最終更新:ID:wDz4+uLbFw 2021年05月01日(土) 14:57:16履歴
あたしは落ちこぼれた女の子である。名前は言えない。
どこで生れたかたぶん聞いたことがある。
何でも普通の病院でおぎゃーと泣いて生まれたことだけは間違いない。
あたしは二年前始めて挫折というものを経験した。
しかもあとで聞くとそれは人生という旅路の中で一番重要な出来事であったそうだ。
この挫折というものは時々あたし達若者を再起不能にするという話である。
しかしあたしはある希望を見出したから別段絶望するということも無かった。
ただ旧友に嘘をついて見栄を張ったこともあったが少し前に本当のことを言ったばかりである。
ある人が落ちぶれても絶望しなかったのがいわゆるあたしの指針となったのだろう。
……とまあ、古い文学をオマージュしたあたしの自己紹介はどこか置いといて。
「そういえば、最近どうなの?」
六月某日の放課後。野球部の部室にて。
ちくちくちいくとボールを繕っていたあたしは、
何の脈絡も無く、目の前に座っている木村さんに問いかけた。
「どうって、何が?」
突拍子のない質問にも全く慌てる様子を見せず、
木村さんは手際よく練習着の穴をふさぎながら、仏頂面で返事をしてくる。
少しだけ気圧されちゃったけど、怯えをボールと一緒に放り投げて、あたしはにこやかに笑った。
「何がって……もちろん、木村さんとキャプテンのことよ。
最近は二人を町で見かけたって噂も聞かないな、って」
あたしがキャプテンと口にした瞬間、木村さんの顔がより一層険しくなった。
そして台詞をすべて言い終えると同時に、きりりと目じりを吊り上げて睨みつけてくる。
野球部のキャプテンと、そのマネージャーである木村さん。
二人が付き合っていることは、いわゆる公然の秘密という奴である。
本人達がそうだと明言したとは聞いていないけど、
ちょくちょく二人であっているのを目撃されているし、
木村さんとキャプテンが話をしているときは、二人とも明らかに普段より柔らかい表情をしているからだ。
「別に、何も変わっていないわ」
木村さんは明らかに話題を打ち切ろうとしていたが、あたしは彼女の意向を無視すると決めていた。
何故なら、カッコいい恋人を持つ幸せな女の子が、
友人からいじられることを拒否するのは世の理に反していると思うからである。
「そうなの? 目撃証言が全く無くなったのは、変だと思うなあ」
もしこの高校が都会にあったなら、あたしの指摘はあまり説得力のないものだっただろう。
だが、残念ながらここは田舎なのだ。
二人が近場で会っていればすぐに目撃証言が出るし、町で落ち合う約束をしたとしても、
『木村さんが駅に向かっていた』という証言や、
『いつもよりおしゃれをして電車に乗っていた』という話が、
必ずどこかから沸いてくる。それはもうぞこぞこと、どこからともなく。
「…………ええ。そうね」
彼女もそれを十分に理解しているのだろう。
隠しても仕方ないかしらと前置きをして、木村さんはやや悲しそうに眉を傾けた。
「彼とは、秋まで会わないってことに決めたの」
「会わない?」
「甲子園を目指す以上、私に構いすぎるわけにもいかないでしょう?」
さも当然といわんばかりの態度の木村さんに、あたしは大仰にため息をついた。
やや苛立った様子で、木村さんがあたしを睨み付ける。
「何か、言いたいことでも?」
「ううん。ただ、なんだか厳しすぎるんじゃないかな……」
「それぐらいしないと、甲子園なんていけるわけないでしょう?」
「そうなの?」
「そうなのよ」
自信満々で頷く木村さん。あたしと彼女のどちらが野球に詳しいかと聞かれたら、
彼女のほうが詳しいのは間違いない。反論することは出来そうになかったため、あたしは話題を変えることにした。
「それはそれとして、ちょっと気になったんだけどね」
「何?」
「もしかして、最近はエッチもしてないの?」
あたしがした質問は、別におかしなものじゃなかったはずだ。
年頃の女の子なら、猥談をすることは決して珍しいことじゃあない。
雑談をすれば恋愛談話になる可能性は高いし、
恋愛談話になれば猥談に向かうのは必然とすらいえるし。
ところが木村さんは、まるであたしが途方も無く淫らな言葉を口にしたかのように、
顔を真っ赤に染めて黙り込んでしまった。
まるで、中学生の女の子みたいだなあ。そんなことを思うあたし。
「……木村さん?」
どうにかごまかそうとでも考えているらしく、木村さんはハンカチで額の汗を拭い始めていたのだが、
そんなことを全く気にしないふりをして、あたしは彼女を呼んだ。
ゆっくりとハンカチをしまい、こほんと咳払いをして木村さんはあたしを再度睨み付けてくる。
「いきなり、何を言い出すのよ」
ぎろり。そんな効果音が聞こえてきそうなほど鋭い、木村さんの瞳。
……怖い。そう思ったのは確かだったけど、あたしはできるだけ無表情を装いながら、視線を木村さんの右手に向けた。
「……その指、大丈夫?」
「え? ……ええ。大丈夫よ」
あたしの言葉に、木村さんはそそくさと手を握って親指を隠す。
先ほどあたしが『えっち』と口にした瞬間、彼女は指を滑らせて、縫い針で怪我をしてしまっていたのだ。
「そうなんだ。よかった……えへへ」
「…………」
それを指摘したこと自体に、深い意味があるわけではないが、手綱を握ることに成功した。
木村さんが若干慌てているのを見て、珍しく優位に立っているのを実感しながらあたしは彼女に笑いかけた。
「さっきのことだけど、真昼間の教室ってわけでもないんだし、そんなに変な話じゃないと思うな」
「…………」
少し納得したように視線を下向ける木村さん。
「実は人に見られるのが好きなの。とか言われたら困っちゃうけどね」
「…………………………」
何故か顔を真っ赤に染める木村さん。
「そこまでディープな話をしよう、ってわけでもないんだから」
むむむ。とでも言いたげな木村さん……ようやく観念したのか、ふぅ、と溜息をついて、
木村さんはどこか投げやりな口調で言った。
「ええ。そうよ。最近は、エッチもしてないわ」
「そうなんだ…………それって、危ないんじゃない?」
「危ない?」
「誰かに取られちゃうかも」
「まさか!」
鼻で笑う木村さんでは会ったが、目が泳いでいるのは確かだった。
まあ、それも無理も無いだろう。キャプテンの周りには、これでもかというぐらい可愛い女の子がそろっている。
……実のところ、あたしがキャプテンにアプローチをかけなかったのもそこらへんが原因だ。
性格。スタイル。顔立ち。資産。その他もろもろ。あたしが逆立ちしても勝てないような女の子達ばかり。
人生が不公平であることに今更不満は言わないが、チャンスぐらいは欲しかったと思う今日この頃。
……閑話休題。ようするに、あたしの言ったことは、ありえないことじゃないはずだ。
「そう? 結構良くある話だと思うよ?
