「いくら家内とはいえ言って良いことと悪いことがあるだろうが!」 
「何よ!いい歳して逆ギレ!?」 
↓ 
「もとあと言えばあなたが遠征の日程を間違えなければ済んだんでしょうが!」 
「そ、そりゃそうだけどだからって何度も何度も言わなくてもいいだろ!」 
↓ 
「日程を間違ただけならまだしも、まだ大学生くらいの歳の子に娘預けたりする!?」 
「いや、その、あいつは信用できる奴だったし…」 
「そうじゃなくてあんな若い人に子守なんて迷惑以外の何でも無いでしょうが! 
 あの時の後輩の彼女さんの申し訳なさそうな顔ときたら…」 
↓ 
「大体この前もあなたが書類の提出期限間違えたせいで、結局あたしがわざわざ高速使って届けたんじゃない! 
 いつもいつも進歩がなさ過ぎなのよ!」 
「…ごめんなさい。」 

たまには反撃してみる。 
「えと…なんていうか…ホントに全面的に俺が悪かったです。はい」 
「分かれば良いのよ。分かれば。じゃ、夕飯にしましょ?」 
結果はご覧の有様。 
(やっぱり俺には野球が一番なんだな…うん…!) 
そして翔馬はどこか間違った考えで自分を慰めていた。 


「また二人ともけんかしてるのー?」 
「こ、これはお父さんとお母さんの問題だから…」 
「“また”お父さん負けたんだー、アハハッ!」 
「うぐぐ…」 
「そこ!子供相手に歯ぎしりしない!」 
「……すんません。」 

若菜と結婚してから6年が過ぎた。 
そしてその結婚生活はというと…はっきり言って良好だ。喧嘩は多いし、娘に馬鹿にされることも多いが非常に充実している。 
もちろん最初からうまく言ったわけではない。 
高校時代の世間の期待、そして彼の努力とは裏腹にプロの世界での結果は中々出てくれなかった。 

あの高2年の決勝戦、そこでの敗北から続く挫折に次ぐ挫折。 
「野球が全て」と豪語する翔馬といえども幾度となく心が折れかけた。 
そんな中でも若菜の親身なサポート、とある先輩からの目から鱗の教え等 
様々な物を吸収し、覚え立ての“無理のない努力”でそれを磨き上げ、ついに高校時代から続く長いスランプを抜け出した。 
順調に結果を差し始め、とうとう1軍半卒業なるか…というところでの彼女の突然の妊娠。 
当時の翔馬は困惑を通り越して申し訳なさを感じていた。 
こんな不安定な人生に、彼女を巻き込んでしまっていいのだろうか。 
こんな自分と共に過ごすことを、彼女は心のどこかで嫌に思っているのではないだろうか?と。 
そんな心配を余所に、彼女は翔馬をより一層親身になって支え、今の幸せな生活を築き上げてくれた。 
下積み時代も今も、一選手としてもプライベートでも、今の翔馬が存在できるのは、天道若菜のお陰に他ならない。 


「お父さん、お箸とお皿並べてくれる?」 
「………」 
「並べておいてくれる?」 
「………」 
「な・ら・べ・て・く・れ・る?」 
「わ、わかったよ!ちょっと返事が遅れただけで…」 
「いいからはやくやりなさい!」 
「お父さんよわーい」 
「…ちくしょう。」 

その代償が今の彼の立場である。 
もう完全に尻に敷かれっぱなしなのだ。 

高校の時から既にマネージャーとしての仕事の他、形ばかりで無能な監督の代わりに事務手続きを行ったり 
キャプテンとしての仕事のサポートをしてもらったり、全面的に彼女に助けられてばかりいた。 
プロ入り後、恋人関係が続く中でもそれは続いた。 
どうにもメリハリのない寮生活を送っていた彼の生活習慣をたたき直したり 
伸び悩む彼の近くで励まし続けたり、オーバーワーク気味の彼を“色々と”ガス抜きをしてあげたり… 
そして結婚してからは先ほど述べたとおり。 
尻に敷かれてこそいるが、幸せ、健康、選手としても申し分ない生活を送れているのは一重に彼女のお陰だ。 

