「ふーん、ふーん、ふーん♪」
「ピンクさん、どうしたんですか?すごく楽しそうですけど」
「あいつがね。今度のホワイトデーにデートしようって言ってくれたの」
「良かったじゃないですか」
「ええ、もう最高よ。ホテルでディナーを食べて、その日はそこで一晩過ごすんですって。楽しみだなぁ」
 滅多にない事なのか、ピンクはえらく上機嫌だった。十四の前で思い切り惚気ていた。
「どこのホテルなんですか?」
「ホテルPAWAって言ってたわ。カップルが良く利用するみたい」
「それってカズさんとブラックさんに聞かれたらまずいですよね」
「そうなのよ。あの覗き魔とデカ女に知れたらその日はパトロールとか言うに決まってもの」
「前のクリスマスとかそうでしたよね。大丈夫ですよ。俺は何も言いませんから」
「君も彼女持ちだものね。だから話したんだけど」
 流石に子供の邪魔をするまで大人げない事はしないと思うが、話さないに越した事はない。
「紗矢香のお父さんってカズさんの元恋人らしいんですよ。だからあんまり会わせたくないって言うか…」
「確かその子の両親とカズと朱里がクラスメイトだったんだっけ?」
「そうらしいですね」
「朱里が羨ましいなぁ。前に会った時は旦那とラブラブだったもの」
 彼氏とラブラブしたいと思ってもいつもカズとブラックに妨害されている身としては朱里は羨ましすぎる。
 旦那もプロ野球のスター選手なので、収入の少なさを気にする事もない。
「お互いホワイトデーは頑張りましょう。」

「ほー、ホワイトデーに彼氏とねぇ…」
「ホテルでイチャイチャ…」
「何であんたたちでここにいるのよ!パトロールはどうしたのよ!!」
 2人がパトロールでいないと知っていたから十四と話していたのに気付けば背後にいた。
 予想外の状況にピンクの顔が真っ青になっていた。
「いやな。今回はなかなかボロを出さへんから、罠を張ろうと思って。その子と一緒なら何か話すかも知れへんし」
「ホワイトデーはホテルPAWAに直行決定♪」
「ふざけるなぁぁぁぁ!!」
(ピンクさん、強く生きて下さい…) 
 2人の悪魔に嵌められた事で、ピンクの幸せなホワイトデーは終わりを告げた。
 身の危険を感じた十四はピンクに悪いと思いながらもその場から立ち去ろうと思ったが、2人の悪魔がそれを許すわけがなかった。

「どこに行くん?」
 逃げようとする十四をカズが取り押さえる。
「放して下さい。勘弁して下さい本当に」
「水臭いなぁ。彼女紹介してくれてもええやん。その子の両親うちのクラスメイトなんやし」
「カズさん、痛い。痛いですって」
 掴んでいる肩に物凄い握力を加えている。口調はいつものカズだが、顔が全く笑っていないのが怖い。
「イチャついてるカップルなんて皆○ねば良いのに」
「ブラックさん、その発言は洒落にならないですから。ヒーローとして問題発言ですって」
「リーダーはピンクを方よろしく。この子はうちが相手するわ」
「OK」
 紗矢香と一緒にお菓子を食べてお風呂に入って寝るという十四の幸せは脆くも崩れ去るかと思われた。

「いやー、君の彼女めっちゃ可愛いやん。まさかあの野球バカからあんなに可愛い子が産まれるとは」
 ところが、元々年上の女性の知り合いが多かった紗矢香が思いの外カズに懐いたようで、カズもまんざらではなかったらしい。
 特にカズお姉さまと呼ばれた事が嬉しかったらしい。
「ええか。あの子泣かせたらうちが絶対許さんから」
「大丈夫ですよ。紗矢香が16歳になったら結婚するって約束してますから」
「うーん、最近の子はませとるなぁ。うちなんてその頃は喧嘩ばっかりしてたんやけど」
 ひとまずカズが紗矢香と仲良くなってくれてホッとする十四。
 後日、アジトの廃ビルでブラックにデートの妨害をされ泣いているピンクが発見された。
 どうやらホテルで今夜はごゆっくりと意味深な発言をされたらしい。
 最悪の事態を考え、警戒を怠らなかったが、能力を使いっ放しの状態では彼氏と良い雰囲気にはなれなかった。
 流石にブラックも2人の夜の営みを覗くほど無粋ではなかったが、ピンクが警戒しすぎて結局性的な意味で合体出来なかったと嘆いていた。
(カズさんとブラックさんってこういう事してるから余計に彼氏が出来ないんじゃないかなぁ)
 十四はそう思ったが何も言わなかった。下手すれば自分がピンクの二の舞になるからだ。
 ちなみに十四も紗矢香とお風呂に入れなかったため(カズと紗矢香が一緒にお風呂に入った)、後日、自室で1人泣いていた。
 カズの話では、大人になれば出るところは出るそうだ。その話を聞いた十四の弾道が上がったのは言うまでもない。

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