日本の通貨戦略
【序言】
大東亜戦争のきっかけになった支那事変は、経済戦争でもあった。華々しい武力による戦闘にばかり目が行きがちだが、中国の法幣を巡る通貨戦争の視点を忘れるとこの戦争の意義が見えなくなってくる。近代戦とは、ほとんどが経済に起因する抗争である。
後世になって、戦前の派閥利権に奔走していた政治家や「不干渉主義」という御題目の平和主義の仮面を被った無能な外務官僚が責任逃れで言う『軍部の独走』でもなく、ましてや『侵略戦争』などという単純なモノではない。
日本の国家予算をゆうに超える満州や中国の投資や莫大なる戦費を考慮すれば、海外から購入した方がどれだけ安上がりか、これほど単純な計算式さえわからない程馬鹿な日本の軍部官僚ではなかった。
この経済戦争は、紊乱とした中国通貨がアメリカの銀買い上げ政策であるピットマン法の成立(昭和９年６月)が発端となる。これにより、銀を基礎とする秤量貨幣制度を取っていた中国経済は大打撃を受ける。
そして、銭荘（中国特有の両替商）の倒産から始まり、上海の銀行の臨時休業に追いやられる金融恐慌が起こった。遅れてきた世界大恐慌である。中国の主要産業である綿糸相場は大暴落、公債・金塊の価格も急落して底が見えない状況が続いた。
中国の産業の中心である上海の会社・工場の閉鎖/倒産が相次ぐ。エドガー・スノーによれば、ピットマン法の成立の翌年の１９３５年（昭和１０年）には、『実に2万9千人もの人々が飢え死にしたり餓死したりした。』と伝えている。
第１次世界大戦後、世界は経済ブロック化され、大雑把な分類であるが、英国のポンドであるスターリングブロック・アメリカのドルブロック・ソ連のルーブルブロック。そして、微力ながら極東には円ブロックが存在しており、世界の国々を自国の経済ブロックに引き寄せようと画策していた。
このアメリカの銀政策であるピットマン法もドルブロック政策の１つと観て、中国を舞台とした経済戦争の第１幕とする見方もある。
その後、イギリスの経済外交のスペシャリストであるリース・ロスの訪中して中国は法幣改革を仕上げたことになる。指南役には、意図的なデフレ政策・金本位制・ウォールストリート発の世界大恐慌と世界経済を翻弄し続けてきたイングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンがいた。
それでは、モンタギュー・ノーマンが真の黒幕かというとこれから先は闇の世界に入ってしまう。
�．皀鵐織�ュー・ノーマンはロスチャイルド、ロックフェラーなども名を連ねる「三百人委員会」の恐るべき
陰謀組織のメンバーであることはわかっている。
�▲ぅ鵐哀薀鵐俵箙圓紡个垢襯蹈好船礇ぅ襯媛箸留洞僧呂聾什澆泙陪覆襪海箸�ない。
��ロスチャイルドはその国の貨幣権に代々固執していた。初代ロスチャイルドの有名な発言に
『我に、一国の通貨の発行権を与えよ。さすれば、その国の法律を誰が作ろうと、そんなことは
意に介さない。（どうでもよい）』というものがある。
事実、後世のロスチャイルド家の子孫達は、これを忠実に実行している。
ナポレオンがワータルローで敗れた後、イングランド銀行の株式の大部分を所有して、ロンドンシティ
に君臨するようになり、同じく、アメリカ連邦準備銀行（FRB）を１９１３年のクリスマスイブを狙って
ドサクサに紛れて設立させ、アメリカ通貨の発行権を合法的に奪取させ、これまた、アメリカの主人と
して君臨している。
�ぅ薀ぅ�ネル・ロスチャイルドが英国初のユダヤ人首相のディズレーリにイングランド銀行を通して行った
ことは、価値ある金（きん）を彼の価値なき紙幣に換えることであり、この手法が面々と続いている。
金を銀に替え、ロスチャイルドの錬金術をそのまま当てはめれば、中国の現銀の犯人になりそうだが、
この中国の法幣を巡って、ロスチャイルドが関与した確固たる証拠は見出せない、後は皆さんの想像力にお任せする。
日本はこの経済戦に参戦したのは、この昭和１０年１１月のこの法幣改革からである。そして、それから約２年後の支那事変が始まる昭和１２年９月に蒙疆（現在の河北省・内モンゴルを中心とした中国北部）に察南銀行を設立以降本格的な経済戦に突入する。これは、世界の金融史に類例を見ない壮絶なる通貨戦争である。
日本としても、中国の通貨改革に反対するものではない。問題は、イギリスのポンドとリンクしており、為替安定基金である通貨が在外であるロンドン・ニューヨークに置かれ、完全なる通貨権が握られた経済植民地化された状態にあることにあった。これでは、中国は経済的に隷属された状態であり、日本も何時かは同様な運命を陥る懸念もある。アングロサクソンの世界支配の仕上げ段階に入っていた。
日本の陸軍上層部としては、支那事変の最大の目的は防共である。日本としては、治安をかく乱し国体を瓦解させる共産主義の空恐ろしさ知っていた。
敵は蒋介石にあらず、毛沢東であり、本丸は後ろに控えるソ連である。西安事件で国共合作が成立した時点で国民政府との和平工作はありえなかった。イギリスの経済植民地化の排除と同様に共産党を駆逐するまでこの戦争は終わらないとの覚悟である。
先の戦争を短期戦と予想していたとの歴史観もあるが、資料を読むにつけそうは思えなくなってくる。長く忍耐がいる戦争はある程度予想いていた。場当たり的で何の戦争計画がなかったとも一概には言えない。
英・中・米の民族性もあらゆる角度で研究している。国際化の時代と言われる現代とて、その見識には遠く及ばないのではと思われる。ただ、予測不能はどう転ぶかわからないアメリカの世論である。
有史以来、後にも先にもありえない中国を舞台とした大規模な通貨戦は始まったのである。
法幣制度の日本の対応策
◆日本陸軍は、この法幣改革には、断固反対した。(注)国民党というものを知り尽くし、従来のやり口から考えると、信義上の疑義の懸念が充分あるからである。中国政府と一部財界が結託してやることは明らかであり、中国政府が宋一族の営利事業機関に成り下がり、中央銀行を手先として、紙幣を大量に放出し、不正に行えば、紙幣政策が破綻を来たし、国民生活に大きな影響を与える。徳をするのは、蒋介石・孔祥熙財務部長らや宋一族らの一部資本家と後ろで操る英米に他ならない。実際、その後、孔祥熙財務部長自身が不正なインサイダー取引を繰り返している。
(注)なお、磯谷陸軍武官の反対表明の全文は以下の通り---------------------------------------------『出先軍部としては国民政府今次の幣制改革には断然反対である。これはイギリスに対する嫉妬とか、中国が日本を出し抜いたとかいう些細な問題ではなく、幣制改革が実に中国4億民衆の破滅を来するものに外ならないからである。
今次の改革の根本的な欠陥は中国側において事前に何ら必要な準備もなく、またそれが断行を決意するに足る信頼すべき人物を得なかった点にある。
もし、準備と人を得、日本を含む各国の諒解の上で行ったものであれば、帝国政府としても援助はやぶさかではないが、国民政府として最後の切り札を突発的に断行した無謀は、中国民衆の福祉のためにも黙視すべきではない。』
『経済的に統一体をなさざる中国に、強権によって中央集権的な幣制改革を断行しても、華北、長江流域及び西南等それぞれ全く事情を異にする経済は自滅の外にない。
さらに今次の改革は、一部財政家と財閥が結託し、全然国民の利益を無視して行った点に許すべからず過誤がある。従来、中国の国民経済と政府を中心とする経済とは厳然たる別個の事実があり、この両経済は、政権の推移とは別個の独自自然のコースを取ってきた。然るに、今次の改革により、国民自体の経済生活は直接政権と不可分のものとなり、一蓮托生の運命に置かれるに至った。南京政府が破綻するときは、その負担は全部４億民衆に転嫁される。』
