任意売却の本質。その他任意売却全般に関する情報

自己破産について


破産とは、債務者が借金などで経済的に破綻してしまい、自分の所有している資産では、全ての債権者に弁済(返済)することができなくなった場合に、自己の所有している財産(不動産、自動車、有価証券、生命保険の解約払戻金、預貯金など)を換価(現金化する)して、全債権者にその債権額に応じ、公平に弁済(返済)することです。

自己破産の申立てをして、『申立人は支払不能』と認められると、破産手続開始決定がされることになります。

支払不能かどうかの判定は、申立人の収入・資産状態によって大きく異なります。月収20万円前後の一般サラリーマンの場合は、クレジットや消費者金融からの借金の総額が200万円〜400万円であれば、月々の支払が8万円〜10万円になりますので、支払不能状態と判断される可能性が高いです。

自己破産をすると、信用情報機関にブラックとして登録され、信用情報機関によって違いがありますが、およそ5年〜10年の間、履歴が残ります。このブラックリストに登録されると、その期間は銀行やサラ金からお金を借りるとか、クレジット会社からクレジットカードの発行を受けることが難しくなります。また、自己破産は、清算手続きなのですから、当然、現金に換えることのできる物であれば強制的に処分されてしまいます。

しかし、そうは言っても、債務者の最低限の生活は保証されていますので、生活する上での必要最低限の家財道具は、<差押禁止財産>として取上げられることはありません。

また、破産をしても借金が無くなる訳ではありません。免責決定を受けて初めて借金が無くなるのです。免責が確定すると『復権』といって、初めて債務者は破産手続開始決定のない以前の状態に戻り、公私の資格制限も解かれて、全く普通に生活することができるようになります。但し、免責決定から7年以上経過していないと、改めて自己破産の申し立てをしても、免責不許可事由となりますので、くれぐれも、一度、自己破産をしたならば、同じ過ちを繰り返さないようにして下さい。

自己破産で制限されること


自己破産すると、生活必需品を除く全財産は換価され、債権者に平等に分けられます。したがってマイホームは、破産管財人によって「任意売却」されるか「競売」にかけられることになります。ですが、買主が現れるまでは住み続けることができますので、すぐに引越しをしなければならないということではありません。破産を申立ててから不動産が売却されるまでに半年以上かかることも珍しくありませんので、その間は、追い出されることはないといえます。

賃貸の場合、民法では『借家人が破産した場合には、家主は解約を申出ることができる』とされています。よって、この規定によれば破産者は非常に不安定な状況にあると言えますが、実際に破産したことが、家主に知られることはまずないので、それほど心配することはないでしょう。
金融関係(銀行や郵便局)への預貯金や、公共料金の引き落としなどが、できなくなるわけではありません。給与振込先の銀行に借金があるとか、その口座からクレジット会社の引落としがある場合は少し問題です。会社からの給与の振込と同時に、その銀行は自分の債権やクレジットの引落としをしてしまう可能性があります。できれば給与振込の口座を変更しておきたいものです。
当然、信用情報機関(ブラックリスト)に登録されますので、銀行などから融資を受けることはできなくなります。

退職金に関しては、将来もらえると思われる見込額の、4分の1から8分の1程度を、債権者への配当に加えるようになることが多いようです。生命保険の解約返戻金も、20万円以上は、退職金と同様に財産とみなされ、債権者へ分配されます。弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・行政書士・宅地建物取引主任者・株式(有限)会社の取締役・警備員・生命保険の外交員などの、資格や職種に就いていた人が破産をすれば、その資格や職を失います。資格制限をなくし復権するためには、免責決定が必要になります。

同時廃止について


破産手続きは、破産宣告して破産手続きを開始し、破産管財人を任命して破産者の財産状況を調査し、債権があるときはこれを回収し、その結果、得た破産者の財産を、債権者に分配することで終了し、この場合は、破産手続きの「終結」と言います。

債務者の財産が少なくて破産手続きの費用すら用意できない場合、破産手続きを進める意味がありません。この場合は破産手続開始決定と同時に、破産管財人を選任することなく、破産手続きを終結してしまいます。これを『同時破産廃止(同時廃止)』と言います。

同時廃止の場合、破産者の財産は一切換価処分されることなく、その後、新たに取得した財産については破産者自らが、自由に処分しても構わないことになり、居住制限もなくなります。ただし、債務者が破産者になるのですから、公私の資格制限はあります。
また、破産手続開始決定後に破産管財人が選任され、現実に破産手続きが開始されはしたが、換価できるような財産が少なくて破産手続き費用も出せないと認められるときには、破産管財人が申立てるか、又は、裁判所の職権で破産廃止決定がされて、破産手続きを中止します。これを『異時破産廃止(異時廃止)』といいます。
同時廃止手続のメリットは、管財人報酬が不必要なことと手続きが早いことです。

デメリットは、個々の訴訟や差し押さえ等を止めることが、宣告と同時に破産手続きが終了してしまうためにできません。免責の確定までに、差押を受けるなどの可能性が残ってしまいます。
これに対し、異時廃止では廃止決定と免責決定が同時になされますので、そのような心配はありません。ただし、異時廃止は、管財人への報酬は必要になりますし、免責、廃止決定まで、時間がかかりますので、破産者としての制限を受ける時間が長くなるというデメリットもあります。