「早く機嫌治してくれよな…怒鳴られるこっちの…」 
「ん〜?」 
「…ごめんなさい。」 

…つまり、16で彼女と出会ってからの十年以上、その間ずっと翔馬は彼女に依存してきたのである。 
それでいて依存対象が自分よりずっと人間的に有能だったとすれば尻に敷かれないことがあろうか。いやない。 
そもそも先ほどの彼女の怒りも至極真っ当なものなのだ。普段からそんなに怒りっぽい女ではない。 
一昨日、自分が遠征予定を間違って伝えたせいで、若菜と自分が同時に家を空けてしまった。 
もちろん6歳の娘を放っておくわけにもいかず「信用できる奴に預けるから大丈夫」とアフターフォローは入れてあった。 
…が、その二人はよりによって21歳の絶賛同棲中カップル。 
これまで幾度となく繰り返してきた曖昧な予定確認、そしてあまりにもデリカシーに欠けるお守り押し付け。 
ある程度怒られるのは無理もないのだが、なぜかよりによってこんな時に反抗してしまい、理詰めでボコボコにされてしまったわけである。 

(いや、いっそもっと怒って…もう少し距離を置けるくらいの関係だったら…無理だな。) 

溜息をつきつつ、翔馬はご機嫌取りの皿洗いでも始めることにした。 



「…という感じなんですよ。」 
「はぁ…」 
「どうしたもんですかね?」 
「いやオイラに聞かれても困るでやんす!」 
他球場からの帰りのバス、相席になった先輩に話を聞く翔馬。 
行為自体は間違っていないが、対象が間違っている。 
「そもそもオイラ結婚してないでやんすし、仮に出来たとしてもお前みたいな美人の嫁さんゲットできるはずないでやんす!」 
「でも先週も新しい女の子を…えーと、攻略?したとかいってたじゃないですか。」 
「ゲームの話でやんす!ゲーム!」 
「ゲームといえど恋愛は恋愛なんでしょう? 
 今の嫁としか付き合ったことがない俺より、何人もお嫁さんがいる具田先輩のほうが全然…」 
「…引退後にバラエティー路線考えてるなら忠告しておくでやんす。コテコテのギャグはあまり受けないでやんすよ?」 
「いやギャグじゃないですって!」 
せめて結婚4年目の東先輩に聞いてくれればいいものを、なぜ自分に、と具田は厄介な後輩を呪う。 
ひたむきで真面目なところがまた憎らしい。 

「で、何が問題なんでやんす? 
 はっきり言って『ちょっと尻に敷かれてるけどそれがまた良いんですよ』的なノロケ話にしか聞こえないでやんすが。」 
「概ねそんな感じです。ちょっと尻に敷かれてはいますが私生活は結構充実してます。」 
「…ひょっとしてただ自慢したいだけでやんすか?」 
「そうじゃなくてそこが問題なんです。私生活が充実しすぎなんですよ。そりゃもう野球を二の次にしたいくらい。」 
「はぁ?殴ってほしいのでやんすか?」 
「俺、付き合ってた時に何度もあいつに言ったんですよ。『野球とお前だったら俺は野球を優先するからな!』って。」 
「よく怒られなかったでやんすね。」 
「そこがよくわかんないやつで、俺がいくら言っても笑いながら『それでこそ天道君よね♪』とか…」 
「果てしなくうぜーので早く話を進めるでやんす。」 
「つまり、一度野球を優先する、って言ったからには、やっぱり俺は野球一筋に生きるべきなんじゃないかなぁ…って思いまして 
 家族第一主義のパパさんみたくなるのは、ちょっとばかり良くないかと。」 
「………養育費だけ払うって言って離婚しちまえでやんす。」 
「それは無理です。もうあいつ無しだと生きていけないです。」 
「ノロけるのもいい加減にしてほしいでやんす。」 
「俺、もうあいつに頼りっきりで生活力皆無なんで、あいついないとゆで卵も作れません。」 
「あぁそういう意味でやんすか。」 
「あ、もちろん、あいつと離れたくないっていう愛情的な理由も…」 
「シャラップでやんす。」 
「しゃらっぷ?」 
「説明するのもめんどくさいでやんす。 
 …つまり、今の奥さんと別れるようなこともなく 
 それでいてほどほどに距離を置けるようになるにはどうすればいいか、ってことでやんすか?」 
「えーと…うーん…そんな感じ、ですかね。」 
馬鹿、それも野球馬鹿を極めるとこんな変な人間性が形成されてしまうのかと、具田はある種の感心さえ覚えた。 
「…どうしたもんでやんすかね。」 
面倒なので話を打ち切ってもいい(というかそうしたい)のだが 
ここまで話させておいてそれで終わらせるのはちょっと気が引ける。 
「あっ」 
適当に考えていた具田だったが、一種の妙案を思いついた。効果的かは別として。 
「一つ考えがあるでやんす。バス降りたらちょっと付いてくるでやんす。」 
「わかりました!」 


