事変下、日本は何に怒っていたのか／満州事変前夜
満州事変では、『関東軍の暴走』と『幣原外交の協調路線』と言われるが、いったい政府は何をしていたのだろう。
昭和６年当時
社会
３月；3月事件勃発、桜会の一部将校と大川周明が軍事クーデター、未遂
４月；蒋介石らが、第2次共産党掃討戦
６月；陸軍省・参謀本部が、「満豪問題解決の方策の大網」で、準備後期間1年後、軍事行動を行うとする。
６月；中村大尉事件；対ソスパイ作戦中の中村震太郎大尉ら五人が中国兵により射殺される
７月；万宝山事件；水田開発をめぐり、朝鮮人農民と中国農民；官憲が衝突
７月；万宝山事件；朝鮮全土で報復に中国人検挙；
８月；南陸相が、満豪問題の積極的解決を訓示
８月；8･26事件、京阪神で共産党員を大量に検挙
９月；英で緊急財政法案成立
経済
１月；生糸恐慌；アメリカの大恐慌のあおりで、輸出が大打撃、主力製品の生糸前年度５割減
５月；閣議で、官吏の減俸を決定。⇒鉄道職員らが辞表提示
支那；排日運動激化
◇ 上海市などで、日貨排斥運動を開始。
◇満州青年連盟代表が来日、「満蒙の危機・幣原軟弱外交打破」を訴える全国遊説を開始
◇低廉な人件費を求めて、上海に工場を設置した日本の綿紡績はの商工会議所および居留民団は幣原外相に抗議電報を打ち、上海の居留民の危機を嘆願
・支那の排日運動は悪化している。
・既存契約の破棄はもちろん邦人財貨の略奪が起きている。
・これらはボイコットではなく、国をあげて抗争しようとしているものだ。
・日本政府は南京政府にこれら運動の禁止を要求し容れられない時は責任を問うべきである。
軍を巡っての抗争
幣原の行動
◇上海の綿紡績はの商工会議所および居留民団の抗議文に対して消極的で、南京政府に抗議文を送っただけだった。同時に、在住の日本人に引き上げ勧告を行った。
商工会議所と居留民団は反発した。
・邦人が漫然と引き上げることは自らの権利を放棄したに過ぎない。
・これでは多年の努力のわが経済的基礎を破壊する結果となる。
・万が一の場合に備え自衛権の発動ができるようにしなければならない
◇２月３日衆議院予算委員会において、幣原首相代理が、ロンドン条約批准に関する野党代議士（中島知久平）の質問に対して、「天皇の承認を得ている条約であるから不安はない」という意味の答弁したことから、「天皇に責任を押しつける内閣最高責任者の責任回避」として、収拾困難なほどの混乱を招き、異常事態となった。
◇日記によると、当時の陳友仁広東政府外交部長と日華軍事同盟にて密談している。
この中で、幣原は、英仏協商にならって、中日協商を唱えている。
◇満州事件前夜
結 言
◆幣原は、南京政府に国際連盟に提訴する前に、重光公使に、宗子文外交部長と二国間の交渉するように指示。散々、待った末の回答は『中国政府はすでに国際連盟に持ち出してしまった。中国の大官連は、国際連盟の力によって日本を抑えよう、その方が近道だといって日本と直接交渉をしないように決まったから、もう自分の力では直節交渉はできない』との回答とあり、その後、幣原自身、蒋作賓中国公使と交渉を行う。
その後、蒋公使も何の回答のないまま時間を過ごし、赤坂離宮で、たまたま、蒋公使と落ち合う、その時の様子をこう記してある。
⇒私が満州事変に言及すると蒋公使を当惑せしめることになるようだから、遠慮して避け 、公務に全然関係ない中国の書道につき浅薄な評論を始めた。これを聞かされた中国の人々は『何だ、そんな話か』と行ってしまった。
その間、当時の外務省は、南京政府にも国際連盟の日本代表団にも何の一報を入れていなかったになる。
国際協調を御旗に掲げる幣原外交としては余りもお粗末ではないか。
現在では、政府の意向に反し、軍部の独走と信じられているが、外交方針さえ見えてこない。
