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「ご主人、はっぴーばれんたいーん!」
 そう言ったラドリーの手には、茶色いカップケーキがあった。 珍しくキッチンでナサリーと何やらしていたが、どうやらこれを作っていたらしい。受け取ってみるとまだ暖かい。端の方は少し焦げていたものの、一口食べるとチョコレートの甘い味がした。
「私からはこれを、お時間のある時にお召し上がり下さい。でも食べたらキチンと歯磨きをして下さいね」
 ナサリーからは丁寧にラッピングされたチョコを受けとる。自分の体調を気遣う様子が普段と変わらなくて思わず顔がほころぶ。
「お返し、楽しみにしていますね?」
「あ、そうですよ! 3倍ですよ、3倍!」
 悪戯っぽく笑うナサリーにラドリーが便乗する、ちゃっかりしたメイドたちだった。しかしラドリーは今日はまだ洗濯物を運んでいるところを見ていないが……。
「はっ、忘れていました! ハスキーさんに怒られる前に行ってきます!」
 慌ただしく駆けていくラドリーを見送っていると、耳元で囁き声が。
「今夜はメイド一同、ご主人様に甘いおもてなしをご用意しております。是非お召し上がりくださいね……♥」
 言い終わると共にすっと離れた柔らかい感触に、思わず生唾を飲み込む音が聞こえた。どうやらホワイトデーを待つまでもなく、彼女たちには白いお返しを注ぐことになりそうだった。

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