英米の暗躍 ２
◆上海事変が収束間もない昭和１２年１１月、ベルギーのにおいて９ヶ国条約（中国の領土保全を９ヶ国で約束した１９２２年の条約で、中国と8ヶ国)会議が開催されている。
このブリュッセル会議には、日本は拒否して欠席している。『中国の一方的な宣言に基いて、日本を「侵略者・条約の違反者」と決め付ける連盟決議には承認できない』との理由からである。
９ヶ国条約は、日本以外は欧州各国が名前を連ねているが、実質的には、日本対英国の構図である。後の各国は英米の追従国家である。（正式には、アメリカさえもイギリスの追従国家であるが）
しかし、この時のブリュッセル会議は歩調が合わなかった。『日本を非難する決議』に、イタリアは歴史的な反対票を投じ、ドイツは日本同様出席さえせず、他のスカンジナヴィア共和国も追従外交を止めた。
結局、ブリュッセルで開催された９ヶ国条約会議は無期延期の形を取る。英国一国の国際的支配の陰りが、ほんの少しだが見えてきた。
欧州においても、その頃、日に日に共産党の脅威が増しており、防共協定が利いたコトにもなる。
『平和会議』など銘打っていたが、実情は、平和など求めず、プロパガンダに終始していた。９ヶ国条約に集まった各国の新聞には、蒋介石の夫人；宋美齢のプロパガンダの記事を連日のように載せている。近衛首相は、事変が始まった後、早期停戦を目指してドイツ を仲介国とする交渉を行ってきた、所謂、トラウトマン和平工作であるが、その事実は、まったく封印された。そればかりか、新聞記事には、『日本が中国の侵略を止めるには、日本への石油供給をストップさせる方途が最善の策』と云わんばかりの論説が踊っている。
欧米でも、賢明なジャーナリスト（少数ではあるが）は、そんなことをすれば大きな戦争になりかねないと危惧している
◆このブリュッセル会議から、１ヶ月程遡るが、昭和１２年１０月にて、国際連盟で「対日決議」に始まり、翌年の昭和１３年２月には、国際連盟にて、全面的な「中国援助」の骨子が固まり、声明文が出される。
その内容は、
�］¬疏躄颪蓮■隠坑械掲�（昭和１２年）１０月６日の決議において、中国に対し道義的援助を保障する。
�∀¬噌颪�中国の交戦力を弱め、日中の紛争に就き、中国に対し困難を助長する如何なる行動も差し控えること。
�Ｏ¬噌颪蓮△匹猟�度まで、中国に援助可能か調査を勧告
この声明は、調査などもっともらしいヤンワリとした表現での声明文になっているが、イギリスが連盟各国に睨みを利かせているとも言える。援助調査などやりようがないから、実質的には、イギリスの強制である。
国際連盟で、この声明文が出されたのは、昭和１３年２月２日であるが、その時点で、欧州各国は競って、武器を乗せた船舶を出航させており、後付けの形式的な声明文に過ぎなかった。下記の表は、その年の２月１日〜２月１５日までに、国民政府（その時に、漢口）に輸送するために、香港の港に着いた武器・爆弾類の貿易統計である。
※この他、爆弾・飛行機用機関銃等諸々があるが、省略する。これは、昭和１３年２月１日〜２月１５日の半月の香港での貿易統計である。ソ連から、香港などの表玄関よりも、外蒙古や新疆などの大陸ルートを通じて兵器の輸送を行っている。
◆この声明文が、発表される前日(昭和１３年２月１日)に、英米の暗躍の邪魔者が出てくる。これまた、アメリカの上院議会でのウイリアム・ポラー共和党議員の発言である。
『アメリカの最近の対英外交を見るにつけ、軍備拡張に関しイギリスと同盟を結んでいる感が抱かしめる。
昨今の世界の情勢は、先の世界大戦の状況を彷彿させる。先日、英国議会においてイーデン外相が「英米間において、諒解が成立し、今後なお協議継続中。」との声明を発表。これに対し、英国議会で１議院から、「その諒解とは、如何なる内容のモノか？」と質問を浴びせられた時、イーデン外相は「それは、発表できぬ。」と答弁している。
