「むぅ………」

自治会も引退し、やっと小波と過ごす時間が出来るようになり、内心物凄く嬉しかった紫杏なのだが今日は落ち着いてなどいられなかった。

たまにでる小波の唐突な提案により紫杏の家で休日を過ごすことになったのだ。
やはりいざ小波が家に来るとなると、既に恋人関係となっている今では以前とは比にならない程緊張と不安が襲ってくる。
そしてその時間は刻々と迫っている。

「…落ち着け、落ち着け」

と自分に言い聞かせる紫杏。流石の元自治会長も、色恋沙汰となるとこのようなありさまである。

そして…

ピンポーン

「ビクッ!」

思わずインターホンに驚いてしまう紫杏。こんなところ小波に見られたらなんて言われるだろう。
あぁ、情けない…

「お邪魔しま〜す」

玄関から小波の声が響いてくる。
硬直してしまう体を無理に動かし小波の元へと向かう。

「早かったな」

本当は今すぐにでも抱き着きたい紫杏だがキャラ崩壊してしまうので実はいつもその衝動を抑えている。

「ごめん紫杏。あまりにも寒かったから勝手に上がらせてもらった」

小波は鼻を赤くさせていて、外の寒さを容易に想像させた。

「あぁ、構わない。暖まるものでも用意するから…」
と、言いかけて思考が停止した。

「………!?」

紫杏は一瞬体を強張らせたが、次第に力を抜き、耳まで顔を赤くさせた。

小波に、抱かれてる…?

「ごめん。いきなり」

普段は全くと言っていいほど奥手な小波だが、それは学校にいるときだけであり、やはり男は獣である。

「ば、馬鹿…こんな、急に」

キスすら数える程しかしておらず慣れてないのもあるが、元々紫杏は恋愛に関して疎い。高鳴る鼓動は人並み以上だろう。
そこへこのコンボである。

「紫杏が可愛すぎるからだよ」

紫杏は顔を俯かせ、一人、幸せの余韻に浸っている。

「もぅ…バカ」

紫杏のいい香りが小波の鼻腔を擽る。
これ以上抱いていると理性がきかなくなりそうだったので、小波は渋々紫杏を引きはがす。

「あ…」

紫杏は少し名残惜しそうな表情を浮かべたがすぐに顔を真っ赤にさせ、あたふたしながら、

「あ、え…そ、そうだ飲み物!」

少しショート気味のまま、キッチンの方へ向かって行った。




「あれ?」

小波は以前紫杏の部屋に入ったときと雰囲気が全然変わっていることに驚いた。
随分女の子っぽい部屋になっていた。

「前はもっと殺風景だったよな」
と独り言を漏らしながら、辺りを見渡す小波。

「ふふふ、なんだその間抜け面は」

ぽーっとしてて気付かなかったが、すっかり調子を戻した紫杏が笑顔で迫っていた。
コタツの上に、紫杏は二つマグカップを置いた。

「ココアでよかったかな」

紫杏はコタツに足をいれ、ベッドに寄り掛かる俺の隣に座り尋ねてきた。

「うん、ありがとう」
お、うまい。

「というかだな、小波。」

「ん〜?」

「何故コタツも暖房もつけないんだ?」

「ああ、ちょっとぼーっとしてたから」

「しょうがないな…」

と言って紫杏は、コタツのスイッチをつけるため体を倒し、手を伸ばした。
いちいち立つのが億劫なのだろうが…

丸くて柔らかそうな紫杏のお尻が、突き付けられた銃口の如く俺に向けられていて、しかも腰上の隙間からは水色のパンツがチラチラと誘惑している。
健全な男子高校生である小波の欲求は急上昇。
物凄い速さで沸き上がる衝動。
突然発汗作用を起こしだした身体。

