ある朝目が覚めると、自分は自分ではなかった。
 何のことだか分からないだろうけど、俺も分かりたくも無い。
 俺が既に死んでしまった……しかも死因が、知り合いの科学者に
埋め込まれた爆弾による爆殺だなんて、最悪極まる。
 にもかかわらず、俺にその自覚は無い。

 当たり前だ、『俺』は、俺に埋め込まれた爆弾は、『まだ』爆発していないのだから。

「ふう……」
 誰も居ない事を確認して、溜息をつく。
 対宇宙人戦を行うにあたって、絶対に負けは許されない。
 かといって、際限なく人材を送り込んではハタ人間にされては厄介だ。
 そんなわけで俺とオチタくんは保険として、全滅しそうになったら体内に埋め込まれた爆弾が爆発し、
絶命すると地上基地に保管してあるコピー体を目覚めさせる、という処理を強制的に施される。
 同じ人間が二人以上居ては倫理上まずい、だそうだが……気分は最低だった。

(死んだ……のか)
 第一号にして『本物』の俺がいかにして追い詰められ、全滅の憂き目を見たかは
コピーであるこの俺にも分からない。ただ、最前の記憶(これもコピーの!)からすれば……
 この地下迷宮も加速度的に難度が上がってきていて、いつやられてもおかしくないと言う
状態だったのは確かだ。なんとかして40階にたどり着き、無念にもリコと委員長をハタ化させて
しまって救出計画を練って、そして出かけていったはずだ。
(やっぱり二人だけでは駄目だったか……)
 宇宙人戦を行ってきたリーダーとしての冷静な分析ではそうだ。
 ただ、無理を押してもリコと委員長の戦力を取り戻さない事にはどうしようもないので
結局いつかはやらなければならない作戦だった。
 とにかく。リコに委員長、さらにはるりかまでもが敵の手に落ちたわけだ。
 こうなると、戦力になる奴はもう居ない。偏って育ててきたツケが回ってきた形だった。
(石田、白瀬、ユイあたりにでも声をかけておくか……)
 まだしも戦闘に耐えうるメンバーを一瞬で選出すると、腰を上げようとして、
 ぎしり、と固まった。

 果たして、あいつらは俺のことをどう思うだろうか?
 そう……既に死んだ『俺』の、コピーであるこの肉体を。

 ……いや、大丈夫だ。あいつらはコピーを作ってバックアップを取るのを拒んだ。
俺が相談もなしにバックアップを取られてしまったことは既に知っているだろうから、
「いやー参ったよ」なんて調子で軽く流せば、それですむ。……はず。
 この身体で初めて触れるドアノブの冷たい感触が、意識を現実へと引き戻した。

「石田、白瀬、ユイ。準備してくれ。皆を助けに行くぞ」
 しまった。冗談を飛ばすのを忘れていた。
「わかったー」
「はいはい」
「オッケー!」
 後悔するまでもなく、俺の『死亡』のことについては一切触れてこなかった。


 そして、それから三日ほど経って……

 俺は八度目の人生最初の目覚めを経験していた。
 40階からは敵が格段に強い。それに加えて、こちらの戦力は無いも同然だ。
 結局俺一人が血反吐をはきながら綱渡りの連続のような戦いを繰り返し、
力をつけると同時に仲間を助けたりハタ化させてしまったりを繰り返していた。
 だが、それでも八回は多すぎた。俺自身早く助けたくて焦っているのもあるし……
 それに……

 いや、そんなことを行っている場合じゃない。早く助けないと。

 もはや鍛えてない仲間を連れて行っても全くの無駄だということは分かっている。
俺一人でどうにかするほか無い。愛用のレーザーライフルを手に、俺は立ち上がる。

 地下39階。リコ、委員長、るりかが待つ階層だ。
 一度目は命からがらるりかと二人で抜け、二度目でるりかと共にここで力尽きた。
 40階より下でずいぶん鍛えて、ようやく一人でここまで来れるようになった。
 あくまでも慎重に、歩を進める。と……地下には場違いなほど華のあるおしゃべりが聞こえてきた。
「あーあ、あいつまだ来ないのかなー?」
「そうですね。私たち抜きでも、もうそろそろここまで来る準備が
 整ってるんじゃないでしょうか?」
「…………」
「楽しみだなー。あいつにハタ刺したら、何して遊ぼうかな♪」
「不謹慎な事を言わないでください。ハタを刺すのは人として当然の行為です。
 彼にハタを刺したら、指揮官として反攻作戦の指揮をとってもらうんですから」
「くっ……」

