『clearな気持ち』
「55、57、59、56、…」 成績表にずらりと偏差値が並ぶ。校内模試とはいえ、悪くはない結果だ。 片田舎の農業学校とは言え、元混黒高生もいるこの学校の偏差値は決して低すぎるものではないのだ。 「うわー、また京ちゃんに数学負けた…頭良いなぁ京ちゃん。」 「それ以外は全部透が勝ってるだろーが」

そろそろ肌寒くなり甲子園も終わって早数ヶ月、今の俺には華々しい野球人生が開かれ…というわけでもない。
一応野球をまだやってみたいという気持ちが無いわけでは無いが あれだけのことをやった後だと、俺のような並より少し上手いだけの凡人は十分すぎるほど満足してしまうものだ。
その後の世界に進むのは我らがキャプテンに任せてしまっていい。
あいつならどんな天才達が集まる中でも埋もれる事は絶対に無いだろうし。

そんなこんなで、この俺、開拓高校元野球部の御影京一は受験勉強まっただ中にいる。
辛い練習もあったとは言え、正直なところ野球やってた方が全然楽しかったが そもそも勉強は楽しいものではない、と諦めて受験とかいう忌まわしいものを受け入れている。 「次は全教科で京ちゃんに勝つからね!」 透といればあんまり苦痛らしいものを感じないのが救いか。 「いいよなぁ、小波は。受験勉強やらずに済んで。」 「でも木村さんに『どうせこれから野球漬けになるんだから、今の間くらい勉強しなさい』とか言われてるらしいよ?」 「あいつらすっかり公認の仲だな。…ちょっとうらやましい。」 「…?まぁうらやましいとかじゃなくて、今くらい勉強しようよ!」
つい口が滑ってしまった。とりあえず真意は悟られなかったようでホッとしている。
実際のところ、小波のことが非常にうらやましいのは事実だ。 受験勉強云々ではなく、あっさりと好きな人をとっ捕まえ、男女の仲にまで進んでしまうその肝っ玉が。
あいつは1年の時にマネージャーとこっそり付き合い始め、色々あったものの
今ではあの二人がカップルなのはもはや校内共通認識になってしまっている。
一方の俺はというと、幼い頃から好意を抱き続けたお隣の女と、10年以上煮え切らない関係を続けている。
できるやつはできるというか、俺がウジウジしすぎというか、とにかく俺にもあいつほどの度胸が欲しい所だ。
まぁこの受験期にそんなこと気にしてても仕方ない。そんな心配は受かってから…
「っっしゃあああああああああ!!」
突然の叫び声が狭い教室に響き渉る。 俺を含めたクラス中の生徒がその声の主を辿ると、教壇の前で先ほど透と噂していた小波がガッツポーズを決めていた。 「何テンション上げてんだ小波。最近スカウトの人と仲良くなってるお前が勉強なんて…」 「いいから見てみろよ詰井!どうだこの素晴らしい成績は!」
しぶしぶ小波の成績表を受け取る、心底どうでもよさげな顔の詰井。
そりゃそうだ。プロ入り確実の小波がまともな勉強しているわけが無い。
精々赤点を免れたとかで喜んでいるのだろうが、そんなもの現役受験生に見せられても困る。



ところが詰井はあり得ないものを見たかのように、目をまん丸に見開いた。
「ウソだろ…学年順位3位?男子の中だったら1位!?こりゃ全国模試でも結構いい線いけるんじゃないのか?」 「いやー、俺だって気合い入れて勉強すればこのくらいは…」
とたんにガヤガヤと教室が騒ぎ上がる。
仕方ないとも言えるが、何せ目を開けたまま授業受けてる時間より、後輩の面倒見ながら素振りやってる時間の方が長いような男だ。
そんな奴がこの学年(といっても一学級しか無いが)でトップクラスの成績を取っているのだ。
「できるやつは大体のことができるもんなんだなぁ…」
はっきり言って受験生としての面目丸つぶれなのだが、流石はキャプテンという感想しか浮かばない。
他の生徒もそうなのだろう。 別にうらやましくも無いが、多くの女子達が円を作ってひそひそと話し始めている。 「小波君すごいねー。ねぇ木村さん!あたしと京ちゃんにも勉強教えてよ!」 「えぇ…いや、あたしは大したことは…」 透がその輪に入るようなことはなく、恐らく当事者であろう木村にその秘訣を請うている。 「どしたの木村さん、あんまり嬉しくないの?」 「いや、そんなことはないんだけど…あぁもう、どうしたら…」 決して暗いわけでは無いが、やってしまった感満ち溢れる木村の表情。 恋人の成功を喜んでないのだろうか?なぜか頬を染めているのが気になる。
すると小波が意気揚々とこちらに、というか木村の元に駆け寄ってきた。
「なぁ冴花、例の…」 「…頼むからここで話すのは止めて頂戴。」 見せつけてくれるよなぁ…


「で、あるからして現在のジャジメントグループは多くの事業系列を…」
(ね、ねむい…)
いかに受験生とは言え、授業が眠気を催すのは必然。こっちは前日の試験返却で脱力気味。
ましてや社会科目などやって眠くならないことがあろうか。いやない(反語)。
はっきり言って限界だ。幸い後ろの席だし、そういうことを気にする先生でも無い。
ここは腕を枕代わりにして…しまった、消しゴムを落としたか。
辺りを見渡すと二つ前の席にまで転がっていた。めんどくさいなぁ。 仕方なく消しゴムを拾って、戻ってくる際に異様な光景が飛び込んできた。
(な、何やってんだあいつ…?)