『俺の彼女さぁ、ぜんぜんやらせてくれないんだ』
『お前ならほかの女もより取り見取りだろ』
『そう言えばそうだな』…………みたいな」
「…………」
一人芝居を終えて、あたしが木村さんに視線を戻すと、
彼女は顔色を真っ青にして、まぶたを半分閉じていた。
涙が見えているわけじゃないけど、今にも泣きそうに見える。
「ご……ゴメンね。そんなに不安にさせるつもりじゃなかったの」
慌ててフォローすると、木村さんははっと目を開き、手の甲で目元をごしごしと擦った。
気合を入れるようにあたしを睨み付けてすくっと立ち上がる。
「大丈夫よ。それより、そろそろ今日の作業は終わりにしましょうか」
「あ、うん。そうね」
木村さんをからかおうなどと思ったことを反省しつつ、あたしも立ち上がる…………これでもあたしは、
ここにいる理由を作るのに手を貸してくれた木村さんには感謝しているのだ。
彼女は今でも怖いと思うことがあるし、少々変わったタイプの人間であることは間違いないが、
決して悪い人間ではない。尊敬するところも多いし、
知り合ったことは、確実に人生においてプラスだったと思うし。
「それじゃあ、ボールの籠はこっちに運んでくれる?」
「うん。……あ、練習着はどうするの?」
「練習着は……そうね。ハンガーでそこの壁にかけてくれるかしら?」
「はーい」
さっきまでのことを全く気にしていないかのような木村さん…………彼女はいい人だと思うのだが、
こうやって弱みが見えたと思っても、すぐに立ち直ってしまう(ように見せている?)ところが、
あたしには少し不満だった。弱みを握りたい。とかそんなわけではないが、
友人なのだから少しぐらい話の種になる弱点を知りたい。何てことを思ってしまうのだ。
…………とはいえ。
(どうしてこうなるのー!!)
スカートとパンツを降ろされて、左手を壁について身体を支えている木村さんが、
キャプテンに後ろから激しく突かれているのを見ながら、あたしは心の中で絶叫した。
「しかし、驚いたなぁ。まさか、冴花が誘ってくれるなんて思わなかったよ」
「〜っ! ふぅ〜っ! んんっー!」
あの後、家路の途中で部室に携帯を忘れたことに気づいたあたしは、
気がつけば、狭苦しく、汗臭いロッカーの中に閉じ込められる羽目になっていた。
部室に置いてあった携帯を手に取った瞬間、
聞こえてきた足音に驚いて慌ててロッカーに飛び込んだのは……まあ、仕方が無いと思う。
もし見回りの先生があたしを見つけていたら、
後日反省文を書く羽目になっていたのかもしれないのだから。
…………けれど、その後がまずかった。キャプテンと木村さんが部室に入ってきた瞬間、
しばらく様子を見ようなどと思ったことが、今の状況を作ってしまったのだから。
(でも……まさか木村さんが学校でセックスするなんて、想像できるわけないじゃない!)
「あー、やば。久しぶりすぎて……もう出そうだ」
右手を口元に当てて必死に声を押し殺す木村さんに、
言葉の割には余裕が感じ取れる調子でキャプテンが話しかける。
挿入れてからまだ数分しかたってないのに、ずいぶん早いなあ。なんてことを思うあたし。
「ま、待って……外っ、外にっ!」
「待てない。……出るっ!」
むっちりとしたお尻(あれだけ大きいと、後ろから突くのが楽しそう)をがっちりと両手で掴んで、
一際腰を大きく打ち込んで、キャプテンの動きが止まった。
極楽を体現したような表情で、ぶるぶると震える。
「あっ! あ、あ…………入ってくる……」
口元を押さえていた手を離し、苦しそうな、けれどどこか嬉しそうな表情で木村さんがポツリと呟く。
しばらくして射精が終わったのか、キャプテンが上半身を倒して木村さんの耳元に口を近づけて囁いた。
「はぁ、はぁ…………な、なぁ。このままもう一回、いいか? 久しぶりすぎて、全然治まらないんだ」
服の上から胸をさわりつつ、キャプテンは子供のような甘えた声で木村さんにおねだりをする。
「ちょ、ちょっと待って。ゴムつけないと、できちゃう……」
「今日は安全日だから大丈夫って言ったの、冴花だろ? ……あ、復活した。動くぞー」
「あっ、やっ。絶対に大丈夫ってわけじゃ……んっ!」
木村さんを黙らせるためか、キャプテンが先ほどよりいっそう激しく腰を動かし始める。
(うわあ……木村さんの、腰、浮いてる?)
天井近くに設置されている小さな窓からの月明かりだけでは、十分に良く見えないのだが、
キャプテンが腰を動かすたびに、木村さんの足は宙に浮いているように見えた。
少なくとも、そう見えてしまうほどに、木村さんは勢いよく腰をぶつけられている。
木村さんはだんだん壁に追いやられ、今ではもう肘を壁にくっつけて身体を支えていた。
「ふーっ! んんっー!! んっ、んんっー!」
もちろん、手を口元に当てる余裕もなくなっていて。
口からは押し殺しきれなかった嬌声が漏れ出している。
(……やば。濡れてきちゃった)
目の前で行なわれている本気のセックスに中てられて、
あたしの身体も少しずつ熱くなってくる。
きゅんと、切なくうずく股間をもじもじとさせながら、
指を口に含んで、必死に快楽を耐えるあたし。
あたしがいっそ、オナニーしちゃおうかなあ。って思い始めた頃、外の状況が変化した。
あれだけ激しくなり響いていた、木村さんの大きなお尻とキャプテンの腰がぶつかる音が消えて、
くちゅくちゅと、ぬちゅぬちゅと、微かな水音が聞こえてくる。
(うわあ)
視線を戻して見えたのは、濃厚なキスをする二人の姿だった。
キャプテンが木村さんの上半身を持ち上げられるように抱きしめて、
まるであたしに見せつけるかのような構図で、二人はぴちゃぴちゃと唾液を交換していた。
吸いきれなかった唾液が、ぽたり、ぽたりと床に落ちるのも気にしていないらしく、
互いに目を閉じて、隙あらば食べてしまおう、ってぐらいに激しくむしゃぶりあっている二人。
……何て言うかこう、「愛し合っているんだなあ」って感想しか浮かばないぐらいに、
強く繋がりあおうとしているように見えた。
(羨ましいな……)
肉のぶつかる音が消えたとはいえ、キャプテンの動きが止まったわけじゃない。
ぐりん、ぐりんと円を描くように腰を動かして、木村さんの膣内を掻きまわしている。
まるでおまんこを拡張するかのようなキャプテンの豪快な責めに、
木村さんの理性はもう限界のようだった。
いつもはきりっと鋭く細められている瞳が、とろんと力の抜けた瞳になっている。
「んっ……ふぅ……なあ、冴花。そろそろ本気で動いてもいいか?」
長い長いキスが終わって、必死に呼吸している木村さんにキャプテンがそんなことを口にする。
……今まで、本気じゃなかったんだろうか。
今までのより激しい動きなんてされたら、あたしだったら壊れちゃいそうなんだけど。
「はぁ、はぁ、ふぅ……はぁ……ま、待って。ハンカチ、用意しないと」
(ハンカチ?)