この当時、野党の政友会からは、『外務省は、外交などやっていない。あれは、外交事務。』だと比喩されているが、その外交事務さえ覚束ない。
◆その後、幣原は不拡大方針を声明を発表するが、これも南陸相に確認した所、『不拡大の方針だから。』とあるが、一連の関東軍の動きをみれば、戦争準備していること明々白々である。南京政府側からも、いいようになめられているとしか思えない、だいたい外交トップの宗子文外交部長に交渉してだめだから、駐日大使と折衝するかも理解に苦しむ。
◆また、満州事変の発端の原因を『軍人の整理・首切り、棒給の減額』に求めているが、支那や満州の悲鳴のようにあげられている居留民の支那側からの蹂躙には何も耳に届かなかったようである。
このように自分の問題解決能力のなさを他人に責任転嫁する姿勢こそ考えなくてはならないのでは。
◆『軍部の独走』というが、果たして、誰が無残にも虐殺／暴行されている居留民を助けられたのか。
この頃（今でも同じだが）政党政治は機能しなくなっていた。現在は、当然のように「二大政党論」が主流であるが、当時は、現状を打破するには『一国一党』論は当然で、そこまでいかぬとも誰しも『強力政党』を望んでおり、政党政治の終焉を予感していた。軍部にしても「政党がシッカリしてくれれば、自分達は政治に関心を持ちたくない。餅屋は餅屋で政治のことは自分達には不得手だ。」とため息に似た言葉も頻繁に聞かれる。
昭和６年当時
社会
３月；3月事件勃発、桜会の一部将校と大川周明が軍事クーデター、未遂
４月；蒋介石らが、第2次共産党掃討戦
６月；陸軍省・参謀本部が、「満豪問題解決の方策の大網」で、準備後期間1年後、軍事行動を行うとする。
６月；中村大尉事件；対ソスパイ作戦中の中村震太郎大尉ら五人が中国兵により射殺される
７月；万宝山事件；水田開発をめぐり、朝鮮人農民と中国農民；官憲が衝突
７月；万宝山事件；朝鮮全土で報復に中国人検挙；
８月；南陸相が、満豪問題の積極的解決を訓示
８月；8･26事件、京阪神で共産党員を大量に検挙
９月；英で緊急財政法案成立
経済
１月；生糸恐慌；アメリカの大恐慌のあおりで、輸出が大打撃、主力製品の生糸前年度５割減
５月；閣議で、官吏の減俸を決定。⇒鉄道職員らが辞表提示
支那；排日運動激化
◇ 上海市などで、日貨排斥運動を開始。
◇満州青年連盟代表が来日、「満蒙の危機・幣原軟弱外交打破」を訴える全国遊説を開始
◇低廉な人件費を求めて、上海に工場を設置した日本の綿紡績はの商工会議所および居留民団は幣原外相に抗議電報を打ち、上海の居留民の危機を嘆願
・支那の排日運動は悪化している。
・既存契約の破棄はもちろん邦人財貨の略奪が起きている。
・これらはボイコットではなく、国をあげて抗争しようとしているものだ。
・日本政府は南京政府にこれら運動の禁止を要求し容れられない時は責任を問うべきである。
軍を巡っての抗争
- 新渡戸稲造らの軍縮国民同盟が発会、「日本の軍事費は世界無比の高率」と軍縮促進決議
- 政友会の松岡洋右、「満蒙は帝国の生命線」と衆院で政府批判。
- 前年のロンドン会議の軍縮案により、海軍省、軍縮条約による艦艇二一隻廃棄通達 等具体案に入る
幣原の行動
◇上海の綿紡績はの商工会議所および居留民団の抗議文に対して消極的で、南京政府に抗議文を送っただけだった。同時に、在住の日本人に引き上げ勧告を行った。
商工会議所と居留民団は反発した。
・邦人が漫然と引き上げることは自らの権利を放棄したに過ぎない。
・これでは多年の努力のわが経済的基礎を破壊する結果となる。
・万が一の場合に備え自衛権の発動ができるようにしなければならない