あの小波が目を見開いてしっかり黒板を見ていた。
思わず誤って他生徒の机にぶつかりかけたが、そそくさと自分の席に戻る。
そして念のためもう一度確認すると、やっぱり同じ光景が見えた。絶対におかしい。
別にあいつは授業をサボったりするような奴でも無いし、毎度毎度眠っているわけでも無い。
だからといってこのつまらない授業の板書を大真面目に取るような奴でも無い。
おそらく、今この教室内で一番真剣な表情で黒板を見つめているのは確実だが
なぜ勉強する必要のないあいつが…と、そこまで考えた所であることに気が付く。
よく見るとその視線は先生のチョークの跡などに目もくれていないのだ。
視線をしっかり辿ると、それが最前列の木村に向けられていることがわかる。
なんだこんなときまで。恋は盲目か、確かに見た目は悪くないが…と自己解決するしては何か違和感がある。
やたらと目がギラギラしているというか、眼光の中で何かに執念を燃やしていた。
こちらから木村の様子はよく見えないのだが…何かあるのだろうか。
(透けブラが期待できる季節でもないのに…)


昼飯時、透と弁当を食べながら先ほどのことを、といっても小波のことを聞いてもどうしようも無いので木村の事を聞いてみた。
「木村さん?なんか熱っぽいって言ってたよ。実際顔赤かったし、ふらついてたし。」 「ふーん、そうなのか。」 「…気になるの?」 「いや、そういうわけじゃ…とかいいながら俺の春巻き取ってんじゃねえよ。」
コツンと透の頭を叩く。もちろん本当に痛くするつもりは無く、透の方も頭を押さえながら笑っている。
「冗談だよ。でも下手なマネしたらキャプテンに怒られちゃうよ?」 「…あぁそうだな。」 「どうしたの京ちゃん?」 「別に…」
お前が心配するのはそっちなのかよ。
お優しいのはありがたいが、少しくらい嫉妬を見せてくれてもいいじゃないか。
そんな声が頭に反響する
俺が不機嫌なのはわかってるくせに、透が何も気付いていないということにも少し腹が立つ。
色々と理不尽な考えだというのはわかっているが、それでも感情は簡単には処理しきれない。
モヤモヤしていると透が不安げな表情でこちらを見つめているのに気付いた。
いかん、こんなくだらないことでこいつを不安にさせてしまったのか。
どう切り出せばいいか迷っていると、ドタバタと駆け寄ってくる足音が聞こえる。
「どうした小波?昼飯時に?」 「御影君、八坂さん、冴花見なかった!?」 「こっちにはいないけど、一緒にお昼食べてたんじゃないの?」 「お前が知らないなら誰も知らないんじゃないのか。」 「そっか、ありがとう、別の所探してくる!」
そう言うと小波はまた慌ただしく駆けだしてしまった。
「仲良いんだね、本当に。」 「なんか変だけどな。」 暢気に箸を進める透だが、やっぱりあいつらおかしい。さっきの授業の時のことも照らし合わせると、何かあるのは明らかだ。
うーん気になるなぁ…
「ってお前は、人が考え事してるときに春巻き取るのを止めろっての。」
「じゃああたしの金平ごぼう上げるからぁ…」 「嫌いなものと物々交換しようとするな。」
「キャプテンとマネージャーといい、御影と八坂さんといい…楽しそうだよな、ホント
 俺達なんか野郎同士で昼飯喰ってるのになぁ、詰井。」
「何も言うな、杉田。」


「筆箱置いて来ちまったか…めんどくさいな。透は先に帰ってて良いぞ。」
「うん、あたし待ってるね。」 「そうか、じゃあ待ってても良いぞ。」 会話になってないように見えるが、俺達にはこれが日常なのだ。
なぜもう一歩踏み込めないのかと情けなくなった。
ふがいない自分を呪いながら教室に向かう。
幸いまだカギは閉まっていなかったので、なんなく筆箱を手に入れる。
これが管理の厳しい混黒だったらこうは行かないだろう。開拓が田舎であることに感謝。後は戻るばかりだ。
「………ぁ……」 早歩きで廊下を駆けていると妙な音が聞こえた。 人の声のようにも聞こえたが、それにしては異様に感じる。 少なくとも日常的に聞く類いのものでは無い。 「はぁ…あっ、み、御影くん…」
その音の主とは廊下の曲がり角で出会えた。例の授業の一件以来気になっていた(深い意味は無い)木村だった。
「ど、どうした木村…風邪、いやインフルエンザか?」 「そ、そうじゃないわよ…熱?はあるけど…なっ、ぁ、なんでも、ないから…」 何でも無いどころでは無い。息は荒く、顔はのぼせあがって、あの鋭い目つきはすっかり緩まっている。
そしてときおり小さく漏れる酷く艶やかな声音。あまりにも生々しい彼女の姿に思わず息を呑んでしまった。
「こな、こなみくん、の、居場所、しっ…知ってる…っ…?」 膝の付け根辺りを押さえ、モジモジしながらこちらに問いかけてくる。尿意というわけではなさそうだ。 「あいつならさっき部室辺りで見かけたけど。」 「あっ、ありがとっ…じゃ、八坂さんにもぉっ…よ、よろしく。」
そういうと木村はぎこちない早歩きで校庭に向かいだした。
はっきり言って鈍い動きだったが、今の彼女が出せる全力のスピードで動いているようにも見える。
一体何が起きているかわからない。あんな木村、いやあんな女性を初めて見た。
それでも一言で彼女の様子を表すなら『異常』としか言いようが無かった。
なるほど、もし木村が今日一日あんな様子だったのなら、小波が血走った目つきで彼女を見つめていたのも納得できる。
なんでそんなことになってるのかわからないのは変わりないが。
「気にするなって方が無理だろありゃ…」
野球部の部室は彼の頑張りによって小さいながらも専用の建物が用意されており そこの小屋の裏と学校の塀には人が数人入れるようなスペースがある。 小波はそこで何かを待っているようだ。いや何を待っているのかはわかるけど。 俺はと言うと木村に先回りして、部室近くの木の陰からこっそり小波の様子を見張っている。 身を全て隠せるほど都合の良い大きさの木では無いため ひょっとしたら見つかるのでは、とヒヤヒヤしたが、全くと言って良いほど気付かれる様子が無い。 小波がそわそわし始めた頃、おぼつかない足取りで木村が彼の元に駆け寄ってきた。 「まってたよ、さえ…んぅっ!…」 「んんっ、あむ…ちゅう、んむぅ…ちゅる…こなみくぅん…」
(ええええっ!?あいつら何やってんの!?)
木村はいきなり小波に倒れかかるように抱きつき、深く口付けていた。
その顔を両の手で掴み、貪欲にむさぼりつくす。
一方の小波もそれに怯むこと無く彼女を抱きしめ、熱烈な接吻を受け入れていた。 濃厚なキスだったが、意外にも長続きしないで10秒ほどで離れてしまった。 「積極的だね、冴花。」 「も、もう無理なの…我慢できないのぉ!。」
そう言うと木村はスカートを捲り上げる。
あの真面目な木村がやっているとは思えないその行為だけでも仰天物だが、驚いたのはその中身。
下着はまるで失禁したかのように濡れているようで、縁の部分からコードの様な物が伸びていた。
あれはまさか、いわゆる大人の玩具とかいう…
「こんな、こんなにぐちゃぐちゃになっちゃって…んぁあああぁぁああ!!」
話も途中のままに小波はそのコードを勢いよく引っ張る。甲高い嬌声と共に妙な器具が彼女から飛び出てきた。
そのまま小波は器具の代わりに自分の指を突っ込んだ。
「ああぁぁっ…ああっ、も、もっとぉ…」 激しく指を出し入れするかと思えば動きを止めて…遠目なのでよく見えないが恐らく指そのものを動かして中で刺激しているのだろう。 経験の無い自分にはわからないが、にわか仕込みのテクニックではなさそうだ。


