士郎最強

「む、確かにまるで基本は出来ないけど、強化と投影だけは自信があるんだからな」

「強化と投影って、また微妙なものが得意なのね。それじゃこのスプーンをちょっと強化してみてくれる?」

「よしきた。絶対ぎゃふんと言わせてやるからな」

 瞑想。何年も繰り返し行ってきた作業。それを持ってスプーンは自己の一部と化し、それらは全て魔力の通る回路となる。

「――――同調、開始」

 がぎん、と頭の中で撃鉄が落ちる。

「――――構成材質、解明」

「――――構成材質、補強」

 よし、滞りなく終わった。遠坂はなんか唖然とした顔してるけど、それが何を意味しているのかはよくわからない。とりあえず、テーブルの上にプリンを乗せた皿を置き、スプーンをしっかりと持ち、『真名』を告げる。

「万物掬う救世の匙(スプーン)―――!!」

 ぞぶり。プリンどころかテーブルと下の畳まで抉り取る。だがそれらは相対的な位置を保ったままスプーンの上に乗っている。これは空間干渉。プリンから畳までの空間をそのままスプーンでずらしたのだ。ふふん、流石にここまでスプーンを強化できるツワモノはいまいっ!

 と、調子に乗ったところで、パリンとスプーンは砕け散り、抉り取った空間は己の異常な位置に気がつき、重力に従って畳に落ちる。これが俺の強化の限界。一度力を解放すると、その異常に耐え切れないのか、強化したモノはすぐに砕け散る。皿とテーブル、それに畳に穴が開いてしまったが問題は無い。プリンはともかく、この家の物は9割が俺の投影で出来ているため、魔力を通せば―――

「ふう、元通り」

「って、なんじゃそりゃ―――――!!?」

 俺の一息で突如解凍された遠坂が、何故か俺の頭に最高出力のガンドをどがんと一発打ち込んだ。

 なんでさ。
2006年10月26日(木) 22:42:33 Modified by mhythoth




スマートフォン版で見る