『事前の各種準備に欠き、また改革実行の人材なく、かつ各国の諒解なく行われた改革は、早晩おそらく数ヶ月を出でずして破綻するに相違ない。しかも国民政府の今次の処置は最後の切り札なのだから、その後はもはや収拾の途がない。帝国としては隣邦の民衆がみすみす破滅の淵に追い込まれるのを黙視できない。ゆえに帝国政府としては、すべからく今次の改革の反対の理由を明記し、明確な態度を内外に表明するとともに、改革案を中止せしめることが中国を救う唯一の途であると信ずる。』
『現銀の上海集中は華北を経済的に死滅させる外ならず、少なくとも国民政府の統制化にある華北の中国系諸銀行においてこれを保管するのが当然である。・・それを実行する能力無き場合は、我方は実力をもってかく実行してもよいと信じる。』
⇒これを、現代史では軍事的発言というが、どこからそう思うのだろう。
◆法幣改革で、日本などの外銀が問題になるのは、手持ち銀である。手持ち銀を要求どおり引き渡せば、怪しい紙幣と公債を受け取ることになる。この法幣改革に対して、日本は断固たる反対の意を表明して、在支の邦銀は持ち銀引渡しを拒否した。
一方、経済界の金融・産業部門に置いては、経済的利害関係が強く中国と結びついており、日支経済提携の議論は国内外問わず多く、重要な案件となっていたため、法幣改革の翌々年の昭和１２年３月１２日〜２２日に佐藤外相は児玉謙次郎日華貿易協会会長を団長に、加藤朝鮮銀行総裁・宮島日清紡社長等を一向とした日中親善経済使節団を派遣。佐藤外相は、この交渉に先立ち、『日中間の問題は私の考えへでは、出発点を新しく見直してみたい。』『従来の行き掛りを水に流して平等の立場に立って、改めて1つの交渉をするものなら交渉してみたい。』と熾烈な外交交渉とは無縁の「すっとんきょう」の演説に終始したが、結局はさしたる、外交結果は得られず、蒋介石に『支那の法幣改革に協力』を約束させられ、邦銀所有の手持ち銀を全て取り上げられることとなる。その後、この邦銀の謙譲した手持ち銀は抗日の兵器購入等にあてることになる。この邦銀の現銀のいくばくかは、その年に勃発した支那事変の国民党中央軍に役立ったはずである。
◆◆ 参考 ◆◆ 対中外交 失態史
◆この法幣制度には、日本陸軍は、よほどの危機感を持っていたことが想像される。「新幣制は、西南・北支を金融・財政的に従属せしめ、惹いては政治的に独立性を失う」として、満州と接する北支金融の独立工作を急いだ。（事実、西南の広東・広西の軍閥は、あれほど蒋介石に抵抗したにも関わらず、法幣制度の前に屈せざる負えなかった）
◆この時点で、日中は本格的な通貨戦争に突入する。紊乱した中国の法幣改革は蒋介石国民政府の地盤を強じんなモノにして自信を与えた。その理由は
�）（床�革の名の元で、調達した現銀が豊富な資金源になり、軍需資材の購入が円滑に成る。
��地方軍閥は貨幣券を奪われ、好むと好まぬに関わらず、従属するはめになる。独自に発行してきた貨幣は兌換もできず紙切れ同様になるため、相当な経済的圧迫である。「お金がないと戦もできない。」状態となる。
��勝手に貨幣を乱発してきた金融界を筆頭とした財界も、貨幣の発行が不可能になり、国民政府に協力せざる得なくなる。
�し从儚萋阿砲�いても、国民政府と国民が一体となり、不可分の関係になる。
�ツ眠澤�を独占することにより、通貨の増発や絞込みも自由自在になり、他の通貨の競合も気にすることがないので、独自の思い切った経済政策が取れる。
��政治的統一を行う、最大の足固めができた。
◆国民政府は、中央軍の駐屯部隊を使い法幣をばら撒いた。
中央軍が行った共匪討伐も、派遣された部隊が駐屯地帯に法幣を強要させ、兌換した現銀を上海に輸送させる。
長征で逃げ惑う共産党が四川が来た昭和１０年頃には中央軍も四川に駐屯し、ここで１億元の中央銀行券を発行したといわれる。
四川を逃れると、今度は、共産軍は陝西省北部に根を下ろす。そこには、黄河を挟んで山西省がある。
山西省には、閻錫山がおり、豊富な地下資源を背景に製鉄・ガラス・化学などの産業を興し優良省に育て上げ、「山西モンロー主義」を唱えた人物でもある。
閻錫山は、川岸にトーチカを設け、省民には共産党の脅威を説き警戒させ、共産軍の侵入に退去する。しばらくすると、共産軍の後を追うように陳誠の中央軍が北上してきた。国共両軍はしばらく睨み合って動かず、戦闘らしい戦闘もしなかったが、ある日、突然、共産軍は陝西省の奥地へと逃げ帰ってしまった。
哀れなのは、閻錫山である。中央軍の置き土産として法幣だけが残り、山西票はある程度信用ある貨幣であったが、法幣に取って代わったのである。それ以降、閻錫山は中共と妥協し（犠牲救国同盟会の成立）、反共から「連共抗日」路線への転換を余儀なくされたのである。
中央軍は戦闘ばかりではなく、法幣を広める十字軍の役割を果たした。また、国民政府の及ぶ範囲には、商取引の際には法幣を強要したので、昭和10年６月から１１月だけでも新たに、約２億五千万元の法幣が取って代わったとされている。
◆
● 中華民国通貨の為替相場
(注１)華北で、法幣の禁止した直後の４月９日に親日の中国要人が暗殺さる。直接の関連は不明であるが、いかにもありそうな話である。日本側は、再三に渡り、英国総領事に犯人の引渡しを要求。６月６日、英国側は日本の最後通牒をもっても断固拒否したため、６月１４日、英仏の天津租界封鎖する。その後、有田外相と英国の駐日大使との間で話し合いがもたれたが、決裂に終わる。
（注２）
（注３）法幣価格と実質価格の差異が大きく、極度の輸入不振に陥る。
※当初は、予想外に成功だった法幣改革も、戦況が悪化しだすと、法幣を乱発して、インフレを起こすことになる。
外貨を売って、必死に買い支えていた国民政府も投げ出し始める。
日本のカウンターパンチも少しずつ利いて来る。日米開戦前には、当初の１／４まで値段が暴落する。
◆日本側は、この通貨戦争に対して取った戦略を分類すると下記のようになる。
【蒙疆地区】
================================================================================================
【華北地区】
第1次通貨工作
《目的》華北地区の現銀の南進（上海・南京）を防ぐ
《背景》法幣改革と同時に、孔財政部長は、銀国有令を発布し、天津銀行公会に対し華北における銀
を上海に輸送 するよう命じる。
《期間》昭和１０年１１月〜
《方策》傀儡政権を造り、華北に新紙幣の増刷・中央銀行を設立。国民政府に対し妨害工作を呼びかける。
☆ ☆ ☆ ☆
●法幣制度が発布した３週間後の11月25日に、華北において冀東防共自治政府、同30日には冀察政務委員会という2つの傀儡政権が設立される。
昭和１１年５月以降、冀察政務委員経済委員会は河北省銀行にて新紙幣を発行し、北京・天津などの地方に流通させ、冀察防共自治政府では、首都通州に資本金５００万元で冀察銀行を設立させた。
そこで、日本の造幣局で紙幣の製造を行い、朝鮮銀行において、無制限の交換できるように用意する。
そして、国民政府が日本側は、法幣制度を施行すると、「北支金融緊急防衛令」で３項目の内容（１．現銀の南進を禁止すること。 ２．中央に対する送金を停止すること ３．金融機関に対する監督を厳重にすること）で、各傀儡政権の将軍に指示を流す。予定通りの行動である。
しかし、ここで、どういうわけか、ほとんどの将軍は何ら行動は取らなかった。従ったのは冀東防共自治政府のみで、冀察政務委員会、河北省、山東省の各将軍は日本側の命令を無視し、対法幣工作は、あっけなく幕を閉じる。静かに時間だけが流れ、英米の演出で、国民政府が主演の貨幣権の攻防の１幕は何の感動も呼ばなかった。関が原の小早川 秀秋が束になって、そこにはいた。土肥原少将の飛んだ見損ないである。
華北分離政策までやり、新たに冀察銀行まで設立し、満州興業銀行・朝鮮銀行・日銀まで巻き込んだ大規模な対通貨工作にしては、余りにも情けない終わり方であった。
特に、冀察政務委員会の宋哲元将軍に裏切られたことは、彼を押した土肥原少将にしたら、後々、後悔しただろう。相当に応えたことは想像に難くない。