「大変だったんだろうね冴花。でも俺を見くびってあんな賭けやっちゃったのがダメだったな。」
「で、でも…あっ、ああっ、そんな、本当、5番以内に、はいるなんて…おもわなくって…んんっ!」 「冴花のためだったら俺はなんだってしちゃうんだからな?」 「ば、ばかぁ…ふぁああっ!!」
そう言いながら小波は巧みに指使いで木村の秘所をいじめている。
遠目なので巧みなのかは見えないのだが、彼女の反応からしてその技巧の程は一目瞭然だ。 彼女が手の上で悶えている間に小波は空いている手をベルト掛け、怒張したモノを取り出す。
…あのサイズは憧れるなぁ。
「ご、ごめんなさい、あやまるからぁ、あたしがわるかったからぁ…もういれてよぉ!」 「何を?どこに?」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる小波。先端をぐりぐりと表面に擦りつける。
「ふぅ…これだけでも結構気持ちいいなぁ」 「あぁ…ぁあ…じらすの、やだぁ…」 切なさのあまり悶えている木村。小波はそんな彼女の身体を完全にコントロールしているようだ。 「どうして欲しいのかいってよ。ね、冴花?」 「あたしのおまんこに…こなみくんのおっきなおちんちんを、おくまでぶちこんでください!」
もはや余裕の無い木村は淫らな台詞を高らかに宣言する。やけにスムーズな所を見ると、言い(言わされ)慣れているのだろうか。
とにかく第三者の俺ですら興奮を覚えるかつて無い背徳感だ。
小波からしたら嬉しくて仕方ないのだろう。実に嬉しそうな笑みを浮かべ腰を一気に突き入れる。 「あああぁああぁっ!…ああぁ…こなみくんっ!…」 「…冴花っ!ゴメン我慢できない!」 言うが早いか、小波の腰が前後に動き始める。 「あっ!あっ!…いつも…よりぃ…おきぃっ…!ひゃぅうっ!」 「今日のっ…くっ…冴花、エロすぎてっ…」 「だっ、だれのせいだとぉ…!」 「あっ…し、締めすぎだよ冴花っ」 小波は木村を壁に押し付けながらガンガンと突き上げる。事前にあれだけ彼女を焦らしておきながら、本人も余裕も理性もなさそうだ。 恋人があそこまで乱れていたらそうなるのも当然か。それほどまでに木村は淫らに感じていた。 激しい下半身のまぐわいはそのままに、濃厚なキスを再開する二人。 布と布、肌と肌のぶつかり合う卑猥な音色がここまで伝わってくる。 二人とも外でやっているなどということは忘れ果て、お互いの身体を躍起になって貪っている。

プルルルルルップルルルルッ!

(ヤバイ!)
突然ポケットから電子音が鳴り響く。急いで木の陰に隠れる。
二人のセックスを見るのに夢中になってしまったが、俺は透を校門に待たしたままだったんだ。 恐らく俺を心配してなのだろうが、あまりにも状況が悪い。
こんな時に限って着信音量はMAX。これはマズイ。
二人に誰なのか悟られる前に大慌てでその場から走り去った。走っている間にも、わずかながら二人の会話が聞こえた。 「なぁっ、冴花、誰かがそこに…っ…いるみたいだぞ?」 「うそっ…やぁあああっ!ちょ…まってよぉ…ぁあんっ!」 「うっ…今、中がきゅってなった…はずかしいとこ、みられて、興奮してる?」 「ちがうのぉ…ちがうのよぉっ、あああっ、そこだめええっ!」
……今冷静に考えると、そんなにあわてなくてもばれることは無かった気もする。



「どうしたの京ちゃん、お腹痛いの?」
「いや、…腹は痛くない。」 「そう?受験前なんだから身体に気をつけてね。」
ギンギンに勃ちあがってしまったモノを誤魔化そうと前屈みになりながら道を歩く。
すっかり遅くなってしまったが、透は何十分も待たせた俺に何の詮索もしないで付き添ってくれた。
本当に優しい女の子だ。俺なんかが手を伸ばして良いのだろうか。 「悪かったな、こんな遅くまで待たせて…」 「いいのいいの、筆箱が見つかってよかったね。」
いつも通りの可愛らしい笑顔を見せてくれる透。
どきりとしてしまう。ときめきとは違う何かで。

――こいつもあんな…あのときの木村みたいな顔をするのか…?
目の前の透の純粋な笑顔と、先ほどの木村の淫靡な顔が重なり合ってしまう。
あの真面目な木村があそこまで乱れてしまうのだ。
こいつの可愛らしい微笑みもあんな風に変わって、男を求めるようになってしまうのだろうか?