このような声明は、全世界に対し、英米両国が秘密裡の協議を行って、暗躍したような疑義も持たれるものである。』
『ここで注目すべきコトは、イーデン外相のこの声明前に、すでに、イギリスは「海軍の軍備拡張計画」を発表し、その直後、アメリカが、追従するように「建艦計画」を発表したことだ。これは、米英が暗黙裡に軍事同盟を結び、軍事拡張にあたらんとするものである。
このような艦船の増強政策は、必ずや第３国から誤解を招き、英米間で軍事同盟が存在せることを確信させるものである。』
この頃は、英米間で軍事同盟が結ばれるていることは、英米以外の第３国では暗黙の了解事項である。
先の大東亜戦争は、日米対戦の色合いが強いが、一般的なアメリカ人は初めからこの戦争には積極的ではなかった。
初めから、戦争を仕掛けたかったのは、戦争により利益を得ようとする一部の金融利権業者とイギリスの意向によって動いているルーズべルトとその周辺の政治家の一部に限られてた。多数のアメリカ人はイギリスの宣伝に乗せられ、軽率にも欧州大戦に参加させられたことに後悔していた。
第1次世界大戦でアメリカは１０余万の犠牲者を出し、５００億ドルの戦費を払っても何も得るはなかった。『戦争を絶滅する戦争』と言われて参戦したものも、今になってみれば、雲散霧消の状態である。
そればかりか、参戦に際し、１００億ドルの戦費保障も無視させられ、どさくさにまぎれ、対戦直後には、イギリスにメソポタミアの油田の利権も独占される。フランスとアメリカはこれに抗議したが、フランスに少しの利権を与えるとことの『サン・レモ条約』の条文を勝手に作り、アメリカを無視した格好になったが、アメリカもこれに猛然と抗議したため、アメリカ・フランスに双方２５％ずつの権利を保障することで一応の決着は付いたが、わだかまりは続いている。
アメリカとしては、『平和と人道』のために戦った戦争がいかに頼りなく信頼おけない相手に協力したかは思い知らされたはずである。
アメリカの議会も漫然として、イギリスの宣伝や反日分子の扇動に安々とはまって行ったわけではない、先の大戦のように英国との密約にはナーバスになっている。議会では、英米軍拡路線に対する牽制と攻防が高まっていた。
紙面の関係で大方は省くが、議会のやり取りの例を２・３挙げておきたい。
上記のウイリアム・ポラー議員の質問を受けてかはわからないが、突然、アメリカ海軍の作戦部長であるリーイ提督は、海軍公聴会において、『アメリカ海軍は、英国海軍当局と折衝を続けているのは事実である』と証言するのである。
これを受け、ジィセフ・シュウナン下院議員が、『イギリスは常にアメリカの外交方針を誘導してるではないか？』
『今回の軍備拡張計画の背後においてさえイギリス外交が糸を引いているものであり、この火中の栗を拾わせる如き英米密約交渉の経緯を公表せよ！』とリーイ提督に詰め寄った。しかし、『これは、軍機に関すること』という名目で拒絶される。
モンタギュー・ノーマンが『ルーズベルト君、シッカリしてくれよ。だから言ったことじゃない。』と愚痴ったかどうかは不明であるが。
◆ところが、英国議会で「英米の軍備拡張計画」の声明を出したイーデン外相（チャーチル首相の時の外相でもあり、戦後、首相を務める）が、同年の昭和１３年２月２０日に、突如、辞任を発表する。これは、世界的にセンセーショナルを起こした。チャーチルは自署の「第2次世界大戦」でこう語っている。
『2月20日の夜遅く、私がチャートウェルの古い部屋にいると、イーデン（外相）が辞職したという電話の知らせがあった。私は告白するが、私はすっかりがっかりし、しばらくは暗い絶望の波に圧倒された。
チャーチルの自伝には、このように、度々、このように打ちひしがれる場面が多いので、大して信用は出来ないが、心情だけでも伝わってくる。
これは、当時の首相チェンバレンとのイタリアのエチオピア侵攻を巡って、国際連盟の考えでの確執があったとされている。