第２次通貨工作
《目的》盧溝橋事件が起こり、華北に新たな駐屯軍隊が発生したために軍費支払い通貨の必用が生じる。
《背景》支那事変の当初は不拡大方針のため、一時的な戦闘と判断。軍費支払い通貨策の考慮されず。
《期間》昭和１２年７月（盧溝橋事件）〜
《方策》当面の処置として、天津・済南・青島で微量に発行していた朝鮮銀行券を１千万円新たに発行して
その場をしのぐ。
☆ ☆ ☆ ☆
●支那事変は突発的な戦闘であり、何の用意もなかった。軍票を発行する準備もしていなかった。
日本軍が考えていたのは、当時、華北地区では朝鮮銀行天津支店で発行していた朝鮮銀行券の流用である。
事変当時、天津・済南・青島で過去５年間で大体３００万円〜５００万円の流通量を保っていた。
さしあって、１千万円の朝鮮銀行券を発行する。
軍票を発行しなかったもう１つの理由は、軍票というものは徴発通貨であり、中国民衆と敵対しない状態にしたいという配慮があった。一番大きい理由は、印刷が間に合わない物理的理由であろうが。
軍票や新たな通貨を極力発行しない手段もある、それは、日本内地からバンバン物資を輸送することであるが、これは、輸送に困難を要したことと日本内地でもすでに物資不足が深刻化しており、この案は立ち切れになる。
朝鮮銀行券は外貨との交換ができない通貨であり、ガソリン等の買い付けができず窮することになる。
また、通貨を発行するには日本円なり法幣などの中国通貨等の正貨の引き当てが不可だとしたら、そんな通貨は信用されない、当然のように下落に転ずる。朝鮮銀行券は使用に耐えられず、敵性通貨である法幣を使わざるをえない。これでは、当初法幣を駆逐する趣旨にも反する。
軍政を敷くことは天津等に外国租界もあり、まして、不拡大の堅持の方針から考えればできぬ相談であった。
日本軍は戦闘には勝ったが、通貨面ではにっちもさっちもいかない状況になっていた。
この当初の通貨事情から鑑みても、日本は支那事変を計画的に実行したのでも軍部が独走した理由でもないことがわかる。
第３次通貨工作
《目的》朝鮮銀行券の下落。物資の購入も著しく困難を極め、新たなる通貨工作が必用に成ってくる。
《背景》日本との関係が浅からぬ河北省銀行を利用。
《期間》昭和１２年９月（推定）〜
☆ ☆ ☆ ☆
●河北省銀行券を流通させるには、河北省銀行券の信用を高めることが重要であった。
そのころ、需要の高まっていた綿花の買い付けを河北券に限ると通達を出す。綿花商人は金票を河北券に替え、奥地の農家と取引する所、法幣でないと取引してもらえない状態が続く。
綿花商人は、しかたなく手持ちの河北券を法幣である中国、交通の両銀行券に兌換した上で商売しなくてはならなかった。中国での銀行の決済も中国、交通の両銀行でのみ行われるので、中国、交通の両銀行券兌換した河北券は、
中国・交通なりの河北省銀行の預金高から切り落とされ、河北券は河北銀行に返却される。
よって、河北券は一部に流通するのみで終わり、河北銀行には中国、交通の両行から返却された河北券が山のように詰まれ、またもや華々しい成果は見出せなかった、といより敗北である。
河北券の価値を誤った、完全なる市場調査不足である。
第４次通貨工作
☆ ☆ ☆ ☆
《目的》今までのゲリラ的な通貨工作の反省に立ち、河北・山東・山西の華北地方を網羅した中央銀行
(中国聯合準備銀行)を設立。
《背景》。
《期間》昭和１２年11月〜
●)法幣」改革のほぼ２年後の昭和12年11月22日には、「華北連合銀行（仮称）設立要網」を閣議決定して、北京・天津を中心とした華北地域に中央銀行を設立する案を作成、南京攻略の目処がたった１２月１４日に王克敏を行政委員長とした中華民国臨時政府を設立。
手始めに、法幣によってもたらされたいた円安の為替を中国元の等価まで戻す「円元パー」政策が取られた、この決定が下された中国連合準備銀行条例が公布された昭和１３年２月５日時点では、日本円１２０円＝中国元１００元であった所、朝鮮銀行を使って、多量の円を買わしめ、連銀オープンの前日の３月９日には、為替市場では、日本円１００円＝中国元１００元の円元等価の「円元パー」に成功する。
この当時、華北には、重慶政府系３銀行を中心に現銀が、４０００万元程度残存していた、これを日本の北京大使館の残された強制搾取できない現銀分を含めると５７００万元程度になる。この現銀を出資して、華北の中央銀行設立の資本参加を呼びかけたが、中央・交通の各銀行支店長からは『本店との打ち合わせ』との口実で香港に逃げられてしまい、この計画も頓挫する。
中国の中央・交通・河北等各銀行の上に立つ中央銀行の位置付けにある聯銀であったため、中央・交通の各支店長には理事のポストを用意したり手を尽くしたが、いざとなると不誠実極まりない行動に終始し、現銀の引渡し要求には応じない、かといって、中国の各銀行は英仏租界内にあるので強制摂取もできない。中央銀行の設立は難航した。
他にも、聯銀の銀行検査の拒否。保有していた現銀を外国銀行に引き渡そうとする愚挙に出ようとする。
しかたなく、邦銀３行（横浜正金・興銀・朝鮮銀行）と日本の国庫保有金を当て資本金に充当した、華北に流通している法幣３臆を含む総額４億円と見られ発行準備金に当てるべき、回収作業に当たったが、暴落しているとはいえ、法幣の信用には敵わず、回収作業がはかどらない。
そして、３月１０日に北京を本店、天津を支店とした、中国聯合準備銀行がオープンする。しかし、その４日後の３月14日には国民政府により逆襲にあう。
「連銀紙幣」を狙い撃ちするような「外貨割当制」発布され、政府の外国為替供給が制限されると、「連銀紙幣」の供給がストップされる、日本側の法幣錯乱の意図は、これまた、思うように進行せずに、日本側にも暗雲漂うこととなる。
● しかし、この「外貨割当制」がヒョンなことから副産物を生むことになる。外国企業が中国民本企業に外貨を供給する必要性から、上海に歴然とした闇市場成立することになるのである。
これによって、上海経済は政府統制化の結びつきは弱まり、国民政府は、為替相場の他に上海の闇相場さえも維持せざるえなくなる。
国民党政府の政策に関わらず、資金の流出（金・銀の流出と外貨の逃避）を可能にし、中国全土の資金が上海に集まり、その資金が外国に流れるという構図を造ってしまった。
前半の日本軍の攻略で、国民政府は多くの富を失い、中国の経済は、より上海を中心としたものになったが、国民政府との関係は脆弱なまのとなる、しいては、蒋介石のバックであった「浙江財閥」との関係も疎遠なものになり、国民政府が、地方の一政権となったといっても過言ではない。
● 聯銀券もけっして順風満帆であったわけではないが、敵性通貨法幣の駆逐と言う目的からすれば一応の成功を収めたといってもよいだろう。通貨発行高は昭和１３年６月末の５，９００万円から１年後の昭和１４年６月末の２億６，４００万円の約４．５倍に通貨量を増やしている、これは順次流通量が増え、外国租界当局においても聯銀券を受け入れるように至った。
統計の数字としては月が上記の通貨量のそれとは若干ずれているが、昭和１３年３月の昭和１４年３月の１年間で貸付金は３，０００万円から１億６，０００万円へと５．３倍、預金は８，０００万円から１億８，０００万円へと２．２５倍の増加となっている。
ただし、これ以降は法幣の下落により、極端なインフレーションを起こし、法幣にリンクした聯銀券も発行量を増やすことになるため参考とならない。目的は、敵性通貨法幣の駆逐と錯乱にあり、イギリスからの貨幣権の奪取にある。アジアにユダヤ的な支配が及び、主権が侵害される。
この見えざる手は、合衆国憲法の内で最も厳しい条項が『中央銀行法を禁じる法』とされているが、そんなコトはお構いなく「アメリカ連邦準備銀行」を設立させ、操り人形であるウィルソン大統領を介して戦場に引き込むことに成功させ、何百万人の若者が戦場に散り、何十億ドルの戦費を背負った。第1次世界大戦だけでも、少なくとも１０００億円の利益を上げたとされている。現在までアメリカから連邦準備銀行を通じて暴利を貪り続けている。