…その男は一体誰になるんだ?誰がこいつをその胸に抱くんだ?
…………それが俺じゃ無くても、俺はそれを許せるのか?
「き、京ちゃん、どうしたの?…やっぱりお腹痛いの?」 「ああ、悪いな、心配かけて…ちょっと考え事してた。」 「そう…悩みがあるなら何か言ってね。」
(こんな事言えるワケねーだろ。)
とは言え、何も気付かないでいてくれる透に感謝する。
昼間は少しは自分の事に気付いてくれ、と呪っておきながら、俺も随分勝手な奴だなぁ。
いつものように透と歩む道は、沈みかけている夕日に照らされている。
…今日はいつもより月が出るのが早いようだが。

「ねぇ京ちゃんってばぁ!なんで朝一人で行っちゃったの?」
「それが普通の高校生だ。お前だって俺が野球やってたときは一人で起きてただろ!」 「それはそうだけど…なんで理由もなくあたしを置いてくなんて…」 「な、なんとなくだよ!俺だって一人になりたい日があるんだ。ほら、授業始まるんだから席戻れ。」

(ごめんな、透…)
こんなに惨めな朝は生まれて初めてだった。正確に言うと昨日の晩からだったが。
とりあえず何事も無く帰宅はしたが、あんなものを見た後に落ち着いてなんていられなかった。
飯を食おうにも箸は進まず、勉強しようにも悶々として手に付かない。 仕方なく自分の部屋にこもって自己処理を、と思ったのだが頭に浮かぶのはあの時の二人。 特に乱れていた木村の姿だった。 上手くは言えないが、なんとなく木村に欲情するというのは何か引っかかる物があり、彼女を対象にする気にはなれなかった。
そこで何を血迷ったか、昨日の小波と木村の姿に、自分と透の姿を当てはめて…
かつて無い興奮と背徳感、いつもの数倍の脱力感…そして罪悪感を味わった。
後悔の深さの度合いが半端じゃない。もはや何をする気にもなれなかった。 「ああっ…ん…いいっ、もっとぉ…!」 「と、透…?」
とっとと眠って忘れようとすれば、夢の中で透が何者かに抱かれていた。
こっちに気付いているのかもわからず、透は俺の目の前でただひたすらに快楽を享受している。
俺は目の前で乱れていく透の姿を何も出来ずに見守ているしかないという酷い夢だった。 悪夢から目覚めてみると元気になっている息子がまた憎らしい。
いつものように朝向かえに行く気になんて、いや顔を合わせる気にもなれなかった。

あいつのことが好きなのは事実だ。それは絶対だ。
しかし不思議なことに、あいつを女として見ていたにも関わらず、性的な対象として見たことが無かった。
長い付き合いだったからか、長らくそう言った目で見れなかった。
あいつのことを好きにしてみたいという想い、あいつのことを汚したくないという想い。
二つの矛盾した想いが透に対して倒錯的な態度を取らせてしまうのだ。
「…」 「ご、五限って実習だっけ?受験期なのにめんどくさいよねー…」 「…そうだな。」 「あははは…あっ、ねえ、その唐揚げ一個食べて良い?」 「いいけど…」 「やったー、ありがと…えい、スキあり!」 「………」 「えっと京ちゃん、二個取っちゃったよ?…怒んないの?」 「……別に」 「や、やっぱり両方とも返すね…ごめんね京ちゃん。」 気まずい。本当に気まずい。
とりあえずいつも通り昼食は一緒にしているだが、どうにも会話が続かない。
いつも通りに会話しようにも、透の顔すらまともに見られない。
何も悪くないのにしきりに謝ってくる透が可哀想だ。本当に申し訳ない。
「どうかしたのかな、あのおしどり夫婦。」 「喧嘩かなぁ…」 「まさかぁ、あの二人だぜ?」 辺りが軽くざわめいている。それもそうか。 自慢じゃないが、ここまで透と険悪になってしまったのは初めてだ。 俺達のことを知っている奴なら誰でも、何かおかしいことに気が付くだろう。



「初めて作ってみたけど、親子丼美味しい?」
「うまいうまい!弁当にはどうかと思ったけどかなりイケる。」 「フフ、よかった。なんかお弁当って考えると変に緊張して上手く捌けなくて…
 台所中それが走り回って大騒ぎだったのよ。」
「つまり…昨日までは生きてたのかこの鶏肉。」
…一部例外もいるようだ。よりによって事の元凶となったあのカップルである。覗き見して勝手に悩んでる俺が悪いんだけど。
それにしても妙だ。二人とも普段通りだというのが。
あそこまで恥ずかしい目に合わせられて木村は怒らないのか、小波は少しも後ろめたくはないのか、等々気になるところが多い。
…慣れてるのか?
何にせよあんなとても人には見せられないような(見ちゃったけど)出来事があった後でも普段通りでいられる二人の仲がうらやましい。
こっちは透をオカズにしただけでこんなことになっているというのに。
「…また木村さん?」
ぼそりと呟きが聞こえ、隣を見てみる。透の様子は穏やかではなかった。
箸を持つ手はプルプルと震え、顔は真っ青だ。 「えっ?」 「ま、まぁ木村さんスタイルいいし、可愛いもんね。」 「…おい」 「キツそうに見えて、性格も良いし、仕事もしっかりこなせるし。  …あのモテモテキャプテンがゾッコンなだけはあるよね。私なんかよりずっと…」