「ああ。俺のを使えばいいよ。……ほら」
本気で動くこととハンカチに何の関連性があるんだろう?
不思議に思うあたしを無視して(当たり前だ)、
木村さんはキャプテンから綺麗に折りたたまれたハンカチを受け取った。
そして、手慣れた様子でハンカチを口に詰める。
……口に、詰める?
「俺としては、冴花が感じてる声も聞きたいんだけどなぁ。……いや、これはこれでいいんだけど」
キャプテンの口ぶりからすると、どうやら感じすぎて声が出てしまうのを防ぐために口を封じたらしい。
キャプテンが迷うことなくハンカチを渡したのと、
木村さんが妙に手慣れていたことからすると……ひょっとしてこの二人、
こういった場所でセックスするのにやりなれてるんじゃないだろうか?
「よっと……ああ、冴花の尻はやっぱ最高だ。こうやって触るだけで、出そうになる」
「……むぁ」
もしそうだとすれば、こういったところでするのはキャプテンの趣味なのだろうか。
それとも、木村さんの趣味なんだろうか。
(……そう言えばさっき、木村さんがキャプテンを誘ったみたいなこと言ってたし、
やっぱりアブノーマルなのは木村さんなのかな?)
あたしのそんな素朴な疑問は、がたり。すぐ近くから聞こえた、そんな音にかき消された。
(まずっ!)
物音を立ててしまったと思い、あたしは慌てて瞳を閉じ、息を止めて、石のように身動きをとめた。
が、相変わらずあたしが隠れているロッカーはがたがたと音を立てている。
不思議に思いながら、あたしは目を開いた。
「えっ……?」
疑問符を音にしたような声が、あたしの喉が零れ落ちる。
声を出したら二人に気づかれるかもしれない。そんな心配は要らなかった。
何故なら、キャプテンが腰を動かすことにより発生した振動が、
あたしの隠れているロッカーにまで伝わって、がたがたと音を鳴らしていたからだ。
「んん〜〜〜〜〜!!!!」
あたしは息をするのも忘れて、二人の行為に釘付けになる。
片足を抱えられて、おまんこをキャプテンにさらけ出している木村さんに、
キャプテンが斜め下から怒涛の勢いで腰を打ち付けていく。
(あ…………すご……)
と、月にかかっていた雲が晴れたのか、月明かりに照らされて二人の姿がより鮮明になった。
キャプテンのおちんちんが木村さんのおまんこをずぼずぼしているのが、
くっきりと、はっきりと、ばっちりと見えるようになってしまう。
綺麗なピンク色のおまんこに出たり入ったりする、
黒くて、太くて、長くて、固そうなキャプテンのおちんちん。
すぶぶと入り込み、木村さんのおまんこから愛液をぴゅっと噴き出させて、
ずぼっ、と音を立てて半分ほど抜け出し、おちんちんに纏わりついた愛液が飛散る。
そんなことを一秒間に何度もやっているのだから、
木村さんの足元には、見る見る小さな水溜りができてしまっている。
(あたしまで、おかしくなっちゃいそう)
そんなあまりにも扇情的な光景に加えて、耳朶に染み込んでくる音も、酷くいやらしい。
さっきまでは、ぱんっ、ぱんっ、という音だった肉のぶつかる音だったのが、
ばしんっ! ばしんっ! って感じの少し低い音に変わっていて、
木村さんの膣内の奥の奥、ひょっとしたら子宮にまで届いてるんじゃないかっていうぐらい卑猥な音が、
あたしの耳を犯していく。
ついに我慢できなくなって、あたしは自分の両手を股間に持っていって、
パンツの上からクリトリスをいじり始めた。
狭いロッカーの中じゃ思うように動けないけれど、快楽を高めようと必死で指を動かす。
おかずにしているのはもちろん、目の前の光景だ。
……とは言っても、頭の中では木村さんとあたしが入れ替わっているが(これぐらいは許して欲しい)。
「あっ、だめぇ!! ハンカチとれちゃ…………あああっ!」
あたしのパンツが湿り始めて、そろそろ軽くいっちゃいそうだな。ってところで、
いきなりあたしの耳にとんでもない声が届いた。艶の乗った甲高い声の主はもちろん、木村さんだ。
どうやら、口に詰めていたハンカチが落ちてしまったらしい。
押さえのなくなった声が、確実に外まで聞こえている大音量で部室に響く。
キャプテンはきっと、ハンカチを拾って渡すぐらいは簡単にできただろうけど、
それをする様子は無かった。今までと同じく。いや、今まで以上に激しく感じる動きで、木村さんを責め続ける。
「だめ、だめだめぇ!!!! おくっ、おくつくのっ、声、でちゃう。でちゃうからぁ!!」
野生の獣のような、半ばおたけびとなっている嬌声を上げながら、
木村さんが腰を振って、キャプテンの動きをやめさせようとする。
…………まあ、それが無意味だということは明らかだ。
今の涙目の顔を真っ赤にした木村さんは、女のあたしから見ても凄くいじめたくなっちゃうぐらいだし、
ふりふりと揺れる汗ばんだお尻も、男の子の理性を壊しちゃうのに十分すぎる威力を持っているように見える。
そして案の定、キャプテンは止まらなかった。
いや、止まらないどころじゃない。やっぱりお尻に理性を壊されちゃったのか、
部室の壁も壊しちゃうるんじゃないかってぐらい激しく、木村さんを突き上げている。
「あーーー!! あっ、あっ、あああーーーーー!!! もうだめ! いく、いくいくいくうぅぅ!!!」
ついに耐え切れなくなったのか。木村さんが口から泡を飛ばしながら、
だらしのない、快楽に負けた表情で何度も絶頂を宣言する。
……それでも、キャプテンは全く止まらない。腰をひたすら振り続けて……
「あああああーーー!!! いっ、いってるのぉ! もぉ、いってるからぁ!! やめ、ごりごり、やめてえええ!!!」
木村さんが、がく、がく、かなりやばい感じに痙攣しだしたところで、
キャプテンが木村さんをぎゅっ、と抱きしめた。
そして、安全日でも妊娠させてやる! ってぐらい気合を入れた感じに、腰をぎゅううう、って押し付ける。
「あ…………はい、って……だめ、もれちゃ……ああ……」
どくん。どくん。どくん。そんな音が聞こえたわけじゃないけど、
満足した笑みを浮かべているキャプテンが、木村さんの膣内にたっぷり精液を出しているのは横から見ても明らかだった。
そして、ぷしゃああ。っていう、変な音が聞こえたかと思うと。
「や、やめ……みないでぇ……おしっこ……ああ……」
木村さんの足元に合った水溜りが、さらに大きくなっていく。
どうやら力が抜けすぎてお漏らししてしまったらしい…………もちろん、キャプテンの足もずぶ濡れになっている。
さすがにキャプテンも、怒ったりするのかな?