 いい感じに洗脳されてるなあ……委員長がなんだか抵抗している風なのがすごい。
さすが委員長は意志力が強いってことか。
 手の中のキャノン系大型水鉄砲を確認して、俺は今から取り返す仲間の前に躍り出た。

 勝負は一瞬。かわす事すら無意味と思える水量で、三人の頭のハタにたっぷりと水がかかった。
短い悲鳴を三つ残して、三人は倒れ臥した。
 一瞬気を緩めかけて、すぐに周囲を見渡す。遠くの方には既に敵影が見え始めていた。
三人を手荒く一まとめにして米俵のように担ぎ上げ、階段を目指す。
 その重みと温かさに、ずっと張り詰めていたものがようやく解き放たれていくのを感じた。

 40階の青い光に飛び込んで、俺は三人の仲間の救出を終えた。……もう今日は寝よう。
久しぶりによく眠れそうだ。目が覚める頃には、三人ともハタが取れているだろう。

 そして翌日。いつもよりかなり早く目が覚めて、俺は……


1 るりかのもとへ向かった。
2 委員長のところへ急いだ。
3 リコの顔が見たくなった。


1  

 るりかの元へ向かった。
 るりかは、俺と一緒に全滅してしまったままハタ化してしまったのだ。心配もひとしおだろう。
とにかく彼女を安心させてやりたかった。
 せめてもの配慮として、俺たちには一人一部屋があてがわれている。るりかは処置を受けたあと、
部屋で寝かされていると聞いた。
(るりか……)
 顔を見るのもずいぶん久しぶりだ。胸の中に、なんともいえない温かい気持ちがあふれて、顔をほころばせた。
 一応ノックしたが、いらえはない。寝ているんだろう。
 失礼だとは思ったが、まあ今日は特別だ。俺は鍵の無いその扉を開けた。

 すぅすぅと、規則正しい寝息が聞こえる。頭にはもちろんハタはなく、俺はなんとも言えない感動を覚えた。
 ベッドの脇に置かれた丸いすに腰掛けて、るりかの小さな頭に手を伸ばす。
さらさらとした髪の感触が心地よくて、ゆっくりと撫でた。
「う……ん」
 るりかが目を覚ました。そっと手を離し、上からその顔を覗きこむ。
「おはよう、るりか」
「ん……おはよう、ございます」
 寝ぼけまなこで返事をして、ぴたりとその顔が止まる。かっと目を見開き、そして……
 俺に抱きついてきた。
「わあっ!? る、るりか?」
「……かった……! よかった……!」
 跳ね起きて、ぎゅっと俺に抱きついてくる確かな暖かさ。
「ごめんな……迎えに行くのが遅れて」
 るりかは俺の胸に顔を埋めたまま、首を横に振る。
「そんなの、いいんです……あなたが、無事でいてくれれば」
 …………。
「本当に、よかった……あの、わたしてっきりあなたが爆発して……
 いえ、なんでもないです。私の勘違いですよね」
 ぎしり、と体がこわばるのを感じる。
 やめてくれ……その先は……
「それにしても、よくあの状況から切り抜けられましたね。やっぱりあなたは凄いです!」
 必死に目をそらし続けた現実が、一番避けたかった方法で突きつけられた。
 全ての感覚が反転する。
 あたたかいはつめたい、うれしいはかなしい。