見えざる手は、アメリカの通貨・経済の支配権を完全に握ってしまった。
「アメリカ連邦準備銀行」の欺瞞には勇敢に立ちふさがる男がいた。銀行委員長でもあるマクファデン下院議員である。マクファデン議員は「連邦準備銀行」の腐敗を追求した。
『議長、この国には世界一腐敗した組織があります。連邦準備局および連邦準備銀行のことを申し上げていす。
政府の１組織、連邦準備局が合衆国政府を、合衆国国民を騙し、国債の支払いの充てる金を巻き上げていす。
連邦準備局および連邦準備銀行の強奪・不正行為が重なり合って、この国は国債の支払いのために数回以上
に渡って、多額の金を負担させられて来ました。
このような不正組織が合衆国の人々を貧乏にし破産させるいるばかりか、組織自体、破綻をきたしていて、
我々の政府を破綻させているのも同然の状況を現出しています。
こうした組織を管理する法の不備、連邦準備局に法の誤った施工、同組織を支配する強欲な金持ち連中の
腐敗した金持ち連中の腐敗した慣習がこのような状況を生み出したのです。』
『一部の人は、連邦準備銀行は合衆国政府の組織だと考えています。ですが、そうではありません。
私設の独占貸付業であり、自らの組織のために、外国の顧客、内外の投資家および相場師のために、大金
持ちで、自分のことしか考えない金貸しのために、合衆国国民を食いものにしています。
金融海賊ともいうべき腹黒い連中の中には、相手のポケットの１ドルを奪うためなら、その喉元を切りつ
けることさえ厭わない連中さえいます。』
しかし、この勇敢で骨のある政治家マクファデン議員は狙撃と２回の毒殺に逢い、この３回目の暗殺で帰らぬ人になる。
世界最大の金・ダイヤモンドの利権を狙った南アフリカでの戦争では、ケープ植民地である農民であるボーア人は３年にも及び勇敢に戦った、ボーア人が停戦にいたったのは、ロスチャイルドの下僕であるミルナー卿が造った過酷な環境である強制収容所で２万５千人及ぶ女・子供が死んでいったからに他ならない。
ボーア人は勝つ見込みがない戦争に果敢に戦った、国家主権の維持と独立のために多くの犠牲を払うことを厭わなかった、しかし、中国では１人のマクファデン議員も１人のボーア人も現れなかった。
● ここでもう一度、初代ロスチャイルドの発言を振り返ってみたい。
『我に、一国の通貨の発行権を与えよ。さすれば、その国の法律を誰が作ろうと、そんなことは意に介さない。（どうでもよい）』と
これは、直接の通貨の発行権でなくとも貨幣を操作できる権限が与えられいればよいと意味にも取ってかまわないだろう。一国を支配するには貨幣権さえ握っていればよいと。
銀買い上げ法であるピットマン法に経済が苦しみ、リース・ロスのやり方がいかに巧みであったとしても、１国の貨幣権を安々と諸手を挙げて引き渡すとは・・・。
魯迅の言うように 「国民の精神を変えなければ、不幸は無くならない！ たとえ支配者が何度変わろうとも、中国人一人一人の中に染み込んだ奴隷根性がある限り、我々はずっと支配されつづける。」 ということだろうか。しかし、現在においては、日本でも日中戦争を取り扱った書物は多いが中国での法幣を扱ったものはほとんどない。
あったとしても、中国の通貨制度に非協力であったとして、無理やりに『日本の侵略』と結びつけるモノが多い。
これは、国家主権の維持と独立に余りにも鈍感になった証拠ではないだろうか。
国の主権である『国体』がバラバラになることを極端に恐れていた背景がわからないと、『国体』＝右翼という発想しか生まれてこないだろう。
おせっかいなまでに、中国の貨幣権の英国からの略奪を危惧したのは当然日本への影響もあろうが、磯谷陸軍武官の『隣邦の民衆がみすみす破滅の淵に追い込まれるのを黙視できない。』との発言もまんざら方便とは言い切れないだろう。
● それでは、法幣の徹底した駆逐作戦には下記のようなモノを挙げる事ができる。
《法幣価格の下落を意図した作戦》
１、直接的な通貨工作
1.1 国民政府に財政悪化を起させ、インフレを引き起こす。
⇒これは、法幣にリンクした聯銀券が同時に下落することも見越した捨て身の作戦
1.2 日本の影響下にある通貨（ 聯銀券・蒙疆券 他）量を伸張して流通する地域の拡大、それに伴い
法幣圏の後退を画策する
1.3 法幣の安定基金を底をつかせ、為替の操作を難しくさせる。
1.4 海関などの接収等で財政封鎖を行い、国民政府に税収の不足を引き起こす。
⇒第2次上海事変等で沿岸部の主要な海関を接収する
２、物資欠乏させる物的圧迫に出た敵対通貨工作
2.1 経済封鎖⇒支那事変で沿岸部の主要なる工業・農業地域を差し押さえたことで当面の目標達成する。
2.2 生産力の低下⇒同上
2.3 輸入減少⇒上海などの主要な貿易港を日本が押さえる
2.4 物資輸送路の遮断⇒産業基盤の上海・広東から国民政府のある重慶までの鉄道/道路の破壊
2.5
●
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◆
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世界的な重要な事実はほとんどの人に知られていないから、我々はもっと多くの事実を求める。人類は、事実を知らされない限り、光を見出すことが出来ない。 《「シカゴ・デイリー・ニュース」紙編集長》
大東亜戦争のきっかけになった支那事変は、経済戦争でもあった。華々しい武力による戦闘にばかり目が行きがちだが、中国の法幣を巡る通貨戦争の視点を忘れるとこの戦争の意義が見えなくなってくる。近代戦とは、ほとんどが経済に起因する抗争である。
後世になって、戦前の派閥利権に奔走していた政治家や「不干渉主義」という御題目の平和主義の仮面を被った無能な外務官僚が責任逃れで言う『軍部の独走』でもなく、ましてや『侵略戦争』などという単純なモノではない。
日本の国家予算をゆうに超える満州や中国の投資や莫大なる戦費を考慮すれば、海外から購入した方がどれだけ安上がりか、これほど単純な計算式さえわからない程馬鹿な日本の軍部官僚ではなかった。
この経済戦争は、紊乱とした中国通貨がアメリカの銀買い上げ政策であるピットマン法の成立(昭和９年６月)が発端となる。これにより、銀を基礎とする秤量貨幣制度を取っていた中国経済は大打撃を受ける。
そして、銭荘（中国特有の両替商）の倒産から始まり、上海の銀行の臨時休業に追いやられる金融恐慌が起こった。遅れてきた世界大恐慌である。中国の主要産業である綿糸相場は大暴落、公債・金塊の価格も急落して底が見えない状況が続いた。
中国の産業の中心である上海の会社・工場の閉鎖/倒産が相次ぐ。エドガー・スノーによれば、ピットマン法の成立の翌年の１９３５年（昭和１０年）には、『実に2万9千人もの人々が飢え死にしたり餓死したりした。』と伝えている。
第１次世界大戦後、世界は経済ブロック化され、大雑把な分類であるが、英国のポンドであるスターリングブロック・アメリカのドルブロック・ソ連のルーブルブロック。そして、微力ながら極東には円ブロックが存在しており、世界の国々を自国の経済ブロックに引き寄せようと画策していた。
このアメリカの銀政策であるピットマン法もドルブロック政策の１つと観て、中国を舞台とした経済戦争の第１幕とする見方もある。
その後、イギリスの経済外交のスペシャリストであるリース・ロスの訪中して中国は法幣改革を仕上げたことになる。指南役には、意図的なデフレ政策・金本位制・ウォールストリート発の世界大恐慌と世界経済を翻弄し続けてきたイングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンがいた。
それでは、モンタギュー・ノーマンが真の黒幕かというとこれから先は闇の世界に入ってしまう。