◆昭和１０年１０月にイタリアがエチオピア侵攻を開始し、翌年の５月にエチオピアを併合。
これに抗議した国際連盟はイタリアに経済制裁を加える。そして、昭和１２年１２月にイタリアは連盟脱退という形でこれに答えた。
これは、「パックス・ブリタニカ」へのムッソリーニが公然たる挑戦だった。余談であるが、同年１０月には、ムッソリーニは日本の対中国行動を承認。翌月の１１月には、日独防共協定にも参加している。
イタリアは連盟脱退の影響は大きく、英仏が歩調が合わず、他の欧州追従国家は動揺した。
これは、イギリスがエジプト・インドと利権があり、地政学的にはイタリアのエチオピア侵攻が関心があったのに反して、フランスは、インドネシアに植民地を持っているが、当面の関心は中欧を虎視眈々と狙っているドイツにあり、他の弱小国家はエチオピアなどうなろうと関心がない国々である。
今までだと、何があろうと理由などなく、イギリスに追従していた欧州の弱小国家も形式的な制裁の形に留まり、国際連盟の顔を立てる程度に終わった。
イギリスは「集団的平和保障機構」の効力を何も発揮できず、さりとて、極東に厄介な問題も抱えており、地中海に単独で兵力を注入することもできず、かくして、イタリアは当初の目的を貫徹することになる。国際連盟の限界やらパックス・ブリタニカの陰りを露呈することになる。
近代史では、何が何でも「国際連盟」や「国際連合」を『錦の御旗』の如く祭り上げ、これに刃向かい脱退した日・独・伊に対し、汚点やら国際秩序を乱した犯罪人ように扱うが、国際連盟も元を正せば、イギリスの防衛条約から作成されており、イギリスの不利益にならない政策は取れないステムになっている。言ってみれば、「国際連盟」の仮面を被った「パックス・ブリタニカ」そのものである。
イタリアの国際連盟脱退騒動で以来、オーストリア・ノルウェーなどの欧州各国は「集団的平和保障機構」に相反する外交政策をとる。つまり、平和を乱す国家に対し、集団的に武力を持って抵抗するのではなく黙認し、妨害しないという処置に転換する。これにより、「国際連盟」の精神が根本より破綻したことになった。
◆これに慌てたのは、イギリスである。当時の首相であるチャンバレンは、「集団的平和保障機構」の修正の必要性を感じ、「国際連盟」の規約に拘束されない外交政策をとることになる。後世では、ドイツ・イタリアに擦り寄った「チャンバレンの典型的な宥和政策」と見る向きもあるが、イギリスに取っては、イタリアは、スエズ運河を通じ、エジプト・インドへ至る大事な海の輸送ルートに位置する。
ここで、イタリアに変な威嚇行動を取られれば、その影響は大である。現実路線でもある。しかし、これが連盟至上主義に固執するイーデン外相の意見と対立して、イーデン外相の辞任を見ることになったのである。
しかし、イギリスとしては地中海に単独に兵力を投入したとしても、極東には日中の争いが不透明であり、国力から考えれば、単独で地中海と太平洋に兵力は避けない、プロパガンダで扇動させ、アメリカの参戦を待つしかない状況が続く。これは、軍事同盟とは至らないまでも日・独・伊が結んだ防共協定がジワリジワリ利いていることにもなる。
イタリアの国際連盟脱退というのも、元はといえば、日本は昭和８年に満州事変がこじれて脱退しており、その先達を付けたのも日本であり、「パックス・ブリタニカ」に最初のの風穴を開けた張本人でもある。
さらに言えば、イギリス従来の略奪・横暴の植民地的支配を、どういう形であれ、中国に於いて邪魔したのも日本である。戦前において、英米のアングロサクソン系に民族の手前勝手なルールに楔を打った国家は見当たらない。
ましてや戦略的が欠けていたとも思えない。英米の圧倒的な物量作戦の中で、ジワリジワリと友好的なカウンターパンチを食らわしている。それも、国政が自己利益に走り、外交はほとんど機能しない中である。
