「よいしょっと。…それじゃ、行ってきますね。」
「おう!頑張ってこいよ!」 「はい。」
そして俺は、今はすっかり我が家となった家を出る。
「さ〜て、まずは杉田さんの所か…」
そんなことを呟きながら、歩いていた時だった。
俺の目の前に、一筋の暖かい光が差し込んだ。
その光は次第に人の形になっていき、やがてその光が色をつけ始める。
そして、完全に色づいたその光は、
「ひ、久しぶり…小波さん…」 「…!?」 消えてしまったはずの、貴子ちゃんの姿になっていた。

「な…な…!?」 俺は驚きのあまり、腰を抜かしていた。 正直なところ、これは夢であるとしか思えない。 「えっと…その…こ、これは…どういう…?」 今の俺には、こう言うのが精一杯だった。 「実はね?あの世では、7月7日のみ好きな人に会っていいっていう法律があって、  その日だけはここにも降りてこられるの。驚いた?」 「それはもう。気絶するかと思ったよ。」 「ふふっ。さ、家に帰りましょ。今夜は私のフルコースを御馳走するわ。」 「それは楽しみだなあ。頼んだよ。」 実を言うとこの時の俺は、抱きつきたい、という気持ちと、夢なんじゃないか、という気持ちとで、 押しつぶされそうだった。
それでも、隣にいるのが貴子ちゃんだということで、少しはマシだった。


「ただいま戻りました!」 「おう!早かったじゃねえか。それに嬉しそうだな。なにかあったのか?」 「はい!…入っておいで、貴子ちゃん!」 「はーい!」
うん。いい返事だ。
「久しぶり!お父さん!」 「……!!??」
お父さんも腰を抜かしているようだった。
それから、涙を浮かべて、
「た…貴子…!たかこぉ・・・!」
と、抱きついた。
…くっ。俺だって抱きつきたいのに…
「あーほらお父さん!泣かないの!小波さんの前よ!」
「はっ!そ、そうだったな。ぐすっ…」 「さ!晩御飯にしましょ!」
そうして、今夜の晩御飯が始まった。
…時間軸がおかしい?いやいや、きちんと配達はしましたよ?
今日は2つだけだったんだよ。いや本当に。
「いやー、おいしかったぁ!」 「ふふっ、お粗末さま。」 「ガツガツムシャムシャ…これが貴子の味だったなぁ…ぐすっ…」 「お父さん、まだ食べてるの?片付けちゃうから早くね。」 貴子ちゃんも嬉しそうだ。
そりゃあそうか。一時期はみんなに見えなかったわけだし。
それだけ、お父さんに自分の姿が見えているのがうれしいんだろう。
「あ、そうだ。お父さん。」 「ん?」 「今日は、小波さんと一緒に寝るね。いいよね?」 「む…まあ、久しぶりだしな。いいだろう。」
あまり気乗りはしていないようだったが、とりあえずは許してくれたようだ。
…って、
「ええっ!?一緒に寝るの!?」 「いいじゃない。久しぶりなんだから。ね?」 「…うう。」 彼女の吸い込まれるように美しい瞳に見つめられた俺は、断ることもできなかった。


お風呂や何やらを済ませて、布団の中に入る俺。
「それじゃあ、何かあったら呼ぶんだぞ。」 「はーい。」
そう言いながら、布団の中に入ってくる貴子ちゃん。
何か話でもしようか、そんなことを思っていた時だった。 「ねえ…小波さん。」 「うん?」 「私…怖いの。」 彼女が、こんなことを言ってきた。 「何がだい?」 「確かに今日一日はみんな私のことが見えていた。  でも、明日になったら誰も私が見えなくなる…
 それが、どうしようもなく怖いの。」
「……」
なにも、言えなかった。
そうだ。貴子ちゃんは今日一日だと言っていた。
つまり、明日になったら、もう見えなくなる。
「ねえ…私、どうすればいい…?」 「大丈夫。」
つい、そんな言葉が口をついて出てきた。
「大丈夫だ。誰も見えなくなっても、俺がいる。  たとえ全世界の人が君を見失なっても、俺だけは君を見つけてやる!  だから、大丈夫。」 自分でも、無責任だとは思う。 俺が望まなくとも、彼女は明日には見えなくなっているのだから。 「…うん…」 彼女は小さくうなづき、それから俺のシャツをつかんで、体を震わせていた。おそらく泣いているのだろう。 「大丈夫だ、大丈夫…」 俺はそう何度も呟きながら、彼女の頭を撫でていた。


