租税判例のデータベース。

学校法人の理事長であり、長年にわたって、高校・中学に在職していた校長のAが退職し、同じ学校法人が設置している大学の学長に就任した場合、その退職に際して校長に支給された金員は、退職所得か給与所得かが争われた事件。

事件の概要

原告(学校法人)は、AがH14年3月3日をもって校長の職を退いたことから、高校の就業規則及び退職金規定に基づく退職金として48,021,353円をAに支払うこととし、その際、この所得は退職所得に該当するとして源泉徴収し納付した。ところが税務署長は、学校法人に対し、この所得は給与所得に該当するとして、納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を行った。

判決要旨

学校法人の理事長Aは、H14年3月31日まで、学校法人の理事長、学園長、校長及び幼稚園長の地位にあったが、定年により高校校長及び中学校長の各職を退き、同年4月1日からは、理事長、学園長、幼稚園長及び大学学長の地位に就いた。Aの大学学長就任後の職務は、校長在職時の職務に比べその量において相当軽減されたものであるだけでなく、勤務形態自体が異なるとともに、その内容、性質においても、学校の代表者、最終責任者としての職務という点では本質的な相違はないものの、具体的な職務内容や自らのかかわり方については相当程度異なるところがある。
Aが学長に就任した時の給与月額は、校長を退職した時に比べ、約21%減少しており、学長としての職務に対する給与は、校長としての職務に対する給与と比べて約30%減少したというのであり、給与面にも職務の量、内容、性質の変動が反映されているということができる。
Aの校長退職、学長への就任という勤務関係の異動は、社会通念に照らし、単に同一法人内における担当業務の変更(単なる職務分掌の変更)といった程度のものにとどまらず、これにより、Aの勤務関係は、その性質、内容、処遇などに重大な変更があったといわなければならない。
以上に加えて、本件高校が学校法人の中心的な教育機関として位置づけられていたこと、Aが2回の定年延長を経て52年間もの長期間にわたって、高校に教員として勤務し、校長の職を退いたときの年齢が74歳と高齢であったこと、Aが、今後、学長を退職する際には、学長就任から退職までの期間のみが退職金算出の基礎とされ、高校における勤続期間は加味されない予定であることなどをも考慮すれば、Aの学長就任後の勤務関係を、その校長在職時の職務関係の単なる延長とみることはできない。
そうすると、本件金員については、校長を退職した前後において、Aの理事長園長としての勤務関係が継続していることなどからして、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」該当性の要件を満たすとまでいうのは困難であるとしても、実質的にみて、上記要件の要求するところに適合し、少なくとも課税上、これと同一に取り扱うのが相当というべきである。
Aは、校長退職後、理事長として学校法人の運営に関する方針決定などをするほかは、高校及び中学の校務に関する権限を失ったものと言わざるを得ず、少なくとも、社会通念上は高校及び中学における教育の現場から引退したというほかない。

検索情報

参考文献・資料

『税のしるべ』(平成20年4月28日)P.6

関係法令等


裁判情報

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=...

事件番号 平成17(行ウ)102
事件名 納税告知処分等取消請求事件
裁判年月日 平成20年02月29日
裁判所名・部 大阪地方裁判所 第2民事部

原審・上訴審

[[]]国側は控訴を断念したため、確定。
[[]]

類似/参考判例等

[[]]
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