興奮で張り裂けそうな心臓を押さえながら、あたしがどうなるか見守っていると……
「良かったよ。冴花……愛してる」
心の底から幸せそうに笑みを浮かべて、キャプテンは木村さんの頭を撫で、頬にキスをした。
「………………」
木村さんが小さく返事をしたようだったが。それはあたしには聞き取れなかった。
まあ、聞き取れていてもあまり意味は無かったと思う。二人がとてもラブラブなことに、間違いは無いのだから。
(……いいなあ)
今日何度目かの羨望を抱いて、中途半端に高ぶった身体の熱を逃がすように、あたしは小さなため息を付いた。
その後どうなったかは、特に話すことはない。
行為を終えた二人が片づけをして部室から出て行った後、慌てて家に帰ったあたしは、
何とか終電には間に合ったけど、お父さんからは怒られちゃった。
次の日キャプテンが友達に話していた内容を盗み聞きしたところによると、
キャプテンは終電に間に合わなかったらしい……きっと、帰る途中にむらむらきて、
また木村さんとどこかでやったんじゃないかって思う。木村さん、珍しくグロッキーだったし。
あたしはと言うと、セックスを盗み見たことで、
二人とまともに顔を合わせられなっちゃったけど……喉もと過ぎれば何とやら。いつの間にか普通に話せるようになっていた。
まあ、いつまでもぎこちないままってよりかは良かったと思う。
そして。
月日はあっという間に流れて、十月某日の野球部の部室。
三年生はとっくに引退したんだけど、やっぱり手が足りないってことで、
あたしは木村さんと一緒に野球部の雑用を手伝っていた。
「ところで秋になったわけだけど……キャプテンとは最近どうなの?」
「…………どうって、言われても。別に、普通よ」
数ヶ月前と同じようなあたしの唐突な質問に、
数ヶ月前と同じような仏頂面で返事をする木村さん。
あたしはやっぱり大仰にため息を付いて、ふっ、と木村さんに笑いかけた。
「そうだよね。キャプテンと四六時中いちゃいちゃしてるのは、普通だよね?」
「…………からかっているの?」
「えへへ。ちょっとぐらい、いいでしょ?」
「…………」
さらに顔を険しくする木村さん。そろそろ危険領域かなあ、
って思ったあたしは笑みを消して、練習着へと視線を移した。
木村さんもまあ、ちょっとぐらいからかわれるのは当然だとわかっているのか、
あまり怒った感じのしない声で、別の話題を切り出してくる。
「それより、今日は本当に大丈夫なの? 模試も近いのに」
「ちょっとぐらい息抜きしても大丈夫。ものすごく難しいところじゃないから」
「……――農業大学。って言ってたかしら」
「うん。ニワトリ以外も育ててみたいな、って思うようになったから」
「そう」
「それにレベルを少し落としたら、落ちこぼれるってこともなさそうだよね」
「そういう考えは危ないと思うわよ」
「冗談よ……まあ、全くのウソじゃないけど。それは一番の理由じゃないから」
「それならいいんじゃないかしら」
「えへへ」
そんな感じに他愛のない雑談をしていると、
ばたん! と扉が勢い良く開いて、誰かが部室に飛び込んできた。
「冴花。ちょっといいか……あれ? 取り込み中だったのか」
飛び込んできたのはキャプテンだった。
木村さんに何か用事でもあったのか、彼女に近づきながらあたしに会釈してきた。
「こんにちわ。キャプテン」
「こんにちわ……って、もうキャプテンじゃないけどな」
「あ、そうだった。ごめんね」
「ははは。まあ、キャプテンって呼ばれるのは悪い気はしないけどな」
「……それで、急にどうしたの?」
あたしとキャプテンの会話に割ってはいるように、
木村さんが冷たい声でキャプテンに問いかける。びくりと身体を震わせて、キャプテンが言った。
「い、いや。……あっ、そうだ。俺もこっちを手伝おうかな、って」
きっと単に木村さんに会いにきただけなのだろう。
目を泳がしつつ理由を述べるキャプテンは、本当のことを言ってないように見えないし。
「……今日の分の練習メニューは終わったの」
「あ…………まだ、終わって無いけど」
「………………」
「行ってくる!」
木村さんの無言の圧力に、入ってきたときと同じように、キャプテンはばたんと扉を開けて部室から出て行った。
(尻にひいてるのね……)
……まあ、あの夜の雰囲気からすると、キャプテンもただひかれてるだけじゃなさそうだけど。
「…………」
しん。となる部室。あたしはわざとらしくため息をついて、木村さんに話しかけた。
「ねえ、木村さん」
「何?」
「結婚式には呼んでね?」
「………………………………………………………………………………」
顔を真っ赤にして黙り込む木村さんは可愛いなあ。
そんなことを思っている間に、今日も緩やかに時は流れていくのでした。
「冒頭からすると……あたしが死んで終わるってオチのほうが良かったのかな?」
「……いくらなんでも、それは無理があると思うわ」
終わりです。この子の名前が14でわからなくて良かったと思ったのはたぶん私だけ。
どこで生れたかたぶん聞いたことがある。
何でも普通の病院でおぎゃーと泣いて生まれたことだけは間違いない。
あたしは二年前始めて挫折というものを経験した。
しかもあとで聞くとそれは人生という旅路の中で一番重要な出来事であったそうだ。
この挫折というものは時々あたし達若者を再起不能にするという話である。
しかしあたしはある希望を見出したから別段絶望するということも無かった。
ただ旧友に嘘をついて見栄を張ったこともあったが少し前に本当のことを言ったばかりである。
ある人が落ちぶれても絶望しなかったのがいわゆるあたしの指針となったのだろう。
……とまあ、古い文学をオマージュしたあたしの自己紹介はどこか置いといて。
「そういえば、最近どうなの?」
六月某日の放課後。野球部の部室にて。
ちくちくちいくとボールを繕っていたあたしは、
