俺は小波。プロ野球選手だ。 
あ、違う違う。よく勘違いされることがあるんだが、ちょっと前に事故死した小波は俺のいとこなんだ。 
 顔も声もよく似ていて、プロ野球選手でもあったから、よく間違えられるけど。 

 俺は、プロ入り前は社会人野球をやっていた。 
その時にある女性と出会って、男と女として付き合うようになり、めでたく結婚した。 
 死に掛けたり死なれ掛けたりしたけど、今では幸せに暮らしている……んだが。 

 「やぁ、サイボーグ青年。久しいな。前は必要も無いくせにうちの病院に入り浸ってくれてたというのに、最近じゃめっきり顔を出さなくなって。 
  お目当ての子が辞めてしまったからか? 病院はそういう施設じゃないぞ。そもそも彼女はキミと結婚してここを辞めてしまったんだが」 
 「加藤先生……俺はもうサイボーグじゃないです。生身の人間ですって」 

 目の前で自分の冗談に笑っている女医さんは、加藤先生という。加藤先生と俺は何かと縁が深く、いろいろお世話になった。 
 美人で、医者としての評判の高い先生だ。ときどき何科だか分からなくなるけど。 

 「へぇ。どこか怪我したの?」 
 「いや……今日は怪我ではなくて、その、一種の病気というか」 
 「何だ、歯切れの悪い」 

 今日は俺の嫁さんのミキさんに言われて、加藤先生に診察をお願いしに来た。 
 俺はこの身体を再生――いや何でもない、とにかく身体に不具合ができたと思ったので、知り合いの唐沢博士に見てもらおうと思ったんだが、 
ミキさんがとても深刻な顔をして強く勧めるものだから、まず加藤先生に診てもらう事になった。 
 正直加藤先生には男として話しづらいものがある症状なんだが…… 

「ふむ。Erectile Dysfunction、所謂EDというやつだな、それは」 
 「……ですよねー」 
 「結婚してからそれなりに経っているけれど、その間叶野さんとは?」 
 「……立たなくなったのは最近です……」 
 「それじゃ、朝立ちは?」 
 「それが全然……」 

 亀田君あたりなら『ここは“私が確かめてあげようか”の展開に決まっているでやんす! それが様式美でやんす!』 
と言い出しそうだなぁ、と思いながら、加藤先生の問診を受けた。ほんの少しだけ亀田君がうらやましくなった。 
 一通り俺の話を聞くと、加藤先生は何か考え込むような顔をしていた。 

 「……ねぇ、小波君。あなた、立たないことに心当たりは無いの?」 
 「え、こ、こ、心当たりっですかっ?!」 

 心当たり。実はある。あるにはあるのだが、言えない。 
 加藤先生にはバレているが、少なくとも自分から言うわけにはいかない。 
まさかこの身体が、研究途中のクローン技術で作られたものだなんて―― 

「小波君は、叶野さんの前の彼氏がどうして死んでしまったか知ってるかしら?」 
 「……は?」 
 「腹上死よ。ちなみに腎虚もやらかしてたわ。これは、叶野さんが何やらかしたか、詳しく聞かなければなさそうね」 

そういうと加藤先生はおもむろに服をはだけて 

(省略されまs .

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