2月。
小波がシーズンオフでずっと家にいるのに6人たちはそれどころでなかった。
原因は先日のどう見てもいきなりで違和感MAXなカズの妊娠発言にあった。
「全く、これは冗談じゃ済まされないぞ、カズ」
紫杏がお茶をすすりながらボヤく。
「いやいや、関西人にはボケとツッコミが足りんとやってけんから」
和那は笑いながら答える。
先日の和那妊娠騒動は小波の
「なんでやねええええええええん!!!」
のツッコミですぐにネタ晴らし。
でも、他の5人もどうせ嘘だろと思いながら平静を装い不安を隠していた。
「(いつきのことがようやく解決したと思ったら・・・・)」
「(お姉ちゃんも大江さんって普段のアプローチが積極的過ぎて冗談にしても気味悪い・・・)」
「(な、なによどうせ違うクラスで一歩引いた私はそんなことできませんよ)」
「(ダメだ・・・どうしても深層心理にもし本当だったらって不安が・・・)」
「(なんでカズばっかこんな冗談もありなんだ。
ムキー!!!あたしだってカズ並みに過酷に生きてきたのにーーー!!)」
「話し変わるけど、ウチ皆に言いたいことあるんやけど」


「な、なんだ??」
また、とてつもないボケが来るのかと紫杏は焦りながら聞く。
「実はこの前発売されたパワポケ12で・・・・・」
「・・・・・・・・」
その言葉にこめかみこぶを作り紫杏は黙っていた。
「ウチ、ヒーロー裏切ったと見せかけてツナミに入ったやんか」
「あーあー聞こえませーん、その先聞きたくないです」
ナオは続きの内容を聞きたくないとばかりに耳を塞ぐ。
「でまぁ、不覚をとってピンクに負けたんやけど・・・・・」
「(大江に隕石カモーン)」
頭にきていた五十鈴は念じてみるも残念ながら何も起きない。
「ウチもまぁ悪いことばっかやないみたいで・・・・・・」
「わ、私は信じません!!!
信じません!!」
さらも珍しく取り乱す声をあげる。
「小波とむすばれ・・・・・」
「すとーーーーーーーーぷ!!!!!!」
皆まで言わせずに妙子が大声を上げる。
「え?
なにそれ
そんなもの関係ないわよ!!!
ここでは明らかに違う時が流れてるでしょーに」
「そないなことしっとるよ
ウチが言いたいことはそうじゃなくて」
「何よ??」
「本編準拠ってことでウチが小波を独り占めってことでええやろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
和那の言葉に一瞬黙る一同。
「全く、いくらツッコミを入れてほしいからってそれは無いぞ、カズ」
「・・・・小波が決めることだ」
「そうそう、今はこの状況をたのしもー!!」
「お姉ちゃんのその発言はオーバーとはいえ、少し賛成です」
「これじゃツッコミ入れる気にもなんないわよ」
「・・・・え〜あの〜
一応本気で言ったんやけど・・・・」


どうせ冗談と思っていた5人だが、和那のその一言にスイッチが入る。
「ムキー!!!!
絶対認めんぞ!!!!
だいたい、本編準拠だったらあたしはくぁwせdrftgyふじこlp」
「さてそろそろどっちが優れた超能力者か試してみようか・・・・・」
「小波君は私だけの物なんです!!!
なに都合のいいことを」
「お姉ちゃん、それが本心だったの??
やっぱ信じられない・・・・
信じられない・・・・・」
「ちょ、ちょっと騒ぎすぎ、近所迷惑考えなさいよ!!!」
こうして6人の乙女の戦いは留まることを知らない。