 この腕の中の暖かさは、果たして誰に向けられたものなのか。

 俺は俺だ、という単純明快な答えを、どうしても飲み下す事が出来ない。
 俺は、るりかの幼なじみ……? 本当に? 起きて数日しかたっていないのに?
 頭の中どころか、全身を駆け巡る戦慄と悪寒に打ちのめされて、指先すら動かす事が出来ない。
「……? どうしたんですか?」
「……んだ」
 気付くと俺は、しわがれた声で反射的に返事をしていた。
「死んだよ。 るりかの幼なじみのそいつは、胸に仕込まれていた爆弾で、
 バラバラになって死んだ」
 今度はるりかがぴたりと動きを止める番だった。
「え……? なに、言って、るんです?」
「唐沢博士から事前に聞いていたんだろう? ……まあ俺は一切聞いてなかったけど、
 とにかくコピーだよ、今君の目の前にいるのは」
 自分でも驚くほどに淡々とした、乾いた声で『事実』を垂れ流していく。
「じゃあ……じゃあ……」
「……君の幼なじみは、死んだ」
 取り返しのつかないほどに深い傷を自分にも相手にも刻みながら、奇妙なほどホッとしていた。
 コピーの身には、るりかとの関係は……重すぎた。
 呆然としてるりかが腕の力を弱めたタイミングを見計らって、俺は身体を離した。
 そのままそっと部屋から出て行こうとして……
「ま、待ってください!」
 今日初めて聞いた、その耳慣れた声に後押しされるかのように、素早くドアを開けて、廊下を走り去った。