何の脈絡も無く、目の前に座っている木村さんに問いかけた。
「どうって、何が?」
突拍子のない質問にも全く慌てる様子を見せず、
木村さんは手際よく練習着の穴をふさぎながら、仏頂面で返事をしてくる。
少しだけ気圧されちゃったけど、怯えをボールと一緒に放り投げて、あたしはにこやかに笑った。
「何がって……もちろん、木村さんとキャプテンのことよ。
最近は二人を町で見かけたって噂も聞かないな、って」
あたしがキャプテンと口にした瞬間、木村さんの顔がより一層険しくなった。
そして台詞をすべて言い終えると同時に、きりりと目じりを吊り上げて睨みつけてくる。
野球部のキャプテンと、そのマネージャーである木村さん。
二人が付き合っていることは、いわゆる公然の秘密という奴である。
本人達がそうだと明言したとは聞いていないけど、
ちょくちょく二人であっているのを目撃されているし、
木村さんとキャプテンが話をしているときは、二人とも明らかに普段より柔らかい表情をしているからだ。
「別に、何も変わっていないわ」
木村さんは明らかに話題を打ち切ろうとしていたが、あたしは彼女の意向を無視すると決めていた。
何故なら、カッコいい恋人を持つ幸せな女の子が、
友人からいじられることを拒否するのは世の理に反していると思うからである。
「そうなの? 目撃証言が全く無くなったのは、変だと思うなあ」
もしこの高校が都会にあったなら、あたしの指摘はあまり説得力のないものだっただろう。
だが、残念ながらここは田舎なのだ。
二人が近場で会っていればすぐに目撃証言が出るし、町で落ち合う約束をしたとしても、
『木村さんが駅に向かっていた』という証言や、
『いつもよりおしゃれをして電車に乗っていた』という話が、
必ずどこかから沸いてくる。それはもうぞこぞこと、どこからともなく。
「…………ええ。そうね」
彼女もそれを十分に理解しているのだろう。
隠しても仕方ないかしらと前置きをして、木村さんはやや悲しそうに眉を傾けた。
「彼とは、秋まで会わないってことに決めたの」
「会わない?」
「甲子園を目指す以上、私に構いすぎるわけにもいかないでしょう?」
さも当然といわんばかりの態度の木村さんに、あたしは大仰にため息をついた。
やや苛立った様子で、木村さんがあたしを睨み付ける。
「何か、言いたいことでも?」
「ううん。ただ、なんだか厳しすぎるんじゃないかな……」
「それぐらいしないと、甲子園なんていけるわけないでしょう?」
「そうなの?」
「そうなのよ」
自信満々で頷く木村さん。あたしと彼女のどちらが野球に詳しいかと聞かれたら、
彼女のほうが詳しいのは間違いない。反論することは出来そうになかったため、あたしは話題を変えることにした。
「それはそれとして、ちょっと気になったんだけどね」
「何?」
「もしかして、最近はエッチもしてないの?」
あたしがした質問は、別におかしなものじゃなかったはずだ。
年頃の女の子なら、猥談をすることは決して珍しいことじゃあない。
雑談をすれば恋愛談話になる可能性は高いし、
恋愛談話になれば猥談に向かうのは必然とすらいえるし。
ところが木村さんは、まるであたしが途方も無く淫らな言葉を口にしたかのように、
顔を真っ赤に染めて黙り込んでしまった。
まるで、中学生の女の子みたいだなあ。そんなことを思うあたし。
「……木村さん?」
どうにかごまかそうとでも考えているらしく、木村さんはハンカチで額の汗を拭い始めていたのだが、
そんなことを全く気にしないふりをして、あたしは彼女を呼んだ。
ゆっくりとハンカチをしまい、こほんと咳払いをして木村さんはあたしを再度睨み付けてくる。
「いきなり、何を言い出すのよ」
ぎろり。そんな効果音が聞こえてきそうなほど鋭い、木村さんの瞳。
……怖い。そう思ったのは確かだったけど、あたしはできるだけ無表情を装いながら、視線を木村さんの右手に向けた。
「……その指、大丈夫?」
「え? ……ええ。大丈夫よ」
あたしの言葉に、木村さんはそそくさと手を握って親指を隠す。
先ほどあたしが『えっち』と口にした瞬間、彼女は指を滑らせて、縫い針で怪我をしてしまっていたのだ。
「そうなんだ。よかった……えへへ」
「…………」
それを指摘したこと自体に、深い意味があるわけではないが、手綱を握ることに成功した。
木村さんが若干慌てているのを見て、珍しく優位に立っているのを実感しながらあたしは彼女に笑いかけた。
「さっきのことだけど、真昼間の教室ってわけでもないんだし、そんなに変な話じゃないと思うな」
「…………」
少し納得したように視線を下向ける木村さん。
「実は人に見られるのが好きなの。とか言われたら困っちゃうけどね」
「…………………………」
何故か顔を真っ赤に染める木村さん。
「そこまでディープな話をしよう、ってわけでもないんだから」
むむむ。とでも言いたげな木村さん……ようやく観念したのか、ふぅ、と溜息をついて、
木村さんはどこか投げやりな口調で言った。
「ええ。そうよ。最近は、エッチもしてないわ」
「そうなんだ…………それって、危ないんじゃない?」
「危ない?」
「誰かに取られちゃうかも」
「まさか!」
鼻で笑う木村さんでは会ったが、目が泳いでいるのは確かだった。
まあ、それも無理も無いだろう。キャプテンの周りには、これでもかというぐらい可愛い女の子がそろっている。
……実のところ、あたしがキャプテンにアプローチをかけなかったのもそこらへんが原因だ。
性格。スタイル。顔立ち。資産。その他もろもろ。あたしが逆立ちしても勝てないような女の子達ばかり。
人生が不公平であることに今更不満は言わないが、チャンスぐらいは欲しかったと思う今日この頃。
……閑話休題。ようするに、あたしの言ったことは、ありえないことじゃないはずだ。
「そう? 結構良くある話だと思うよ?