そんな彼女たちを尻目に小波は自室で1本のDVDを握り締めていた。
だが、エロではない。
彼女たち6人で満腹を通過して腹痛並みになっている小波にはエロDVDは必要ない。
これは普通に野球ビデオである。
「さてさて、みんなが談笑しているこの隙にやっとみれるぞ
俺が憧れる七瀬(7主)選手の特集番組。」
いまや、知らぬ人はいないほどの有名選手の特集番組が録画されていた。
小波が最も目標としている選手とあって興奮は冷め遣らない。
早く見ないと誰かが自分のところに来るので今しかチャンスは無い。
ケースを開けようとした、その時だった。
ヒュッ!!
「え・・・・??」
小波は一瞬何かが通ったように感じたと同時に手からDVDが消え去っていた。


「な、なんだ・・・・」
視界の先には宙に浮いているDVDがあるではないか。
小波は信じられない光景に目を丸める。
そのままDVDは開いていた窓の外から逃げるように去っていった。
「な、なんだこの現象は・・・・・
って俺のDVD逃げるなーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
小波が叫んでもそれは空虚に響いただけであった。




宙に浮いて逃げたと思われたDVDだったか、勿論幽霊でもなんでもなく人の仕業であった。
姿を消せるあの人の。
「・・・・・・良かった。
録画ボタン押し間違えてもう見れないかと思ってた♪」
姿を現した小柄の女性が笑顔で呟く。
「ちょ、ちょっとなにやってるのよ!!!
いくらなんでもこれはまずいでしょ!!」
隣にいるピンクのヒーローコスチュームが彼女の行動に突っ込む。
「・・・・・・・・・カズに会わせてあげたんだからこれでチャラ」
「全く、相変わらずなんだから、どんだけコイツのこと好きなのよ」
「・・・・・早く、見なきゃ♪」
「聞けや!!!!!!」
黒猫さんに半ば呆れていたこの人もついに女になるとか。
それは別の話である。



一度収まった談義だったが、今度は別の話題で持ちきりだ。
「いやー
やっぱ体育祭で転んで保健室で泣いてるウチを慰めてこのまま・・・・・」
いつしか小波との高校時代の思い出談義に変わっていた。
「全く、崖から私にジャジメントに行くなと訴えた小波のほうが全然格好いい。
結局私は行ったけどそれでも今も強く胸に残っている。」
紫杏も珍しくうっとりとした顔をしていた。
「私には思い出ありません。
でも、彼が屋上で私に優しく語りかけてくれた一言一言が強いて言えば思い出かもしれません」
「・・・私はなんといっても私が海に飛び込んだのを体を張ってくれたときだ。
小波が私を大事にしてくれてると感じて心から満たされた。その後戻れなくて崖の下で"暖めあった"のもいい思い出だ」
「なにおう!!!
私もペアルックで小テスト0点取ったり、イワタンと遊んだりとか
数え切れない愛の軌跡が・・・・」
「お姉ちゃんそれってなんかおかしいような・・・・」
「ぜん、ぜん
おかしくないです!!!!
思い出にもいろいろ形があるのよ!
 ・・・・・ところでタエタエの小波君との思い出は?」


「え??」
いきなり振られた妙子は目を浮つかせ思考を巡らせる。
「察してやれ、彼女のような模範的生徒は私たち自治会の目が合ったから
あまり行動を起こせなかったのだろう」
「そ、そうなのよね〜」
思いがけない紫杏の助け舟に同調するように妙子は答える。
「・・・まぁでも私は小波といるためならそんな障害は気に留めなかったが?」
「ぐっ・・・・」
珍しく仕掛けてきた五十鈴に妙子は押し黙る。
「おい、その辺に・・・」
「あるわよ!!!!!!」
今度の助け舟を遮って妙子は叫ぶ。
「へぇ、せやったら聞かせてくれへん?」
和那が興味津々に聞き入る。
とはいっても紫杏のご指摘の通り違うクラスとあって本当に思い出といえる思い出が無い妙子。
「それは・・・・
一緒に勉強したりとか・・・・・
一緒に勉強したりとか・・・・・
一緒に勉強したりとか・・・・・」
それしか答えられない妙子に和那は
「それだけやん
やっぱ"違うクラス"やからな〜」
と少し得意げに語る。
「まぁ"違うクラス"だから仕方の無いことといえば無い」
「・・・・運も実力とは言ったのものだ
 "違うクラス"じゃ必然的に思い出も減る」
「タエタエ、気にしないで!!
私も"違うクラス"なら思い出が10のうち2つなくなってたと思うし」
「・・・うううう」
うめきをあげる妙子だったが、最も残酷だったのはさらだった。
「でも私"違うクラスでも"小波君とはさっき言ったように彼のほうから会いに来てくれたし」
その一言で妙子は限界だった。
「うわあああああああああああああああん!!!!!!」
走り去っていく妙子を見た和那は
「ちょっと、言い過ぎてもうた・・・・・」
と反省する。
「・・・・・まぁライバルが減ったと思えば・・・」
「すずちんひど〜い!!!」
「・・・あいつの友人の春田蘭に小波を諦めさせるためいろいろ嘘の悪口を言ったことを知ってるぞ」
「う・・・・・」
残された5人はバツが悪そうに広間に佇んでいた。