 開放感と、それゆえの圧倒的な孤独に打ちのめされ、俺は自室のベッドの上で何をする気にもなれず、
ただ天井を見つめていた。
 だから、その来客が寝転がってからどの位経ってから来たのかは、よく覚えていない。
 一時間かもしれないし……五分くらいかもしれない。
 入ってくるなり、こう言った。
「おじゃまします」
 応える気にはなれなかった……というか、ほぼ聞いていなかった。
「あなたは……彼のコピー、なんですね」
 聞きたくないのに、耳を塞ぐ気力も起きない。
 つかつかと歩み寄ってくる気配。
「でも……違うんです。私にとっては、あなたが……私の大好きな幼なじみなんです」
「違わない。俺はただのコピーだ。君の幼なじみは、オリジナルただ一人だった」
「違わなくないっ! だって、あなたは……私が目覚めた時に側に居てくれたじゃないですか。
 あんなに、優しく笑ってくれたじゃないですか!」
「野球人形と同じさ。俺は君の幼なじみを演じ、みんなのリーダーを演じ、宇宙人を駆逐する
 ための人形なんだよ」
 だっ、とるりかが駆け寄ってきて、ベッドの上の俺にすがりつく。
「だったら! ……そんな辛そうな顔して言わないでください! あなたが、そんな顔を
 してたら……わたし、わたし……」
 ベッドの上の俺を押し倒すように四つんばいになって、るりかが俺の顔を覗き込む。
 正面ににるりかの顔が見えるのと同時に、暖かい滴が俺の頬をぬらす。
 るりかの泣き顔を最後に見たのはいつだったか……思い出そうとして、やめた。
話したのすら、今日が初めてなのだから。
 この表情は、俺が見て良いものじゃない……
 そう思っても、なかなか目をそらす気になれないほど、るりかは綺麗だった。
 泣いていても、弱くは見えない。るりかの瞳には、意思の輝きが満ちている。
 胸を締め付けられるような痛みを覚えながら、なんとか顔を横に向ける。
「やめてくれ。俺は……」
「コピーであっても、あなたはあなたです」
「それでも俺は、コピーなんだ。本物は……いや、俺の前だって
 何人もコピーが死んでいった」
「それがどうしたって言うんですか! あなたは、私が目を覚ました時に側に居てくれた。
 おはようって、微笑んでくれた! それがどうして本物じゃないって言うんですか!」
「それは『本物の俺』のコピーだからだよ! るりかに優しくしたのも! るりかのことが
 ……好きなのも! 俺の気持ちは全部、昨日今日に生まれたものなんだ!」
「っ……! 良いじゃないですか! 私の幼なじみは今あなた一人です!
 あなただけが本物なんです! 私が好きなのはあなただけなんです!
 あなたが一人で泣いているのが嫌なんです!」
「眠ってるだけでもう俺のコピーは何体もあるんだよ! そいつらが目覚めたら
 どうするって言うんだよ! 俺だってそいつらだっていつ死んでしまうのか
 分からないのに!」
「愛します! 何人いたって、途中で死んでしまったって、本物のあなたなら皆愛せます!
 ……だから……もう、そんな顔、しないで……くださ……」
 るりかの瞳から滴る涙はその量を増し、糸が切れたかのようにふらりと俺に身体を預け、
胸に顔をうずめて泣き続けた。
 ……ああ。凄いな……るりかは。俺のみみっちい泣き言なんか、全部吹き飛ばされてしまった。
現金なもので、遠のいたと思っていた暖かさがまた胸の中へと戻ってくる。思えば、こんな状況は
始めてかもしれない。俺の両腕がじわじわと上がっていって、るりかを抱きしめた。小さくて、
暖かくて……その暖かさが、俺にもしみこんでくる気がして……
「るりか。俺、るりかのことが好きだ。俺が死んじゃっても、次の俺も絶対るりかの事が
 好きだから……」
「だめです。もう死なないでください。無理はやめてくださいって、いつも
 言っているでしょう?」
 すん、と一度鼻をすすって、るりかが顔を上げる。泣きはらした赤い目を見ていると、
唐突に気持ちが昂ぶってきて、衝動的に俺はるりかを強く抱きしめて、唇を奪った。
「んっ……もう、突然すぎます」
「ゴメン……でも、我慢できなくて」
 言いながら俺は横に転がり、逆にるりかを押し倒す体勢に持っていく。
「るりか……俺は、るりかが全部欲しい。いいかな?」
「もうすこしムードを考えて欲しいと言いたい所ですけど……許してあげます」
 かなりあっさりとした承諾だったが、そのときの俺はもうるりかとすることだけで頭が一杯だった。
 とにかく、るりかに触れたい。るりかを感じたい。
 そっと胸に手を伸ばす。服の上からかすかに感じる膨らみとやわらかさに、心臓が破裂しそうなほど緊張する。
 触れただけで壊れてしまいそうな華奢な身体を、細心の注意を払って形を確かめるように撫でる。
胸の中央に触れると、るりかの鼓動もまた早鐘を打っているのが伝わってくる。
「そんなところ、触らないでください……ドキドキしてるのが伝わって、はずかしいです」
「大丈夫。ほら……俺も同じくらいドキドキしてる」
 細い手首を握り、るりかの手を俺の胸に導く。そのまま俺はるりかのブラウスのボタンを外し始めた。
「ほんとう……あなたの胸、暖かくてドキドキしてます」
 緊張している割に俺の手はよどみなく動き、あっという間にボタンを外し終える。
下に着ていたシャツとブラがはだけた胸から見えて、俺の鼓動がさらに速まった。
「ん……またどきどきが早くなりました。私の身体を見て、興奮したんですか……?」
「うん。るりかの身体、すごく綺麗だよ」
 恥ずかしい台詞だと頭の片隅で冷静な部分がささやくが、今の俺にはるりかしか見えていなかった。
逆にるりかのほうが恥ずかしそうに頬を染め、うつむいてしまったくらいだ。
 下着類を脱がすために、るりかを抱き起こす。服を脱いだ事でより強くるりかの匂いを感じ、
首元に顔を埋め吸い込んでみる。甘酸っぱい、女の子の匂い……るりかの匂い。
頭がくらくらするほどに、良いにおいだった。
「きゃっ……もう。変なことしないでください……恥ずかしいです」
 応えずに、そのまま首筋にキスをする。るりかは小さく震え、俺を抱きしめてくれた。
 ブラウスの中に手をいれて、るりかの身体をまさぐる。同時にキスも首筋から少しずつ上へ、
耳へとのぼっていく。
 背中を撫でるついでに、ブラを外そうとホックの位置を探る。予想よりも少し低い位置に
それはあった。両手で外す。そのままシャツの下に手をいれ、めくり上げる。
 白い肌が目にまぶしい。もうすぐ……もうすぐ、るりかの胸が、
