消されたニュース／アグレマン拒否
この事件は、昭和４年１２月２０日の大阪毎日によると、
蒋介石国民政府は、新任駐支公使小幡酉吉氏に対して、アグレマン（相手国の同意を求めること）を発動せずに、着任を拒絶することを発表した。 とある
この事件を読んだときに、何故、このような事件に当時の世論が沸騰したのかと疑問に思った。
しかし、この小幡公使の南京政府によるアグレマン（相手国の同意を求めること）拒否というのは、意外と根が深いのでと思い、取り上げてみたい。このアグリマンの拒否の人物は、ペルソナ・ノン・グラータ（好ましからざる人物）といい、どちらともフランス語である。
その前に、このアグレマンについて説明しよう。外交関係のウイーン条約第４条には、このような規定がある。
１ 派遣国は、自国が使節団の長として接受国に派遣しようとする者について接受国の
アグレマンが与えられていることを確認しなければならない。
２ 接受国は、アグレマンの拒否について、派遣国に対し、その理由を示す義務を負わない。
ウイーン条約には、規定されているが、このアグレマンの拒否を発動されるコトはほとんどない。
いわゆる形骸化された法律になっている。これは、この拒否を頻繁に発動すれば相手国の心象を悪くして、外交上、問題が生じる可能性も出てこよう。ただし、スパイ容疑・刑法犯などある場合はこの限りではない。
我が国でも、このアグレマンが発動された例がある。昨年、コートジボアール政府に対し発動した。これは、『外交特権に保護された部屋を賭博場として貸していた』容疑による。しかし、外交上の問題ではないが、ここまでひどいと当然のような気がする。反対に、この範疇に入らなければ、アグリマン拒否は発動されない。
これは、前任の佐分利公使任命の際、南京政府より、南京政府が中国公使の任命についてアグレマン適用を求め、幣原外相が承諾する、当時、アグレマンは欧米等の一部の国々しか適応されておらず、蒋介石の南京政府は名の如き２省ほどしか手中しておらず、日本以外にアグレマン要求した国もなかったことを考えれば、南京政府に、いかに特権的な待遇で遇したことになる。
しかし、この昭和４年、アグレマン慣例をひいた後の任命公使；佐分利貞夫が帰国した際の箱根富士屋ホテルで謎の射殺死体で発見。これも、当時、他殺か自殺かで当時大きな話題になる。当時の中国情勢が混迷とした時期だけに他殺説も取りざたされた。他殺説を取ったのは、中国側で、これは右翼よると見ており、当の外務省の幣原外相も自殺説に疑問視した。根拠としては、「動機がない」「佐分利氏は、右利きにも関わらず、弾丸が左のこめかみから貫通している」「ピストルが彼自身の所有のモノではない」などがあげられる。しかし、この事件を捜査した小田原警察は自殺と判断、一応の解決を見る。
幣原は中国事情に詳しい、当時、トルコ大使で帰朝していた小幡酉吉をその後任に充てる手配をしていた、そして、１２月８日になり南京政府は、この小幡酉吉をペルソナ・ノン・グラータ（好ましからざる人物）としてアグレマンを正式に拒否してきたのである。これは、重光葵文書によると、福岡日々新聞が「対２１ヶ条要求の際に相手側をテーブルを叩いて脅した」とされる小幡酉吉の硬骨漢としてのエピソードが掲載され、中国側がこれを刺激したと予想されるしている。中国側からは、小幡以外不可能であれば、公使を置かず現状維持で済ますようにとの旨の連絡が入る。
外務省は、これが形式的なモノであり、『アグレマン拒否は、国際儀礼に反する』と非難、しかし、中国側は以上の２点で応酬『これは、蒋介石も了諾したことであり、今さらかえられない。』『２１ヶ条条約に参加した歴史付き人物なので世間が反対している』との理由で拒否。日本政府としても、これだけ頑なに拒否されたのなら、小幡酉吉が公使に任命されてもうまくいかないだろうと判断、外務省は、重光総領事を兼任とさせ、小幡を駐独大使とする。
この重光葵文書正論のような気もするが、これを当時の新聞報道から追ってみる。
昭和４年１２月２０日
