小波はパライソ中学校に通うごく普通の中学生だった。1年前、パライソタウンに宇宙人が侵略してくるまでは。 
 多くの大人たちが成す術なくハタ人間にされていくなか、小波は仲間たちをまとめあげ、宇宙人を撃退することに成功したのである。 
 再び宇宙人が侵略してきたとき、彼が対策グループのリーダーに抜擢されたのは自然なことでろう。 
 宇宙人が作ったダンジョンはかなり厄介で一筋縄ではいかない。時には仲間がやられることもある。 
 今日もハタ人間にされた仲間を救出し、ダンジョンから帰還したところである。 
 仲間に解散を告げると、小波は自身の疲労を回復させるため自室へ向かう。 

 (あー、今日も疲れた。早く寝よ) 
 自室に着くと小波は倒れこむように疲れた身体をベッドに預ける。 
 寝具の弾力が心地よい。疲労も相まって小波を睡魔が襲う。 
このまま風呂も着替えもせずに眠りについてしまおうとする小波。 
しかしその欲求は叶うことはなかった。 

コンコン、というノックの音が小波の部屋に響いたのだ。その音で小波の思考は一気に覚醒する。 
リーダーである小波の部屋にはよく人が訪れる。 
 対宇宙人戦の相談は勿論のこと、小波と他愛の無い雑談をするためにここに来る者も少なくない。 
 「はいはい、今開けます」 
 今日の攻略で疲労してはいたが、わざわざ部屋にまで来てくれた仲間を無碍にすることはできない。 
 小波は体を起こすと来客を迎えるためドアノブに手をかけた。 

 「委員長?」 
ドアを開くとポニーテールの女の子が小波の目に入った。 
 小波たちのクラスの委員長、神条紫杏である。 
 「ちょっといいかしら?」 
 「構わないけど…… 珍しいな、委員長が来るなんて」 


 「少し話したいことがあるのよ。部屋に入っていい?」 
 「え? あ、ああ、いいけど……」 
 入室の許可を出しながらも小波は不信感を覚える。 
 紫杏が自分の部屋を訪問するとはどうにも信じがたかったのだ。 

 勿論、小波と紫杏の仲が険悪な訳ではない。二人で話をすることだってある。 
しかし今まで彼女が小波の部屋を訪問したことはないのだ。 
 真面目な委員長のことだ。人の部屋を訪問する暇があるなら勉強をしているのだろう。 
 或いは年頃の男性の部屋に行くことがに抵抗があるのかもしれない。 
なにより紫杏はハタ人間から救出されたばかりで、休息しているはずである。 
ともかく、小波にとって紫杏が自室へ来ることは全くの想定外のことであった。 

 「それで、どうしたんだ?」 
 驚愕した頭をすぐに切りかえる小波。 
 紫杏がわざわざ自分の部屋に来たのだ。彼女がただ雑談しにここまで来るとも思えない。 
 何か重大な話があるに違いない。 
 紫杏を対面に座らせるとその理由を尋ねる。 
 「話しておきたいことがあってね」 
 「話したいこと?」 
 「うん、そのね……」 
そこまで言って紫杏の声が消え入るように小さくなってしまった。 
 話しにくいことなのか、紫杏は躊躇しているように見受けられる。 
 何とか次の句を告げようとするのだが、その度に言葉が途切れてしまう。 
 遂にはその言葉も無くなり完全に下を向いてしまう。 

 小波は怪訝な顔をした。いつもの委員長ならもっと言いたいことをはっきりと言う。 
 先ほどから紫杏の普段とかけ離れた様子を目の当たりにし、小波は困惑してしまう。 
 俯いてしまった顔からは表情を読み取ることさえできず、小波にはどうしたらいいのかさえわからなかった。 
 気まずい空気が場を支配する。 
 「どうしたんだよ? 黙ってたらわからないぞ」 
ともかくこのままでいるわけにもいかない。 
 痺れを切らして促す小波に、紫杏はそれでも戸惑っていたがやがて意を決したように口を開く。 


 「あたしね、小波くんのことが好きなの」 
 「え!?」 
 「1年前からずっとすきだったの。今回志願したのだって本当はあなたと一緒にいる口実が欲しかっただけなのよ」 
 突然の告白に混乱する小波。あまりにも急な展開に頭がついていかない。 
 潤んだ瞳がこちらを覗き込む。 
 今まで女の子に告白されたことなんてない小波には刺激が強すぎてパニックに陥ってしまう。 
 (いや、そう言えば……) 
 小波は一度だけ告白されたことがあったことを思い出した。アレはちょうど1年前の南公園での出来事だ。 
そのとき紫杏は小波に告白したのだ。尤もアレは彼女が"恋する乙女"の性格付けをしただけなのだが。 
 今の告白もきっと演技なのだろう。小波はそう思うことで心の平穏を保とうとする。 
 「な、何だ演技か。前回以上に真に迫っていたから一瞬本気かと思っ……」 
 「演技なんかじゃないわ!」 
 小波の発言を遮るように紫杏が声を上げる。今まで以上に大きな声が小波の耳を突く。 

