アストラ Astora

１．前提となる情報

和名：アストラ*1
英名：Astora*2
漢名：亚斯特拉*3

２．和名から読み取れる情報

「アストラ」をWikipedia検索してみたところ*4ヒットしたのはラテン語astrum ……の複数形astra。地味に英名と違う綴り。もはやフロムゲーにおける固有名詞のズレはデフォルトであるように思えてきた。というかそれは現実世界では当たり前のことである。日本語で「犬」と書かれる生き物は英語だと「dog」、ドイツ語だと「Hund」。文化圏が違えば名前はズレるものだ。そういった意味でフロムは実に現実的に名前を扱っている。素晴らしい。

ラテン語astrumの意味は

空、天国
星、天体、惑星/太陽/月
星々、星座

であり*5、astraはその複数形。

となればastraの意味は

複数の空、複数の天国
星々、複数の天体、複数の惑星/複数の太陽/複数の月
いくつもの星々、いくつもの星座

となるだろうか。

気になるのは「複数の空(sky)」、「複数の太陽(sun)」。ダークソウルの世界はいくつもあるのがデフォルトなので「複数の空」という言葉には成程とさせられた。実際に管理人も篝火のそばで何人もの別世界の人物（プレイヤー）を目視している。「複数の太陽」も言われてみればプレイヤーはみなそれぞれ別の太陽（最初の火）に突っ込んでいくのでその通り。

これに際して管理人が思い出した情報はコレ*6だ。つまり「世界も太陽も複数あった説」。「このゲームで描かれる世界って実は複数あるんですよー」というネタバレをフロムは国名に仕込んでいたのかもしれない。誰が分かるかそんなもん！！

そして「アストラ」という語にまつわる話はまた変な方向へ飛ぶ。行先はインド、対象言語はサンスクリットだ。サンスクリットにもastraという単語があるのだ、驚いたことに。

サンスクリットのअस्त्र（astra）の語義は

（武器としての）飛び道具
石弓(弩/いしゆみ/クロスボウ)の矢、稲妻
矢

とのこと*7。

ダークソウル世界でクロスボウを使用していたっぽいのはシリーズを通して亡者や騎士といった人類であった*8 *9 *10 *11 *12 *13 *14 *15 *16 *17 *18 *19 *20 *21 *22 *23ように思われ、なんとなくクロスボウは（ダークソウル世界においては）「人の武器」であるように管理人には感ぜられた。であるのでサンスクリットで「クロスボウの矢」を意味する（かもしれない）アストラの国は確かに人の国だったのだろうとしみじみする。

だがそれならばアストラは「稲妻」の国でもある、ということになるのが非常に興味深い。ダクソ世界で稲妻と言えば神の王グウィン。ゆえに稲妻は神の国に属するのが妥当であるはずなのだが。そこの点に関して管理人が思い付くのは「『稲妻』の名を持つ人間の英雄、呪術王ザラマンが人間の世界にいた可能性」*24と「グウィンという神は半神クー・フーリンの物語を組み込まれた物語であり、その名を人間が継いだ可能性」*25である。詳しくはリンク先にて。それらの仮説がアリだとするならアストラが「稲妻」の名を持つ人間の国という線もアリかなぁ多分……と管理人は思う。

３．英名から読み取れる情報

さて次は「Astora」について。単語としてastoraが見つかったのはカタルーニャ語*26においてだ。カタルーニャ語astoraはカタルーニャ語の動詞astorarの変化形*27である。

カタルーニャ語astorarの意味は以下の通り。

（人を）怖がらせる
（怖がらせて～を）追い出す、追い払う
（人を）びっくりさせる / 驚かせる

貴族顔が生まれそうにない意味合いだ。アストラは恐ろしい国なのだろうか？ ソラールさんは全然怖くないが、あの人はアストラにおいて異端だからあまり参考にならない。

４．漢名から読み取れる情報

亚斯特拉の発音は「ヤスゥトラ」*28。発音の提供とはこれ旱天慈雨。本当にありがたい。皆様も発音してくださっている方々をぜひフォローしてください。なお亚斯特拉のピンインは以下の通り。

