ん…」 呼ばれて返事をしようとしたら唇を唇で塞がれた。 「んあ…んんっ…」 少し息苦しくなるけど不思議と気持ちのいい感じにとらわれる。
こうして初めてする彼とのキスはこれほど心地よいものだった。
しばらくした後彼は唇から唇を放す。少しもっとしたいという想いが残る。
「ごめん、いきなりだったから…驚いた?」 「ええ、でも…嬉しかったな…」 「そう…じゃあ…」 「きゃっ!」 彼がベッドの上に乗りあがり私を覆うようになる。私は押し倒される。
またまたいきなりの行為で驚いたものの不思議と嫌な感じはしない。
むしろ心の中でどくんどくんという胸の高まりと共に喜びを感じてた。
「ごめんな、明日香。君が可愛くて大好きだ。 明日香…俺は…今から君を抱いてもいいかな?」 当然くるだろうと思った言葉、また不思議と迷いなく言った。 「ええ、いいわ…私もあなたに抱いてほしい…」 「体は大丈夫なの?無茶してしまうと……」 「私は大丈夫…だからあなたの好きにして…」 「わかった……じゃあ、いくよ…」 彼がそういった直後再び唇を押し当ててくる。 「んんんんっ。んあっ!」 唇から彼が舌を出してきて私の舌に絡め始める。 当然、私はこういうのは初めてで彼も初めてのはず。
しかし最初からこうなる宿命だったのか不思議とすぐに慣れ始め、
これから一線を越えるというのに怯えはなかった。
「じゃあ、服を脱がしてもいいかな?」 「うん…」 彼は私の肩に手を当ててそっと衣に手をかける。


体つきに自身があるわけではなかった。
もともと体が弱い私は女性の中ではまだまだ子供みたいなものだ。
そんな私は生まれたままの姿を見せられ頬を赤らめてしまう。
「明日香……可愛いよ」 「そうかしら…恥ずかしい…」 恥らっている私を微笑みながら見下ろす彼は手のひらを胸のふくらみに当て始めた。 「うんっ!」 一際変な声を上げてしまい恥じらいがより心の中で強くなる。
それでも彼はそれを止めずにふくらみを撫で続け果てには唇で先端を掴む。
「ひゃああんっ!!」 強く艶やかな声を上げ、恥ずかしさでいっぱいになる。 体中のあらゆるところを撫でられ続け嬌声をあげながら、 彼の思うがまま、小鳥のような鳴き声をあげたり仕草をしてしまう。
それでも恥じらいと一緒に心地よい感じが常に体を動かしていた。
それが強くなったのは彼の手が私のそこに当たった時。
「はああんっ!」 「明日香…?」
すべてがまだ知らない初めての行為だけど体の中の気持ちがそれを導いているのか、
声を上げた場所を指で彼は撫で始める。 「ひゃっ!あっああっ!あんっあんっ!」 「明日香…気持ちいいのか?」 「ち、ちが…ひゃああんっ!」 彼が指でなぞるように撫でていくと共にくちゃくちゃというような
水がぶつかるような音がそこから聞こえ始め、より恥じらいが強まる。
それ以上に彼ももっとそんな私の声を聞きたいのかより強く撫でる。
「あああんっ!」 限界に近づいてきた私ははっきりしない意識を必死に集めながら答えた。 「私…もう駄目…お願い……」


その言葉の意味を彼は気づいたのか、彼も服を脱ぎ始める。
外から見てでも逞しいと思ったその体はやっぱり逞しくて、綺麗だった。 「明日香…大丈夫?」 「ええ…私は大丈夫よ…お願い…」 再び覆うように身を寄せ彼のそれが私のそこに押し当てられる。 「それじゃあ、いくよ」 「来て…」 体の中にとても熱いそれが入り始める。 体の中を引き裂くような痛みが始まり苦痛で顔を歪める。 「明日香…一気にいくよ…」 彼の腰がそっと引いたような感触がした後、彼は一気に腰を突きつけた。 私は彼に貫かれ……そして結ばれた。 「ああああああっ!!」 体の中心にそれは踊るように入り始め同時に全身が引き裂かれる痛みに襲われる。 「明日香っ!大丈夫かっ!?」 「ううう…いた…い…うあああ」 顔を歪めて歯を食いしばり必死に痛みから耐えようとする。 痛みで頭がぼやけ意識が消えようとしている。そんな中彼はキスをしてくれた。
キスを受けたことで少し痛みが和らいだのか体が軽くなる。
「小波君…私…慣れてきたみたい…だから…いいよ」
それを聞いたか彼は腰を動かし始める最初はゆっくりと、そしてどんどん激しく…。
「んっ。はあっ!あっ!あっ、ああんっ!」 痛みが少しずつなくなっていくごとに快楽が私を襲い始める。 恥じらいなど感じる暇もなく艶やかな声を上げ続ける。 彼と繋がった所からはものすごい量の血と共に、彼と繋がりを表す水の音も聞こえる。 「小波君っ!あんっ!あんっ!私っ。あんっ!あんっ!小波君。あああんっ!!」 彼の名前を呼び続けながら快楽に溺れはじめて…限界は近づく。 「明日香っ!」 「もうだめえ小波君。小波君…大好き、大好きぃぃ…んんんああああああああっ!!!」 彼に抱きしめられながら、彼から流れる熱い想いで私は天に昇る声をあげた。


ベッドがものすごいことになっていたので二人で片付けて、
その後は二人で寄り添い合っていた。
物凄く疲れてしまい眠気がやってくるけどそれに耐えながら微笑む。 「明日香、ちょっと無理しすぎたんじゃないの」 「ううん、私は嬉しかったよ。あなたと一緒になれたもの」
こうしている私は幸せ者だと思った。
彼は夢を叶えてくれて今こうして私の側にいてくれる。 私は命が助かって好きな彼と一緒にこうして一緒にいられる。 「なあ、明日香…」 「なあに?」 「これはまだ先のことなんだけど…、 退院して、高校を卒業したら、一緒に暮らさないか?」 「えっ!?」 「今までずっと君がいてくれたおかげで俺は夢を叶えられたんだ。 俺はプロになってずっと活躍して見せるよ。
そして明日香、二人で幸せになろう…」
「………」 「嫌かい?」 「ううん、嬉しいわ。うん、一緒に暮らしましょう。
そして二人で幸せになりましょう」
彼は喜びの表情を見せてそして微笑んでくれた。
そう、この幸せはまだ序章にすぎない。
近いうちに私の病気も完全になくなるだろう。それで始まるのだ。 私達の幸せはこれから始まろうとしている。
そしてこれは私達二人の最初の幸せだった。 .

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