ガンッ!!
「!?」
無意識のうちに左の拳が机に打ち付けられていた。 「…………ご、ごめん京ちゃん…軽はずみで変なこと言っちゃって。」
もはや透は驚きを通り越し恐怖していた。
張り詰めた空気が漂う中、目を潤ませながらひたむきに透は謝ってくれる。
振り返ってみれば、今日、透はずっと俺に謝っているじゃないか。 昨日は嫉妬して欲しいだの考えておきながら…最悪だな、俺。 「……透は悪くない。」 「えっ?…で、でも。」 「身勝手な俺が悪かったんだ。」 口元に手を当て、目を見開く透。何があったのかわかっていないようだ。俺自身もよくわかっていないが。 「あたしは、別に…」 「今日、一日本当に感じ悪くてゴメン。」 「そ、それはまぁ…」 「……許してくれ。」 「ええっと、その…うん、なんかよくわからないけど、許してあげる…」 少し戸惑いを見せたものの、透はいつもの笑顔を見せてくれた。心底ホッさせてくれる笑顔を。 「お、おう…ありがとう、な。」
なんとなく恥ずかしくなって辺りを見渡すと、教室の連中全員が、あの二人を含めて、こちらに目を向けていた。
これまたとても恥ずかしい。


「…あっ!そ、そうだ!明日休みだから京ちゃんの家で勉強する約束だったよね!!」
「そ、そうだったな!じゃあ部屋の片付けしとくからな!茶菓子は期待すんなよっ!」 「お、オッケー!」
バツが悪いのを何とか誤魔化そうと勢いに任せて適当な話を始める。
「あれは仲直りの印に、家に連れ込んで…ってことか?」 「でも八坂さんから言い出したって事は…」 「くそー御影の奴!」 再びざわめきが始まる。どうにも墓穴を掘ったらしい。もうどうとでもなれ。 「なぁ、冴花も俺の家で…」 「本当に勉強できるんでしょうね?」 「そ、それはまぁ…」
キャプテン救いよう無さ過ぎる。

「スゥスゥ…」 「そんなこったろうとは思ってたけどな。」 鉛筆を軽く握り、こたつに足を突っ込みながら可愛い寝顔を見せる透。 山場の試験を終え、それが帰ってきた三日後に気合い入れて勉強など無理な話。
その状態で寝ぼすけのこいつが頭寒足熱の状況に入れば意識を失うのも当然だ。
「きょうちゃ…ん」 「!?」 眠りながらえへへと聞こえそうな笑みを浮かべている。
こいつ、いったいどんな夢を…
あの時は勢いで家に来いと言ってしまったが
正直なところ、ここ数日透のことで悶々としているというのに、誰もいない空間に二人っきりになる、というのは避けたかった。
「あぁちくしょう…!」
まぁ真面目に勉強すれば、とも思っていたのだが既に遅い。
暖房の効いた部屋はやや暑いから、と薄手のシャツ一枚になってしまったのもなおさらタチが悪い。
「…」 色々と辛抱堪らず、勝手に指先が頬を突いてしまう。 意外な柔らかさが伝わってくる。柔らかさだけで無く、すべすべとした肌の感触も心地よい。 「寝てるよな…?」 腕や肩にも触れる。小柄だとはわかっていたが、予想以上に小さく、細かった。



「なんでこんなに可愛いんだよ…」
ダメだとわかっていても手が止められなかった。胸を高鳴らせながら、彼女の胸に手を伸ばす。
(起きるな起きるな起きるな…)
むにゅり
柔らかく、それでいてみずみずしい弾力が指先に伝わってくる。
小さな身体の割に、彼女のそれは決して小さくはなかった。 服越しでは飽き足らず、服の中に手を突っ込んで下着を無理に外そうとする。 下着越しの感触も魅惑的だが、そこで立ち止まる気は毛頭無かった。 「……んぅ…」 外し方がわからず悪戦苦闘している間、透が小さく声を上げる。
その声を耳にしたとたん我に返った。
「…何やってんだ俺」
ここにきてようやく自分がとんでもないことをやってしまったことに気が付く。
どう見ても女性の寝込みを襲っている犯罪者でしかない。いや犯罪者だとかそれ以上に…透に嫌われる。
どうすればいいんだ!?
正直に告白?確実に嫌われて通報されて終わりだが、やっぱり報いを受けるべきか? 嘘で誤魔化す?嫌われなくて済むかもしれないが、気まずくて今まで通りじゃいられなくなるのは変わらないぞ? 夢オチ?ここで爆発が起きて目が覚めてなんだ夢か、で万事解決…ちょっと冷静になろう。
そもそもまだ透は寝ている。気付く気付かれるを考える前に少し頭を冷やすべきだ。
寝ている透を後にして冷蔵庫から新しく麦茶を一本取り出す。
(落ち着け、落ち着け、落ち着け…)
全然落ち着けなさそうな自己暗示をかけながら冷たい麦茶を飲み干す。2Lボトルが一気に半分以上空になる。
よしっ!ちょっとは頭が冷えた(熱力学な意味で)!
そそくさと透の元に戻って正面に座り込む。透はまたこたつに突っ伏して眠っていた。
とりあえずはこのまま放っておいていいか…ん?
先ほどからずっと眠っているように見えるが、何か違和感がある。
あれだけ透のことをジロジロと眺めていたからか、何かに感づいてしまったらしい。
「あぁ、シャーペンか。」
シャーペンを持つ手が入れ替わっていた。
なるほど眠っている間にそれを落としてしまって、それで眠ったまま別の手で無意識に…ってんなわけあるかい。
「ひょっとして…起きてるのか?」 「…バレちゃった?」
ムクリと起き上がる透。何気ない風を装ってはいるが、心なしか顔が赤い。
俺がお茶を飲みに行ってる間に目を覚ました、と言うわけではなさそうだ。 「………いつから起きてた?」 「えっと、肩触られた辺りから…」
つまりその後の変態行為をキッチリバッチリと覚えているわけですね。…これはひどい。
「その…楽しかった?」
なぜか明るい笑顔で問いかけてくる。なるほど、怒りを通り越しているのか。
「………」 何かを言おうにも、声が絞り出せない。 先ほど散々潤わせた喉がカラカラに乾ききっている。