「やっ、ちょっと、待ってください!」
 ぐい、とるりかが両手で押してきた。
 そのときの俺はお預けをくらった犬みたいな情けない顔をしていたに違いない。
「ちゃんと脱ぎますから……落ち着いてください。それと、あなたもちゃんと脱いでくださ
 いね。わたしばっかり恥ずかしいのはずるいです」
 必死でこくこくうなずきながら、俺はいそいそとシャツを脱いでいった。
 るりかも自分で脱いでいるものの、さすがに恥ずかしいのか、そっぽを向いているが、
それがまたなんとも言えない艶かしさを出していて、俺は生唾を飲んで見入ってしまった。
シャツを脱ぐ途中で白い肌に桜色の点が見えた時点で、俺の理性はもう崩壊していた。
 首だけ抜いた体勢で、るりかを押し倒す。シャツは脱ぐ途中で両腕を拘束していた。
るりかの胸は白くて綺麗で……平たい。言うと怒られそうなので言わない。でも柔らかくて
すべすべして、触っているだけで気持ちいい。
 胸の中央辺りにキスしながら、ずっと注目していた乳首にそっと指を這わす。
「あっ、ん……!」
 そのとたん、るりかが目に見えて反応した。悩ましげに眉をひそめ、目を閉じる。
その反応がうれしくて、じっくりと乳輪をなぞるように指を這わせ、時折偶然を装って乳首にも触れる。
 そのたびにるりかの唇からはかわいらしい声が漏れ……乳首はだんだんとかたくなる。
はっきりと分かるほどかたくなったそれにむしゃぶりつく。
「ああああっ! も、うちょっとやさし、くぅ、んっ!」
 舌先で乳首を転がし、歯に優しく押し当ててその感触を楽しむ。唇で挟んで弄り回してやると、
大きく体が震えた。
「やっ、だめ、それだめっ、〜〜〜〜っ!」
 強すぎる刺激に、きゅっと体を丸める。たてた膝が俺に当たるが、全く気にならない。
むしろ足を曲げた事でるりかのすらっとした太ももと、足の付け根……一番触りたい、
るりかの大事なところが意識にのぼる。
 るりかの全部を見たい。触りたい。
 スカートを脱がす手間も惜しんで、俺は一瞬でるりかの股間に顔を突っ込んでいた。
 先ほどまでの行為からか、あるいは目覚めてから着替えていなかったのか、白い下着を目の前にすると、
じっとりと空気が湿っている。汗と……今までかいだ事の無い匂い。でも間違えようも無い。
この匂いをかぐだけで、股間が痛いほど張り詰めていた。
 俺は鼻を中央に押し当て、布越しにその感触を味わう。柔らかくてぷにぷにの外側と、
熟した果物みたいにぬるりとした部分の感触が伝わってくる。これが……
「ちょ、ちょっと、そんなところ、きたなっ――!」
 聞く耳持たず、腰のところに手をかけてずり下ろす。あらわになった花びらを、見えたと同時に吸い上げた。
 びくりと、るりかが大きくはねる。意味を成さない嬌声を上げながら、くねくねと体をゆすった。俺は両腿を腕で
がっちりとまきつけ、思うさまるりかに吸い付き続ける。
 極上の音楽というのはこういうのを言うんだろう。るりかの可愛い声は音量も音程も高くなり、
抵抗が少なくなるにつれ、るりかの味もだんだん変わってくる。しょっぱくてさらさらした液が
だんだん舌にぴりぴりとした刺激を与え、味もだんだんと濃くなってくる。チーズみたいな匂いを
夢中になって吸い込むと、心臓が破裂しそうなほどドキドキする。
 ひとしきり満足するまで舐め終わってから顔を上げると、るりかは顔を真赤にしてうつろな目で
天井を眺めていた。
 今まで見たことも無いような、女の……雌の顔。
 俺は下も全部脱いで、るりかのそこにあてがった。
「はあ……るりか、いくよ」
 るりかはもう声すらでないようで、でも確かに肯いた。
 熱く潤ったそこに先を当てるだけで、爆発してしまいそうになる。そうならないように慎重に穴を探り、確かに
とらえたと思ったところで、思い切り腰を突き出した。
「あっ……ぐっ……!」
 一瞬の引っかかりのあと、飲み込まれるようにずるりと俺を飲み込んでいく。るりかの中の熱さ、狭さ、
絡みつきにぞわぞわと快感が背筋を這い登ってきて、それ以上進むことも引く事も出来ず、俺は止まった。
 やばい。こうしてじっとしているだけでも気持ちよすぎる。緊張と快感で腰から下からが自由に動かず、
痙攣するように少しずつ動いてしまう。それがまた気持ちよくて、俺は震えを止めるために大きく呼吸するので
やっとだった。
「は……ぁ……う、動いても、良いですよ……?」
 そんな俺を見て、るりかが心配したように声をかけてくれる。まあ、普通そう思うよな。
「あ、いや、違うんだ。その……るりかの中が気持ちよすぎて……
 すぐ出ちゃいそうだから……」
 何とかるりかと向き合って、苦笑しながら告げると、るりかはさらに顔を赤くして目をまんまるくした。
「あ、あ、その、そう、なんですか。ありがとう……ございます」
 目をそらしてから、こちらをちらちら見ながら照れられると、出してしまうかもという懸念よりも、
可愛いるりかを思い切り突き上げたいという欲求が勝った。
 まずは途中までだった肉棒を一番奥まで押し込む。くぷくぷ、という水音すら立ててるりかの中に
分け入っていく感覚は、ちょっと言葉では表せないくらいうれしい。
 根元まで入ったのを感じてから、まずはゆっくり引き抜いていく。締め付けられた肉棒が周りの膣肉を
引っ張りながら抜け出てくる。カリが容赦なく刺激され、それだけでもうヤバイ。
 誤魔化すように次は速く腰を振る。ゆっくりとはまた違った感覚。ワケのわからないくらいに刺激的で、
気持ちいい。
「うっ、ん、ん、ん、ん、ん」
 るりかはといえば、瞳をきゅっと閉じて、俺の腰の動きにあわせて押し殺したような声を上げている。
さすがにまだ痛みが勝るようだ。なんだかの本で、最初は早めに終わらせてやるべきと読んだ気がするので、
射精を我慢しないことにする。ああ、ちゃんと外に出さないと……
 なんて、出すとなったとたん余計な事まで考える余裕が出てきた。俺も目を閉じて、るりかの中の感触を
存分に堪能する。腰の奥から熱いものがせりあがってくる感覚に逆らわず、
それが弾ける寸前で腰を引く。
「うあぁっ!」
 あまりの快感に情けない声を上げてしまった。
 つけたままのスカートに、俺の精液の白いシミがつく。といっても大部分はそこを飛び越えて
るりかの胸と、顔にまでかかっていた。謝らなくてはいけない場面だが、逆に達成感を持って
その姿を見つめてしまう。
 お互い何もしゃべれず、俺とるりかの呼吸だけが聞こえた。