『俺の彼女さぁ、ぜんぜんやらせてくれないんだ』
『お前ならほかの女もより取り見取りだろ』
『そう言えばそうだな』…………みたいな」
「…………」
一人芝居を終えて、あたしが木村さんに視線を戻すと、
彼女は顔色を真っ青にして、まぶたを半分閉じていた。
涙が見えているわけじゃないけど、今にも泣きそうに見える。
「ご……ゴメンね。そんなに不安にさせるつもりじゃなかったの」
慌ててフォローすると、木村さんははっと目を開き、手の甲で目元をごしごしと擦った。
気合を入れるようにあたしを睨み付けてすくっと立ち上がる。
「大丈夫よ。それより、そろそろ今日の作業は終わりにしましょうか」
「あ、うん。そうね」
木村さんをからかおうなどと思ったことを反省しつつ、あたしも立ち上がる…………これでもあたしは、
ここにいる理由を作るのに手を貸してくれた木村さんには感謝しているのだ。
彼女は今でも怖いと思うことがあるし、少々変わったタイプの人間であることは間違いないが、
決して悪い人間ではない。尊敬するところも多いし、
知り合ったことは、確実に人生においてプラスだったと思うし。
「それじゃあ、ボールの籠はこっちに運んでくれる?」
「うん。……あ、練習着はどうするの?」
「練習着は……そうね。ハンガーでそこの壁にかけてくれるかしら?」
「はーい」
さっきまでのことを全く気にしていないかのような木村さん…………彼女はいい人だと思うのだが、
こうやって弱みが見えたと思っても、すぐに立ち直ってしまう(ように見せている?)ところが、
あたしには少し不満だった。弱みを握りたい。とかそんなわけではないが、
友人なのだから少しぐらい話の種になる弱点を知りたい。何てことを思ってしまうのだ。
…………とはいえ。
(どうしてこうなるのー!!)
スカートとパンツを降ろされて、左手を壁について身体を支えている木村さんが、
キャプテンに後ろから激しく突かれているのを見ながら、あたしは心の中で絶叫した。
「しかし、驚いたなぁ。まさか、冴花が誘ってくれるなんて思わなかったよ」
「〜っ! ふぅ〜っ! んんっー!」
あの後、家路の途中で部室に携帯を忘れたことに気づいたあたしは、
気がつけば、狭苦しく、汗臭いロッカーの中に閉じ込められる羽目になっていた。
部室に置いてあった携帯を手に取った瞬間、
聞こえてきた足音に驚いて慌ててロッカーに飛び込んだのは……まあ、仕方が無いと思う。
もし見回りの先生があたしを見つけていたら、
後日反省文を書く羽目になっていたのかもしれないのだから。
…………けれど、その後がまずかった。キャプテンと木村さんが部室に入ってきた瞬間、
しばらく様子を見ようなどと思ったことが、今の状況を作ってしまったのだから。
(でも……まさか木村さんが学校でセックスするなんて、想像できるわけないじゃない!)
「あー、やば。久しぶりすぎて……もう出そうだ」
右手を口元に当てて必死に声を押し殺す木村さんに、
言葉の割には余裕が感じ取れる調子でキャプテンが話しかける。
挿入れてからまだ数分しかたってないのに、ずいぶん早いなあ。なんてことを思うあたし。
「ま、待って……外っ、外にっ!」
「待てない。……出るっ!」
むっちりとしたお尻(あれだけ大きいと、後ろから突くのが楽しそう)をがっちりと両手で掴んで、
一際腰を大きく打ち込んで、キャプテンの動きが止まった。
極楽を体現したような表情で、ぶるぶると震える。
「あっ! あ、あ…………入ってくる……」
口元を押さえていた手を離し、苦しそうな、けれどどこか嬉しそうな表情で木村さんがポツリと呟く。
しばらくして射精が終わったのか、キャプテンが上半身を倒して木村さんの耳元に口を近づけて囁いた。
「はぁ、はぁ…………な、なぁ。このままもう一回、いいか? 久しぶりすぎて、全然治まらないんだ」
服の上から胸をさわりつつ、キャプテンは子供のような甘えた声で木村さんにおねだりをする。
「ちょ、ちょっと待って。ゴムつけないと、できちゃう……」
「今日は安全日だから大丈夫って言ったの、冴花だろ? ……あ、復活した。動くぞー」
「あっ、やっ。絶対に大丈夫ってわけじゃ……んっ!」
木村さんを黙らせるためか、キャプテンが先ほどよりいっそう激しく腰を動かし始める。
(うわあ……木村さんの、腰、浮いてる?)
天井近くに設置されている小さな窓からの月明かりだけでは、十分に良く見えないのだが、
キャプテンが腰を動かすたびに、木村さんの足は宙に浮いているように見えた。
少なくとも、そう見えてしまうほどに、木村さんは勢いよく腰をぶつけられている。
木村さんはだんだん壁に追いやられ、今ではもう肘を壁にくっつけて身体を支えていた。
「ふーっ! んんっー!! んっ、んんっー!」
もちろん、手を口元に当てる余裕もなくなっていて。
口からは押し殺しきれなかった嬌声が漏れ出している。
(……やば。濡れてきちゃった)
目の前で行なわれている本気のセックスに中てられて、
あたしの身体も少しずつ熱くなってくる。
きゅんと、切なくうずく股間をもじもじとさせながら、
指を口に含んで、必死に快楽を耐えるあたし。
あたしがいっそ、オナニーしちゃおうかなあ。って思い始めた頃、外の状況が変化した。
あれだけ激しくなり響いていた、木村さんの大きなお尻とキャプテンの腰がぶつかる音が消えて、
くちゅくちゅと、ぬちゅぬちゅと、微かな水音が聞こえてくる。
(うわあ)
視線を戻して見えたのは、濃厚なキスをする二人の姿だった。
キャプテンが木村さんの上半身を持ち上げられるように抱きしめて、
まるであたしに見せつけるかのような構図で、二人はぴちゃぴちゃと唾液を交換していた。
吸いきれなかった唾液が、ぽたり、ぽたりと床に落ちるのも気にしていないらしく、
互いに目を閉じて、隙あらば食べてしまおう、ってぐらいに激しくむしゃぶりあっている二人。
……何て言うかこう、「愛し合っているんだなあ」って感想しか浮かばないぐらいに、
強く繋がりあおうとしているように見えた。
(羨ましいな……)
肉のぶつかる音が消えたとはいえ、キャプテンの動きが止まったわけじゃない。
ぐりん、ぐりんと円を描くように腰を動かして、木村さんの膣内を掻きまわしている。
まるでおまんこを拡張するかのようなキャプテンの豪快な責めに、
木村さんの理性はもう限界のようだった。
いつもはきりっと鋭く細められている瞳が、とろんと力の抜けた瞳になっている。
「んっ……ふぅ……なあ、冴花。そろそろ本気で動いてもいいか?」
長い長いキスが終わって、必死に呼吸している木村さんにキャプテンがそんなことを口にする。
……今まで、本気じゃなかったんだろうか。
今までのより激しい動きなんてされたら、あたしだったら壊れちゃいそうなんだけど。
「はぁ、はぁ、ふぅ……はぁ……ま、待って。ハンカチ、用意しないと」
(ハンカチ?)