「えーと…おじゃましま…す?」 
「こんばんわー、うわー格好いいですねー! 
 スキンヘッドなのに格好いい人って初めて見ましたよー。」 
「え、あ、どうも。」 
そう狭くない個室に女性がいた。 
随分と若い女性で、にこやかに笑っている。 
格好は思ったより落ち着いた物だった。“思ったよりは。” 
「お客さん、こういう所は初めて?」 
「え、えぇ…け、経験はあるんですが…ていうか結婚もしてるんですが―」 
「えー、ひょっとしてお嫁さんに内緒?いけない旦那サマですねー♪」 

(な、なぜこんなことに…?) 

… 

「ここは…」 
「いやぁ久しぶりに来るでやんすねぇ『幸せ小屋』。」 
具田が連れてきたのは所謂お風呂屋さん、ぶっちゃければ風俗店だった。 
「えと、なんでこんな所に俺を?」 
「ぶっちゃけ深い考えはないでやんす。 
 こういうときはやな事忘れて女に走るのが一番でやんす。」 
「でも、俺、たまってたら若菜…その、嫁がいるんで別に何とでも…」 
そこまで言って具田の表情が急激に白けた物へと変わったので、翔馬は口をつぐんだ。 
「だから嫁さん依存をどうにかしたい、って時になんでまた嫁さんに慰めてもらうでやんすか!?」 
「あー、たしかに…」 
「お前が嫁さんでモヤモヤした気持ちをどうにかしたい、っていうなら嫁さんに関わらない方法で息抜きするのが一番でやんす。」 
「でも、これって浮気扱いになるんじゃ…」 
「大丈夫でやんす。別に嬢と恋愛するわけでもないし。 
 というかそんなに日常的にイチャこらしてる嫁さんだったら、お前がソープ行ったか、なんて疑いもしないに決まってるでやんす。」 
「なる…ほど…」 
「まぁちょっぴり罪悪感があるなら、これはこれで、っていうことで今回の一回で終わらせるにして… 
 そんな感じで家族と野球以外の自分を見つけてみるのがいいでやんす。」 
「あ、ありがとうございます…」 
「さて、オイラも久しぶりに楽しんでみるでやんす!」 


…理屈の通った話ではあった。 
頭で理解できても心で理解できていなかったが。 
(先輩はああ言ってたけど、いいのか、こんなことして…) 
浮かない顔をする翔馬を見て、女性は不思議そうな顔をした。 
「ひょっとして…緊張してます?」 
「…………………えっ?あ、はい」 
「フフ、可愛いお客さんだなぁ」 
微笑ましく、というよりおもしろがって笑っているように見えた。 
見た感じ随分と若いようで、顔立ちも整っている。 
(でも、若菜のほうが綺麗かなぁ) 
「ほらほら、お客さんも脱いじゃって」 
「あ、そ、そうか…」 
ぎこちない手つきでベルトを外す。 
薄着の上から分かるスタイルはそれなりに良好のようだ。 
(でも、若菜のほうが…) 
「ってそうじゃないだろ」 
「ん?」 
「あ、すいません、こっちの話です。」 
とりあえず、お金は払ってしまったのだ。 
正しいか正しくないかは別として、今は料金分だけ楽しませて貰うしかない。 