 「あの事件があった後もあたしの家族は家に来なかった。 
そのときはまた以前の生活が始まるだけだと思ったわ。でも違った! 
 誰もいない家に帰るとき。独りきりでご飯を食べるとき。決まってあなたの顔が浮かんだわ。 
 去年の夏、貴方達と一緒に行動したからよ。前は何ともなかったのに、あなたと一緒に過ごしたから!」 
 一気にまくし立てる紫杏。小波の混乱はいよいよ最高潮に達した。 
 紫杏が感情を爆発させていること、なにより紫杏が自分に本気で告白したこと。 
 小波の心を乱すには充分すぎる出来事だ。ともかく紫杏をなだめようとする小波。 
 「委員長、落ち着いて」 
 「初めのうちは諦めるつもりだったわ。あなたはあたしのことなんて何とも思っていなかったんですもの。 
でもだめ。日を追うごとにあなたのことを考える時間が増えていったわ!」 
とりあえず落ち着かせようとする小波だったが、紫杏が止まることはなかった。 


 「もう我慢できないの! 今日だって 
小波くんが助けに来てくれたのに、他の女の子と一緒にいるあなたを見るだけでで胸が張り裂けそうになったわ。 
 身勝手な感情だってわかってるわ。でもどうにもならないの! あなたが好きなの!」 
 言いたいことを言い終えた紫杏が小波を見つめる。小波の答えを待っているのだ。 

 小波は改めて紫杏のことについて考えた。 
 思い返せば1年前から彼女が自分に声をかける機会が多くなってきた気もする。 
テストで悪い点を取ったときには一緒に勉強をしようと提案してくれたこともあった。 
そんな紫杏が自分を好きだといってくれている。 
 小波の答えは決まった。 
 「俺は…… 俺も委員長のことが好きだ」 
 「本当!? うれしい!」 
 感極まった紫杏が小波に抱きつく。 
 倒れそうになるも、何とか踏ん張る小波。自然と見つめ合う形になる。 

 「ねえ、小波君」 
 「何だ、委員長?」 
 「名前で呼んで。その…… 恋人なのに委員長って呼ばれるのは……」 
 恋人、と言う単語を口にする瞬間紫杏の顔が赤く染まる。その愛らしい仕草が小波をノックアウトする。 
 「わかったよ。紫杏、好きだ」 
 益々紫杏の顔が赤くなる。昨日までは紫杏がこんなに可愛いなんて気付きもしなかった。 
 小波が思わず抱きしめてしまうのも、仕方のない話である。 
そんな小波に一瞬だけ身を強張らせる紫杏。しかし小波を拒否するようなことはしない。 


 「もう一つ我侭いいかな?」 
 「我侭?」 
 「キス、してほしいな」 
 好きな異性に抱きしめられているせいか、先ほどから紫杏がどんどん大胆になっていく。 
 真面目な委員長の変貌に驚きながらも、小波に断ることなどできなかった。 
 瞳を閉じた紫杏の顔に、小波の顔が近づいていく。 
 程なくして二人の唇が重なる。 
 映画やドラマで恋人達がするようなディープキスではなく、軽く唇が触れ合うだけのキス。 
それでも二人にとっては充分だった。 
 幸福感に包まれる小波。キスが終わっても、紫杏を離そうとはしない。 
 小波はまだ気付いていない。その判断が過ちであったことに。 

 密着する二人。当然紫杏の身体を肌で感じることになる。 
 柔らかい胸が服越しに押し付けられ、女性特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。健全な中学生には強すぎる刺激だ。 
たちまち小波の下半身に血液が集まり、彼の分身が見る見る大きくなる。 
 当然それは密着している紫杏に押し付けられることになる。 
 「!? きゃ!」 
 慌てて離れる紫杏。小波は何故紫杏が慌てているのかわからなかった。 
しかし彼女の視線がちらちらと自分の股間に向けられていることに気付くとようやく事態を把握した。 
 「ご、ごめん。その、これは」 
 小波は何とか誤魔化そうとするが、上手い言い訳が浮かばずしどろもどろしている。 
 目の前の紫杏が先ほどの感触が思い出させる。さらに心が乱される。 
 慌てふためく小波に紫杏がトドメを指す。 
 「べ、別にいいよ、小波がしたいなら」 
その言葉が小波の最後の理性を奪い取った。 