「ああ。俺のを使えばいいよ。……ほら」
本気で動くこととハンカチに何の関連性があるんだろう?
不思議に思うあたしを無視して(当たり前だ)、
木村さんはキャプテンから綺麗に折りたたまれたハンカチを受け取った。
そして、手慣れた様子でハンカチを口に詰める。
……口に、詰める?
「俺としては、冴花が感じてる声も聞きたいんだけどなぁ。……いや、これはこれでいいんだけど」
キャプテンの口ぶりからすると、どうやら感じすぎて声が出てしまうのを防ぐために口を封じたらしい。
キャプテンが迷うことなくハンカチを渡したのと、
木村さんが妙に手慣れていたことからすると……ひょっとしてこの二人、
こういった場所でセックスするのにやりなれてるんじゃないだろうか?
「よっと……ああ、冴花の尻はやっぱ最高だ。こうやって触るだけで、出そうになる」
「……むぁ」
もしそうだとすれば、こういったところでするのはキャプテンの趣味なのだろうか。
それとも、木村さんの趣味なんだろうか。
(……そう言えばさっき、木村さんがキャプテンを誘ったみたいなこと言ってたし、
やっぱりアブノーマルなのは木村さんなのかな?)
あたしのそんな素朴な疑問は、がたり。すぐ近くから聞こえた、そんな音にかき消された。
(まずっ!)
物音を立ててしまったと思い、あたしは慌てて瞳を閉じ、息を止めて、石のように身動きをとめた。
が、相変わらずあたしが隠れているロッカーはがたがたと音を立てている。
不思議に思いながら、あたしは目を開いた。
「えっ……?」
疑問符を音にしたような声が、あたしの喉が零れ落ちる。
声を出したら二人に気づかれるかもしれない。そんな心配は要らなかった。
何故なら、キャプテンが腰を動かすことにより発生した振動が、
あたしの隠れているロッカーにまで伝わって、がたがたと音を鳴らしていたからだ。
「んん〜〜〜〜〜!!!!」
あたしは息をするのも忘れて、二人の行為に釘付けになる。
片足を抱えられて、おまんこをキャプテンにさらけ出している木村さんに、
キャプテンが斜め下から怒涛の勢いで腰を打ち付けていく。
(あ…………すご……)
と、月にかかっていた雲が晴れたのか、月明かりに照らされて二人の姿がより鮮明になった。
キャプテンのおちんちんが木村さんのおまんこをずぼずぼしているのが、
くっきりと、はっきりと、ばっちりと見えるようになってしまう。
綺麗なピンク色のおまんこに出たり入ったりする、
黒くて、太くて、長くて、固そうなキャプテンのおちんちん。
すぶぶと入り込み、木村さんのおまんこから愛液をぴゅっと噴き出させて、
ずぼっ、と音を立てて半分ほど抜け出し、おちんちんに纏わりついた愛液が飛散る。
そんなことを一秒間に何度もやっているのだから、
木村さんの足元には、見る見る小さな水溜りができてしまっている。
(あたしまで、おかしくなっちゃいそう)
そんなあまりにも扇情的な光景に加えて、耳朶に染み込んでくる音も、酷くいやらしい。
さっきまでは、ぱんっ、ぱんっ、という音だった肉のぶつかる音だったのが、
ばしんっ! ばしんっ! って感じの少し低い音に変わっていて、
木村さんの膣内の奥の奥、ひょっとしたら子宮にまで届いてるんじゃないかっていうぐらい卑猥な音が、
あたしの耳を犯していく。
ついに我慢できなくなって、あたしは自分の両手を股間に持っていって、
パンツの上からクリトリスをいじり始めた。
狭いロッカーの中じゃ思うように動けないけれど、快楽を高めようと必死で指を動かす。
おかずにしているのはもちろん、目の前の光景だ。
……とは言っても、頭の中では木村さんとあたしが入れ替わっているが(これぐらいは許して欲しい)。
「あっ、だめぇ!! ハンカチとれちゃ…………あああっ!」
あたしのパンツが湿り始めて、そろそろ軽くいっちゃいそうだな。ってところで、
いきなりあたしの耳にとんでもない声が届いた。艶の乗った甲高い声の主はもちろん、木村さんだ。
どうやら、口に詰めていたハンカチが落ちてしまったらしい。
押さえのなくなった声が、確実に外まで聞こえている大音量で部室に響く。
キャプテンはきっと、ハンカチを拾って渡すぐらいは簡単にできただろうけど、
それをする様子は無かった。今までと同じく。いや、今まで以上に激しく感じる動きで、木村さんを責め続ける。
「だめ、だめだめぇ!!!! おくっ、おくつくのっ、声、でちゃう。でちゃうからぁ!!」
野生の獣のような、半ばおたけびとなっている嬌声を上げながら、
木村さんが腰を振って、キャプテンの動きをやめさせようとする。
…………まあ、それが無意味だということは明らかだ。
今の涙目の顔を真っ赤にした木村さんは、女のあたしから見ても凄くいじめたくなっちゃうぐらいだし、
ふりふりと揺れる汗ばんだお尻も、男の子の理性を壊しちゃうのに十分すぎる威力を持っているように見える。
そして案の定、キャプテンは止まらなかった。
いや、止まらないどころじゃない。やっぱりお尻に理性を壊されちゃったのか、
部室の壁も壊しちゃうるんじゃないかってぐらい激しく、木村さんを突き上げている。
「あーーー!! あっ、あっ、あああーーーーー!!! もうだめ! いく、いくいくいくうぅぅ!!!」
ついに耐え切れなくなったのか。木村さんが口から泡を飛ばしながら、
だらしのない、快楽に負けた表情で何度も絶頂を宣言する。
……それでも、キャプテンは全く止まらない。腰をひたすら振り続けて……
「あああああーーー!!! いっ、いってるのぉ! もぉ、いってるからぁ!! やめ、ごりごり、やめてえええ!!!」
木村さんが、がく、がく、かなりやばい感じに痙攣しだしたところで、
キャプテンが木村さんをぎゅっ、と抱きしめた。
そして、安全日でも妊娠させてやる! ってぐらい気合を入れた感じに、腰をぎゅううう、って押し付ける。
「あ…………はい、って……だめ、もれちゃ……ああ……」
どくん。どくん。どくん。そんな音が聞こえたわけじゃないけど、
満足した笑みを浮かべているキャプテンが、木村さんの膣内にたっぷり精液を出しているのは横から見ても明らかだった。
そして、ぷしゃああ。っていう、変な音が聞こえたかと思うと。
「や、やめ……みないでぇ……おしっこ……ああ……」
木村さんの足元に合った水溜りが、さらに大きくなっていく。
どうやら力が抜けすぎてお漏らししてしまったらしい…………もちろん、キャプテンの足もずぶ濡れになっている。
さすがにキャプテンも、怒ったりするのかな?