�．皀鵐織�ュー・ノーマンはロスチャイルド、ロックフェラーなども名を連ねる「三百人委員会」の恐るべき
陰謀組織のメンバーであることはわかっている。
�▲ぅ鵐哀薀鵐俵箙圓紡个垢襯蹈好船礇ぅ襯媛箸留洞僧呂聾什澆泙陪覆襪海箸�ない。
��ロスチャイルドはその国の貨幣権に代々固執していた。初代ロスチャイルドの有名な発言に
『我に、一国の通貨の発行権を与えよ。さすれば、その国の法律を誰が作ろうと、そんなことは
意に介さない。（どうでもよい）』というものがある。
事実、後世のロスチャイルド家の子孫達は、これを忠実に実行している。
ナポレオンがワータルローで敗れた後、イングランド銀行の株式の大部分を所有して、ロンドンシティ
に君臨するようになり、同じく、アメリカ連邦準備銀行（FRB）を１９１３年のクリスマスイブを狙って
ドサクサに紛れて設立させ、アメリカ通貨の発行権を合法的に奪取させ、これまた、アメリカの主人と
して君臨している。
�ぅ薀ぅ�ネル・ロスチャイルドが英国初のユダヤ人首相のディズレーリにイングランド銀行を通して行った
ことは、価値ある金（きん）を彼の価値なき紙幣に換えることであり、この手法が面々と続いている。
金を銀に替え、ロスチャイルドの錬金術をそのまま当てはめれば、中国の現銀の犯人になりそうだが、
この中国の法幣を巡って、ロスチャイルドが関与した確固たる証拠は見出せない、後は皆さんの想像力にお任せする。
日本はこの経済戦に参戦したのは、この昭和１０年１１月のこの法幣改革からである。そして、それから約２年後の支那事変が始まる昭和１２年９月に蒙疆（現在の河北省・内モンゴルを中心とした中国北部）に察南銀行を設立以降本格的な経済戦に突入する。これは、世界の金融史に類例を見ない壮絶なる通貨戦争である。
日本としても、中国の通貨改革に反対するものではない。問題は、イギリスのポンドとリンクしており、為替安定基金である通貨が在外であるロンドン・ニューヨークに置かれ、完全なる通貨権が握られた経済植民地化された状態にあることにあった。これでは、中国は経済的に隷属された状態であり、日本も何時かは同様な運命を陥る懸念もある。アングロサクソンの世界支配の仕上げ段階に入っていた。
日本の陸軍上層部としては、支那事変の最大の目的は防共である。日本としては、治安をかく乱し国体を瓦解させる共産主義の空恐ろしさ知っていた。
敵は蒋介石にあらず、毛沢東であり、本丸は後ろに控えるソ連である。西安事件で国共合作が成立した時点で国民政府との和平工作はありえなかった。イギリスの経済植民地化の排除と同様に共産党を駆逐するまでこの戦争は終わらないとの覚悟である。
先の戦争を短期戦と予想していたとの歴史観もあるが、資料を読むにつけそうは思えなくなってくる。長く忍耐がいる戦争はある程度予想いていた。場当たり的で何の戦争計画がなかったとも一概には言えない。
英・中・米の民族性もあらゆる角度で研究している。国際化の時代と言われる現代とて、その見識には遠く及ばないのではと思われる。ただ、予測不能はどう転ぶかわからないアメリカの世論である。
有史以来、後にも先にもありえない中国を舞台とした大規模な通貨戦は始まったのである。
法幣制度の日本の対応策
◆日本陸軍は、この法幣改革には、断固反対した。(注)国民党というものを知り尽くし、従来のやり口から考えると、信義上の疑義の懸念が充分あるからである。中国政府と一部財界が結託してやることは明らかであり、中国政府が宋一族の営利事業機関に成り下がり、中央銀行を手先として、紙幣を大量に放出し、不正に行えば、紙幣政策が破綻を来たし、国民生活に大きな影響を与える。徳をするのは、蒋介石・孔祥熙財務部長らや宋一族らの一部資本家と後ろで操る英米に他ならない。実際、その後、孔祥熙財務部長自身が不正なインサイダー取引を繰り返している。
(注)なお、磯谷陸軍武官の反対表明の全文は以下の通り---------------------------------------------『出先軍部としては国民政府今次の幣制改革には断然反対である。これはイギリスに対する嫉妬とか、中国が日本を出し抜いたとかいう些細な問題ではなく、幣制改革が実に中国4億民衆の破滅を来するものに外ならないからである。
今次の改革の根本的な欠陥は中国側において事前に何ら必要な準備もなく、またそれが断行を決意するに足る信頼すべき人物を得なかった点にある。
もし、準備と人を得、日本を含む各国の諒解の上で行ったものであれば、帝国政府としても援助はやぶさかではないが、国民政府として最後の切り札を突発的に断行した無謀は、中国民衆の福祉のためにも黙視すべきではない。』
『経済的に統一体をなさざる中国に、強権によって中央集権的な幣制改革を断行しても、華北、長江流域及び西南等それぞれ全く事情を異にする経済は自滅の外にない。
さらに今次の改革は、一部財政家と財閥が結託し、全然国民の利益を無視して行った点に許すべからず過誤がある。従来、中国の国民経済と政府を中心とする経済とは厳然たる別個の事実があり、この両経済は、政権の推移とは別個の独自自然のコースを取ってきた。然るに、今次の改革により、国民自体の経済生活は直接政権と不可分のものとなり、一蓮托生の運命に置かれるに至った。南京政府が破綻するときは、その負担は全部４億民衆に転嫁される。』
『事前の各種準備に欠き、また改革実行の人材なく、かつ各国の諒解なく行われた改革は、早晩おそらく数ヶ月を出でずして破綻するに相違ない。しかも国民政府の今次の処置は最後の切り札なのだから、その後はもはや収拾の途がない。帝国としては隣邦の民衆がみすみす破滅の淵に追い込まれるのを黙視できない。ゆえに帝国政府としては、すべからく今次の改革の反対の理由を明記し、明確な態度を内外に表明するとともに、改革案を中止せしめることが中国を救う唯一の途であると信ずる。』
『現銀の上海集中は華北を経済的に死滅させる外ならず、少なくとも国民政府の統制化にある華北の中国系諸銀行においてこれを保管するのが当然である。・・それを実行する能力無き場合は、我方は実力をもってかく実行してもよいと信じる。』
⇒これを、現代史では軍事的発言というが、どこからそう思うのだろう。
◆法幣改革で、日本などの外銀が問題になるのは、手持ち銀である。手持ち銀を要求どおり引き渡せば、怪しい紙幣と公債を受け取ることになる。この法幣改革に対して、日本は断固たる反対の意を表明して、在支の邦銀は持ち銀引渡しを拒否した。
一方、経済界の金融・産業部門に置いては、経済的利害関係が強く中国と結びついており、日支経済提携の議論は国内外問わず多く、重要な案件となっていたため、法幣改革の翌々年の昭和１２年３月１２日〜２２日に佐藤外相は児玉謙次郎日華貿易協会会長を団長に、加藤朝鮮銀行総裁・宮島日清紡社長等を一向とした日中親善経済使節団を派遣。佐藤外相は、この交渉に先立ち、『日中間の問題は私の考えへでは、出発点を新しく見直してみたい。』『従来の行き掛りを水に流して平等の立場に立って、改めて1つの交渉をするものなら交渉してみたい。』と熾烈な外交交渉とは無縁の「すっとんきょう」の演説に終始したが、結局はさしたる、外交結果は得られず、蒋介石に『支那の法幣改革に協力』を約束させられ、邦銀所有の手持ち銀を全て取り上げられることとなる。その後、この邦銀の謙譲した手持ち銀は抗日の兵器購入等にあてることになる。この邦銀の現銀のいくばくかは、その年に勃発した支那事変の国民党中央軍に役立ったはずである。
◆◆ 参考 ◆◆ 対中外交 失態史
| 年月 | 事件名 | 大臣／大使 | 取った行動 | 本人談 | その他 |
| 昭和２年３月 | 南京事件 | 幣原外相 | 英米等が共に軍事行動を取るように要請があるが、無抵抗主義を取り断る、邦人に多くの犠牲者を出す | 日本は中国に多くの権益があるので、うかつに手を出せない。 | 日本人被害が少なかったのは、幣原外交の成果⇒そんな事実はどこにもない。 |