俺の10年間の恋はここで終わってしまったのか。何とも情けない終わり方だったなぁ。
意外とあっさりしているというか、物凄く悲しいとかじゃないな。後で思いっきり泣きそうだけど。
とりあえず後日キャプテンには八つ当たりしてもバチはあたらないんじゃないか。
「私って…可愛いんだ。えへへ。」
そんなところまで聞かれていたのか。
後の祭りとなった今でも恥ずかしいのは変わりない。
というかとっとと怒鳴るなり殴るなり蹴るなりして欲しい。
変な意味じゃ無いしそういう趣味も無いが、このまま焦らされるのはもう…
「よかった…京ちゃんに嫌われてなくて。」

…何を言ってるんだ?こいつは。
「そ、それってどういう…」 「だって、京ちゃんは私のこと可愛い、って思ってくれてるんでしょ?」
いつもの、いや、いつも以上ににこやかな笑顔を見せてくれる透。
「それは、その…そうだけど。」 「つまり、私のことが好きだってことだよね?」 透はワクワクとした目でこちらを見つめ、返事を待っている。

―――なんだ、そういうことだったのか。
「あぁ、そうだな…ずっと、前から、好きだったよ。」
顔から火が出る、という表現は大げさなものでは無いらしい。
「…私も!」
いっそう目を輝かせる透。こんなに嬉しそうな彼女は初めて見たかもしれない。
まさかあんな最悪の状況から、どうしても踏み込めなかった一歩を踏み出せるとは思っても見なかった。
結局自分から踏み込めない意気地無しのままになってしまったが、それでも嬉しいものは嬉しい。
というかそんなもの気にならなかった。
「ねぇ京ちゃん京ちゃん。」 「な、なんだ?」 正面に座っていた透が隣に座り込む。急な彼女の行動にどぎまぎしてしまう。 「もう一度聞きたいんだけど、楽しかった?」 「何のこと…って、まさか、さっきの…」 先ほどと異なり、悪戯っぽい笑みを浮かべる透。
その顔をまともに見ることができず、明後日の方向に目をそらす。


「なんか夢中になってたじゃない?」
「楽しかったか…って言われてもわからないな。なんかもうわけわかんないまま手が動いてた。っていうかお前嫌じゃ無かったの…え?」 顔を上げると目の前に透の顔があった。

ちゅっ

一瞬何が起きたのか理解できなかった。
3秒ほど思考停止した後に透とキスしたことがわかった。
「おっ、お前…」
うろたえる俺を見て楽しそうに微笑む透。恥ずかしいのを無理しているようではあるが。
「ビックリしたけど…別に嫌じゃ無かったよ?  襲われちゃっても、まぁ…って思いながら寝てたくらいだし。」

…お前は何を言っているんだ。
お前は俺をどうしたいんだ。それはOKサインなのか。
「…我慢しなくていいのか?」 「えっ…?」 「だから、その…お前を抱いてもいいのか、って聞いてるんだ。」 「…………うん、いいよ。好きにしても。京ちゃんになら…」 透は頬を染め、囁くようにそう言った。
「……ん」 今度はこちらからキスをしかける。透の口からわずかに息が漏れる。 拙く、何ら変化の無い、接吻と呼ぶより口付けと呼ぶのが相応しいキス。 甘美な感触だったが、『許可』をもらったこの身体はそれだけでは到底満足できなかった。 透の体を両手で抱きしめ、口内へ舌を侵入させる。
そのまま透を組み敷くように押し倒す。
「…んぅ…ちゅる、んんっ!」 自分の舌で透の舌を絡め取り、歯の裏側を舐め上げ、唾液を送り込む。 胸におさまっている透が軽くもがき、室内には淫靡な水音が響く。 十分にその感触を楽しんだに口を離す。 銀色の橋が俺達の口と口を繋ぎ、すぐに落ちた。 瞳と唇を潤ませる透。赤みを帯びた頬がまた愛くるしい。 荒い息のまま、俺を切なげな目で見つめてくる。
「京ちゃん…ひょっとして、経験ある?」 「…あるわけないだろ。なんでそんなこと聞くんだ。」
もじもじしながら、たどたどしく口を開く。
「だって、キス、すごく上手だったから…」 「お前…誰かと比べてんのか?ひょっとしてお前こそ誰かと…」 「な、ないないっ!」
ぶんぶんと首を横に振る透。まるで子供のようで微笑ましい。
「と、とりあえず…脱がすぞ?」 「うん…」