外務省当局の意向は、非公式にも小幡氏の任命に不承認を唱える如きは国際信義を無視するのははなはだしきものであるとして、幣原外相をはじめ外務省首脳人は極度に憤慨し、国民政府がアグレマンを承認するまでは駐支公使の任命を延期し、国民政府よりの申し出を排除し、断固として帝国政府の威信を保持せんすべしと主張する。
昭和４年１２月２７日
帝国政府としてはさらに第２階の処置として国民政府の承認取り消しの挙に出でんすると腹を決め、極めて強硬な態度を持している。
それが、
昭和４年１２月３１日
アグレマンを与えぬ例は国際上その例に乏しくない。国民政府は世論に従うばかりで他意はなく、支那の政府も国民も日支間の友好を厚くせんことを希望するものであり、日支の友好関係には変わりない。との政府の意向を報道
◆この件については、松岡洋右は南京政府は了解しているにもかかわらず、幣原自身が遠慮して途中で引っ込めたという話もあるが、いかんせん断固たる決意が、10日程度でコロッと変わるとは情けない。
これは、中国側の気に入らない外交交渉に関わる人間は排除できると言う先例を作ってしまった。
現在に至るまでのチャイナ・スクールの伝統外交になり、日本だけは外交の人事権まで握れると思わせてしまった例である、拡大解釈すると、中日國交上の癌をなしたのみならず『靖国問題』『教科書問題』等のあらゆるコトに干渉でき、日本の主権や『国体』までが怪しくなる。その後、ハルピン大橋総領事の赴任の場合、中國がその職務執行を認めないとの例まであり、日本の場合、強烈な自主規制があり、『中国側から拒否を恐れ』初めから国益を考えぬ『友好戦士』しか送り込まず、ジャーナリズムに至るまでこれをやりだすときりがなくなる。
◆ウイーン条約第４条のアグレマンの規定は、いかにも『欧米法』で、相手の信義に基いた形骸法を中国やテロ国家に適用したら、まずいだろう。これだと、『おべっか外交』なってしまう。
しかし、この問題は、現在だと何も問題にされないだろう。国家の主権／国防権あらゆる『国体』が侵食されても気にならなくなっているのだから。
蒋介石国民政府は、新任駐支公使小幡酉吉氏に対して、アグレマン（相手国の同意を求めること）を発動せずに、着任を拒絶することを発表した。 とある
この事件を読んだときに、何故、このような事件に当時の世論が沸騰したのかと疑問に思った。
しかし、この小幡公使の南京政府によるアグレマン（相手国の同意を求めること）拒否というのは、意外と根が深いのでと思い、取り上げてみたい。このアグリマンの拒否の人物は、ペルソナ・ノン・グラータ（好ましからざる人物）といい、どちらともフランス語である。
その前に、このアグレマンについて説明しよう。外交関係のウイーン条約第４条には、このような規定がある。
１ 派遣国は、自国が使節団の長として接受国に派遣しようとする者について接受国の
アグレマンが与えられていることを確認しなければならない。
２ 接受国は、アグレマンの拒否について、派遣国に対し、その理由を示す義務を負わない。
ウイーン条約には、規定されているが、このアグレマンの拒否を発動されるコトはほとんどない。
いわゆる形骸化された法律になっている。これは、この拒否を頻繁に発動すれば相手国の心象を悪くして、外交上、問題が生じる可能性も出てこよう。ただし、スパイ容疑・刑法犯などある場合はこの限りではない。
我が国でも、このアグレマンが発動された例がある。昨年、コートジボアール政府に対し発動した。これは、『外交特権に保護された部屋を賭博場として貸していた』容疑による。しかし、外交上の問題ではないが、ここまでひどいと当然のような気がする。反対に、この範疇に入らなければ、アグリマン拒否は発動されない。
これは、前任の佐分利公使任命の際、南京政府より、南京政府が中国公使の任命についてアグレマン適用を求め、幣原外相が承諾する、当時、アグレマンは欧米等の一部の国々しか適応されておらず、蒋介石の南京政府は名の如き２省ほどしか手中しておらず、日本以外にアグレマン要求した国もなかったことを考えれば、南京政府に、いかに特権的な待遇で遇したことになる。