ベッドの上には一糸纏わぬ紫杏が横になっていた。思わず生唾を飲み込む小波。 
その妖艶な光景は小波の目を釘付けにした。 
 「あんまりジロジロ見ないでよ。恥ずかしい」 
 「ごめん、でも綺麗だ」 
 「馬鹿……」 
 紫杏は羞恥と興奮で耳まで真っ赤に染まっている。 
 「本当にいいんだな」 
コクリ、と頷くことで肯定の意を示す紫杏。 

お互いに初めて同士である。いざやるときめても動きがどうしてもぎこちなくなってしまう。 
それでもここまで来て止めるなどという選択肢があるわけが無い。 
 小波はビデオや雑誌で知った知識を総動員させる。 
 (まずは胸なんかを揉んでよく濡らすんだったよな) 
 「紫杏、手をどけて」 
 小波に言われ、紫杏はゆっくりと胸を覆っていた手をどける。 
 形のいい乳房があらわになる。紫杏の胸は年相応であり、特別大きいものではない。 
それでも確実に女性を感じさせる胸は、小波を欲情させるには十分だった。 

そこにそっと手を触れる小波。柔らかい感触が伝わってくる。 
このまま欲望のままに蹂躙したいという気持ちを、紫杏のために理性でねじ伏せる。 
ゆっくりと、紫杏の反応を見ながら胸を愛撫する。 
どのようにすれば紫杏が感じるのか確認しながら指を動かす。 
 「ひゃん!」 
 小波の指が乳首に触れたとき、紫杏は堪らず声を上げた。 
 彼女の反応を見て、乳首を重点的に責める小波。 
 指がニプルを刺激するたびに紫杏の口から嬌声が漏れる。 
 「こ、小波くん、胸ばっかり、は、やめてぇ。切なくて、おかしくなりそう」 
 快楽の度に言葉を詰まらせながら、小波に懇願する紫杏。 
 敏感な部分への刺激が女体を火照らすも、まだ性の経験の浅い紫杏は胸への愛撫だけでは絶頂に達せない。 
そのもどかしさが羞恥心さえ忘れさせる。 


 小波は胸から手を離すと今度は視線を下半身へと向かわせる。 
うっすらと生えた陰毛に覆われた秘所が目に映る。初めて見る女性器に、小波の心臓が張り裂けそうなほど高鳴る。 
 勿論見られている紫杏も同じだ。悦楽と羞恥が入り混じり、動悸が激しくなる。 
 愛液もたっぷりと分泌されており、男を受け入れる準備が整っていた。 

 「それじゃあ、挿入るよ」 
コクリと頷く紫杏。その表情には不安の色が浮かんでいる。 
やはり初体験は緊張するのだろう。 
そのことに気付いた小波は紫杏に言葉をかける。 
 「大丈夫だ、委員長。俺、優しくするから」 
 小波はそう語りかけながら紫杏を抱きしめる。 
 体温とともに優しさも伝わってくる、紫杏はそんな気がした。 

ペニスをヴァギナへと押し当てる小波。 
 紫杏の秘所は未経験故に固く閉ざされており、なかなか挿入できない。 
しっかりと紫杏を押さえつけ、一層の力を込めてねじ込む。閉じた秘所がこじ開けられる。 
 亀頭だけだが紫杏の中に入る。そのまま力に任せて紫杏を突く小波。 
 程なくして感じられる処女膜の抵抗を、小波のペニスが貫く。 
 「っきゃあ!」 
 紫杏の身体に激痛が走る。彼女が今まで感じたことのない痛みだ。 
 「だ、大丈夫か?」 
 「大…… 丈夫だから、続けて」 
 苦痛に歪む紫杏の顔。しかし紫杏は続行を求めた。 
 「痛いけど、うれしいの。小波くんと一つになれて。だから続けて」 
 「……わかった」 
 紫杏の要望を受け、腰を前後させる小波。 
 一突きされる度に激痛に苛まれながる紫杏は、小波を抱きしめることで苦痛を紛らさせようとする。 