そのまま彼女の服に手を掛ける。
緊張で震える手を押さえながら、少しずつ透の肌を露わにしていく。 視覚に入る肌色成分が増える度に互いの興奮が高まる。 「つまんない身体でゴメ…っ!?」 「あっ、悪い…勝手に。」 透の下着を脱がしたあたりか、気が付いたら柔らかな双球に指を沈ませていた。
どこがつまらない身体なもんか、そう言いたくなるほどそれは美しく感じた。
「えと、続けていいか?」 「……」 無言でこくりと頷いてくれた どうすればいいかなんてわからないので、とにかくその感触を楽しむことにした。 先ほどの一件から、巨乳とは言えないまでも、決して小さくは無いことがわかっていた。 性的興奮と彼女への好奇心が入り混じって暴走し
痛くしないことを心がけながら無我夢中で胸をいじり倒した
「ふぁ…っ……んぁ」
透の口からわずかながら嬌声が響く。 自分勝手にやっているようで、なんとか彼女を感じさせることができているようだ。 状況は悪くない。そのまま透の胸に触れつつ後ろに回り込む。
あっけにとられる透を後ろから抱き、残っていた下着を片手で引き下げ、わずかな茂みに覆われた秘部を探る。
「っ……!!」 声こそ上がらなかったものの、小さな体が一際大きくビクンと震える。 「京ちゃ…ひゃぅっ!」
そのまま割れ目に指を這わせるとか細い悲鳴が上がる。
「わ、悪い…ダメだったか?」 「ちょっと、びっくりしただけ…おねがいだから、続けて…」 振り向きながらそういう表情はとても艶やかで、こちらの理性をゴリゴリと削られてしまう。 自分を抑えながら、なんとかそちらの愛撫に移る。 「ん…あぁっ、そこ…だ、だめ…」 人差し指と中指を侵入させ、押し広げてみる。 中の抵抗が弱まったのを確かめると、もう少し奥へ進めたりして全体の感触を確かめてみた。 「んあっ!きょ、京ちゃん…っ!ああっ!」
どう考えても、おぼつかない手つきなのだがそれでも透はちゃんと感じてくれている。
(よくわかんないけど、こんなもんで十分だろ…)
もう透のそこは十分すぎるほど愛液で満ちていた。
胸の中で息も絶え絶えになっている透をその場に寝かせる。 「そろそろ、いくぞ…」 透は恍惚とした表情のままだ。正直言って、エロすぎる。 俺はそのままベルトに手を掛け、下着ごとずり降ろす。
「ちょ、ちょっと待って…」 俺のモノをみて唖然としていた透だったが、何かに気付いたかのように制止を入れる。 「どうし…え?」 「あたしばっかりじゃ…悪いから…」



そう言って透は身を起こしつつ、肉棒を恐る恐る口に含んだ。
「はむっ……ちゅぅ……」   「と、透…」 肉棒が透の生暖かく、柔らかい粘膜に包まれ、高ぶっていたそれを形容しがたい快楽へと誘う。
あの透が肉棒をしゃぶっているという事実が視覚的興奮をさらに煽る。
「…っ…」 上目遣いでこちらを見つめる様子が刺激的すぎて、腰が引けてしまう。 拙い舌使いだったためなんとか堪えられそうだが、いい加減ヤバイ。 口の中に出すわけにも行かないし…
「透…そ、そろそろ…」
「ふぇ…?」 「…いや、もう出そうだから…やめていいぞ?」  
キョトンとする透。口からそれを離そうとはしない。そして…
「………んぐっ、んむぅ!」
「ば、ばかっ…!あっ…」
いきなり喉奥まで肉棒を吸い込まれてしまう。
今までの緩やかな動きと違い、とにかくこちらをイかせようという意思が見て取れた。 「くっ…!」 絶え間なく顔を前後させ、ぺろぺろと肉棒を舐め続ける。 先端が暖かい喉奥に何度もぶつかる感覚が堪らない。 技術など無いが、といってもあってもわからないが、とにかく勢いで頑張っている透のフェラチオ。 相当の負担がかかっているだろうに、手が抜かれることは無かった。 「……ず…んん、ちゅぶ、ぢゅぷぢゅぷ、じゅるるる!」 「ううっ…」
いつごろからか、透は口内で俺のモノを吸い出し始めた。未知の快楽にさらされ、腰がガクガクと震え始める。
「じゅぽ、じゅぽ、じゅぽ、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ!」 「もっ、もう…」 気が付けば透の頭を押さえて、腰を振り立ててしまっている。
それでも透が怯むことは無く、むしろ今まで以上に口の中で俺のモノを締め上げる。
「んぢゅぅぅぅぅぅ、ずちゅ、ぢゅるるっ!」   「透、でちゃう…でちゃう、も、もお…うぁぁ…!」   「ぢゅるるっ、ぢゅるるる、ぢゅるるるるるる!!んむぅ!?」  
トドメとばかりに頬をへこませ、勢いよく吸い上げる。
欲望が解放され、かつて無い程の射精感が身を襲う。快楽のあまり腰が砕けた。 「はぁ、はぁ…」 「…んぐ……んぅ……んぐぅ…コクン」   目をギュッとつぶりながら喉を鳴らす透。まさか…
「お、お前…」
「………飲んじゃった。」 透はどこか恥ずかしそうに笑みを浮かべる。いつもと少し勝手の違う、淫らな笑みを。
10年以上一緒にいながら、こんな透を初めてみた。
「っ…」 「うわぁ…全然おさまらないね。」 少し驚いた様子で俺のモノを見つめてくる。
おさまらないのは他ならぬ透のせいなのだが、それには気付いていないようだ。不思議そうな顔をしている。
そのまま膝を付けて座り込んでいる透を優しく寝かせる。
「うあっ…」 「こ、こんどこそいくぞ。」 先ほど以上に濡れぼそった透のそこに先端を押し当てる。


