灰の人 Ashen One

１．前提となる情報

和名：火の無い灰*1、灰の人*2
英名：Unkindled One、Ashen One*3
漢名：火的余灰*4、灰烬*5

２．和名から読み取れる情報

火を持たない、既に火に焼かれたもの。なるほどそれは正しく「灰」であろう。

３．英名から読み取れる情報

Unkindled Oneは「火がつけられていない*6 もの」くらいに訳せるだろうか。英語kindleの意味*7が

(…で)火をつける、燃やす
(…を)明るくする、輝かせる、燃え立たせる
あおる、たきつけてさせる

なのでun-でこれが否定されている、ということを踏まえると「燃やしていない/燃え立たしていないもの」がUnkindled Oneの管理人なりの訳語となる。

そしてAshen Oneは「灰のもの」。英語ashenの意味*8が

灰の(ような)、灰色の、青白い
トネリコの(ような)、トネリコ材製の

なので。

ここで気になるのはAshenに「トネリコの(ような)、トネリコ材製の」の意味があること。現在知られている北欧神話のか細い基盤となっている詩が「ギュルヴィたぶらかし」*9なのだが、この詩の中で世界樹ユグドラシルはトリネコであると語られているからだ。灰の人は世界樹、つまりは世界全体と何か関係があるのだろうか？

もしダークソウル世界の世界樹（そんなものがあればだが）が既に灰になっていてその灰が主人公なのだとすれば、もうどうしようもない気がする。世界樹（＝世界そのもの）燃え落ちた後で何ができようか。時系列的にラグナロクすらもう終わっている。灰の人が旅をするのは虹の橋ビフレスト*10がとうに砕かれ、ロキがヘイムダルと*11相打ちし、オーディンがフェンリルに吞み込まれたその後の時点ではないだろうか？ただユグドラシルが燃え落ちた後は楽園が広がるはずなのだが、灰の人が旅する世界は別にそうでないのが気に掛かる。

あとこれは管理人がトールキンオタクだから書いておきたいだけなのだが、中つ国には冥王が作った（が別に広まらなかった）言語として「暗黒語」という言語がある。その暗黒語にはashという単語がある。意味は「one 一つ」。「ash nazg durbatulûk "one ring to rule them all" （一つの指輪はすべてを統べ）」の詩に出てくる単語だ。ダークソウル世界のAshen Oneがこれに関係しているかは全く知らないが管理人はこれを書いておきたかった。トールキンの話をしたいからである。

４．漢名から読み取れる情報

「火的余灰」を漢字ユーザーの勘で読み解けば「火の余りの灰」。余りものとは、なかなか酷い呼ばれようをしている。

そして「灰烬」を日本語常用漢字に直せば「灰燼」。「灰燼に帰す」*12の灰燼である。こっちもこっちで酷い。「焼けて原形をとどめていないもの」、「跡形もなくすっかり焼けてしまったもの」、「灰と燃えカス*13」という意味だから。しかし「跡形もなく焼け切ってしまった」というからには主人公は過去に燃えたことがあるんだろう。それはいつ、どんな形でのことだったのか。そこはとても気になる。

５．まとめ

ダークソウル３の主人公は「火を持たない、既に火に焼かれたもの」であり、「火が点けられていないもの」、「燃やしていない/燃え立たしていないもの」、「灰のもの」。少し詳しく言えば「火の余りの灰」であり、「灰と燃えカス」である。
それらの呼び名から、主人公は過去に火によって焼かれたことがあると推測できる。

６．以上の情報を踏まえての考察

和名・英名・漢名からして灰達は過去に火で焼き尽くされたことがあるのだろう。まあ灰であるし。不死が何らかの火に焼き尽くされたら灰になるのだろうか。フリーデが絵画世界に入った後に灰になったのは、彼女が火に焼かれたのが絵画世界入りした後だからとか？　そしてフリーデを焼いた火は教父の火であったりして？　絵画世界にはそれ以外に火が無さそうだし。

他の灰がどんな火に焼かれたのかは分からないけど、なんとなくそれらは総じて執着の火であるような気がしてる。仏教流に言えば「渇愛」や「煩悩」になり、アブラハムの宗教的に言えば「熱情」や「愛」になるだろうもの。煩悩の火*14、焼き尽くす火。そういった類いの熱を帯びた視線で物理的に焼かれたのが灰の人なのかもしれない。

それぞれの灰がどんな種類の執着を火元に持たれていたかは不明であると思う。何せその火には大体108の種類*15があるから。どれであるか分からない。だから、誰がどんな理由で焼かれたかについては実質的に無限の解釈が許されていると思う。