興奮で張り裂けそうな心臓を押さえながら、あたしがどうなるか見守っていると……
「良かったよ。冴花……愛してる」
心の底から幸せそうに笑みを浮かべて、キャプテンは木村さんの頭を撫で、頬にキスをした。
「………………」
木村さんが小さく返事をしたようだったが。それはあたしには聞き取れなかった。
まあ、聞き取れていてもあまり意味は無かったと思う。二人がとてもラブラブなことに、間違いは無いのだから。
(……いいなあ)
今日何度目かの羨望を抱いて、中途半端に高ぶった身体の熱を逃がすように、あたしは小さなため息を付いた。
その後どうなったかは、特に話すことはない。
行為を終えた二人が片づけをして部室から出て行った後、慌てて家に帰ったあたしは、
何とか終電には間に合ったけど、お父さんからは怒られちゃった。
次の日キャプテンが友達に話していた内容を盗み聞きしたところによると、
キャプテンは終電に間に合わなかったらしい……きっと、帰る途中にむらむらきて、
また木村さんとどこかでやったんじゃないかって思う。木村さん、珍しくグロッキーだったし。
あたしはと言うと、セックスを盗み見たことで、
二人とまともに顔を合わせられなっちゃったけど……喉もと過ぎれば何とやら。いつの間にか普通に話せるようになっていた。
まあ、いつまでもぎこちないままってよりかは良かったと思う。
そして。
月日はあっという間に流れて、十月某日の野球部の部室。
三年生はとっくに引退したんだけど、やっぱり手が足りないってことで、
あたしは木村さんと一緒に野球部の雑用を手伝っていた。
「ところで秋になったわけだけど……キャプテンとは最近どうなの?」
「…………どうって、言われても。別に、普通よ」
数ヶ月前と同じようなあたしの唐突な質問に、
数ヶ月前と同じような仏頂面で返事をする木村さん。
あたしはやっぱり大仰にため息を付いて、ふっ、と木村さんに笑いかけた。
「そうだよね。キャプテンと四六時中いちゃいちゃしてるのは、普通だよね?」
「…………からかっているの?」
「えへへ。ちょっとぐらい、いいでしょ?」
「…………」
さらに顔を険しくする木村さん。そろそろ危険領域かなあ、
って思ったあたしは笑みを消して、練習着へと視線を移した。
木村さんもまあ、ちょっとぐらいからかわれるのは当然だとわかっているのか、
あまり怒った感じのしない声で、別の話題を切り出してくる。
「それより、今日は本当に大丈夫なの? 模試も近いのに」
「ちょっとぐらい息抜きしても大丈夫。ものすごく難しいところじゃないから」
「……――農業大学。って言ってたかしら」
「うん。ニワトリ以外も育ててみたいな、って思うようになったから」
「そう」
「それにレベルを少し落としたら、落ちこぼれるってこともなさそうだよね」
「そういう考えは危ないと思うわよ」
「冗談よ……まあ、全くのウソじゃないけど。それは一番の理由じゃないから」
「それならいいんじゃないかしら」
「えへへ」
そんな感じに他愛のない雑談をしていると、
ばたん! と扉が勢い良く開いて、誰かが部室に飛び込んできた。
「冴花。ちょっといいか……あれ? 取り込み中だったのか」
飛び込んできたのはキャプテンだった。
木村さんに何か用事でもあったのか、彼女に近づきながらあたしに会釈してきた。
「こんにちわ。キャプテン」
「こんにちわ……って、もうキャプテンじゃないけどな」
「あ、そうだった。ごめんね」
「ははは。まあ、キャプテンって呼ばれるのは悪い気はしないけどな」
「……それで、急にどうしたの?」
あたしとキャプテンの会話に割ってはいるように、
木村さんが冷たい声でキャプテンに問いかける。びくりと身体を震わせて、キャプテンが言った。
「い、いや。……あっ、そうだ。俺もこっちを手伝おうかな、って」
きっと単に木村さんに会いにきただけなのだろう。
目を泳がしつつ理由を述べるキャプテンは、本当のことを言ってないように見えないし。
「……今日の分の練習メニューは終わったの」
「あ…………まだ、終わって無いけど」
「………………」
「行ってくる!」
木村さんの無言の圧力に、入ってきたときと同じように、キャプテンはばたんと扉を開けて部室から出て行った。
(尻にひいてるのね……)
……まあ、あの夜の雰囲気からすると、キャプテンもただひかれてるだけじゃなさそうだけど。
「…………」
しん。となる部室。あたしはわざとらしくため息をついて、木村さんに話しかけた。
「ねえ、木村さん」
「何?」
「結婚式には呼んでね?」
「………………………………………………………………………………」
顔を真っ赤にして黙り込む木村さんは可愛いなあ。
そんなことを思っている間に、今日も緩やかに時は流れていくのでした。
「冒頭からすると……あたしが死んで終わるってオチのほうが良かったのかな?」
「……いくらなんでも、それは無理があると思うわ」
終わりです。この子の名前が14でわからなくて良かったと思ったのはたぶん私だけ。
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