よくここまでやったと賞賛に値する評価もあっていいのではないか。
◆なお、この頃、日本も世界大戦は避けられないと考え、着々と戦争の準備を始めている。
昭和１２年６月には、日本も戦艦「大和」建造準備のため、 三菱重工長崎造船所、技師・工員一一人を呉海軍工廠に派遣。
翌年の昭和１３年３月には、戦艦「武蔵」、長崎三菱造船所で起工している。
◆イギリスの伝統的外交とは、他国の分裂と対抗の上にあって、自らは、それらをリードするポジションに位置することが望ましい。イギリスの意図した戦争は、すでに、始まっていたのである。イギリスは先の大戦で国力が衰退していた。世界の海軍を保有しているとはいえ、地中海と極東に軍隊を派遣するほどの兵力は持ち合わせていない。
望むは、『弱い日本』『弱いイタリア』『弱いドイツ』であり、世論の国であるアメリカを引き込むまでに、じっくりと時を稼がねばならない。
当面は、日本が中国で長期戦になることを望んでいた。戦争が長引き、日本の軍隊が疲労して、兵力を削ぐことだけを。
イギリスにとって、９ヶ国条約に於けるブリュッセル会議など単なる『平和』を装う、プロパガンダの道具しか過ぎなかった。
日本の国力を削ぐためには、共産党系の抗日分子でさえ、モラルサポートをする。自国の国益とあらば、悪魔とでも手を組む。そこには、世界がメチャクチャになろうと関係なく、青臭い思想や心情さえない。ましてや、『平和』や『人権』など頭の片隅には露ほどにも見当たらない。バカなアメリカの世論を見方に付け、アメリカの軍事力は、バンバン浪費させる『刺身のツマ』のようなものだ。
日本の外交官の回想録を読む（例えば、幣原喜重郎「外交五十年」など）と、『私は、単に中国と仲良くしたかっただけなのに。』と捨てられた女子高校生のような泣き言が永遠と綴ってあるが、列強諸国は、『友好』などは単なる国益の道具であり、本気でそんなコトなど考えてもいない。狡猾な列強外交の前では、「借りてきた猫」どころ「南極のペンギン」程度の知恵も策略も、判断や思考さえない従順な小動物にしか過ぎなかった。
その実力ときたら、横綱と幕下どころか、三段目や序二段程度のモノだろう。
国益のためとあらば、悪魔の懐にさえ手を突っ込む英・露・中の芸当など期待する術もない。
いかに武力に勝ろうとも、戦争に於いては、たかが武力なのである。
◆筆者の考えでは、世界３大大戦（日露・第1次世界大戦・大東亜戦争）は、日・英・露・独のどう組むかで決まってくる。日露は、日・英【対】露（独は傍観）。第1次世界大戦は、日・英・露【対】独、大東亜戦争は、日・独【対】英・露。冷戦構造さえ、英（米）・日・西独【対】露（中）・東独。
大事なのは、アメリカの世論を見方に付ける為に、プロパガンダに莫大な費用を投じる。この資金の捻出は、如何にして集めたのだろうか。
これは、アメリカと結託して『銀買上げ政策による銀の乱高下による投機』と『法幣改革に拠る中国の現銀の持ち出し』で、かなりの額を埋め合わせたのではないだろうか？
確固たる証拠には乏しいが、この手のやり口は、イングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンそのものだからである。
←．英米の暗躍 １ 【通貨戦争の一覧に戻る】日本の通貨戦略⇒
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このブリュッセル会議には、日本は拒否して欠席している。『中国の一方的な宣言に基いて、日本を「侵略者・条約の違反者」と決め付ける連盟決議には承認できない』との理由からである。
９ヶ国条約は、日本以外は欧州各国が名前を連ねているが、実質的には、日本対英国の構図である。後の各国は英米の追従国家である。（正式には、アメリカさえもイギリスの追従国家であるが）