… 

「ふぅ…久々だけあって疲れるでやんすねぇ、今日はとっとと帰って…あれ?」 
事の終わった具田が金を払って出かけると、待合に翔馬の姿は見当たらなかった。 
「天道のやつ、どこいったでやんすか?」 
同じサービスを受けていたはずなので大体同時刻に待ち合わせると思ったのだが当てが外れた。 
辺りを見渡す湯田に係員が話しかける。 
「お連れのお客様でしたら、調子が優れないとのことでしたので先にお帰りになりましたよ。」 
「体調不良?」 
「はい、部屋に入ってから、ものの10分も経たないうちにお支払いだけすまされて、出て行ってしまわれました。」 
「変でやんす…あいつ、今日の勝利投手で絶好調のはずじゃ…」 


… 
「ただいま」 
「おかえりなさい。えと…どうして遅れたの?」 
「ちょっと先輩に付き合わされて…ちょっとシャワー浴びてくる。」 
「えっ?」 
そそくさと浴室に入り込む翔馬。 
その後ろ姿から不穏な物を感じた若菜は思わず声をかけた。 
「あ、あのさ…」 
「どうした?」 
「…ごめんね」 
「へ?」 
「昨日は…その、言い過ぎちゃった…から…あたしも、悪かったと思うの…」 
「い、いや…そんなことは…」 
「ごめんなさい!」 
「…………いや、いいよ。 
 あ、ちょっと用があるからリビングで待っててくれ。」 
「あ、う、うん、わかった。」 


「ん……はぁ…ん……」 
小鳥のついばみのようなキスを何度も繰り返す。 
薄明かりの突いたリビングで二人は身を寄せ合っていた。 
「んっ…はぁっ、どうしたの?急に」 
「…いやか?あの子は寝てるみたいだからバレはしないだろうし…」 
「いやじゃないけど…こんなにガッついてくるなんて珍しいな、と思っ…」 
彼女の口をつぐませるように唇を重ね、内部に舌をねじ込む。 
「…んぁうっ…ちゅる……」 
舌と舌を絡ませ合ってお互いの口内を蹂躙するディープキス。 
翔馬は若菜の頬を包み込むようにして顔を固定し、若菜は上向きになりながら彼の唾液をすする。 
「んっ…うぅ…ふ…んぅ……」 
10分ほど口内を貪り合ったところで、ようやく唇と唇が距離を置いた。 
「ほんとにどうし…あっ」 
抑えきれなくなった翔馬は、愛する妻の胸元に顔を埋め、そのままソファに押し倒す。 
「ねぇってば…」 
一見困惑している彼女の瞳は潤み、頬もすっかり上気しており、その艶やかな様は翔馬の官能をたまらなくくすぐった。 
(えと…流石に怪しまれてるな、これ…) 
しかしそこでまごついてしまうところが、天道翔馬の天道翔馬たる所以である。 
先ほどはどうしても背徳感が興奮ではなく罪悪感に繋がって、一度も行為をすることなく中途半端なまま帰ってしまった。 
そのせいで今ひとつ抑えが効かなくなってしまっているのだ。 

そしてそんな狼狽える夫の姿を見て若菜は小さく吹き出してしまう。 
「な、なんだよ。何がおかしいんだよ。」 
「いや、別におかしくなんてない――けど?」 
「目をそらすな。」 
「あっ……」 
半ば自棄になるようにして、彼女の寝間着のボタンを外し中に手を突っ込み、下着越しに胸を揉む。 
あっさりブラもはぎ取ってしまう。 
「ふぁ……ぁ……」 
やさしくくすぐるかのように全体を撫でるかと思えば、乳首をきゅっとつまみぐりぐりとこねくり回す。 
そのまま片方を口に含んで吸い上げたり、甘噛みしてみたりと、実に多彩な刺激を彼女に贈る。 
「いつのまにか、うまくなったわよね…ぁあっ」 
「おかげさま、でな。」 
はだけた胸元から彼女の身体を引き上げるように寝間着を脱がす。 
10年前と比べると丸みが強まった感はあるが、それでも一児の母とは思えないほど若々しい。 
「…」 
「ん?どうしたの?」 
「……やっぱり綺麗だな、と思って。」 