G敏感な部分がくちゅりとした感触に襲われ、思わずびくついてしまう。
「ふぁ…」

ずりゅりゅっ!
「っっ!!」 膜を突き破り、キツい膣内を肉棒で抉り、少しずつ埋め込んでいく。 透は声にならない悲鳴を上げ、ギュッっと俺に手足を絡ませてくる。 「ぃ、いたぁ…」 「大丈夫か…?」 「う、うん…続けて。」 目尻に涙をためながらも、決して「やめて」とは言わない透。
その想いを無下にしないよう、ゆっくりと腰を進め…
「はいった、ぞ…全部…くっ…」
「うん、奥まで…あぅ…」 初めて男を受け入れた透の膣は大層狭く、今すぐにでも腰を動かしたい衝動をなんとか押しとどめている。 「なんか初めての、感覚ってか…キツイな。」
そう言ってゆったりと腰を動かし始める。まだ透はギュッと目を閉じ痛みを懸命に堪えている。
それを見てしまうとどうにもやりずらく感じてしまう。
「ぅ…ね、ねぇ、京ちゃん…」
まだ涙の跡が消えていないが、透は嬉しそうに笑いながら話しかけてくる。
「どうした…?」 「遠慮しなくて良いよ…好きなようにやっちゃって。」 「くぅっ…!」
その言葉を聞いた瞬間、堰が切れたかのように猛然と腰を前後させていた。
「んあっ…ふぁあっ!…んんっ」 「透、かなり気持ちいい…!」
ぎゅうぎゅうと締め付けるのにも構わず肉棒を抜き差しする。
透は眉根をひそめ、まだ続く痛みを感じながらも、段々に順応して来ているようだ。 「んっ、あっ、きょ、きょうちゃ…!あああっ!」 「はぁっ…と、透っ!」 互いの名を呼び、抱きしめ、快楽を求め合う。 性感が高まるにつれて腰の動きが激しくなるが、もう透の秘所はずちゅ、ずちゅっと湿った音を上げて悦んでくれている。 少し余裕ができた肉壁を抉る感覚がたまらない。 「ひゃ、あ! ふゃあ! らめっ!京ちゃ…はげしすぎ…ひぅう!」   「悪い、我慢できねえっ…!」
ただもう欲求の赴くままに、下で繋がったままの透を強く抱きしめ
発情期の獣のごとく、肉棒を透の狭い膣内に何度も何度も突き立てる。



より激しい責めに、透は身体をがくがくと揺らしながら、ひときわ高まった嬌声を張り上げる。  
「あああっ、ひゃあんっ、らめえっ!おくきちゃう!おくぅっ!」 「も、もうちょっとだから…うぐぅっ!」 透の中がビクビクと震え出し、俺のモノをまた悩ましく刺激した。
もはや全力で透の蜜の詰まった淫らな肉壷に自分を打ち付ける。
「…っ!でる!もう…っ!だすっ!透の…中にっ!」   「中…ぁあっ!?なに、そ、それって、あ、らめ、ゃああああっ!イっちゃ、ぁああぁぁあああああ!!」 先に透が絶頂を迎え、咥え込んだモノもきゅうううっと一気に締め付け、俺のモノを搾り取ろうとしする。 「っくう!透っ!っっっ!!!」
その締め付けの直後、俺は二度目とは思えない量の精液をどくどくと透にぶちまけていた。
「はぁ、はぁ、透…」 「京ちゃんの…あたしの中に…」 俺の下で仰向けになって、行為の余韻に浸っている透がうわごとのように呟く。 肉棒を引き抜いたそこからは白濁液が溢れていた。いきおいのままに自分がやらかした事に気付く
「あっ…それは、その…」
「責任取ってね?…んむ」 「…うわっ」
いきなり透が身体を起こし、軽く口付けてきた。
思わず間抜けな声を上げると、透がこちらを楽しそうに見つめていた。 「わ、わかった…」 「えへへ…これからもよろしくね!」
こいつ、ひょっとしてわざとやってるのか?
…と思ったが、そのにこやかな笑顔を見ているとそんなことどうでも良く思えた。


「うわぁ、やっぱり昨日何かあったんだよ。」 「大人の階段のーぼるー、ってやつだな」 「でもあいつら幼稚園の頃からだろ?なんで急に…」
バレバレである。



何というか、そういう雰囲気というものはあっさりとわかってしまう物なのか
俺と透の関係の変化は一日のウチに自然と知れ渡っていた。
何とか言おうにも『昨日何かあった』というのは紛れもない事実なのでどうしようもない。 「すぅすぅ…」 透はと言うと、朝の弱さを自覚しながら弁当を作ろうとした結果、無理がたたって大半の授業で爆睡していた。
それだけならまだよかったのだが、授業中に寝言で俺の名を高らかに宣言してくれたおかげで、更に好奇の目にさらされるハメになった。
おそらく野球部元マネージャーの影響なのだろうが、自分のスペックをわきまえろと言いたい。
そういえば、と思って小波を見ると、いつも通り木村と談笑していた。
「そうだな、もしドラフト一位になれたらまた…」 「ちょ、ちょっとまってよ。あんまり恥ずかしいのは…」 事情を知っている俺からすれば穏やかじゃない内容なのは明らかだが ある意味、流石はキャプテンといったところか。うらやましい気も… ……うらやましい?…そうだ!

お昼、中々に美味しい透のお弁当をつまみながら話を切り出してみる。
「なぁ、透、お願いがあるんだけど…」 「どうしたの?何でも言って!」 何でも、という表現で思わずドキリとしてしまうが、そこは堪える。 俺だって男だ…少しくらいそういうモノに興味がある。 「もし、俺が次のテストで、合計点でお前に勝ったら…」 「勝ったら?」 「………」 「京ちゃん?」 「…………一緒に…ナマーズパーク行こう。私立入試…終わったころ…」 「いいけど、別にそのくらいいつだって行ってあげるのに…」
誰か「この意気地無し」と俺をぶん殴ってください。情けなさ過ぎて死にたくなる。
「じゃああたしが勝ったら…」

「京ちゃん!次はあれに乗ろうよ!」 賭けには負けてしまったのだが
『自分が勝ったらナマーズパークで主導権を握る』という透の賭けの結果、二人で遊びに来ている。つまり結果は変わっていない。
なんとなくやるせなく思えたが、受験勉強の息抜きに二人で遊ぶというのが非常に楽しいのは事実だ。
「ねぇ、もう一度聞きたいんだけど。」 「何を?」 「京ちゃんって、私の事好きだよね?」 「ん?まあその…そうだな」 「えへへ、私も!」

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