しかし、この時のブリュッセル会議は歩調が合わなかった。『日本を非難する決議』に、イタリアは歴史的な反対票を投じ、ドイツは日本同様出席さえせず、他のスカンジナヴィア共和国も追従外交を止めた。
結局、ブリュッセルで開催された９ヶ国条約会議は無期延期の形を取る。英国一国の国際的支配の陰りが、ほんの少しだが見えてきた。
欧州においても、その頃、日に日に共産党の脅威が増しており、防共協定が利いたコトにもなる。
『平和会議』など銘打っていたが、実情は、平和など求めず、プロパガンダに終始していた。９ヶ国条約に集まった各国の新聞には、蒋介石の夫人；宋美齢のプロパガンダの記事を連日のように載せている。近衛首相は、事変が始まった後、早期停戦を目指してドイツ を仲介国とする交渉を行ってきた、所謂、トラウトマン和平工作であるが、その事実は、まったく封印された。そればかりか、新聞記事には、『日本が中国の侵略を止めるには、日本への石油供給をストップさせる方途が最善の策』と云わんばかりの論説が踊っている。
欧米でも、賢明なジャーナリスト（少数ではあるが）は、そんなことをすれば大きな戦争になりかねないと危惧している
◆このブリュッセル会議から、１ヶ月程遡るが、昭和１２年１０月にて、国際連盟で「対日決議」に始まり、翌年の昭和１３年２月には、国際連盟にて、全面的な「中国援助」の骨子が固まり、声明文が出される。
その内容は、
�］¬疏躄颪蓮■隠坑械掲�（昭和１２年）１０月６日の決議において、中国に対し道義的援助を保障する。
�∀¬噌颪�中国の交戦力を弱め、日中の紛争に就き、中国に対し困難を助長する如何なる行動も差し控えること。
�Ｏ¬噌颪蓮△匹猟�度まで、中国に援助可能か調査を勧告
この声明は、調査などもっともらしいヤンワリとした表現での声明文になっているが、イギリスが連盟各国に睨みを利かせているとも言える。援助調査などやりようがないから、実質的には、イギリスの強制である。
国際連盟で、この声明文が出されたのは、昭和１３年２月２日であるが、その時点で、欧州各国は競って、武器を乗せた船舶を出航させており、後付けの形式的な声明文に過ぎなかった。下記の表は、その年の２月１日〜２月１５日までに、国民政府（その時に、漢口）に輸送するために、香港の港に着いた武器・爆弾類の貿易統計である。
| 武器輸入のために入港した船舶 | 飛行機 | 機関銃 | 火薬等爆発物 | 小銃 |
| 英国；１２隻、ドイツ・ノルウエー；各３隻、オランダ・米国；各２隻、伊国・デンマーク；各１隻 | 英国；１７機 | ノルウエー；２５箱 | 英国；700ｔ、米国；500ｔ | 英国・ドイツ；各２００箱 |
| 爆薬 | 戦車 | 高射砲 | 軍用貨物自動車 | 鉄道材料 |
| 英国；１５０ｔ、オランダ；1,500ｔ、デンマーク；2,000ｔ、伊国；5,000ｔ | 英国；400ｔ | 英国；１５門 | 英国；２台、オランダ；１５０台、ドイツ；２０台、ノルウエー；１５０台 | 英国；1,000ｔ、オランダ；1,000ｔ、ドイツ；200ｔ |
※この他、爆弾・飛行機用機関銃等諸々があるが、省略する。これは、昭和１３年２月１日〜２月１５日の半月の香港での貿易統計である。ソ連から、香港などの表玄関よりも、外蒙古や新疆などの大陸ルートを通じて兵器の輸送を行っている。
◆この声明文が、発表される前日(昭和１３年２月１日)に、英米の暗躍の邪魔者が出てくる。これまた、アメリカの上院議会でのウイリアム・ポラー共和党議員の発言である。
『アメリカの最近の対英外交を見るにつけ、軍備拡張に関しイギリスと同盟を結んでいる感が抱かしめる。
昨今の世界の情勢は、先の世界大戦の状況を彷彿させる。先日、英国議会においてイーデン外相が「英米間において、諒解が成立し、今後なお協議継続中。」との声明を発表。これに対し、英国議会で１議院から、「その諒解とは、如何なる内容のモノか？」と質問を浴びせられた時、イーデン外相は「それは、発表できぬ。」と答弁している。