「………へ?」 

文字通り開いた口がふさがらない若菜。 
しばらくして意識を取り戻すと、翔馬の表情が曇っているのに気付く。 
「……あ、ごめんごめん!」 
「人が素直に褒めてやってるって言うのにお前ときたら……」 
「なんていうか、嬉しい半分驚き半分っていうか…」 
「言い訳になってねーよ!」 
半ば自棄のまま、下着とまとめてズボンに手を掛け、一気に脱がす。 
どんな形であれ褒め言葉を否定されるのは面白くない。 
「いや、うれしいことはうれしいんだって。ちょっと驚いただけで…」 
「…いつもはムードムードうるさいくせに。」 
まぁ柄にもないことをやってしまった原因は数時間前の出来事との対比のせいなので 
あまり強く出るような真似はできなかった。 
「ごめんってばぁ…クスクス」 
そんなくだらないいざこざの間にも、若菜は翔馬の寝間着のボタンを手際よく外していく。 
まるで自分の子をあやすように、あっという間に翔馬は半裸にしてしまった。 
「…女の方がこういうの上手い、っていうのはどうなんだろうな。」 
「あなたって甲斐性無しが服を着て歩いてるようなものだから……ぁ」 
軽口を適当に流し、無言で彼女の秘所に触れる。 
ムードも何もあったものではなかったが、相応にそこはほぐれていた。 
「あぁ…んんぅ…ん、ふぅ」 
いい加減おちゃらけたままだと半勃ち愚息も完全に萎れてしまう。 
そう思った翔馬は口付けを再開し、愛撫を続ける。 
「んふぅ…んっ、んんっ…」 
中指と人差し指を完全に中に沈み込ませ、中の凹凸の感触を探るように動かす。 
もちろん出し入れするだけではなく、出入り口の表面をなぞったり、陰核をつまんだりと 
柔らかなそこを飽きさせないように刺激する。 
「ん、ふぁあっ…んぅううっ!」 
上手くなったかどうかは分からないが手慣れてきた物だなぁ、とは自分でも思う。 
彼女を悦ばせたいという想いがあってこそのもの…なのだろうか? 
嫁が自分の手で悦んでくれるというのは確かにうれしいが。 
「ん…はぁ…しょうまぁ…」 
悦ぶ様もさることながら、不意に名前を呼ばれるとどきりとしてしまう。 
「良い感じみたいだな。」 
「うん、すごい、きてるっ…」 
女性を悦ばす上手い言い回しなんて思いつかないが、それとなく言ってみる。 
そんな不器用な彼の手の上で若菜は甘いしびれに身を焦がしていた。 
いつもならこの後“お返し”をしてやるのだが、今日は彼に身をゆだねてしまいたかった。 

「ふぅ、ん…その、そろそろ、いいかな?翔馬の、欲しくなっちゃって…」 
「あ、あぁ…こっちこそ逆に良いのか?」 
「もう、我慢できない、から…」 
そんな艶めかしい姿を見せられて我慢出来ないのは翔馬も同じだった。 
膝立ちになってズボンとトランクスを脱ぎ 
涎を垂らして待ち構える彼女の割れ目に肉棒をあてがう。 

「はぁぁぁぁっ!んっ、きてる、きてる…!」 
「うぉ、一気に、飲み込まれた…」 
「あぁ、ぁぁ…すごっ、すごく深くて、翔馬のが…ずんってきたのぉ…」 
恍惚とした表情で甘い吐息を漏らし、夫と見つめ合う若菜。 
新たな刺激をせがむように、結合部を揺らめかし、目の前の逞しい腰回りに手を伸ばす。 
「ああぁああっ、んっ、はぁん、そこ、いいぃ、んはぁっ!」 
「お、おれも、きもちいい、からっ」 
ばしんばしんと音を立てながら愛する妻に腰を叩き付ける。 
柔らかで暖かな彼女の肉体そのもの。ねっとりとした膣肉が優しく肉棒を締め付けるその感触。 
快楽によがるあられもない表情。艶めかしく響きわたる嬌声。 
いずれもが翔馬の官能を堪らなく燃え上がらせる。 
「あっ、はぁっ、ねぇ、キス、キスしてっ」 
「わ、わかっ…んんっ、んっ」 