しかし、この昭和４年、アグレマン慣例をひいた後の任命公使；佐分利貞夫が帰国した際の箱根富士屋ホテルで謎の射殺死体で発見。これも、当時、他殺か自殺かで当時大きな話題になる。当時の中国情勢が混迷とした時期だけに他殺説も取りざたされた。他殺説を取ったのは、中国側で、これは右翼よると見ており、当の外務省の幣原外相も自殺説に疑問視した。根拠としては、「動機がない」「佐分利氏は、右利きにも関わらず、弾丸が左のこめかみから貫通している」「ピストルが彼自身の所有のモノではない」などがあげられる。しかし、この事件を捜査した小田原警察は自殺と判断、一応の解決を見る。
幣原は中国事情に詳しい、当時、トルコ大使で帰朝していた小幡酉吉をその後任に充てる手配をしていた、そして、１２月８日になり南京政府は、この小幡酉吉をペルソナ・ノン・グラータ（好ましからざる人物）としてアグレマンを正式に拒否してきたのである。これは、重光葵文書によると、福岡日々新聞が「対２１ヶ条要求の際に相手側をテーブルを叩いて脅した」とされる小幡酉吉の硬骨漢としてのエピソードが掲載され、中国側がこれを刺激したと予想されるしている。中国側からは、小幡以外不可能であれば、公使を置かず現状維持で済ますようにとの旨の連絡が入る。
外務省は、これが形式的なモノであり、『アグレマン拒否は、国際儀礼に反する』と非難、しかし、中国側は以上の２点で応酬『これは、蒋介石も了諾したことであり、今さらかえられない。』『２１ヶ条条約に参加した歴史付き人物なので世間が反対している』との理由で拒否。日本政府としても、これだけ頑なに拒否されたのなら、小幡酉吉が公使に任命されてもうまくいかないだろうと判断、外務省は、重光総領事を兼任とさせ、小幡を駐独大使とする。
この重光葵文書正論のような気もするが、これを当時の新聞報道から追ってみる。
昭和４年１２月２０日
外務省当局の意向は、非公式にも小幡氏の任命に不承認を唱える如きは国際信義を無視するのははなはだしきものであるとして、幣原外相をはじめ外務省首脳人は極度に憤慨し、国民政府がアグレマンを承認するまでは駐支公使の任命を延期し、国民政府よりの申し出を排除し、断固として帝国政府の威信を保持せんすべしと主張する。
昭和４年１２月２７日
帝国政府としてはさらに第２階の処置として国民政府の承認取り消しの挙に出でんすると腹を決め、極めて強硬な態度を持している。
それが、
昭和４年１２月３１日
アグレマンを与えぬ例は国際上その例に乏しくない。国民政府は世論に従うばかりで他意はなく、支那の政府も国民も日支間の友好を厚くせんことを希望するものであり、日支の友好関係には変わりない。との政府の意向を報道
◆この件については、松岡洋右は南京政府は了解しているにもかかわらず、幣原自身が遠慮して途中で引っ込めたという話もあるが、いかんせん断固たる決意が、10日程度でコロッと変わるとは情けない。
これは、中国側の気に入らない外交交渉に関わる人間は排除できると言う先例を作ってしまった。
現在に至るまでのチャイナ・スクールの伝統外交になり、日本だけは外交の人事権まで握れると思わせてしまった例である、拡大解釈すると、中日國交上の癌をなしたのみならず『靖国問題』『教科書問題』等のあらゆるコトに干渉でき、日本の主権や『国体』までが怪しくなる。その後、ハルピン大橋総領事の赴任の場合、中國がその職務執行を認めないとの例まであり、日本の場合、強烈な自主規制があり、『中国側から拒否を恐れ』初めから国益を考えぬ『友好戦士』しか送り込まず、ジャーナリズムに至るまでこれをやりだすときりがなくなる。
◆ウイーン条約第４条のアグレマンの規定は、いかにも『欧米法』で、相手の信義に基いた形骸法を中国やテロ国家に適用したら、まずいだろう。これだと、『おべっか外交』なってしまう。
しかし、この問題は、現在だと何も問題にされないだろう。国家の主権／国防権あらゆる『国体』が侵食されても気にならなくなっているのだから。
2007年04月03日(火) 10:17:49 Modified by yuyu122222