このような声明は、全世界に対し、英米両国が秘密裡の協議を行って、暗躍したような疑義も持たれるものである。』
『ここで注目すべきコトは、イーデン外相のこの声明前に、すでに、イギリスは「海軍の軍備拡張計画」を発表し、その直後、アメリカが、追従するように「建艦計画」を発表したことだ。これは、米英が暗黙裡に軍事同盟を結び、軍事拡張にあたらんとするものである。
このような艦船の増強政策は、必ずや第３国から誤解を招き、英米間で軍事同盟が存在せることを確信させるものである。』
この頃は、英米間で軍事同盟が結ばれるていることは、英米以外の第３国では暗黙の了解事項である。
先の大東亜戦争は、日米対戦の色合いが強いが、一般的なアメリカ人は初めからこの戦争には積極的ではなかった。
初めから、戦争を仕掛けたかったのは、戦争により利益を得ようとする一部の金融利権業者とイギリスの意向によって動いているルーズべルトとその周辺の政治家の一部に限られてた。多数のアメリカ人はイギリスの宣伝に乗せられ、軽率にも欧州大戦に参加させられたことに後悔していた。
第1次世界大戦でアメリカは１０余万の犠牲者を出し、５００億ドルの戦費を払っても何も得るはなかった。『戦争を絶滅する戦争』と言われて参戦したものも、今になってみれば、雲散霧消の状態である。
そればかりか、参戦に際し、１００億ドルの戦費保障も無視させられ、どさくさにまぎれ、対戦直後には、イギリスにメソポタミアの油田の利権も独占される。フランスとアメリカはこれに抗議したが、フランスに少しの利権を与えるとことの『サン・レモ条約』の条文を勝手に作り、アメリカを無視した格好になったが、アメリカもこれに猛然と抗議したため、アメリカ・フランスに双方２５％ずつの権利を保障することで一応の決着は付いたが、わだかまりは続いている。
アメリカとしては、『平和と人道』のために戦った戦争がいかに頼りなく信頼おけない相手に協力したかは思い知らされたはずである。
アメリカの議会も漫然として、イギリスの宣伝や反日分子の扇動に安々とはまって行ったわけではない、先の大戦のように英国との密約にはナーバスになっている。議会では、英米軍拡路線に対する牽制と攻防が高まっていた。
紙面の関係で大方は省くが、議会のやり取りの例を２・３挙げておきたい。
上記のウイリアム・ポラー議員の質問を受けてかはわからないが、突然、アメリカ海軍の作戦部長であるリーイ提督は、海軍公聴会において、『アメリカ海軍は、英国海軍当局と折衝を続けているのは事実である』と証言するのである。
これを受け、ジィセフ・シュウナン下院議員が、『イギリスは常にアメリカの外交方針を誘導してるではないか？』
『今回の軍備拡張計画の背後においてさえイギリス外交が糸を引いているものであり、この火中の栗を拾わせる如き英米密約交渉の経緯を公表せよ！』とリーイ提督に詰め寄った。しかし、『これは、軍機に関すること』という名目で拒絶される。
モンタギュー・ノーマンが『ルーズベルト君、シッカリしてくれよ。だから言ったことじゃない。』と愚痴ったかどうかは不明であるが。
◆ところが、英国議会で「英米の軍備拡張計画」の声明を出したイーデン外相（チャーチル首相の時の外相でもあり、戦後、首相を務める）が、同年の昭和１３年２月２０日に、突如、辞任を発表する。これは、世界的にセンセーショナルを起こした。チャーチルは自署の「第2次世界大戦」でこう語っている。
『2月20日の夜遅く、私がチャートウェルの古い部屋にいると、イーデン（外相）が辞職したという電話の知らせがあった。私は告白するが、私はすっかりがっかりし、しばらくは暗い絶望の波に圧倒された。
- 1938年2月20日のこの夜、このときだけは眠りは私から離れてしまった。真夜中から夜明けまで、私は悲しみと不安の感情に悩まされながらベッドに身を横たえていた。・・・いまやイーデンは去ってしまったのだ。私は窓を通してゆっくりと忍び寄る朝の光を見つめていた。そして私の心の中に浮かぶ「死」の幻影を眼前に見たのであった。』