 気を取り直した俺がティッシュで精液やらなんやらをぬぐって、お互いに服を着ると……
話を再開するきっかけがつかめず、俺たちは押し黙った。と言っても決して不快な沈黙ではなく、
お互いをより近く感じる暖かい時間だったように思う。
 いまさらという感はあったものの、勇気を出してるりかの手を握ると、るりかもきゅっと
握り返してくれた。いつの間にか自分がコピーだとかコピーじゃないとかいう悩みは消えている。
現金な事だとは思うが、今の俺にはそんなことよりもっと大事なことができたからだろう。
 俺はるりかを愛している。何回死のうが、何度コピーが代替わりしようが、それだけは確かな事だ。
あと野球も好きだ。
 とにかく、その気持ちを曲げずに生きていけば、俺は俺でいられる。そんな気がした。
「……あの。私も、本土のじゃなくてみんなとおなじ高校に行こうと思うんです」
「どうして?」
「勉強は……どこでも出来ますし。それに……あなたを置いては行けませんから。今日確信しました。やっぱりあなたには私がついてないとだめなんですから!」
 今まで見た中でも一番の、暖かい笑顔だった。
「……ありがとう。俺もはっきり分かった。るりかが居ないとダメなんだ。俺はるりかが、一番好きだから。ずっと俺の側に居て欲しい」

 その後、目を覚ましたリコが部屋に殴りこんでくるまで俺たちはキスをした。
るりかと交わったこの身体を、決して失うことはすまいと心に誓いながら。

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