◇２月３日衆議院予算委員会において、幣原首相代理が、ロンドン条約批准に関する野党代議士（中島知久平）の質問に対して、「天皇の承認を得ている条約であるから不安はない」という意味の答弁したことから、「天皇に責任を押しつける内閣最高責任者の責任回避」として、収拾困難なほどの混乱を招き、異常事態となった。
◇日記によると、当時の陳友仁広東政府外交部長と日華軍事同盟にて密談している。
この中で、幣原は、英仏協商にならって、中日協商を唱えている。
◇満州事件前夜
- 09/15 柳条溝事件 勃発 ／当日、閣議開催
- 09/21 朝鮮軍、満州へ越境出動 （司令官：林銑十郎／統帥権侵犯）
- 09/21 南京政府、柳条湖事件を国際連盟に提訴
- 重光公使が、宗子文南京政府外交部長にて提訴をとりさげる会談。
- 09/24 政府、不拡大方針を声明
- 蒋作賓中国公使との会談 ⇒解決に至らず
結 言
◆幣原は、南京政府に国際連盟に提訴する前に、重光公使に、宗子文外交部長と二国間の交渉するように指示。散々、待った末の回答は『中国政府はすでに国際連盟に持ち出してしまった。中国の大官連は、国際連盟の力によって日本を抑えよう、その方が近道だといって日本と直接交渉をしないように決まったから、もう自分の力では直節交渉はできない』との回答とあり、その後、幣原自身、蒋作賓中国公使と交渉を行う。
その後、蒋公使も何の回答のないまま時間を過ごし、赤坂離宮で、たまたま、蒋公使と落ち合う、その時の様子をこう記してある。
⇒私が満州事変に言及すると蒋公使を当惑せしめることになるようだから、遠慮して避け 、公務に全然関係ない中国の書道につき浅薄な評論を始めた。これを聞かされた中国の人々は『何だ、そんな話か』と行ってしまった。
- 幣原自身も、この満州事変勃発前から『これは大変なことになる。』と感じていたようだが、一時とも猶予ならぬときに、『相手に遠慮して交渉は止める。』とは、一連の交渉にしても切迫感さえかんじられない。
その間、当時の外務省は、南京政府にも国際連盟の日本代表団にも何の一報を入れていなかったになる。
国際協調を御旗に掲げる幣原外交としては余りもお粗末ではないか。
現在では、政府の意向に反し、軍部の独走と信じられているが、外交方針さえ見えてこない。
この当時、野党の政友会からは、『外務省は、外交などやっていない。あれは、外交事務。』だと比喩されているが、その外交事務さえ覚束ない。
◆その後、幣原は不拡大方針を声明を発表するが、これも南陸相に確認した所、『不拡大の方針だから。』とあるが、一連の関東軍の動きをみれば、戦争準備していること明々白々である。南京政府側からも、いいようになめられているとしか思えない、だいたい外交トップの宗子文外交部長に交渉してだめだから、駐日大使と折衝するかも理解に苦しむ。
◆また、満州事変の発端の原因を『軍人の整理・首切り、棒給の減額』に求めているが、支那や満州の悲鳴のようにあげられている居留民の支那側からの蹂躙には何も耳に届かなかったようである。
このように自分の問題解決能力のなさを他人に責任転嫁する姿勢こそ考えなくてはならないのでは。
◆『軍部の独走』というが、果たして、誰が無残にも虐殺／暴行されている居留民を助けられたのか。
この頃（今でも同じだが）政党政治は機能しなくなっていた。現在は、当然のように「二大政党論」が主流であるが、当時は、現状を打破するには『一国一党』論は当然で、そこまでいかぬとも誰しも『強力政党』を望んでおり、政党政治の終焉を予感していた。軍部にしても「政党がシッカリしてくれれば、自分達は政治に関心を持ちたくない。餅屋は餅屋で政治のことは自分達には不得手だ。」とため息に似た言葉も頻繁に聞かれる。
2007年03月30日(金) 23:19:07 Modified by yuyu122222