チャーチルの自伝には、このように、度々、このように打ちひしがれる場面が多いので、大して信用は出来ないが、心情だけでも伝わってくる。
これは、当時の首相チェンバレンとのイタリアのエチオピア侵攻を巡って、国際連盟の考えでの確執があったとされている。
◆昭和１０年１０月にイタリアがエチオピア侵攻を開始し、翌年の５月にエチオピアを併合。
これに抗議した国際連盟はイタリアに経済制裁を加える。そして、昭和１２年１２月にイタリアは連盟脱退という形でこれに答えた。
これは、「パックス・ブリタニカ」へのムッソリーニが公然たる挑戦だった。余談であるが、同年１０月には、ムッソリーニは日本の対中国行動を承認。翌月の１１月には、日独防共協定にも参加している。
イタリアは連盟脱退の影響は大きく、英仏が歩調が合わず、他の欧州追従国家は動揺した。
これは、イギリスがエジプト・インドと利権があり、地政学的にはイタリアのエチオピア侵攻が関心があったのに反して、フランスは、インドネシアに植民地を持っているが、当面の関心は中欧を虎視眈々と狙っているドイツにあり、他の弱小国家はエチオピアなどうなろうと関心がない国々である。
今までだと、何があろうと理由などなく、イギリスに追従していた欧州の弱小国家も形式的な制裁の形に留まり、国際連盟の顔を立てる程度に終わった。
イギリスは「集団的平和保障機構」の効力を何も発揮できず、さりとて、極東に厄介な問題も抱えており、地中海に単独で兵力を注入することもできず、かくして、イタリアは当初の目的を貫徹することになる。国際連盟の限界やらパックス・ブリタニカの陰りを露呈することになる。
近代史では、何が何でも「国際連盟」や「国際連合」を『錦の御旗』の如く祭り上げ、これに刃向かい脱退した日・独・伊に対し、汚点やら国際秩序を乱した犯罪人ように扱うが、国際連盟も元を正せば、イギリスの防衛条約から作成されており、イギリスの不利益にならない政策は取れないステムになっている。言ってみれば、「国際連盟」の仮面を被った「パックス・ブリタニカ」そのものである。
イタリアの国際連盟脱退騒動で以来、オーストリア・ノルウェーなどの欧州各国は「集団的平和保障機構」に相反する外交政策をとる。つまり、平和を乱す国家に対し、集団的に武力を持って抵抗するのではなく黙認し、妨害しないという処置に転換する。これにより、「国際連盟」の精神が根本より破綻したことになった。
◆これに慌てたのは、イギリスである。当時の首相であるチャンバレンは、「集団的平和保障機構」の修正の必要性を感じ、「国際連盟」の規約に拘束されない外交政策をとることになる。後世では、ドイツ・イタリアに擦り寄った「チャンバレンの典型的な宥和政策」と見る向きもあるが、イギリスに取っては、イタリアは、スエズ運河を通じ、エジプト・インドへ至る大事な海の輸送ルートに位置する。
ここで、イタリアに変な威嚇行動を取られれば、その影響は大である。現実路線でもある。しかし、これが連盟至上主義に固執するイーデン外相の意見と対立して、イーデン外相の辞任を見ることになったのである。
しかし、イギリスとしては地中海に単独に兵力を投入したとしても、極東には日中の争いが不透明であり、国力から考えれば、単独で地中海と太平洋に兵力は避けない、プロパガンダで扇動させ、アメリカの参戦を待つしかない状況が続く。これは、軍事同盟とは至らないまでも日・独・伊が結んだ防共協定がジワリジワリ利いていることにもなる。
イタリアの国際連盟脱退というのも、元はといえば、日本は昭和８年に満州事変がこじれて脱退しており、その先達を付けたのも日本であり、「パックス・ブリタニカ」に最初のの風穴を開けた張本人でもある。