| 昭和２年３月 | 南京事件 | 森岡・南京領事 | 引き揚げの際、真っ先に車で避難。しかたなく、他の在留邦人は同胞に引き揚げ通知してガタ馬車で引き揚げ | 支那側師長に『日本官氏は御国の官氏のように金持ちでもありませんから、損害も少ない。ご好意に感謝する旨』の挨拶 | 他の居留民が歯軋りして眺めていた。 |
| 昭和２年３月 | 南京事件 | 森岡・南京領事 | 保護のため派遣された荒木大尉が責任を取って自殺、 | ⇒領事から通達がなかったため、銃は入城する際取り上げられ、丸腰の警備しかできなかった。 | |
| 昭和２年３月 | 漢口事件 | 高尾・漢口総領事 | 曖昧な引き揚げ命令を出す | ⇒その後、旅費を出す出さぬで問答があり、 | ⇒なかなか決定しないので、居留民団で立替 |
| 昭和１２年３月 | 邦銀の保有銀の取り上げ | 佐藤外相 | 日中親善経済使節団を中国に派遣 | 『支那の法幣改革に協力』する名目で邦銀の保有銀の取り上げられる。 | 蒋介石の法幣改革を絶賛する書物さえある。⇒事実／大インフレになり、蒋介石は政権を失った。 |
| 昭和１２年７月 | 盧溝橋事件 | 川越大使 | 休暇で華北にいた。その後、本省の再三の訓令にも関わらず帰還せず | ||
| 昭和１２年８月 | 上海事変 | 川越大使 | 本庁から『南京政府と交渉するよう』訓令 | ⇒『この時点において南京と交渉しても得るところなし。』回答 | ⇒その後、立ち切れ |
| 昭和６年９月 | 満州事変 | 幣原外相 | |||
| 昭和６年９月 | 満州事変 | 幣原外相 | |||
| 昭和１２年３月 | 邦銀の保有銀の取り上げ | 佐藤外相 | 日中親善経済使節団を中国に派遣 | 『支那の法幣改革に協力』する名目で邦銀の保有銀の取り上げられる。 | 蒋介石の法幣改革を絶賛する書物さえある。⇒事実／大インフレになり、蒋介石は政権を失った。 |
◆この法幣制度には、日本陸軍は、よほどの危機感を持っていたことが想像される。「新幣制は、西南・北支を金融・財政的に従属せしめ、惹いては政治的に独立性を失う」として、満州と接する北支金融の独立工作を急いだ。（事実、西南の広東・広西の軍閥は、あれほど蒋介石に抵抗したにも関わらず、法幣制度の前に屈せざる負えなかった）
◆この時点で、日中は本格的な通貨戦争に突入する。紊乱した中国の法幣改革は蒋介石国民政府の地盤を強じんなモノにして自信を与えた。その理由は
�）（床�革の名の元で、調達した現銀が豊富な資金源になり、軍需資材の購入が円滑に成る。
��地方軍閥は貨幣券を奪われ、好むと好まぬに関わらず、従属するはめになる。独自に発行してきた貨幣は兌換もできず紙切れ同様になるため、相当な経済的圧迫である。「お金がないと戦もできない。」状態となる。
��勝手に貨幣を乱発してきた金融界を筆頭とした財界も、貨幣の発行が不可能になり、国民政府に協力せざる得なくなる。
�し从儚萋阿砲�いても、国民政府と国民が一体となり、不可分の関係になる。
�ツ眠澤�を独占することにより、通貨の増発や絞込みも自由自在になり、他の通貨の競合も気にすることがないので、独自の思い切った経済政策が取れる。
��政治的統一を行う、最大の足固めができた。
◆国民政府は、中央軍の駐屯部隊を使い法幣をばら撒いた。
中央軍が行った共匪討伐も、派遣された部隊が駐屯地帯に法幣を強要させ、兌換した現銀を上海に輸送させる。
長征で逃げ惑う共産党が四川が来た昭和１０年頃には中央軍も四川に駐屯し、ここで１億元の中央銀行券を発行したといわれる。
四川を逃れると、今度は、共産軍は陝西省北部に根を下ろす。そこには、黄河を挟んで山西省がある。
山西省には、閻錫山がおり、豊富な地下資源を背景に製鉄・ガラス・化学などの産業を興し優良省に育て上げ、「山西モンロー主義」を唱えた人物でもある。
閻錫山は、川岸にトーチカを設け、省民には共産党の脅威を説き警戒させ、共産軍の侵入に退去する。しばらくすると、共産軍の後を追うように陳誠の中央軍が北上してきた。国共両軍はしばらく睨み合って動かず、戦闘らしい戦闘もしなかったが、ある日、突然、共産軍は陝西省の奥地へと逃げ帰ってしまった。
哀れなのは、閻錫山である。中央軍の置き土産として法幣だけが残り、山西票はある程度信用ある貨幣であったが、法幣に取って代わったのである。それ以降、閻錫山は中共と妥協し（犠牲救国同盟会の成立）、反共から「連共抗日」路線への転換を余儀なくされたのである。
中央軍は戦闘ばかりではなく、法幣を広める十字軍の役割を果たした。また、国民政府の及ぶ範囲には、商取引の際には法幣を強要したので、昭和10年６月から１１月だけでも新たに、約２億五千万元の法幣が取って代わったとされている。
◆
● 中華民国通貨の為替相場
| 年 | 法幣の為替相場（対英） | 日本;【蒙疆】の通貨工作 | 日本【華北】の通貨工作 | 日本【華中】の通貨工作 | 中国の通貨工作 | その他 |
| 昭和１０年下期 | １ｼﾘﾝｸﾞ２．３/８ﾍﾟﾝｽ(100) | 11月；法幣改革断行 | ||||
| 昭和１１年上期 | １ｼﾘﾝｸﾞ２．３/８ﾍﾟﾝｽ(100) | |||||
| 昭和１１年下期 | １ｼﾘﾝｸﾞ２．３/８ﾍﾟﾝｽ(100) | |||||
| 昭和１２年上期 | １ｼﾘﾝｸﾞ２．３/８ﾍﾟﾝｽ(100) | |||||
| 昭和１２年下期 | １ｼﾘﾝｸﾞ２．３/８ﾍﾟﾝｽ(100) | ９月張家口（現在の河北省に位置）を中心とした察南政府樹立後、中央銀行である察南銀行設立 | 7月〜10月；上海事変、12月；南京攻略 | |||
| 昭和１３年上期 | ８．１/４ﾍﾟﾝｽ(67) 《３月〜》 | ３月；（北京・天津等）中国聯合準備銀行設立 | ３月；対抗する形で「外貨割当制」発布 | この「外貨割当制」発布が、結果的には法幣暴落の切っ掛けになる | ||
| 昭和１３年下期 | ４．１/２ﾍﾟﾝｽ(36) 《７月〜》 | １２月；蒙疆（内モンゴル・新疆）地区に蒙疆銀行設立。事変後、設立した済南銀行に地元の２行を加えて設立。 | １１月；国民政府の日貨排除に伴い、上海以外を軍票とする。 | １０月；『査禁日貨条例』発布。日貨の流通が著しく増大したため、厳重に日本貨の輸入禁止 | 7月〜11月；日本軍による武漢戦／10月〜11月：広東攻略 | |
| 昭和１４年上期 | ４．１/２ﾍﾟﾝｽ(36) | ３月；聯銀の名の元で、華北において、国民政府の通貨；法幣の禁止する。 | ５月；維新政府によって、華興商業銀行を設立する。華興通貨発行。 | ４月；天津で親日の中国要人が暗殺されたのをきっかけに英仏の天津租界封鎖（注１） | ||
| 昭和１４年下期 | ４．１/２ﾍﾟﾝｽ(36) | １２月；上海も含め、全て軍票とする。 | ７月；香港上海銀行、法幣の市価公示を停止して、闇相場による為替供給の防止に努める。（注２） | |||
| 昭和１５年上期 | ３．１/４ﾍﾟﾝｽ(26) 《５月〜》 | |||||
| 昭和１５年下期 | ３．１/16ﾍﾟﾝｽ(25) | |||||
| 昭和１６年上期 | ３．１/16ﾍﾟﾝｽ(25) | １月；中国儲備銀行；６日南京にて開業、２０日；上海にて開設 | ||||
| 昭和１６年下期 | ２．31/32ﾍﾟﾝｽ(24) 《８月〜》 | ８月；重慶の国民政府は上海の１４銀行を通じ、為替を固定する（対英；３．5/32ペンス）（注３） |
(注１)華北で、法幣の禁止した直後の４月９日に親日の中国要人が暗殺さる。直接の関連は不明であるが、いかにもありそうな話である。日本側は、再三に渡り、英国総領事に犯人の引渡しを要求。６月６日、英国側は日本の最後通牒をもっても断固拒否したため、６月１４日、英仏の天津租界封鎖する。その後、有田外相と英国の駐日大使との間で話し合いがもたれたが、決裂に終わる。