亚：yà　*29
斯：sī　*30
特：tè　*31
拉：lā　*32

５．アイテム等から見るアストラ

色々なテキストからアストラがどういう国であるか垣間見ることができる。以下にそれを列挙していきたい。

華やかであんまり労働者イメージのない国
- キャラメイク画面で「アストラの貴族顔：美形の貴族顔。アストラに多い」*33、「貴族的で整った顔立ち。金髪碧眼も多い。没落したアストラの、過去を偲ぶ小さな誇り」*34とあるので。
経済的に豊か
- 紋章の盾・竜紋章の盾テキストに「上質のブルーシールド」*35 *36とあるので。
身分の高い騎士の存在が他国にも知られている
- 上級騎士の兜テキストに「アストラの上級騎士」*37と書かれており、アストラには普通の騎士より位の高い騎士がいることが知られているっぽいので。
一般の人間の国より進んだ細工技術を持っている
- 遠眼鏡テキストに「アストラの名工の手になる、非常に進んだ道具」*38とあるので。
かつて「悪霊」に襲われた歴史がある
- 邪眼の指輪テキストに「かつてアストラを襲ったという魔物、邪眼の悪霊を封じ込めた指輪」*39とあるので。

普通の人間の国より色々と生活・技術水準が高そうな国がアストラらしい。そこら辺は若干アトランティスっぽい。そして記憶すべき歴史として「邪眼の悪霊の襲撃」がある国。

５．まとめ

アストラの名前は「星々の国」かもしれず「複数の太陽の国」、もしくは「クロスボウの国」、「怖がらせる国」とも解せる。またアストラを「稲妻の国」とも解釈でき、その場合呪術王ザラマンとの縁が深い国である可能性を導ける。またアストラは他の人間の国に比べて豊かで様々な水準が高い。またかつて邪眼の悪霊の襲撃を受けた歴史を持つ。

６．「邪眼の悪霊」とは何者か？

アストラはかつて「邪眼の悪霊」に襲われた。ではその「邪眼の悪霊」とは何であったのか？アストラを襲った魔物についての各国記述は以下の通り。

（和文）かつてアストラを襲ったという魔物、邪眼の悪霊を封じ込めた指輪
（英文）According to legend, this ring contains the spirit of the evil eye, a dark beast which assaulted Astora.*40
- （伝説によれば、この指輪にはアストラを襲った黒い獣、邪眼の霊/魂が込められている）
（漢文）曾侵袭过亚斯特拉的魔物邪眼恶灵封印于其中的戒指。
- （曾て(かつて)アストラを侵襲した魔物/妖魔/悪魔、邪眼の悪霊が其の中に封印されている指輪）

「邪眼の悪霊」は「a dark beast」であり、「その本質が魔であるもの（魔物/妖魔/悪魔…）」*41であるらしい。これらの情報から生粋のトールキンオタクである管理人はアストラを襲った邪眼の持ち主にサウロン*42を連想し、アストラにはサウロンの唆しにより滅んだ国ヌーメノール*43を思い起こした。アストラが「星々の国」である可能性があるのは１に書いた通りだが、ヌーメノールの呼称の1つは「星の国(Land of the Star)」なのである。

サウロンは実のところ堕天使なので悪魔と呼べ、ゆえに悪霊とも呼ばれる。そして悪魔の別名の1つが「かの獣 the Beast」*44。また多くの人は炎に縁どられた大きな一つの目をサウロンだと認識していると思うが、あれを「邪眼」と呼ぶことは可能だ。中つ国の人々は誰もそう呼んでいないけれど。そしてサウロンは本体こそ入れていないが力のほとんどを一つの指輪に込めた。それを壊してしまえばサウロン本人も必然的に滅ぶレベルの繋がりを持つ物は疑似本体と呼べなくもない。

よって管理人はこう疑い始めた。「邪眼の指輪」はダークソウル世界における一つの指輪ではないか？　「邪眼の悪霊」はダークソウル世界におけるサウロンなのでは？

とは言えまあ、所詮全てはたわごとである。