ずちゅっ ずちゅっ ずちゅっ 

若菜の方から抱き寄せるようにして唇を押し付けてきた。 
下半身を激しくぶつけ合いながらのキス。 
先ほどのねっとりとした濃厚さはないが、下半身に連動するかのように激しく貪り合う。 
「んふうっ、んんっ、あぁっ、ああっっ!!」 
翔馬はキスを止めて彼女の背に手を回し、より身体を密着させながら肉槍で弱点を深くえぐる。 
敏感な所をずんずんと責められ、抑えようのない快楽が全身に走る。 
文字通り天にも昇るような感覚だった。 
「それ、すごおっ、すごっ、だめだめっ、あたし、だめええっ!」 
「お、おれも、このままじゃ…っ」 
激しい水音を響かせながら淫らに締め付けられ、翔馬も息をつくなどない。 
ここはやられる前にやることに決めた。 
「あっ、そこ、いや、そこ、感じすぎちゃう、ひゃあぁあんっ!」 
ただがむしゃらに突くのを止め、膣の上側に引っかけるように肉棒を押し付ける。 
ここを先っぽで責め立てると、いつも彼女は一際淫靡な叫び声を上げてくれるのだ。 
「ひゃああ、んっ、しょ、しょうまあっ!」 
「お、おい…っ!」 
若菜の両足が翔馬の身体を抱き寄せ、不意に子宮口に押し付けられる。 
それと共に持ち上がる急な性感の高まりに、翔馬は自制することをやめた。 

ばしん、ばしんと音を立てて、ラストスパートをかける。 

「あぁああっ、いいっ、あたし、もおっ、だめ、げんかいっ!」 
「俺も、もう、そろそろっ!」 
「いいっ、いっ、あ、いっちゃ、いっちゃ、ああぁぁああぁあああっ!!」 
「………!」 
きゅっと収縮した膣の奥深くまで肉棒を突き刺し、大量の精を放出する。 
そこから更に搾り取ろうとうねる肉壁に合わせ、とくんとくんと小刻みに射精を続けた。 

… 
「はぁ、はぁ、はぁ」 
「あは、すっごい、奥まで来てる…」 
何度目かの行為を終え、身も心も燃え切った二人。 
今まさに続く射精の、そしてそれを受け止める感覚を、双方うっとりと味わっていた。 

お互いに身を清め、服装を整えている間、若菜は嬉しそうに翔馬に問い掛ける。 
「なんか、いつもより盛り上がってなかった?」 
「いや、別にそんなことは…」 
「何かあったの?」 
真実を明かして一悶着を起こすのは嫌なので、なんとか誤魔化したい。 
しかしこの男に上手い言い回しを思いつくほどの器量はない。 
「ま、まぁ、なんていうか、その、愛って大事だなぁ、って思うようなことがあって… 
 やっぱりお前が一番だな、って思ったって言うか…そんな感じ。」 
「…」 
「…」 
「…引退後にバラエティー路線を考えてるんなら向いてないと思うよ。」 
「だからギャグじゃねーよ!!」 




後日。 
「いやー先輩、先日はありがとうございます!色々吹っ切れましたよ!」 
「そりゃ力になれたのは嬉しかったでやんすが…結局これからも通うでやんすか?」 
「あ、俺、これからは嫁一本槍で行くことにしました。」 
「え?それじゃ本末転倒…」 
「やっぱり俺、ああいうの合わないみたいなんで“野球も大事だけど家族も大事”って路線で行くことにしたんです。」 
「は、はぁ…そんな単純なのでいいでやんすか?」 
「先輩が知らない世界に連れて行ってくれたお陰で分かったんですよ。本当にありがとうございます。」 
(こいつの奥さんも大変でやんすね…) 

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