（注２）
（注３）法幣価格と実質価格の差異が大きく、極度の輸入不振に陥る。
※当初は、予想外に成功だった法幣改革も、戦況が悪化しだすと、法幣を乱発して、インフレを起こすことになる。
外貨を売って、必死に買い支えていた国民政府も投げ出し始める。
日本のカウンターパンチも少しずつ利いて来る。日米開戦前には、当初の１／４まで値段が暴落する。
◆日本側は、この通貨戦争に対して取った戦略を分類すると下記のようになる。
【蒙疆地区】
================================================================================================
【華北地区】
第1次通貨工作
《目的》華北地区の現銀の南進（上海・南京）を防ぐ
《背景》法幣改革と同時に、孔財政部長は、銀国有令を発布し、天津銀行公会に対し華北における銀
を上海に輸送 するよう命じる。
《期間》昭和１０年１１月〜
《方策》傀儡政権を造り、華北に新紙幣の増刷・中央銀行を設立。国民政府に対し妨害工作を呼びかける。
☆ ☆ ☆ ☆
●法幣制度が発布した３週間後の11月25日に、華北において冀東防共自治政府、同30日には冀察政務委員会という2つの傀儡政権が設立される。
昭和１１年５月以降、冀察政務委員経済委員会は河北省銀行にて新紙幣を発行し、北京・天津などの地方に流通させ、冀察防共自治政府では、首都通州に資本金５００万元で冀察銀行を設立させた。
そこで、日本の造幣局で紙幣の製造を行い、朝鮮銀行において、無制限の交換できるように用意する。
そして、国民政府が日本側は、法幣制度を施行すると、「北支金融緊急防衛令」で３項目の内容（１．現銀の南進を禁止すること。 ２．中央に対する送金を停止すること ３．金融機関に対する監督を厳重にすること）で、各傀儡政権の将軍に指示を流す。予定通りの行動である。
しかし、ここで、どういうわけか、ほとんどの将軍は何ら行動は取らなかった。従ったのは冀東防共自治政府のみで、冀察政務委員会、河北省、山東省の各将軍は日本側の命令を無視し、対法幣工作は、あっけなく幕を閉じる。静かに時間だけが流れ、英米の演出で、国民政府が主演の貨幣権の攻防の１幕は何の感動も呼ばなかった。関が原の小早川 秀秋が束になって、そこにはいた。土肥原少将の飛んだ見損ないである。
華北分離政策までやり、新たに冀察銀行まで設立し、満州興業銀行・朝鮮銀行・日銀まで巻き込んだ大規模な対通貨工作にしては、余りにも情けない終わり方であった。
特に、冀察政務委員会の宋哲元将軍に裏切られたことは、彼を押した土肥原少将にしたら、後々、後悔しただろう。相当に応えたことは想像に難くない。
第２次通貨工作
《目的》盧溝橋事件が起こり、華北に新たな駐屯軍隊が発生したために軍費支払い通貨の必用が生じる。
《背景》支那事変の当初は不拡大方針のため、一時的な戦闘と判断。軍費支払い通貨策の考慮されず。
《期間》昭和１２年７月（盧溝橋事件）〜
《方策》当面の処置として、天津・済南・青島で微量に発行していた朝鮮銀行券を１千万円新たに発行して
その場をしのぐ。
☆ ☆ ☆ ☆
●支那事変は突発的な戦闘であり、何の用意もなかった。軍票を発行する準備もしていなかった。
日本軍が考えていたのは、当時、華北地区では朝鮮銀行天津支店で発行していた朝鮮銀行券の流用である。
事変当時、天津・済南・青島で過去５年間で大体３００万円〜５００万円の流通量を保っていた。
さしあって、１千万円の朝鮮銀行券を発行する。
軍票を発行しなかったもう１つの理由は、軍票というものは徴発通貨であり、中国民衆と敵対しない状態にしたいという配慮があった。一番大きい理由は、印刷が間に合わない物理的理由であろうが。
軍票や新たな通貨を極力発行しない手段もある、それは、日本内地からバンバン物資を輸送することであるが、これは、輸送に困難を要したことと日本内地でもすでに物資不足が深刻化しており、この案は立ち切れになる。
朝鮮銀行券は外貨との交換ができない通貨であり、ガソリン等の買い付けができず窮することになる。
また、通貨を発行するには日本円なり法幣などの中国通貨等の正貨の引き当てが不可だとしたら、そんな通貨は信用されない、当然のように下落に転ずる。朝鮮銀行券は使用に耐えられず、敵性通貨である法幣を使わざるをえない。これでは、当初法幣を駆逐する趣旨にも反する。
軍政を敷くことは天津等に外国租界もあり、まして、不拡大の堅持の方針から考えればできぬ相談であった。
日本軍は戦闘には勝ったが、通貨面ではにっちもさっちもいかない状況になっていた。
この当初の通貨事情から鑑みても、日本は支那事変を計画的に実行したのでも軍部が独走した理由でもないことがわかる。
第３次通貨工作
《目的》朝鮮銀行券の下落。物資の購入も著しく困難を極め、新たなる通貨工作が必用に成ってくる。
《背景》日本との関係が浅からぬ河北省銀行を利用。
《期間》昭和１２年９月（推定）〜
☆ ☆ ☆ ☆
●河北省銀行券を流通させるには、河北省銀行券の信用を高めることが重要であった。
そのころ、需要の高まっていた綿花の買い付けを河北券に限ると通達を出す。綿花商人は金票を河北券に替え、奥地の農家と取引する所、法幣でないと取引してもらえない状態が続く。
綿花商人は、しかたなく手持ちの河北券を法幣である中国、交通の両銀行券に兌換した上で商売しなくてはならなかった。中国での銀行の決済も中国、交通の両銀行でのみ行われるので、中国、交通の両銀行券兌換した河北券は、
中国・交通なりの河北省銀行の預金高から切り落とされ、河北券は河北銀行に返却される。
よって、河北券は一部に流通するのみで終わり、河北銀行には中国、交通の両行から返却された河北券が山のように詰まれ、またもや華々しい成果は見出せなかった、といより敗北である。
河北券の価値を誤った、完全なる市場調査不足である。
第４次通貨工作
☆ ☆ ☆ ☆
《目的》今までのゲリラ的な通貨工作の反省に立ち、河北・山東・山西の華北地方を網羅した中央銀行
(中国聯合準備銀行)を設立。
《背景》。
《期間》昭和１２年11月〜
●)法幣」改革のほぼ２年後の昭和12年11月22日には、「華北連合銀行（仮称）設立要網」を閣議決定して、北京・天津を中心とした華北地域に中央銀行を設立する案を作成、南京攻略の目処がたった１２月１４日に王克敏を行政委員長とした中華民国臨時政府を設立。
手始めに、法幣によってもたらされたいた円安の為替を中国元の等価まで戻す「円元パー」政策が取られた、この決定が下された中国連合準備銀行条例が公布された昭和１３年２月５日時点では、日本円１２０円＝中国元１００元であった所、朝鮮銀行を使って、多量の円を買わしめ、連銀オープンの前日の３月９日には、為替市場では、日本円１００円＝中国元１００元の円元等価の「円元パー」に成功する。
この当時、華北には、重慶政府系３銀行を中心に現銀が、４０００万元程度残存していた、これを日本の北京大使館の残された強制搾取できない現銀分を含めると５７００万元程度になる。この現銀を出資して、華北の中央銀行設立の資本参加を呼びかけたが、中央・交通の各銀行支店長からは『本店との打ち合わせ』との口実で香港に逃げられてしまい、この計画も頓挫する。
中国の中央・交通・河北等各銀行の上に立つ中央銀行の位置付けにある聯銀であったため、中央・交通の各支店長には理事のポストを用意したり手を尽くしたが、いざとなると不誠実極まりない行動に終始し、現銀の引渡し要求には応じない、かといって、中国の各銀行は英仏租界内にあるので強制摂取もできない。中央銀行の設立は難航した。
他にも、聯銀の銀行検査の拒否。保有していた現銀を外国銀行に引き渡そうとする愚挙に出ようとする。
しかたなく、邦銀３行（横浜正金・興銀・朝鮮銀行）と日本の国庫保有金を当て資本金に充当した、華北に流通している法幣３臆を含む総額４億円と見られ発行準備金に当てるべき、回収作業に当たったが、暴落しているとはいえ、法幣の信用には敵わず、回収作業がはかどらない。