 一方の小波もまた追い詰められていた。 
 生まれて初めて経験する女性の膣は、小波のペニスに容赦ない快楽を与える。 
 今まで自慰ぐらいはしたことのある小波だったが、そのときとは比べ物にならない。 
すぐに限界を迎えてしまう。 
 「も、もう出る!」 
 二人ともまだ中学生である。流石に膣内に射精する訳にはいかない。 
 小波は寸でのところでペニスを引き抜く。と同時に白濁液が鈴口から放たれる。 
 紫杏に向けて撒かれた精液が彼女の身体を白く染めた。 



 若い性衝動は容易に抑えられるものではない。一度肌を交えた夜から、二人は頻繁に逢瀬を繰り返した。 
 小波のような年齢の男子に性欲を抑えろというのは無理であるし、紫杏も小波を拒むことはしなかった。 
 初めは苦痛しか感じていなかった紫杏が徐々に快楽を感じるようになっていくと二人の交わりは一層頻度を増していった。 
 今、紫杏の横には小波が眠っている。情事の後に疲れて寝てしまったのだ。 
そんな小波を紫杏は複雑な表情で見つめている。 
 彼女の脳裏に浮かぶのは初めて小波と一つになった日のことである。 
と言っても初体験を思い出していたというわけではない。その日起こったもう一つの出来事について考えていたのだ。 

ハタを指され捕らえられていた紫杏は、ギャスビゴー星人と対談していた。 
ハタ人間を指揮する存在として送り込まれていた彼女は、ギャスビゴー星人から極秘の任務を受けていたのだ。 
 「それで、指令とはいったい何だ?」 
 「地球人タチニ救出サレロ。ソシテ地球人ノりーだーヲ篭絡シ、意ノママニ操レル様ニスルノダ。 
 地球人ガ性交渉デ判断力ガ低下スルコトハ既ニ調査済ミダ」 
 「!?」 
 指令の内容に困惑する紫杏。 
 「どうしてそんなことをする?言うことを聞かせるだけならハタを指せば良いだけだろう」 
 「はたガ立ッテイレバ我々ガ操ッテイルコトガスグニバレテシマウ。 
シカシオ前ノ操リ人形ニシテシマエバ地球人ニ気付カレルコトナク我々ノ思ウママニデキル」 
そうなれば地球侵略がやりやすくなるという訳か。紫杏は納得した。 
 今まで頭にハタを刺して洗脳してきただけに、ハタが刺さっていなければ洗脳されているとは思われないだろう。 
 「了解した。今夜にでも実行する」 

これが彼女が小波に告白した原因である。小波は勿論何も知らない。 
 「仕方、ないよね……」 
 力無く呟く紫杏の声は、誰にも届く事無く夜の静寂に消えていった。 


 後日談

 月日は流れ、ギャスビゴー星人二度目の侵略から4年が経過した。 
 紫杏は独り、公園に佇んでいた。季節は冬、加えて時間は夜。木枯らしが彼女の体温を奪う。 
そんな中で紫杏はただ小波のことを思い返していた。 
 親の愛情さえ知らない紫杏を愛したただ一人の男。 
 今は会えない辛さが、寒さ以上に彼女を苦しめる。 

 「おーい、紫杏」 
 突然の声に紫杏が驚いて振り返る。小波だ。 
 宇宙人を2度も撃退し、野球人形を完成させることによりこれ以上の侵略を防ぐことに成功した地球のヒーローだ。 
 全力疾走してあっと言う間に接近する小波。 
 「そんな、今日は用事があるから会えないって言ってたのに」 
 小波は夢であったプロ野球選手になっていた。その経歴も相まって多忙な日々を過ごしている。 
 今日も小波の予定は埋まっており、会えないはずだった。 
 「何とか時間が作れたから急いできたんだ。一分でも長く紫杏といたいから」 
 「もう、しょうがないんだから」 
 呆れたような口調で喋る紫杏だが、満更でも無さそうなのは誰が見ても明らかである。 

 確かに紫杏は小波を篭絡することに成功した。しかしそれ以上に紫杏が小波の虜になってしまったのだ。 
それが小波との情事を繰り返していく内にそうなったのか、それとも紫杏の告白の通り以前から好意を寄せていたのかは、今となっては紫杏にもわからない。 
ただ確実に言えるのは紫杏が小波を愛しているということだ。 
 紫杏はギャスゴビー星人を裏切り、小波と共に戦った。 
 自分達の手駒だと思っていた紫杏の反逆もあって、ギャスビゴー星人は地球からの撤退を余儀なくされた。 
こうして地球の平和は守られた。 

 (仕方ないよね。小波のこと、本気で好きになっちゃったんだから) 
 「え、何か言った?」 
 「ううん、何でもない。さあ行こう」 
そう笑う紫杏は、この地球の誰よりも幸せそうだった。 .
 


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