免責について


破産宣告が下されたからといって借金がなくなる訳ではありません。破産宣告決定後に免責申立して免責決定を受けて初めて支払義務がなくなります。ですから、自己破産をする場合の目的は、免責決定を受ける事にあります。ただし、免責申立をした人の全員が、免責決定されるわけではありません。
免責不許可事由というものがあり、これに該当する行為があった場合は免責決定がされないことが多々あります。免責不許可事由について、主なものは下記のとおりです。参考にしてください。免責不許可事由に該当すると、絶対に自己破産の免責がおりないというわけではありません。免責許可か、不許可は、免責不許可事由の有無を含めて、自己破産を申立てる方の、様々な事情を勘案して、裁判官が決定します。
免責不許可事由(破産法第252条)
債権者を害する目的で、財産の処分や隠蔽、財産の価値を下げる行為をした場合。
破産手続きの開始を遅らせることを目的として、著しく不利益な条件で債務を負担、信用取引によって商品を購入して、その商品を著しく不利益な条件で処分したような場合。
特定の債権者に対してのみ、債務の返済を行ったような場合。
浪費やギャンブルなどで、借金をつくった場合。
詐術を用いて信用取引によって、借り入れをしたような場合。
業務や財産に関する帳簿、書類などを隠したり、偽造したり、変造したような場合。
自己破産の申立てに際して、虚偽の債権者名簿(債権者一覧表)を提出した場合。
自己破産の手続において、裁判所に求められた説明をしなかったり、虚偽の説明を行った場合。
自己破産の申立てをして免責が許可されてから、7年以内に再度自己破産の申立てを行った場合。
民事再生の申立てをして、認可されてから7年以内に自己破産の申立てを行った場合。

自己破産にかかる費用


自己破産を申し立てるには、3通りの方法があります。弁護士に依頼する場合、司法書士に依頼する場合、自分で申し立てする場合です。
自分で申し立てする(同時廃止)場合が最も安く、印紙代や切手代、予納金などで、3万円前後です。弁護士や司法書士に依頼する場合は、個々により異なりますが、同時廃止の場合でも15万〜40万円の費用が掛かります。

弁護士や司法書士に依頼すると、 申し立てに必要な債権関係の情報収集も、直接、債権者と交渉してくれるので、集めにくい債務の証明書も、自分で集めなくてよくなります。免責不許可理由に抵触する可能性がある場合なども、専門家の経験が大きくものを言います。
私の経験上、お金が捻出できるのであれば、専門家を利用することをお勧めします。最近は分割で費用を支払えるところも増えていますので参考にしてみてください。

破産管財人が必要な場合は、別途に20万〜50万円程度の費用が必要です。マイホームを持っている一般のサラリーマンの人が、何らかの理由で多重債務者となり、自己破産を申し立てる前に、マイホームを任意売却で処分し、他に換価できる財産もない場合は、破産管財人を必要としない場合が多く、この費用は不要になります。
尚、同時廃止を依頼する費用もない場合は、破産申立をせずに、大きな債務の原因のマイホームを任意売却で処分した上で、他の一般債権と併せて、『任意整理』や『特定調停』を利用して債務を圧縮する方法もあります。“債務超過イコール破産”ではありませんので、信頼できる専門家等に相談してみましょう。

もっとも、生活に余裕がなく、弁護士費用を支払うことができない場合は、法律扶助という制度を利用する方法があります。各弁護士会内の(財)法律扶助協会に問い合わせてみてはどうでしょうか。
自己破産申し立て費用は「同時廃止、異時廃止」ともに、申し立てる裁判所によって多少異なりますので、正確な情報は申し立てを行う裁判所に問い合わせてください。

自己破産に必要な書類


破産申立書一式は、各地方裁判所でもらえます。申し立てをする裁判所に問い合わせてみてください。申し立て一式は「破産申立書」「陳述書」「家計全体の状況」「財産目録」の4つからなり、各裁判所によって様式が違います。
1.「破産申立書」
氏名、生年月日、本籍、住所、連絡先、申し立ての理由や趣旨、家族の状況、経歴、収入、借金の時期、生活状況(総額や使途)、財産、債権者との現況等です。
2.「陳述書」
破産に至った事情の詳細を、作文形式で作成します。
3.「家計全体の状況」
前2ヶ月分の収入、及び支出の詳細を記載します。
4.「財産目録」
不動産、自動車、購入価格が10万円以上のもの、現金、預貯金、有価証券、保険などが記載事項です。債権者の住所氏名、債務総額、借入時期、既返額などを記載します。

添付する必要書類は、各地方裁判所の申立書の内容や、申立人の状況によって違いますが、一般的な場合の必要書類は以下の通りです。
必要書類一覧
戸籍謄本
住民票
預貯金通帳のコピー
給料明細書
源泉徴収票(勤務先から給料をもらっている場合には必要)
離職票
退職金支払証明書
生活保護受給証明書(生活保護を受けている場合には必要)
生命保険証書
解約返戻金の証明書(生命保険に加入している場合には必要)
賃貸借契約書(アパートなどを借りている場合には必要)
家計全体の状況の記載が正しいことを証明する領収書やレシート等
財産目録の記載が正しいことを証明するものなど

詳細は申し立てをする裁判所に問い合わせてください。

破産手続き完了までの流れ

1) 破産免責申し立て
管轄の地方裁判所に、破産申立てをします。裁判所書記官と面談して、問題がなければ、受理されます。破産申立てで、最も難関なのが申立て受理です。この受理が終われば、9割以上の確率で、免責までたどり着けます。
2) 破産審尋
申し立てをしてから1ヶ月程度で破産審尋という裁判官との面接を行います。10分〜20分程度で、免責不許可事由に該当していないかなどを質問されます。
3) 破産決定
破産審尋後、1週間〜1ヵ月で、破産決定が下ります。破産決定が下りただけでは、単に「支払不能」を認定してもらっただけで、借金がなくなる訳ではありませんので免責の決定を待ちます。
4) 免責審尋
破産決定をしてから1ヶ月程度で免責審尋という裁判官との面接を行います。10分〜20分程度の時間です。
5) 免責決定
ここで全ての負債がなくなり、破産後の資格制限もなくなります。
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