しばらくして。彼女はようやく泣き止んだようだった。
「ねえ…」 「ん?」 「どうせあの世に行っちゃうんだったら、何か思い出に残るものがほしいの。  だからさ…私と…その…」 「…ああ、分かった。」 彼女にとって、それが一番の思い出になるのなら。 俺は、そう思った。
「やっぱり…その…」 「どうしたんだい?」 「は…恥ずかしいね…」 「…言わないでくれ。俺だって恥ずかしいんだ…」 俺たちは互いに全裸で抱き合っている。 時間はすでに11時過ぎ。もう1時間もない。 「あの…さ。時間がもったいないから…愛撫はいいよ。」 「…いいのか?初めては痛いらしいぞ?」 「うん…大丈夫。あなたと繋がれるんだったら…」 「…分かった。」
その決意を見せられたら、俺も覚悟を決めるしかない。
「…いくぞ。」 「うん…来て!」 俺は少しずつ、モノを入れていった。

「あ…ぐぅぅぅ…んっ!はぁっ、ふっ…!」 彼女はかなり辛そうだった。 無理もない。高校生というまだ未発達な体で止まっていた彼女に、滑りを良くする液体もない。 痛くない方がおかしいというものだ。 「大丈夫か?」 「う…うん…大丈夫。だから…続けて…」 「…分かった。」
これ以上彼女の苦しむ姿は見たくなかったが、ここで止めたら彼女の望みが叶わない。
俺は彼女の思いを無駄にしたくなかった。 更に少し腰を進めると、何かを破るような感触とともに、暖かい血の感じが伝わった。 「よく頑張ったよ…もうすぐ気持ち良くなるから…」 「う…うん…!」 彼女は汗だくの顔で頷いた。
それを見てから、再度俺は腰を動かす。
「んぁっ!ふぁっ!はぁっ、んんっ!」 一回ごとに、彼女の表情が和らいでくる。 「ふぅ!んっ!ひっ!はぁ、あああっ!」
どうやら感じてきたようだ。一突きごとに、彼女が可愛らしい声を上げる。
「あんっ!ふっ、はっ、んっ!くっ、はぁぁっ!」 「くっ…」 俺もそろそろ限界だった。 「ごめん、貴子ちゃん、俺もう…出そう…!」 「中に、出して…!この感じ、忘れたくないの…っ!」 「…分かった…っ!」 「ふぁぁぁぁっ!」 「くぁぁぁぁっ!」 俺たちは同時に果てたようだった。 「はぁ、はぁ、小波さん…」 「なんだい…?」 「あの時、言えなかった、こと…
 …大好きよ、小波さん…」
「…ああ、俺もだよ、貴子…」
そして、俺たちは眠りに入った。
「…ん…」 目覚めたのは、次の日の昼だった。日曜なので、仕事はない。 「おい小波!いつまで寝てやがるんだ、もう昼だぞ!」
お父さんの声が聞こえる。
隣には貴子ちゃんはいない。…やはり見えなくなってしまったのか…
「小波さん、お昼ごはん、できてるわよ。
 ふふっ、寝ぼすけね。」 声のした方に顔を向けると。
そこには、貴子ちゃんが立っていた。
「ええっ!?な、なんで!?」 「うふふ、実は昨日ので子供ができたみたいで…
 それでね、特別に生き返らせてもらったの。」
その時の俺は、きっと吹き出してしまうような顔をしていただろう。
「たっ…貴子っ!ううっ…たかこぉっ!」
だけど、仕方ないじゃないか。
「ああ、もう、お父さんみたいな泣き方しちゃって。
 もうどこにも行かないから、安心して。ね?」
これからはずっと、貴子と一緒なんだから。 .

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