さらに言えば、イギリス従来の略奪・横暴の植民地的支配を、どういう形であれ、中国に於いて邪魔したのも日本である。戦前において、英米のアングロサクソン系に民族の手前勝手なルールに楔を打った国家は見当たらない。
ましてや戦略的が欠けていたとも思えない。英米の圧倒的な物量作戦の中で、ジワリジワリと友好的なカウンターパンチを食らわしている。それも、国政が自己利益に走り、外交はほとんど機能しない中である。
よくここまでやったと賞賛に値する評価もあっていいのではないか。
◆なお、この頃、日本も世界大戦は避けられないと考え、着々と戦争の準備を始めている。
昭和１２年６月には、日本も戦艦「大和」建造準備のため、 三菱重工長崎造船所、技師・工員一一人を呉海軍工廠に派遣。
翌年の昭和１３年３月には、戦艦「武蔵」、長崎三菱造船所で起工している。
◆イギリスの伝統的外交とは、他国の分裂と対抗の上にあって、自らは、それらをリードするポジションに位置することが望ましい。イギリスの意図した戦争は、すでに、始まっていたのである。イギリスは先の大戦で国力が衰退していた。世界の海軍を保有しているとはいえ、地中海と極東に軍隊を派遣するほどの兵力は持ち合わせていない。
望むは、『弱い日本』『弱いイタリア』『弱いドイツ』であり、世論の国であるアメリカを引き込むまでに、じっくりと時を稼がねばならない。
当面は、日本が中国で長期戦になることを望んでいた。戦争が長引き、日本の軍隊が疲労して、兵力を削ぐことだけを。
イギリスにとって、９ヶ国条約に於けるブリュッセル会議など単なる『平和』を装う、プロパガンダの道具しか過ぎなかった。
日本の国力を削ぐためには、共産党系の抗日分子でさえ、モラルサポートをする。自国の国益とあらば、悪魔とでも手を組む。そこには、世界がメチャクチャになろうと関係なく、青臭い思想や心情さえない。ましてや、『平和』や『人権』など頭の片隅には露ほどにも見当たらない。バカなアメリカの世論を見方に付け、アメリカの軍事力は、バンバン浪費させる『刺身のツマ』のようなものだ。
日本の外交官の回想録を読む（例えば、幣原喜重郎「外交五十年」など）と、『私は、単に中国と仲良くしたかっただけなのに。』と捨てられた女子高校生のような泣き言が永遠と綴ってあるが、列強諸国は、『友好』などは単なる国益の道具であり、本気でそんなコトなど考えてもいない。狡猾な列強外交の前では、「借りてきた猫」どころ「南極のペンギン」程度の知恵も策略も、判断や思考さえない従順な小動物にしか過ぎなかった。
その実力ときたら、横綱と幕下どころか、三段目や序二段程度のモノだろう。
国益のためとあらば、悪魔の懐にさえ手を突っ込む英・露・中の芸当など期待する術もない。
いかに武力に勝ろうとも、戦争に於いては、たかが武力なのである。
◆筆者の考えでは、世界３大大戦（日露・第1次世界大戦・大東亜戦争）は、日・英・露・独のどう組むかで決まってくる。日露は、日・英【対】露（独は傍観）。第1次世界大戦は、日・英・露【対】独、大東亜戦争は、日・独【対】英・露。冷戦構造さえ、英（米）・日・西独【対】露（中）・東独。
大事なのは、アメリカの世論を見方に付ける為に、プロパガンダに莫大な費用を投じる。この資金の捻出は、如何にして集めたのだろうか。
これは、アメリカと結託して『銀買上げ政策による銀の乱高下による投機』と『法幣改革に拠る中国の現銀の持ち出し』で、かなりの額を埋め合わせたのではないだろうか？
確固たる証拠には乏しいが、この手のやり口は、イングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンそのものだからである。
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2007年05月11日(金) 23:05:26 Modified by yuyu122222