そして授業中の倍は働きだした脳は、一つの命令を下した。

「ねぇ紫杏。やっぱりコタツ付けなくていいよ」

「…それは私が寒がりだとわかって言ってるのか?」

紫杏はアヒルのように口を尖らせ、ジトっとした目でこちらを見ている。

「俺が暖めてあげる」

「んなっ…」

瞬間的に変なことでも想像したのだろうか、顔を真っ赤にさせ、困惑している。

「暖める…って?」

紫杏はおろおろしながら小波に問う。

「…俺が紫杏を抱きしめたり、一緒に寝たり…」

「ね、寝たり!?」

紫杏は笑える程に過剰な反応を示した。恐らく紫杏の脳内では、
寝る=えっち
みたいな方程式ができ上がっているのだろう。

「…どうしたの?」

反応見たさに聞く俺は、変態ではないはずだ。

「えっ、あ…いや、べつに!」

普段はクールな感じなのに何故こういう話になると、こんなにも取り乱してしまうのだろう。
まぁ、そんなとこも可愛くて大好きなんだけど。

「俺紫杏のこと大好きだから、たまにはそういうのもしてみたいんだ。…紫杏は嫌かな?」

「あ…私も……小波のこと…大好きだし……全然嫌なわけ…ない…」

俯いて凄く恥ずかしそうにそんなことを呟く紫杏を見て、俺は我慢の限界を向かえてしまったようだ。

「んっ…」

次の瞬間には紫杏を押し倒しキスをしていた。

「んっ…んふ…う……ん…」

紫杏との初めてのディープキスは、口内がとろけてしまいそうな程気持ちが良かった。
そしてなんといっても紫杏のエロい息遣いに、小波の興奮は跳ね上がった。
ちゅぱちゅぱと舌と舌で唾液を絡み合わせ、水音を響かす。
初めてとは思えない程激しく舌を動かす紫杏。
きっと、紫杏も溜まっていたのだろう。

「んっ…んっ……ちゅぱ……」

逃げても逃げても追い掛けてくる紫杏の舌。もうどっちがどっちの唾液かわからなくなっている。
唇を離すと、唾液はいやらしく糸を引き、蒸気した紫杏を更にエロくさせる。

「紫杏、やらしいキスが好きなの?」

「………」

恍惚の表情を浮かべ、心ここにあらずの紫杏。
…すっかりのめり込んでしまっている。

「しあーん…」

目の前に手を翳してみる小波。

「………はっ!」

どうやら元の世界にに戻ってきたらしい。

「気持ち良かった?」

紫杏は目を泳がせながら、

「………ぅん」

と、小さく答えた。


小波は紫杏を抱き抱え、ベッドに寝かし毛布を掛けると、自分もその中に入った。

「…ぅ」

小波が紫杏の髪を撫でると小さく声をあげ、恥ずかしいのか、小波と目を合わせようとはしない。
しかし、嫌ではないみたいだ。
しばらくして、小波はそこから手を頬に移動させた。
紫杏のほっぺたはぷにぷにと柔らかい感触で、ずっと触ってても飽きなそうだ。

ぷにぷにぷにぷにぷに…

「い、いつまで…」

羞恥に堪え切れず、困り顔になる紫杏。

「可愛いなぁ…」
と同時に、頭をなでなで。
次第に赤く染まる紫杏の整った顔は満更でもなさそうである。


「えぇっ!?……んむ」

そして小波は突然紫杏の唇をなめ回し始めた。

「…こ…なみ……?」

唇の上を滑るように周回し、たまに自分の唇で、紫杏の唇を吸い上げては「ちゅぽっ」と音を立て離す。

「〜〜〜〜っ…」

今までにないこの小波のいやらしい行動故に、物凄い興奮を覚える紫杏。

「ちゅぽっ…ちゅぽっ…」

小波は紫杏の頭を両手で押さえ、吸い上げては離すの繰り返し。
紫杏は息を荒げ、されるがままである。

「まだ寒い?」

何食わぬ顔で紫杏に問い掛ける小波。
もちろん「まだ足りない?」という意味である。

「ん…」

紫杏は、こくりと頷いた。

「…わかった」

小波はぎらりと目の奥を光らした。


「…ちゅ…ちゅぽっ……ちゅぱっ…」

再び紫杏の口内を犯し始める小波。

「ん゛〜〜…」

紫杏は経験したことのない快楽に身を委ね、激しく小波の舌を求めている。
紫杏の拙い舌遣いに、小波の興奮も頂点まで達す勢いである。

「こ…なみ…ぃ…」

切なそうな声を漏らす紫杏。それに応えるかのように勢いを増す小波の舌遣い。愛しくてたまらない。


―5分…
いや、10分は経ったであろうか。
ようやくこの濃厚なキスを終えたのだが、当然、若い小波はまだ全然足りない。既に準備万端で、これでもかと言わんばかりに下の方で自己主張しまくっている。
一方紫杏はそんな余裕はないらしく、余韻に浸っているのか放心状態である。

「当然、まだ暖まってないよね」

もう我慢できないといった感じで問い掛ける小波。
しかし、小波は紫杏の一言によって衝撃を受ける。

「んぅ…もういぃ……充分」

紫杏はトロンと半開きだった目を閉じ、そのまま眠ってしまった。

「えっ…おい紫杏!?」

いたずらがばれた子供のように焦りだす小波。

「Zzz…」

しかし無情にも既に紫杏は夢の中である。
どこの漫画の主人公だといったところであるが。

「嘘だろ…」

虚しくいきり立つ己の分身を見て、何故か悲しさが込み上げてくる小波であった。

「次は程々にしとこう…」


一人の男は心に誓った。

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