「おまけ」
一方その頃
「センパイ、早く早く!!!」
「ちょっと春香ちゃん」
「任せてください!!!
全然会いにきてくれない恋人は恋人にあらず!!!
私がセンパイの恋人にばっちしなってやりますよー!!!」
「だからって俺のマンションにいきなり来たいだなんて・・・・
って応じた俺も俺か・・・・・
って鍵が開いてる!!!」
「センパイ、いきなり走らないでくださいよ〜」
「ん?
ああ、7主おかえり」
「リコォ!!!!!
なんで俺の家にいるんだよ!!!」
「風の噂で7主が彼女におあずけされてるって聞いて
今会いに行けば修羅場という絶好のシチュにめぐり合えると思ってさ♪」
「ツッコミどころ多すぎて対応に困るだろ!!!」
ピンポーン
「誰だよ、こんな時に・・・・」
ガチャ
「7主君、もう何年も言うか悩んでたけどやっぱり7主君のことが・・・
って女の子が二人も・・・・最低ッ!!!」
「れ、怜菜まで!?
こんなことって」
「私も海外で7主君好みの女になってきたよ〜」
「小晴ちゃん!?
こんな偶然ってあるのかよ!?」
「そういや、もう一人センパイのこと好きな人がいたような?」
「あぁ、湯田君の義理の妹とか言う・・・・」
「それなんて空(ry」
「わーーーーー!!!!!梨子、それ以降言うな!!!」
「とにかくセンパイ!!!彼女もどうせいないんです!私が幸せにしてあげますよ、チクショー!!!」
「7主も私といなきゃ楽しいことが無いから私で決まりでしょ?」
「7主君を好きな気持ちなら世界の誰より負けないんだから!!!」
「私付き合えば、絶対7主君と幸せになる自信あるよ?」
「って決められるかーーーーーーーー!!!!!!!!」



「って夢か
全く、ホントにビックリした。」
「・・・・・・でも正夢になったら嬉しい?」
「ま、まぁ嬉しいかな?
春香ちゃんは凄く好意をぶつけてきてくれて
梨子もあーだこーだで一緒にいると面白いし
玲菜とはマネージャーだったからお互い良く知ってて仲良くできそう
小晴ちゃんはしっかりもので理想のお嫁さんになってくれそうかな?
まゆみちゃんは・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・と、とにかくかわいい!!!
とにかくそんな可愛い子に囲まれるなんて男のロマンだよ!」
「・・・・・・・・・・・・私も頑張ってるのに」
「いや、別に今に不満があるからとか、彼女が毎日会いにきてくれない愚痴を言ってるわけでもなく
ま・・・・・・・真央ちゃん・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・最低」
「いや、真央ちゃん、聞いてくれよこれには深いわけというものがあって
ちょ、目が怖い・・・・や、やめてーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
その日この男の家の近辺に暗黒イズナ流星落としの轟音が響いたと言う。

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