そして、３月１０日に北京を本店、天津を支店とした、中国聯合準備銀行がオープンする。しかし、その４日後の３月14日には国民政府により逆襲にあう。
「連銀紙幣」を狙い撃ちするような「外貨割当制」発布され、政府の外国為替供給が制限されると、「連銀紙幣」の供給がストップされる、日本側の法幣錯乱の意図は、これまた、思うように進行せずに、日本側にも暗雲漂うこととなる。
● しかし、この「外貨割当制」がヒョンなことから副産物を生むことになる。外国企業が中国民本企業に外貨を供給する必要性から、上海に歴然とした闇市場成立することになるのである。
これによって、上海経済は政府統制化の結びつきは弱まり、国民政府は、為替相場の他に上海の闇相場さえも維持せざるえなくなる。
国民党政府の政策に関わらず、資金の流出（金・銀の流出と外貨の逃避）を可能にし、中国全土の資金が上海に集まり、その資金が外国に流れるという構図を造ってしまった。
前半の日本軍の攻略で、国民政府は多くの富を失い、中国の経済は、より上海を中心としたものになったが、国民政府との関係は脆弱なまのとなる、しいては、蒋介石のバックであった「浙江財閥」との関係も疎遠なものになり、国民政府が、地方の一政権となったといっても過言ではない。
● 聯銀券もけっして順風満帆であったわけではないが、敵性通貨法幣の駆逐と言う目的からすれば一応の成功を収めたといってもよいだろう。通貨発行高は昭和１３年６月末の５，９００万円から１年後の昭和１４年６月末の２億６，４００万円の約４．５倍に通貨量を増やしている、これは順次流通量が増え、外国租界当局においても聯銀券を受け入れるように至った。
統計の数字としては月が上記の通貨量のそれとは若干ずれているが、昭和１３年３月の昭和１４年３月の１年間で貸付金は３，０００万円から１億６，０００万円へと５．３倍、預金は８，０００万円から１億８，０００万円へと２．２５倍の増加となっている。
ただし、これ以降は法幣の下落により、極端なインフレーションを起こし、法幣にリンクした聯銀券も発行量を増やすことになるため参考とならない。目的は、敵性通貨法幣の駆逐と錯乱にあり、イギリスからの貨幣権の奪取にある。アジアにユダヤ的な支配が及び、主権が侵害される。
この見えざる手は、合衆国憲法の内で最も厳しい条項が『中央銀行法を禁じる法』とされているが、そんなコトはお構いなく「アメリカ連邦準備銀行」を設立させ、操り人形であるウィルソン大統領を介して戦場に引き込むことに成功させ、何百万人の若者が戦場に散り、何十億ドルの戦費を背負った。第1次世界大戦だけでも、少なくとも１０００億円の利益を上げたとされている。現在までアメリカから連邦準備銀行を通じて暴利を貪り続けている。
見えざる手は、アメリカの通貨・経済の支配権を完全に握ってしまった。
「アメリカ連邦準備銀行」の欺瞞には勇敢に立ちふさがる男がいた。銀行委員長でもあるマクファデン下院議員である。マクファデン議員は「連邦準備銀行」の腐敗を追求した。
『議長、この国には世界一腐敗した組織があります。連邦準備局および連邦準備銀行のことを申し上げていす。
政府の１組織、連邦準備局が合衆国政府を、合衆国国民を騙し、国債の支払いの充てる金を巻き上げていす。
連邦準備局および連邦準備銀行の強奪・不正行為が重なり合って、この国は国債の支払いのために数回以上
に渡って、多額の金を負担させられて来ました。
このような不正組織が合衆国の人々を貧乏にし破産させるいるばかりか、組織自体、破綻をきたしていて、
我々の政府を破綻させているのも同然の状況を現出しています。
こうした組織を管理する法の不備、連邦準備局に法の誤った施工、同組織を支配する強欲な金持ち連中の
腐敗した金持ち連中の腐敗した慣習がこのような状況を生み出したのです。』
『一部の人は、連邦準備銀行は合衆国政府の組織だと考えています。ですが、そうではありません。
私設の独占貸付業であり、自らの組織のために、外国の顧客、内外の投資家および相場師のために、大金
持ちで、自分のことしか考えない金貸しのために、合衆国国民を食いものにしています。
金融海賊ともいうべき腹黒い連中の中には、相手のポケットの１ドルを奪うためなら、その喉元を切りつ
けることさえ厭わない連中さえいます。』
しかし、この勇敢で骨のある政治家マクファデン議員は狙撃と２回の毒殺に逢い、この３回目の暗殺で帰らぬ人になる。
世界最大の金・ダイヤモンドの利権を狙った南アフリカでの戦争では、ケープ植民地である農民であるボーア人は３年にも及び勇敢に戦った、ボーア人が停戦にいたったのは、ロスチャイルドの下僕であるミルナー卿が造った過酷な環境である強制収容所で２万５千人及ぶ女・子供が死んでいったからに他ならない。
ボーア人は勝つ見込みがない戦争に果敢に戦った、国家主権の維持と独立のために多くの犠牲を払うことを厭わなかった、しかし、中国では１人のマクファデン議員も１人のボーア人も現れなかった。
● ここでもう一度、初代ロスチャイルドの発言を振り返ってみたい。
『我に、一国の通貨の発行権を与えよ。さすれば、その国の法律を誰が作ろうと、そんなことは意に介さない。（どうでもよい）』と
これは、直接の通貨の発行権でなくとも貨幣を操作できる権限が与えられいればよいと意味にも取ってかまわないだろう。一国を支配するには貨幣権さえ握っていればよいと。
銀買い上げ法であるピットマン法に経済が苦しみ、リース・ロスのやり方がいかに巧みであったとしても、１国の貨幣権を安々と諸手を挙げて引き渡すとは・・・。
魯迅の言うように 「国民の精神を変えなければ、不幸は無くならない！ たとえ支配者が何度変わろうとも、中国人一人一人の中に染み込んだ奴隷根性がある限り、我々はずっと支配されつづける。」 ということだろうか。しかし、現在においては、日本でも日中戦争を取り扱った書物は多いが中国での法幣を扱ったものはほとんどない。
あったとしても、中国の通貨制度に非協力であったとして、無理やりに『日本の侵略』と結びつけるモノが多い。
これは、国家主権の維持と独立に余りにも鈍感になった証拠ではないだろうか。
国の主権である『国体』がバラバラになることを極端に恐れていた背景がわからないと、『国体』＝右翼という発想しか生まれてこないだろう。
おせっかいなまでに、中国の貨幣権の英国からの略奪を危惧したのは当然日本への影響もあろうが、磯谷陸軍武官の『隣邦の民衆がみすみす破滅の淵に追い込まれるのを黙視できない。』との発言もまんざら方便とは言い切れないだろう。
● それでは、法幣の徹底した駆逐作戦には下記のようなモノを挙げる事ができる。
《法幣価格の下落を意図した作戦》
１、直接的な通貨工作
1.1 国民政府に財政悪化を起させ、インフレを引き起こす。
⇒これは、法幣にリンクした聯銀券が同時に下落することも見越した捨て身の作戦
1.2 日本の影響下にある通貨（ 聯銀券・蒙疆券 他）量を伸張して流通する地域の拡大、それに伴い
法幣圏の後退を画策する
1.3 法幣の安定基金を底をつかせ、為替の操作を難しくさせる。
1.4 海関などの接収等で財政封鎖を行い、国民政府に税収の不足を引き起こす。
⇒第2次上海事変等で沿岸部の主要な海関を接収する
２、物資欠乏させる物的圧迫に出た敵対通貨工作
2.1 経済封鎖⇒支那事変で沿岸部の主要なる工業・農業地域を差し押さえたことで当面の目標達成する。
2.2 生産力の低下⇒同上
2.3 輸入減少⇒上海などの主要な貿易港を日本が押さえる
2.4 物資輸送路の遮断⇒産業基盤の上海・広東から国民政府のある重慶までの鉄道/道路の破壊
2.5
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2007年06月06日(水) 16:50:14 Modified by yuyu122222